2009年09月12日 (土) | 編集 |
2007年の怪作「大日本人」に続く、松本人志監督の第二作。
白い部屋に閉じ込められた男の話で、天使が出てきて、何故かメキシコのプロレスラーの話が絡むらしいという意味不明な情報以外、殆ど内容が漏れて来なかったのだが、なるほど観て納得。
これは確かに秘密にせざるを得ない、ネタバレ厳禁映画である。
今回は私も一応はネタバレ無しで書いているつもりだが、映画館で観ようと思っている人は、一切情報無しで観る事をお勧めする。
メキシコの田舎町。
中年ルチャドールのエスカルゴマンが、家族との団欒の朝を過ごしている。
妻は夫の様子が普段と違うと思うのだが、それは今日の試合の相手が一回りも歳の若い売出し中のヒールで、何かが起きそうな胸騒ぎを感じていたからだった。
一方、パジャマの男(松本人志)が目を覚ますと、そこは何も無い白い部屋。
どこにも出口は見えず、男が壁に一箇所だけ突き出ていた突起を押すと、何と部屋の壁からワラワラと天使が登場し、彼らの無数の「シンボル」を壁に残して消えてゆく。
取り残された男は、何とかこの部屋から脱出しようとするのだが・・・。
とにかく、内容に関して何も書けないのである。
公開前に徹底的な緘口令が敷かれたのは、出来が悪すぎて口コミを恐れているなんていう辛らつな噂もあったし、実際人を選ぶ作品なのは確かだろうが、決してつまらない訳ではない。
映画の作り的に、ちょっとでも突っ込んで書けば即ネタバレにつながり、そしてこの作品の場合ネタバレは致命的なのだ。
M・ナイト・シャマランとは違った意味で、知らない方が楽しめる映画なのである。
思えば松本監督の前作「大日本人」は、映画と言う新しい玩具をどう扱っていいのか試行錯誤がありありで、観客に対するスタンスも含めて、ちょっと腰が引けていた。
独特のムードはあったし、個人的には結構好きだったりするのだが、監督の迷いがそのまま画面に出ており、正直なところ人には薦めにくいという微妙な作品であった。
映画という未知のメディアに対する「恐れ」すら感じさせる作風に、もしかしたら松本人志はもう映画を撮らないのではないか、という予感すら感じたものだ。
ところが、二年の間に何があったのか、「しんぼる」では「大日本人」の慎重さが嘘の様。
前回は映画と言う大海に、おっかなびっくり足を突っ込んでいる感じだったが、今回は何かが吹っ切れた様に思う存分泳ぎまくりで、伸び伸びと映画という表現を楽しみ、自信すら伝わってくる。
真っ白な何も無い部屋に閉じ込められた男の物語と、メキシコの覆面レスリングの物語、この一見何の関連も無い二つの話が平行に語られる。
誰もが想像する様に、一体何時どのようにして二つの話がリンクするのかが、観客の興味を引っ張る重要なポイントではあるのだが、設定は奇抜では在るものの、ストーリーテリングの手法そのものは何ら奇を衒った物ではなく、ごくごく正攻法。
意外と言っては失礼ながら、話としても普通に面白く、「大日本人」の印象から、何気に難解な作品なのではと警戒している人は、安心して良い。
男が部屋から出ようと悪戦苦闘するドタバタは、テレビ的な様でいてテレビ的お笑いとは対極にあり、興味深いうえに結構笑える。
とは言っても、やはり普通の映画とはちょっと違う。
この映画の最大の衝撃である、二つの物語が結合する後半はついて行ける人とダメな人が明確に分かれそうだ。
結合の瞬間は、まさかここで!?こんなのアリ!?というタイミングで私にも予想外だったが、全体を通して考えると、「シンボル」は松本監督の映画的な記憶がストレートに現れた作品である。
白い部屋に閉じ込められた男の物語と言えば、ちょっと勘の良い人ならおそらく予告編で気付いたであろう映画史に残る「あの作品」以外に無いのである。
そう、つまりこれはお笑いの解釈で「あの作品」と同じ事をやってしまった・・・という事は松本人志演じるパジャマの男は、当然「あれ」であるという事になるのである。
まあ実際「あの映画」や「あれ」が何なのかは映画館で確認して欲しいが、ここまでまんまな展開に持って行くとは思わなかったよ。
逆に言えば、「あの作品」について行ける人は、これも大丈夫・・・かも知れない。
いやはや、しかしこんなに何も書けない作品は初めてだ。
ある意味でわかりやすい映画だと思うが、壮大な物語の行き着く果てが、最大級のくだらなさに結びついているあたりに、感心するか、はたまた怒り出すか・・・。
まあ映画は自由な物だから、私はこういう作家がいても良いと思う。
色々な意味で松本人志、恐るべしである。
今回は、ベリンダコーリーの「オデッセイ」の白をチョイス。
コストパフォーマンスの高いイタリアワイン。
映画とは対照的にスッキリとしたクセの無いワインだが、ぶっちゃけ今回は中身を書けない鬱憤で、名前で選んだ。
つまりそういう事である(笑
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白い部屋に閉じ込められた男の話で、天使が出てきて、何故かメキシコのプロレスラーの話が絡むらしいという意味不明な情報以外、殆ど内容が漏れて来なかったのだが、なるほど観て納得。
これは確かに秘密にせざるを得ない、ネタバレ厳禁映画である。
今回は私も一応はネタバレ無しで書いているつもりだが、映画館で観ようと思っている人は、一切情報無しで観る事をお勧めする。
メキシコの田舎町。
中年ルチャドールのエスカルゴマンが、家族との団欒の朝を過ごしている。
妻は夫の様子が普段と違うと思うのだが、それは今日の試合の相手が一回りも歳の若い売出し中のヒールで、何かが起きそうな胸騒ぎを感じていたからだった。
一方、パジャマの男(松本人志)が目を覚ますと、そこは何も無い白い部屋。
どこにも出口は見えず、男が壁に一箇所だけ突き出ていた突起を押すと、何と部屋の壁からワラワラと天使が登場し、彼らの無数の「シンボル」を壁に残して消えてゆく。
取り残された男は、何とかこの部屋から脱出しようとするのだが・・・。
とにかく、内容に関して何も書けないのである。
公開前に徹底的な緘口令が敷かれたのは、出来が悪すぎて口コミを恐れているなんていう辛らつな噂もあったし、実際人を選ぶ作品なのは確かだろうが、決してつまらない訳ではない。
映画の作り的に、ちょっとでも突っ込んで書けば即ネタバレにつながり、そしてこの作品の場合ネタバレは致命的なのだ。
M・ナイト・シャマランとは違った意味で、知らない方が楽しめる映画なのである。
思えば松本監督の前作「大日本人」は、映画と言う新しい玩具をどう扱っていいのか試行錯誤がありありで、観客に対するスタンスも含めて、ちょっと腰が引けていた。
独特のムードはあったし、個人的には結構好きだったりするのだが、監督の迷いがそのまま画面に出ており、正直なところ人には薦めにくいという微妙な作品であった。
映画という未知のメディアに対する「恐れ」すら感じさせる作風に、もしかしたら松本人志はもう映画を撮らないのではないか、という予感すら感じたものだ。
ところが、二年の間に何があったのか、「しんぼる」では「大日本人」の慎重さが嘘の様。
前回は映画と言う大海に、おっかなびっくり足を突っ込んでいる感じだったが、今回は何かが吹っ切れた様に思う存分泳ぎまくりで、伸び伸びと映画という表現を楽しみ、自信すら伝わってくる。
真っ白な何も無い部屋に閉じ込められた男の物語と、メキシコの覆面レスリングの物語、この一見何の関連も無い二つの話が平行に語られる。
誰もが想像する様に、一体何時どのようにして二つの話がリンクするのかが、観客の興味を引っ張る重要なポイントではあるのだが、設定は奇抜では在るものの、ストーリーテリングの手法そのものは何ら奇を衒った物ではなく、ごくごく正攻法。
意外と言っては失礼ながら、話としても普通に面白く、「大日本人」の印象から、何気に難解な作品なのではと警戒している人は、安心して良い。
男が部屋から出ようと悪戦苦闘するドタバタは、テレビ的な様でいてテレビ的お笑いとは対極にあり、興味深いうえに結構笑える。
とは言っても、やはり普通の映画とはちょっと違う。
この映画の最大の衝撃である、二つの物語が結合する後半はついて行ける人とダメな人が明確に分かれそうだ。
結合の瞬間は、まさかここで!?こんなのアリ!?というタイミングで私にも予想外だったが、全体を通して考えると、「シンボル」は松本監督の映画的な記憶がストレートに現れた作品である。
白い部屋に閉じ込められた男の物語と言えば、ちょっと勘の良い人ならおそらく予告編で気付いたであろう映画史に残る「あの作品」以外に無いのである。
そう、つまりこれはお笑いの解釈で「あの作品」と同じ事をやってしまった・・・という事は松本人志演じるパジャマの男は、当然「あれ」であるという事になるのである。
まあ実際「あの映画」や「あれ」が何なのかは映画館で確認して欲しいが、ここまでまんまな展開に持って行くとは思わなかったよ。
逆に言えば、「あの作品」について行ける人は、これも大丈夫・・・かも知れない。
いやはや、しかしこんなに何も書けない作品は初めてだ。
ある意味でわかりやすい映画だと思うが、壮大な物語の行き着く果てが、最大級のくだらなさに結びついているあたりに、感心するか、はたまた怒り出すか・・・。
まあ映画は自由な物だから、私はこういう作家がいても良いと思う。
色々な意味で松本人志、恐るべしである。
今回は、ベリンダコーリーの「オデッセイ」の白をチョイス。
コストパフォーマンスの高いイタリアワイン。
映画とは対照的にスッキリとしたクセの無いワインだが、ぶっちゃけ今回は中身を書けない鬱憤で、名前で選んだ。
つまりそういう事である(笑

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