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2009年11月07日 (土) | 編集 |
猫ちゃんはやめてぇ~!
・・・いやはや、自らの映画的記憶の故郷へと回帰したサム・ライミの、何と楽しげな事か。
冒頭の一昔前のユニバーサル映画のマークから、怪しげな悪魔祓い、「Drag me to hell」といういかにもなタイトルまでの一連の流れで、もうこの映画の狙いは明確だ。
リアルに怖がろうなんて思ってはいけない。
これは大音響でびっくりさせ、悪趣味なやり過ぎ描写が笑いを誘う、古典的なB級ホラーの現代版、あるいはパロディと言っても良いだろう。
さすがに出世作「死霊のはらわた」ほどどぎつい描写はないが、おそらくライミが子供の頃に親しんだのであろう6、70年代コミックホラー調のテイストはテンポも快調で、遊園地のファンハウスのノリで一時間半楽しめば良い。

クリスティン・ブラウン(アリソン・ローマン)は、昇進を間近に控えた銀行の融資担当者。
ある日彼女は、ジプシーの老婆、ガーナッシュ婦人(ローナ・レイヴァー)からの住宅ローンの返済猶予の願いを却下する。
怒ったガーナッシュ婦人は、駐車場でクリスティンを襲撃し、彼女のボタンを奪うと不気味な呪文をつぶやく。
するとその日から、彼女の周囲には怪奇現象が続発する様になる。
クリスティンを霊視した霊媒のラム・ジャス(ディリープ・ラオ)は、彼女には強力な魔神ラミアの呪いがかけられており、三日後に魂を奪われるという・・・


実にライミらしい話である。
主人公のクリスティンは、一言で言えば「良い人」だ。
真面目でコンプレックスを抱え、小さな幸せを何とか掴もうと努力もしている。
だがそんな彼女が、ただ一度だけ無慈悲な選択をしてしまったばかりに、地獄へ続く恐怖の三日間に叩き落される事になる。
不条理な話ではあるものの、ホラー映画的には実に王道の展開である。
確か「死霊のはらわた」の一作目が日本公開されたときだと思うのだが、ライミの考えるホラー映画の三か条みたいなものが雑誌に紹介されていた。
そのうちの二つは忘れてしまったが、最後の一つは確か「善良な人は罰せられねばならない」だったような。
「3」で製作費がついに2億5千万ドルを越えた「スパイダーマン」の様な超大作を作り続けるのに疲れたのか、製作費3千万ドル程度の小品である本作は、色々な意味で原点回帰であり、「健全なサム・ライミ」なのだろう。

クリスティンを演じるアリソン・ローマンが良い。
奇麗な人なんだけど、どこか田舎っぽいイモ姉ちゃんの雰囲気があって、農家出身で昔太っていたというコンプレックスのある役にフィットしている。
元々この手の映画の主役というのは、メジャーの超大作の主役を張るにはちょっと・・・というくらいの容姿の人がちょうど良いもので、彼女は正にぴったり。
落ち込んでアイスクリームをバケツ食いする女なんていう古典的でステキなギャグが似合う女優なんて、なかなかお目にかかれるものではない。
叫びっぷりも良く、たぶんローマンにはホラーのオファーが殺到するだろう。
新スクリーミング・クィーンの誕生である。
彼女と、ローナ・レイヴァー扮する怪人ならぬ「怪婆」、ガーナッシュ婦人の駐車場バトルは正にライミ節が炸裂したイタ可笑しい見せ場になっている。
蹴られようが、ダッシュボードに激突しようが、顔面にホチキス喰らってもなお襲ってくる最強婆さんとの戦いは、殆ど懐かしの死霊VSアッシュの戦いの様だったよ(笑

日本映画の影響が見られるのも、Jホラーにも早くから着目し、「呪怨」のハリウッド版をプロデュースしたりしているホラーオタクのライミならでは。
この作品のアイディア自体はかなり以前に考えられていたらしいが、呪いに三日間というタイムリミットを設定した事、そして終盤に判明する呪いを解く方法と、それを知った主人公の葛藤の元ネタは、まず違いなく「リング」からの発想だろう。
ラミアの影に襲われるあたりは「スウィートホーム」か。(まあ影が襲って来る映画は他にもあったけど)
古今東西のホラー映画が、ライミの映画的記憶の中に、ごった煮的に表現されているのもこの映画の魅力で、この人は心底こういう映画が好きなんだというのが伝わってくる。

もっとも、個人的には大好きな作品だが、映画そのものは結構観る人を選ぶと思う。
勿論、単に暇つぶし目的の人がこの映画を観ても普通に面白いとは思うのだが、真に楽しめるのはかなり古典的なホラー映画を観込んでいるマニア
これは決してストレートなホラー映画ではないし、ロッテントマトなどでの高評価はB級ホラーを良く知ってる人たちがマニアックに評価しているからだろう。
全米興行収入が4千万ドルと、評価のわりに平凡な結果なのが作品の性格を物語っていると思う。
その意味で、古典映画のファンの少ない日本では、なお更海外ほどの評価を得ることは難しいだろう。
熱烈な映画マニア、というかホラーマニアにこそお勧めの一本だ。

久々の古巣がよほど楽しかったのか、ライミの次回作は自主映画から数えて通算5作目となる「死霊のはらわた」のリメイクだという。
当初は監督しないと伝えられていたが、結局自身でメガホンを取る様だ。
どうやらアッシュは出てこない、旧作とは違った物語となるらしいが、2010年の公開を楽しみに待ちたい。

しかしこの酷い邦題は何とかならなかったのか。
「スペル」に「呪文」って意味があるのは確かだが、日本人の何%が理解できるのか?(苦笑
こんな邦題を考えるのもどうかしてるが、これでOKになってしまうのも信じがたい。
今の日本でこの手の作品のマーケットは期待できないにしても、もうちょっと宣伝で作品の魅力を伝えて欲しかった。

今回はラベルのイラストがライミの映画に出てきそうな、コンパスボックス社のスコッチウィスキー「ピートモンスター」をチョイス。
ピートの怪物が作り上げる美味しいウィスキー
スモーキー&スパイシーながら、柔かいフルーティーさもあり、こちらは飲み手を選ばない良質な酒である。

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