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エスター・・・・・評価額1600円
2009年10月25日 (日) | 編集 |
ポスターがコワイ・・・。
「エスター」の原題「Orphan」は、孤児を意味する。
裕福なアメリカ人夫婦が孤児院からロシア人の娘を迎え入れるが、やがて「この娘、どこかが変だ」というキャッチコピーの通りに、彼女の狂気によって恐怖のどん底に突き落とされる。
所謂チャイルド・ホラーの変種だが、脚本の出来が良く、予想以上にスリリングな佳作となった。

三番目の子供を流産したケイト・コールマン(ヴェラ・ファーミガ)と夫のジョン(ピーター・サースガード)は、孤児院から子供を迎える事を考える。
ある日訪れた孤児院で、コールマン夫妻はロシア出身で以前の里親の家が火事になり、たった一人生き残ったエスター(イザベル・ファーマン)という少女と出会う。
歌が上手くいつも絵を描いているという、しっかり者のエスターをすっかり気に入った夫妻は、彼女を養女として迎え入れる事を決める。
夫妻には長男のダニー(ジミー・ベネット)と難聴の障害を持つ妹のマックス(アリアーナ・エンジニア)がいたが、エスターは直ぐに手話を覚えてマックスと仲良くなり、すんなりと一家に溶け込んだように見えた。
だがエスターは天使の様な仮面の下に、恐るべき正体を隠していた・・・


子供が恐怖の対象になる作品と言うと、マコーレ・カルキンとイライジャ・ウッド主演で話題を呼んだ「危険な遊び」やスティーブン・キング原作の「チルドレン・オブ・ザ・コーン」、その原型とも言うべきスペイン映画「ザ・チャイルド」などが思い浮かぶが、この「エスター」はこれらの作品の中から一歩抜けた作品となった。

先ず何よりも、デヴィッド・レスリー・ジョンソンによる脚本の完成度が高い。
悪夢の様な冒頭の病院のシークエンスから、コールマン夫妻とエスターの出会いまでを快調なテンポで展開させると、後はエスターが本性を現し、ジワリ、ジワリと一家を追い込んでゆく恐怖と、エスターの正体を巡る謎という二つの興味で観客を引っ張る。
しかも、伏線が綿密に張り巡らされており、細かな描写や設定の一つ一つが、後々になって意味を持ってくるあたり、非常に芸が細かい。
観客はケイトや子供たち同様に、エスターによって直接的な恐怖を感じるのと同時に、本来家族を守るべきジョンや精神科医が完全にエスターによって丸め込まれてしまい、恐怖の本質になかなか気付かない事にもどかしさと絶望を感じる事になるが、これはもちろん作者の狙い通り。
単に描写のショッキングさで怖がらせるのではなく、不条理な恐怖のロジックによって真綿で絞め殺されるような不快感(褒め言葉である)を味わう映画なのである。
長編劇場用映画の脚本としてはこれがデビュー作となる様だが、どこでこれだけのスキルを身に着けたのかと思ったら、どうやらこの人はフランク・ダラボンの門下生らしい。
なるほど、このロジカルで完成度の高い脚本力は師匠譲りか。

まあ肝心のエスターの正体に関しては、過去に小説や漫画に似た話があるので、それほどショッキングではなかった。
エスターのロシア時代の記録が見つからなかったり、ジョンを誘惑し精神科医を懐柔するあまりにも見事なワルっぷりに、この手の映画が好きな人は途中で彼女の正体に関して、いくつかの可能性を思い浮かべるだろう。
私も、こういう事かなあと三つほど思いついた中の一つが的中だった。
もっとも、オチが見えたとしても、そこからの展開の見せ方の上手さもあり、特に作品の魅力をスポイルする事は無い。
むしろ彼女の正体が明かされる事によって、背負ってきた過酷な運命をも感じさせ、単なる恐怖の対象から切なさを感じさせるキャラクターに印象が変化しており、単純にびっくりさせるためというよりは、しっかりと物語上の必然となっているのは大したものだ。
そのために映画のラストは必ずしもハッピーエンドにはなっておらず、ある種の痛みを感じさせる物だが、個人的にはもっと痛くても良かったと思う。
ラストの展開は当然ながらケイト目線になっているのだが、ここはあえて物語を壊してでも、エスターの心に寄り添い、彼女が辿ってきたエンドレスの喪失感を今以上に強く感じさせることが出来たら、これはホラー映画史に残る傑作となっていたかもしれない。

天使の仮面の下に悪魔の本性を隠し持つ、エスターを演じるイザベル・ファーマンは1992年生まれの12歳。
ハリウッドにまた、素晴らしい演技力を持つ魅力的な子役スターが登場した。
本人はワシントン生まれのアメリカ人だが、微妙なロシア訛も含めて演技はとても繊細で、エキセントリックなキャラクターに強い説得力を与えている。
一見利発で天使の様に可憐だが、内面に恐るべき狂気と恐怖の歴史を秘めたエスターは、彼女なくしては生まれなかっただろう。
またファーマン以上に印象的なのが、聾唖の少女マックスを演じたアリアーナ・エンジニアで、恐怖によってエスターに支配されながらも、家族の身を案じる無垢な瞳は観客の心をかき乱す。
この年齢ではどこまで意識して演技しているのかはわからないが、目力の強さは末恐ろしい。
コールマン夫妻を演じるヴェラ・ファーミガピーター・サースガードら大人の俳優も好演しているが、これはやはり子供たちのパワーが際立つ映画だ。

監督のジャウム・コレット=セラはスペイン出身で、前作の「蝋人形の館」でも、独特のムードのある演出が印象に残った。
もっともあちらは脚本がベタなので、作品としては類型的なB級ホラー以上の物には成っていないが、今回は出来の良い脚本とイザベル・ファーマンという素晴らしい素材を得て、良い仕事をしていると思う。
特にビジュアルに頼るのではなく、子役俳優のナチュラルな演技を最大限に生かす方向で演出しているのは正解だ。
子供を上手く撮る演出家に凡才はいない。
今後の進化が楽しみな人である。

今回は、凍てつく冬の様な心を持つエスターに飲ませたい、「フィンランディア・ワイルドベリー」をチョイス。
北欧フィンランドの代表的なウォッカで、冷えた心と体を芯から暖めてくれる。
フルーツフレーバーのチョイスがあるのが特徴だが、私はこのワイルドベリーのほのかな香りが一番好きだ。
これからの寒い季節に、あえてキンキンに冷してストレートで飲みたい。

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