fc2ブログ
酒を呑んで映画を観る時間が一番幸せ・・・と思うので、酒と映画をテーマに日記を書いていきます。 映画の評価額は幾らまでなら納得して出せるかで、レイトショー価格1200円から+-が基準で、1800円が満点です。ネット配信オンリーの作品は★5つが満点。
■ お知らせ
※基本的にネタバレありです。ご注意ください。
※当ブログはリンクフリーです。内容の無断転載はお断りいたします。
※ブログ環境の相性によっては、TB・コメントのお返事が出来ない事があります。ご了承ください
エロ・グロ・出会い系のTB及びコメントは、削除の上直ちにブログ管理会社に通報させていただきます。 また記事と無関係なTBもお断りいたします。 また、関係があってもアフェリエイト、アダルトへの誘導など不適切と判断したTBは削除いたします。

■TITLE INDEX
タイトルインディックスを作りました。こちらからご利用ください。
■ ツイッターアカウント
noraneko285でつぶやいてます。ブログで書いてない映画の話なども。
■ FILMARKSアカウント
noraneko285ツイッターでつぶやいた全作品をアーカイブしています。
マイケル・ジャクソン THIS IS IT・・・・・評価額1600円
2009年11月12日 (木) | 編集 |
“KING OF POP”の置き土産。
今年の6月に急逝したマイケル・ジャクソンが、その最後のステージとして準備していた7月のロンドン公演「THIS IS IT」のメイキング・ドキュメンタリー。
「ハイスクール・ミュージカル」シリーズで知られるケニー・オルテガ監督が、舞台監督として自ら演出していた幻のステージを、100時間に及ぶ記録映像と本来ステージの背景で使われる予定だった3D版「スリラー」などの新作ミュージックビデオをミックスして構成している。
スターの死による特需を当て込んだあざとい急造品と侮る無かれ。
これはマイケル・ジャクソンという稀代のアーティストの知られざる一面を見せてくれ、尚且つ一流の物作りの面白さを十分に体感させてくれる、熱いドキュメンタリーの秀作である。

MJの全盛期に十代を過ごした私の世代にとって、彼はやはり比類なきスーパースター。
中学校の昼休みには、皆競ってムーンウォークの真似をしたものだったし、ビデオが普及しだした当時、初めて買ったPVも「スリラー」だった。
ジョン・ランディスが監督し、モンスター造形がリック・ベイカーという「狼男アメリカン」のコンビが手がけた「スリラー」は、ドラマ仕立てPVのパイオニアであり、短編映画としても秀逸な事から多くの映画ファンが注目した最初のPVだったと思う。
これ以降多くの作品が作られ、PVは一大映像産業にまでなったが、インパクトという点で「スリラー」を越える作品というのは未だにお目にかかっていない。

25年ぶりに3D映像として再現された、新しい「スリラー」の映像をバックに、激しいダンスを見せるMJは、実にエネルギッシュで格好良く、とても数日後に死んでしまうような人には見えない・・・。
おそらく、この作品に描かれるMJの姿は、多くの観客にとって新鮮な驚きをもたらしてくれるだろう
90年代の後半以降はスキャンダラスな話題ばかりで、傲慢でバブリーな奇人というイメージが定着してしまったMJだが、ここにいるのは物作りに真摯で、スタッフ一人一人にプロフェッショナルとして敬意を持って接する控えめなスーパースターだ。
ダンサーもミュージシャンも裏方のスタッフも、MJという偉大なアーティストと仕事をするのをとてもエキサイティングに感じ、心底彼とステージを作り上げるというプロセスを楽しんでいる様に見えるし、MJもまた彼らを信頼している様に見える。

もちろん、見せたくない部分は意図的に除いてあるのかもしれないが、その事が作品の評価を低める事は無いと思う。
これはジャーナリスティックな第三者視点で撮られた作品ではなく、あくまでも作り手側のメイキングであり、結果的にMJの追悼作品である。
この作品に妙に社会派ぶった批判的視点などファンは求めていないし、そんなものは過去の報道に散々出尽くしている。
ここで楽しむべきは誰もが知っているヒット曲の数々と、今や幻となったMJのラスト・パフォーマンス、そしてファンを楽しませるために、途方もないお金と手間のかかった物作りのプロセスだ。
ステージの全体像は、MJと舞台監督のケニー・オルテガが話し合いながら構成している感じだが、MJからスタッフへの指示が非常に具体的でわかりやすいのも興味深い。
物作りの現場において、イメージするものを的確に説明する能力は非常に重要だ。
まあ考えてみれば、これほど規模の大きなプロジェクトをあいまいなまま進めたら収拾がつかなくなってしまうだろうし、逆に言えば創造のイメージを具体的に示せる人だからこそ、これだけの成功を収める事が出来たと言えるだろう。
スタッフの立場から観たら、要求水準は高いが非常に仕事のしやすい人だったのではないだろうか。

それにしても、この作品を観ていると、永遠に未完のままとなったロンドンでの「THIS IS IT」が観たくてたまらなくなる。
凝ったステージセットに観客を驚かせる様々なギミック。
3D版「スリラー」を始め、ステージの背景様に作られた映像の数だけでも膨大で、下手なハリウッド映画顔負けの製作費かかっていそうだ。
超一流のスタッフたちが作り上げる、壮大なイリュージョンの世界に目を奪われ、リハーサルでこれなのだから、一体完成形はどれだけスゴイのだろうとワクワクする。
本編が存在しないメイキングというと、テリー・ギリアムの「ドン・キホーテを殺した男」のメイキング、「ロスト・イン・ラ・マンチャ」が有名だが、少なくともまだギリアムは生きているし、失敗に終った映画も彼の中の通過点として楽しむ事が出来る。
だが、MJがアーティストとしての長い旅路の終わりに用意した、「THIS IS IT」の、どんなにファンが願ったとしても、本編を観る事はもはや永遠に適わないという切なさは、過去に体験した事の無い感慨だった。
まあ救いとしては、このステージに打ち込んできた多くのスタッフ、ダンサー、ミュージシャンらの仕事が、本来あるべき形とは違うとは言え、日の目を見た事だろう。
彼らの情熱が、こうして多くの人の心に届いた事は喜ばしい。

「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」は、時代を駆け抜けた稀代のスーパースターからの素敵な、しかし少しだけ罪作りなラストプレゼントである。
MJファンにも、そうでない人にもテレビ画面ではなく、ライブ感のある映画館で観る事を強くお勧めする。
あっという間の2時間であった。

今回は環境問題に危機感を持っていたMJが喜びそうなワイン、モーレル・ヴドーの「リヴィング・アース・シャルドネ2007」をチョイス。
オーガニック栽培の葡萄を使った、地球と体に優しい一本である。
非常にスッキリとした飲みやすいワインで、今宵は「アース・ソング」を聞きながらこれを飲んで彼を追悼したい。

ランキングバナー 
記事が気に入ったらクリックしてね

こちらもお願い





スポンサーサイト