FC2ブログ
酒を呑んで映画を観る時間が一番幸せ・・・と思うので、酒と映画をテーマに日記を書いていきます。 映画の評価額は幾らまでなら納得して出せるかで、レイトショー価格1200円から+-が基準で、1800円が満点です。
■ お知らせ
※基本的にネタバレありです。ご注意ください。
※当ブログはリンクフリーです。内容の無断転載はお断りいたします。
※ブログ環境の相性によっては、TB・コメントのお返事が出来ない事があります。ご了承ください
エロ・グロ・出会い系のTB及びコメントは、削除の上直ちにブログ管理会社に通報させていただきます。 また記事と無関係な物や当方が不適切と判断したTB・コメントも削除いたします。
■TITLE INDEX
タイトルインディックスを作りました。こちらからご利用ください。
■ ツイッターアカウント
noraneko285でつぶやいてます。ブログで書いてない映画の話なども。
■ FILMARKSアカウント
noraneko285ツイッターでつぶやいた全作品をアーカイブしています。
きみに微笑む雨・・・・・評価額1550円
2009年11月17日 (火) | 編集 |
「八月のクリスマス」の、ホ・ジノ監督によるラブストーリー。
主演は「私の頭の中の消しゴム」でブレイクし、最近では「グッド・バッド・ウィアード」のガンマン役も記憶に新しいチョン・ウソン
中国は四川省の美しい古都・成都を舞台にした、韓国人男性と中国人女性の恋は、お互いを深く思いやる繊細な距離感が絶妙だ。

建設機械メーカーに勤めるドンハ(チョン・ウソン)は、出張で四川省成都へやって来る。
唐代の詩聖、杜甫を記念する杜甫草堂を訪れたドンハは、そこで懐かしい顔を見つける。
外国人観光客に草堂をガイドしていたのは、ドンハがアメリカに留学していた時代の思い出の女性メイ(カオ・ユアンユアン)だった。
十年ぶりに出会った二人は、再会を祝して乾杯し、嘗ての淡い恋心を蘇らせてゆく。
だが、お互いの知らない長い歳月は、二人の間に簡単には越えられない壁を作っていた・・・


ホ・ジノと言えば、惹かれあう男女の心の機微を、深い映画的言語で感じさせてくれる名手だが、今回はなんとも設定が上手い。
身も蓋も無い言い方をすれば、これは中年にさしかかろうとする嘗て友達以上恋人未満だった男女が再会し、若き日の焼けぼっくりに火がついたという、何と言う事はない話だ。
だが、彼らが国籍の違う元留学生同士で、二人の間の会話は互いにとって母国語でない英語。
東洋人が英語で演じるラブストーリーというのも新鮮だが、英語で会話することで、二人の間に微妙な距離感が作られ、互いの本心にダイレクトにたどり着けない恋愛のスリルみたいなものが増幅されて表現されている。
二人の過去の関係が過剰に説明されず、適度な曖昧さを保っているのも良い。
結果先の展開が読みにくく、物語を想像力で楽しむ余地が残されている。

舞台となる成都の美しいロケーション、物語のアクセントとして巧みに組み込まれた唐代の詩聖・杜甫の詩の使い方も印象的。
主人公のドンハは元詩人志望という設定があり、本作の原題「好雨時節」は、劇中でも紹介される杜甫の詩「春夜喜節」の一節「好雨知時節 当春乃発生」からとられている。
「良い雨は降るべき時を知り、春に降り万物を蘇生させる」という意味だが、映画を通してこの詩を解釈すると少し意味深。
なぜなら、この物語は単に昔の恋が蘇るだけではなく、深く傷ついた一つの心が、優しい涙雨によって再生する物語でもあるのだ。
それは四川省を一年前に襲った大地震にまつわる話で、静かな物語はここで大きく動く事になる。
ネタバレになるので詳しくは書かないが、本作は舞台装置と物語の関係性が非常に細かく考えられており、全体にホ・ジノのストーリーテラーとしての技術が大きく進化してる事を感じさせる。

主人公の二人を演じるチョン・ウソンカオ・ユアンユアンは、過ぎ去った青春への渇望と、お互いの領域へ今一歩踏み出せないもどかしさを感じさせて好演。
チョン・ウソンは今までのナルシスティックな役柄と比べると、ずいぶんと落ち着いたキャラクターだが、本作では役者として演技の幅を見せる。
メイを演じるカオ・ユアンユアンは私にとっては初めて見る役者さんだが、とてもキュートな人で芝居も上手く、思わずファンになってしまった。
映画は殆どこの二人が出ずっぱりなのだが、ドンハの会社の成都支社長を演じるキム・サンホがコミックリリーフとしてオイシイところを持ってゆく。

「きみに微笑む雨」は映画的な詩情もあり、何よりもホ・ジノのテクニックが光る、良く出来たラブストーリーだと思う。
スローで繊細な独自のタッチを残しながら、凝った設定と巧みなストーリーテリングのロジックによって適度な抑揚を作り、観る者を飽きさせない。
観客は2時間の間、ゆったりとした時間の流れの中で、美しい物語に浸ることが出来る。
ただ私はホ・ジノがテクニックと引き換えに、「八月のクリスマス」で見せた鮮烈な輝きを少しずつ失っている様にも思う。
物語の巧みさと完成度の高さは、別の言葉で言えば作家ホ・ジノの中で「良き物」として完成し、作品を観た観客の反応までをも予測したような予定調和の世界ともいえる。
ここには「八月のクリスマス」の頃の様な、作者の作為を感じさせない愚直なまでのストレートさ、ストーリーの枠を超えて魂を揺さぶられる様な、静かに燃える情念は見えない。
特に物語がメイの抱える影の部分に踏み込む終盤は、良くも悪くも物語から曖昧さが取り払われ、観客の欲しがるインフォメーションを全て描写してしまうのだ。
例えば、以前のホ・ジノならば、明確にイメージを固定する様な、この映画のラストは撮らなかっただろう。
ドンハからの手紙が届き、メイの傍らにそれまでの物語の中で印象的なモチーフとして言葉だけで語られていた黄色い自転車の現物が置いてあれば、それでもう十分だったはず。
この映画のラストが「観客の観たい物」である事は間違いないだろうが、あまりにも判りやすく作られたオチに、ややテレビ的な印象を持ってしまったのも、また事実なのである。

今回は、四川省のスピリッツ「五粮醇」をチョイス。
その名の通り、こうりゃん、もち米、うるち米、とうもろこし、小麦の五種類の原料から作られる蒸留酒で、45度と結構強い。
そのわりに印象はマイルドなので杯が進み、いつの間にか相当な量を飲んで酔っ払ってしまう。
内面のパワーを優しい外観で隠した四川美人の様なお酒だ。

ランキングバナー 
記事が気に入ったらクリックしてね

こちらもお願い





スポンサーサイト