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カールじいさんの空飛ぶ家・・・・・評価額1700円
2009年12月07日 (月) | 編集 |
ピクサー・アニメーションスタジオの、記念すべき長編10作品目は、「モンスターズ・インク」ピート・ドクターによる8年ぶりの監督作「カールじいさんの空飛ぶ家」である。
なんともまんまな邦題だが、原題の方は超シンプルに「UP」なのでやむを得ないか。
妻を亡くした老人と、思い出の詰まった家に纏わる物語というのは、昨年度のアカデミー賞で短編アニメーション賞に輝いた加藤久仁監督の「つみきのいえ」を連想させるが、発想は似ていてもこちらはピクサーらしい大冒険活劇。
本作の主人公であるカールじいさんとラッセル少年の様に、老人から子供まであらゆる観客層が満足できるだろう。

長年連れ添った妻のエリーと死別したカール(エドワード・アスナー)は78歳。
二人で暮らした家の周りは再開発され、立ち退きを迫られている。
いよいよ家を明け渡さなければならなくなった時、カールは遠い昔にエリーと二人でいつか行こうと約束した、南米のパラダイス・フォールへの旅を思いつく。
そこはカールが子供の頃に、冒険家のマンツ(クリストファー・プラマー)によって発見された滝で、幼いカールとエリーの冒険心を掻き立てる夢の秘境だった。
風船売りを仕事にしていたカールは、ありったけの風船を家に結びつけ、空高く舞い上がる。
ところが、近所の少年ラッセル(ジョーダン・ナガイ)がいつの間にか空飛ぶ家に乗り込んでしまっていた事から、旅は思わぬ方向に・・・


冒頭の少年時代のカールとエリーの出会いから、二人が過ごした70年間を描いた数分間が素晴らしい。
結婚式以降は台詞の無い、この濃密なシークエンスは間違いなく本編の白眉である。
私はもうここだけでウルウルとしてしまった。
よく長年連れ添った夫婦は、出来れば夫が先に逝くのが良いというが、これは逆のパターンになってしまった夫が、人生の最後の冒険へと踏み出す映画。
亡き妻との約束の場所、天空の台地にあるその名もパラダイス・フォールという滝に、沢山の風船をつけた家ごと飛んで行くという展開からも判るように、これはカールにとって亡き妻の後を追う死への旅立ちである。
それが、ラッセル少年という予期せぬ珍入者によって、旅の意味が大きく変わってくる。
ラッセルもまた複雑な家庭事情から、カールとは違った意味で孤独を抱えており、自分を必要としてくれる人、自分の居場所を探しているのだ。
物語の途中から、カールとラッセルはテーブルマウンテンに降り、それ以降はずっと浮かんでいる家を引っ張っている。
それはあたかも、エリーの魂が二人の人生の旅路を見守っている様で象徴的だ。
これは孤独な疎外感を抱える一見対照的な二人が、文字通り天国への旅を通して、逆説的に人生の次のステップへと踏み出す道筋を見つける物語なのである。

アニメとは言え、冒険活劇の主役が70代の爺さんというのが面白い。
昨年の「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」では67歳のハリソンフォードが頑張っていたが、カールじいさんの設定年齢はそれよりも11歳も上だ。
映像的に面白いだけでなく、老人と少年というコンビネーションを作品の軸にする事によって、物語が寓話的になり、普遍的なテーマがとてもわかり易く伝わってくる。
自分の監督作品だけでな、く「トイ・ストーリー」「WALL-E/ウォーリー」などの作品でも物語作りのスペシャリストとして活躍してるピート・ドクターはさすがに上手い。
この人の描く物語は、人間でもロボットでもモンスターでも、登場するキャラクターに対する深い愛情と、全体に流れる詩情と哀愁が印象的だが、今回は特に彼の持ち味が良く出ていると思う。

約束の地、パラダイス・フォールのモデルになっているのは、南米ギアナ高地のテーブルマウンテンにある世界一の落差978メートルを誇るエンジェル・フォールである。
映画ではカールが子供の頃に、冒険家のチャールズ・マンツによって発見された事になっているが、実際にこの滝は今から70年ほど前にアメリカ人飛行士のジミー・エンジェルによって空から発見されているので、物語と現実の年代は合っている。
更にギアナ高地と言えば、あのコナン・ドイルの古典SFの傑作「ロスト・ワールド」の舞台である。
小説ではテーブルマウンテンの上に、恐竜たちが生き残っていたが、マンツが絶滅した幻の鳥を追って、この地に留まっているという設定は多分にドイルの小説を意識したものだろう。
1930年代は多くの航空探検家によって、地図上の空白地帯が次々と埋められていった時代で、この時代の子供たちにとって探検家は正にヒーロー。
そんな憧れの人物が「ドクター・モローの島」の様な、自家製バウリンガルを使うマッドサイエンティストに成ってしまうのは、これもまた人生長く生きていると味わう皮肉な巡りあわせという事なのだろうけど、カールが78歳だとすると、マンツは一体何歳なのか??
マッドサイエンティストの技で若返ってるのかも知れないが、格闘シーンでぎっくり腰になってしまう冒険活劇って斬新だ(笑

そう言えば、ピクサー作品はドリームワークス系のアニメとは対照的に、キャラクターデザインから演じる俳優のイメージを排除していたが、今回は主役のカール爺さんを演じるエドワード・アスナーと、マンツを演じるクリストファー・プラマーはかなりキャラクターと本人が似ている。
まあ二人ともカリカチュアしやすそうな顔の作りだし、役者としても自分に似ていると感情が入りやすいのかもしれないけど。
ちなみに少女時代のエリーを演じているのはピート・ドクター監督の娘さん、エリー・ドクターである。
テスト用に仮で録った声が良かったので、そのまま出演となったらしいが、キャラの名前は当然意識して付けたのだろう。
良いお父さんだなあ・・・子供にとって最高の思い出じゃないだろうか。

映像的にも相変わらずクオリティが高い。
キャラクターアニメーションの見事さは言わずもがなだが、今回の技術的なハイライトは空気感の表現だろう。
靄や霧、あるいは埃の反射が美しく、画面に深い奥行きを与えている。
本作にはピクサー作品としては初めて3D立体上映版が用意されているが、恐らくは立体効果を高めるための手法の一つとしてトライされているのだと思う。
この作品の空気感と光の表現は、2004年に製作され翌年のアカデミー短編アニメーション賞にノミネートされたパク・セジョン監督による韓国・豪州合作のCGアニメーション「BIRTHDAY BOY」に画作りの考え方がよく似ている。
もちろん物語の背景は全く異なるが、あの作品も飛行帽を被った少年が主人公だったし、何らかの影響を受けているのかもしれない。
もっとも、早くから立体映像の演出を追及していたロバート・ゼメキスの「Disney's クリスマス・キャロル」と比べると、この作品には積極的に立体感をアピールする演出は殆ど観られない。
映像のクオリティの高さは別に立体でなくても味わえる類の物なので、あえて追加料金を出して立体版を観賞する理由はあまり見出せない。
むしろ広がりのあるカラフルな映像は通常版の方がじっくりと味わえるかもしれない。

同時上映の短編、「Partly Cloudy」は、命を作り出す雷雲とコウノトリの物語。
もう一ひねり欲しかった気もするが、クスッと笑えてちょっとホロリとするセンスの良い短編映画だ。
これが初監督となるピーター・ソンは、「カール爺さんの空飛ぶ家」でもストーリーボードを担当している韓国系アメリカ人で、ラッセル少年のモデルでもある。
笑っちゃうくらい似てるので、“Peter Sohn”で画像検索してみて欲しい。

今回は、カールとエリーの約束の場所から「パラダイス」をチョイス。
ドライ・ジンとアプリコット・ブランデー、オレンジ・ジュースを30ml:15ml:15mlでシェイクする。
美しいイエローのカクテルで、その味も長年連れ添った夫婦の間に流れる空気の様に、風味豊かでまろやかな物。
この映画の〆にぴったりである。

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