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BALLAD 名もなき恋のうた・・・・・評価額1350円
2009年09月07日 (月) | 編集 |
今年の9月は、まるで時代劇月間。
SF仕立てから伝説のコミックの映画化まで、様々なタイプの時代劇が連続して公開されるが、一連の作品の先陣を切るのが山崎貴監督「BALLAD 名もなき恋のうた」だ。
この作品は、2002年に公開された原恵一監督の傑作アニメ、「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦」の実写リメイクとなる。
思えば、山崎監督の出世作である「ALWAYS 三丁目の夕日」も、昭和と言う時代のテーマパーク的な捉え方など、同じ原監督の「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」に多分にインスパイアされたと思しき作品であった。
原監督による「クレしん」映画は秀作が多く、特に21世紀に入って公開された上記の2本は、どちらもアニメ映画史に残る傑作である。
VFX映画の雄、山崎貴が果たしてこの高い壁にどう挑むのか、極めて興味深い作品となった。

時は戦国、天正十二年。
関東の小国、春日の国に「鬼の井尻」の異名を持つ、井尻又兵衛(草剛)という豪傑がいた。
ある日、戦場で狙撃されそうになった又兵衛を、奇妙な少年が救う。
川上真一(武井証)と名乗ったその少年は、遥未来からのタイムトラベラー。
彼は、家の近所の大クヌギの根元で、偶然古い箱に入った手紙を見つけ、気付いた時にはこの時代に飛ばされていたと言うのだ。
又兵衛は、春日の城の城主、康綱(中村敦夫)の命令で真一の面倒を見ることになるが、やがて彼らは不思議な絆で結ばれてゆく。
その頃、北関東の大大名、大倉井高虎(大沢たかお)が、春日の廉姫(新垣結衣)との縁談を申し入れてくる。
実は廉姫と又兵衛は幼馴染で、二人は身分違いの恋に苦しんでいた。
一方、未来で真一の行方を捜す両親は、春日の国の歴史に秘められた意外な事実を発見するのだが・・・。


全編に渡って、オリジナルに対するリスペクトが滲み出ている。
物語は、驚くほどアニメ版に忠実であり、ディテールもあえて踏襲している部分が多く、両方を知っていると、どうしても2本を比較せざるを得ない。
おそらく、オリジナルを知らない人の方が、単体の映画として素直に楽しむ事が出来ると思う。
もっとも、忠実とは言っても、さすがにアニメと全く同じには作っていない、というか作れないので、特にキャラクター関連の設定は色々と変更している部分もあるのだが、残念ながらこの脚色が必ずしも上手く機能していない。

まず主人公だが、あんな超アクティブでお尻丸出しな幼稚園児は現実には存在しないので、無難に小学生の少年という設定に変わっている。
このしんのすけ改め真一は、何事にも物怖じしないしんちゃんとは対照的に、友達の女の子がいじめっ子に捕まっていても、一人逃げてしまう様なヘタレな少年という設定となっている。
実はこの主人公の設定が、本作のコンセプトをアニメ版と大きく違ったものにしているのである。
元々のアニメ版では、しんちゃん自身は未来から来た時と帰った時で特に何も変わってない。
主人公はどちらかと言うと又兵衛と廉姫であり、彼らの中にしんちゃんというギャグ爆弾が放り込まれる事で、戦国時代に未来からの突風が吹き、身分や面子に縛られた彼らの生き方に新しい価値観を齎すのである。
したがって、アニメ版の視点の置き所は又兵衛と廉姫の間にあり、しんちゃんがお笑いに走れば走るほどに彼らの悲恋が引き立ち、子供たちはおバカなギャグに笑い、一方で付き添いのお父さんお母さんは戦国の儚いラブロマンスに泣くという見事な構成があった。
対して、実写版は主人公をヘタレ少年に設定した事で、彼の成長物語という新たな側面が生まれ、真一の側に基本の視点を置こうとしている。
しかしながら、又兵衛と廉姫の部分も殆どアニメ版からの変更がなく、エピソードもほぼ同じなので、こちらに置かれた視点もそのまま機能しており、結果的に大幅に変わった真一のパートと二つの視点を持つ物語になってしまっているのだが、両者のマッチングは今ひとつだ。
真一は基本的に戦国の世界では傍観者であり、又兵衛とそれほど濃い交流をしている訳でもないから、彼の成長にそれほど説得力が感じられず、「もう逃げたくない」という印象的な台詞も、彼が如何にしてそう思うようになったのかがこちらに伝わってこないのだ。

また、真一ほどではないが、ある程度改変されているのが敵役である大倉井高虎だ。
オリジナルではひたすら傲慢な人物だったが、こちらでは廉姫に一方的な恋心を抱き、勝手に又兵衛にライバル心を燃やしている青くさい中学生みたいな人物に変わっているのだが、感情の描写があまりにも唐突で、又兵衛との関係も含めて、こちらも説得力が無くなってしまっている。
思うにメインキャラクターの設定を大幅に変えるなら、それに合わせて全体の作りを考え直す必要があると思うのだが、アニメ版のコアであった又兵衛と廉姫のパートには殆ど手が加えられていないように、アニメ版に忠実な部分と、新しく作り直した部分がかみ合っていない印象だ。

山崎監督得意のビジュアルは、さすがになかなかのもの。
アニメ版は、お子様アニメの看板を掲げながら、黒澤映画も真っ青というスーパーリアリズム時代劇をやってしまった作品だったが、こちらも白組のVFXの出来が良く、スケールの大きなセットとの合わせ業で、戦国時代の城の風景を巧みに再現している。
ただ、アクションとしての仕上がりはちょっと疑問が残る。
中盤の城攻めはまずまずだが、肝心のクライマックスの、敵本陣への奇襲突撃にあまり迫力が無いのはいただけない。
どうも視点が引いて漂っている感が強く、戦場の臨場感が伝わってこないのだ。
集団乱戦を長廻しのワンカットで撮ったりしているのも、何らかの拘りなんだろうとは思うが、今ひとつ意図が良くわからないし、効果的とも思えない。
この手の合戦シーンは黒澤映画を始め、世界中に傑作・名作が揃っているので、ここはもう一工夫が必要だったと思う。
勿論、同じ合戦でも「ロード・オブ・ザ・リング」あたりと比べると、田舎の城攻めの話なんでスケールや人数の差はあるのだけど、例えば「300 スリーハンドレッド」なんて、実際に画面で戦ってるのは大した数ではなくても、引きと寄りの緩急、画面構成のセンスが抜群で、大乱戦を見ているスペクタクル感があった。
川上ファミリーが車で助太刀に来る、一番盛り上がるべきシーンも、ただ引き画でゆっくり走ってくるだけなので、なんだか牧歌的。
ここは嘘でもいいから、ラリーカーの様にドリフトを決めて敵を蹴散らすくらいの演出が欲しかった。

まあどうしてもアニメ版と比べてしまい、色々と文句を言いたくなってしまうが、当然実写版ならではの美点もある。
携帯電話やカメラ、自転車と言ったオリジナルには登場しない小道具類は効果的に使われており、クヌギの大木や城跡の石碑の使い方も、アニメ版では希薄だった現在と過去の繋がりをイメージさせて上手い。
カメラなどの小道具を使うことで、真一の両親は物語的にもアニメ版より生かされていたと思う。
トータルで考えれば、正直なところ原恵一の壁は越えられなかったと思うが、こういう小技を効かせた演出はなかなかの物なので、もうちょっと全体を馴染ませる事が出来ていればなあと思わざるをえないのが残念だ。
もっとも、逆説的だが元々出来の良かった悲恋劇の部分を変えなかった事で、良くも悪くもこの部分だけで結構面白く観られるのも確か。
隣で観ていたカップルの女性などは後半ずーっとハンカチで目を押さえていたし、最後の銃声の所では私もちょっとウルッと来たくらいだから、ラブストーリーとしてはまあまあ成功していると言えるだろう。
ああ、でもこれだけアニメ版をリスペクトした作りにするなら、私の大好きな「青空侍」の部分は残して欲しかったなあ。

今回は、クレしんの街、春日部の地ビール「赤沼ロマン」をチョイス。
これは春日部の赤沼地区で明治中期に作られていた「マルコ麦酒」の復刻版で、古代赤米から作られたとても珍しいビールである。
残念ながら生産量が非常に少ないので、なかなか手に入らないのだけど、非常に深いコクがありながら、咽ごしにはキレがある。
一本を時間をかけて楽しみたくなる、懐の深い酒である。
映画の中では侍たちがビールとカレーで楽しんでいたけど、もしも戦国時代にビールを造る技術が伝わっていたら、こんな酒が造られていたのかもしれない。
http://tutuya.com/

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