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南極料理人・・・・・評価額1550円
2009年08月25日 (火) | 編集 |
もしもあなたが、一年間の単身赴任を命じられたとしたら・・・?
しかもその行き先が、雪と氷以外何も存在しない南極大陸だったとしたら・・・?
「南極料理人」というストレートなタイトル通り、これはひょんな事から南極行きの辞令を受けてしまった、一人の料理人の物語。
原作者の西村淳は実際に第30次南極観測隊、第38次南極観測隊ドーム基地越冬隊に参加した人物で、ホンモノの体験をした人だけが書ける、ユニークなエピソードが詰まっている。

1997年。
海上保安庁で料理人をしていた西村(堺雅人)は、南極大陸の内陸部にあるドームふじ基地に調理担当の越冬隊員として派遣される。
妻(西田尚美)と子供たちを残しての長期単身赴任は不安が一杯。
気象学者のタイチョー(きたろう)や氷柱学者の本さん(生瀬勝久)ら、8人の隊員たちの旺盛な胃袋を満たす西村の一年に渡る挑戦が始まる・・・。


南極といえばタロ・ジロで有名な昭和基地が直ぐに思い浮かぶが、この作品の舞台となるのはそこから遥か1000キロも内陸の、標高3800メートルの山の上に建つ南極ドームふじ基地
年平均気温はマイナス50℃以下で、ペンギンやアザラシはおろか、ウィルスすら存在できないという究極の極寒環境だ。
そういえばウィルスで人類が絶滅する「復活の日」という映画では、南極基地だけが生き残るという設定だったけど、なるほど然もありなん。
基地の隊員意外全く生命の無い、見渡す限り雪と氷の世界は、もはや別の惑星と言って良い感覚で、これなら宇宙ステーションに派遣される方がまだ日常的な感すらある。

この隔絶された環境の中で、全く違ったバックグラウンドを持った個性の強い8人の隊員たちが、一年以上も一つ屋根の下で暮らす。
そんな彼らの唯一の共通の楽しみが、主人公西村の担当する「ごはん」なのだ。
西村は海上保安官で、巡視船の食堂の料理人。
元々南極派遣に志願していた同僚が、交通事故で負傷してしまった事から白羽の矢が立った。
どちらかというと消極的に南極の住人となったが、船乗りという職業柄か、わりと直ぐに環境に適応して、過酷な南極生活の潤滑油の役割を果たすのである。

もちろん環境がいかに特殊でも、料理人が主人公で「食」をテーマとした映画であるなら、出てくる食べ物が美味しそうに見えなければ、その時点で興醒めだ。
本作は、あの究極のスローフード映画、「かもめ食堂」で観客に生唾を飲み込ませたフードコーディネーターが参加しており、そのあたりはバッチリ。
西村の出す料理は、おにぎりから中華まで様々だが、総じて美味しそうに見えたし、最初の頃はまるでホテルのレストランと見紛うばかりに気合が入っていたのが、段々と皆の要望に流されて大皿料理や肉の直火焼き(?)といった豪快系に変化していくあたりもリアルだ。
南極の冬至を各国の基地が同時に祝うミッドウィンター際に、皆が正装して食事したりする独特のしきたりも面白かった。

びっくりしたのは、食材がダンボール箱のまんま野晒しで置いてある事。
まあ考えてみればマイナス50度の世界なら、絶対に融ける事はないし、雨も降らないから箱も傷まない。
臭いに惹かれてやってくる動物もいないし、バイ菌の心配も無い。
よく北海道では外の方が寒いので、凍らせたくない物を冷蔵庫に入れるという話を聞くが、それと同じ事で、食べる時に必要な物だけを屋内に運び込んだ方がよっぽど合理的なのだ。
何しろ一年間は補給が無いので、食材は原則的に冷凍保存可能なものというくくりはあるものの、結構ちゃんとした食事をとっているのは驚いた。
もっとも、この世界では食べる事くらいしか楽しみが無いから、自然とそのあたりのケアは手厚くなるのかもしれない。
一応私も元料理人の端くれなので、使い方としては非常に勿体無いと思うのだけど、冷凍伊勢海老の巨大エビフライは、ちょっと作って食べてみたくなったぞ。

まあ舞台が舞台なので、売り物の食事シーン以外は、物語的にも特に何かが起こるわけではなく、殆ど日常のディテール描写の積み重ねなのだが、これが結構興味深い。
南極観測隊というのは、大学の研究者以外はてっきり自衛隊などの公的な機関から隊員が派遣されているのだと思っていたが、民間企業からの派遣もあるという事は知らなかった。
自動車会社から派遣された隊員が、「究極の左遷だよ」と嘆いて引き篭もってしまっていたが、確かになあ・・・。
雪上車の整備以外にも極地環境でのデータ取りなど、仕事はあるのかもしれないが、自動車会社にとって南極が重要マーケットとも思えないし。
サラリーマンの悲哀がこんな所で見られるとは思わなかった。

南極に来たくて来た人間にしても、遠距離恋愛の恋人がいたり、西村の様に家族を置いての単身赴任組もおり、隊員たちの抱える家庭環境は複雑。
このあたり、実際に原作者が南極に行っていた年なのだろうが、1997年という時代設定が絶妙だ。
ちょうどネットが普及し始めた頃だが、映画を観る限りまだドームふじ基地にはネット環境は無い模様。
現在の南極事情はわからないが、これが今の様な完全なネット社会だと、長距離電話代を心配して砂時計の落ちる砂に胸をかき乱される事もないし、KDDのオペレーターに恋をするという設定も無理だろう。
外界とつながる唯一の手段が電話という事は、話している相手の表情、つまり本音が見えないという事でもある。
電話という小道具が、この静寂の世界で、男たちの心をかき乱すいくつもの小さなドラマを作り出すというのは上手い設定だ。

「南極料理人」という作品は、一言で言えば非日常な日常を眺めて楽しむ軽い喜劇である。
日々の業務をこなし、日本に残してきた家族との関係に悩み、何も無い世界でいかに楽しむかに知恵を使う、隊員たちの忙しくもきままな毎日は観ていて楽しい。
あえて物語にメッセージを求めるならば、南極という非日常に身を置くことで、西村が再発見する事になる家族との日常の大切さという事になるだろう。
監督・脚本の沖田修一は自主制作映画で注目を集め、本作が長編劇場用映画デビュー作となる若手。
お世辞にもドラマチックとは言えず、強いメッセージ性がある訳でもない物語を、観客の知らない南極の生活を丹念に描き、登場人物のキャラクターをキッチリと立てて感情移入させる事で、2時間5分を飽きさせないのは大したものだ。
堺雅人ら俳優陣の飄々とした佇まいも涼しげで、一服の清涼剤として気分良く映画館を後に出来る作品である。

今回は、劇中で巨大エビフライに付け合わされていた「アサヒ スーパードライ 生」をチョイス。
正統派のビールファンからは色々と不満の声も多いスーパードライだが、私はビールには生産国のお国柄が色濃く出ると考えており、これはこれで高温多湿の日本の夏が生み出した独自のテイストだと思う。
少なくとも今の季節の東京ではなかなか美味しく飲めるビールだし、アメリカンビールとはまた違ったあっさりとした咽越しは世界的にも人気が高い。
果たして、マイナス50℃の世界で飲んでも美味しいかどうかは判らないけど・・・・(笑

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宇宙(そら)へ。・・・・・評価額1400円
2009年08月25日 (火) | 編集 |
今年はアポロ11号の月面着陸から40周年という事もあって、宇宙を題材にしたドキュメンタリーが相次いで作られている。
「空(そら)へ。」は、マーキュリー計画から現在のスペースシャトルまで、NASAの有人宇宙飛行の歴史を描いた、英BBC出身のリチャード・デイルによる作品だ。
先日公開された「ザ・ムーン」が、アポロ計画の宇宙飛行士たちのインタビューを中心に、言わば顔の見える形で、40年前の月への探検の意味に迫っていたのに対して、こちらは関係者インタビューは一切無く、記録映像によってそれぞの時代に起こった事を淡々と描写している。

本作もNASAの全面協力の元に作られており、秘蔵の映像は盛りだくさん。
テレビなどではめったに流れない、ロケット打ち上げの詳細なディテールや、大気圏突入を宇宙船の中から捉えた迫力ある映像などはなかなかの見もので、半世紀の時間を一時間半に縮小した事で、NASAが歩んできた有人宇宙開発史が、非常にわかりやすく解説されている。
宇宙船をポーンと打ち上げ、そのまま落下させる弾道飛行から始まって、軌道飛行、宇宙船同士のランデヴー、月着陸船開発と細かな技術を積み重ねて、ついに月面着陸を成し遂げるまでのプロセスは、慎重すぎるほどのステップ・バイ・ステップ
一歩間違えると、大惨事を招きかねない宇宙開発に、決して近道は無いという事が良くわかる。
同時に、この気の遠くなるようなプロセスをクリアできた、アメリカという国の底力を改めて実感するのである。

だが、どんなに慎重に事を進めても、未知の領域に挑む時は、必ずと言っていいほど悲劇は起こってしまうもの。
本作の特徴は、栄光の歴史と同じくらい失敗の歴史をフィーチャーしている事だろう。
もう宇宙飛行士など珍しくも無いくらい、沢山の有人飛行を行っている印象のあるNASAですら、マーキュリー計画以来の総飛行回数は通算百数十回程度に過ぎず、そのうちの大半が80年代以降のスペースシャトルによるミッションである。
単純比較は出来ないにしろ、過去百年間に世界中で開発された航空機の熟成を考えれば、有人宇宙船はまだまだテスト段階でトライ&エラーの真っ最中な訳で、栄光と喝采の歴史の陰に、アポロ1号やチャレンジャー、コロンビアの両シャトルの悲劇的な事故も起こっている。
人々の目の前でチャレンジャーが爆発した時、あるいはコロンビアからの通信が途絶した時、記録映像は粉々に飛び散るシャトルだけでなく、言葉を失う管制室のスタッフの表情までをも赤裸々に捉えており、強く心に残る。
特に驚いたのは、コロンビアの事故直前まで機内映像が残されている事で、これから自分たちの身に起こる悲劇など全く予想だにしていないクルーの様子に胸が痛む。
これら成功・失敗問わず宇宙計画のあらゆる映像資料が残されているのも、もしも何かが起こった時に、全てを検証して明日の糧にするためなのだという。
宇宙旅行とは、21世紀の現在でも命がけの冒険である事を否応にも無く見せつけられる。
パイオニアの道とは過酷なものである。

もちろん、危険と厳しさだけでなく、宇宙には胸躍らせる美しさと神秘がある事も確か。
月面を歩くニール・アームストロングや、人類初の宇宙遊泳に子供の様にはしゃぐエドワード・ホワイトの姿など、是非とも一度はあの場所へ行ってみたいと思わせる魅力に満ちている。
そして何よりも、マーキュリー計画のレッドストーンロケットから、アポロのサターンV、お馴染みスペースシャトルにいたるまでの、ふんだんに盛り込まれた有人巨大ロケットの打ち上げシーンの荘厳な美しさは、誰もが魅了されるに違いない。
特に全長110メートル、総重量2700トンという史上最大級のロケット、サターンVが地響きと共に空気を切り裂いて上昇する迫力は凄まじく、何度観ても鳥肌が立つ。
ペガサスロケットやスペースシップワンの様な、空中発射式のロケットも、あれはあれで格好良いし、消費燃料も少なくてすむからエコなのだろうけど、やはり地上発射式の大型ロケットというのは、人類の本能を燃えさせる何かがあるような気がする。
神によって人類に課された重力というくびきを、液体酸素で氷結した氷と一緒に振り払って、巨大な火柱が天空に付きあがってゆく様は、限界に挑戦する人類の可能性の象徴に思えるのだ。

ただ、一本の映画として考えると、描く対象をNASAオンリーに絞った事は疑問を感じる。
米国の宇宙開発は、ソビエトというフロントランナーを目標に、追いつき追い越せという事で発展してきた訳で、決してNASAだけが「Rocketmen」の歴史を積み重ねてきた訳ではない。
アームストロングの有名な言葉を借りるなら、アポロ計画は確かに人類にとって大きな一歩だったと思うが、ユーリー・ガガーリンの宇宙初飛行だって、同じくらい重要だ。
ソ連が得意としたクラスターロケットも、米国のロケットとは別の美しさがあるし、ある程度米ソの宇宙開発競争の歴史も交えた方が、よりダイナミックな作品になったのではないだろうか。
まあこれは言ってみれば「一時間半でわかるNASA有人宇宙開発史入門」というような作品で、上映時間を考えると、キレイに纏まっていると言えるが、絞り込んだテーマが見えにくい分、映画としてのパワーはそれほど強くない。
NHKあたりに、V-2ロケットの頃から、人類の近代宇宙開発史を総合的に追ったアーカイブを作って欲しくなった。
そういえば無人輸送船HTVを搭載した日本の新型ロケットH-ⅡBも来月打ち上げられる。
こちらもサターンVほどではないが、全長60メートル近い堂々たる大型ロケットだ。
一度は種子島に打ち上げを見に行きたいものである。

今回は、宇宙開発によって生まれた酒、「土佐宇宙酒 玉川 安芸虎 純米大吟醸」をチョイス。
宇宙酒といっても宇宙で醸造された訳ではなく、高知県の蔵元有志によって推進された、日本酒酵母を宇宙へ送ろうというプロジェクトによって生まれた酒のこと。
2005年に国際宇宙ステーションへ運ばれた高知県産酵母は、8日間を宇宙で過ごした後に帰還。
この宇宙酵母によって高知の新たな名産品として生まれたのが、各蔵元による「宇宙酒」なのである。
こちらは有光酒造の製品だが、他にも幾つかの蔵元から宇宙酒は発売されている。
お味の方は・・・まあ普通の美味しい日本酒だが、宇宙に想いを馳せながら酔えば、無重力の気分になる?

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