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2009年12月24日 (木) | 編集 |
日本アニメーション界の大ベテラン、りんたろう監督による初のフル3DCGアニメーション。
マッドハウスを中心に、フランス、タイの制作チームと組み、総制作費は15億円に及ぶという大作映画だ。
ある種の異世界ファンタジーだが、ハリウッド製のCGアニメーションとは一線を画する独特の世界観は、一見の価値がある。
ココ(森迫永依)は、いつも亡き父が買ってくれたペンギンのコートを着ているちょっと変わった女の子。
父が生前話してくれた、空を飛ぶペンギンの存在を信じている。
ある夜、ココはペンギンの置物を拾い、家に持って帰るのだが、中に入っていた人形が突然動き出す。
人形は、ココをペンギンストアの開店セールに招待するという。
だが、ペンギンストアはゴブリンたちが暮らす不思議な世界への入り口で、ココを誘った人形はゴブリンの少年チャリー(田中麗奈)だったのだ。
この世界では老いた悪魔ブッカ・ブー(田中裕二)が力を盛り返し、子分のザミー(大田光)が毎日の様に村を襲っていた。
ゴブリンたちは、ココの事を伝説の勇者「飛べない鳥様」だと思い込み、村を助けてくれと言うのだが・・・
多国籍スタッフによる映画だからという訳ではないだろうが、映画の中身も多国籍、いや全くの無国籍。
和洋中のビジュアルがごちゃ混ぜになった世界観に、キリスト教の天使から日本の七福神、欧州民話のゴブリンやフェアリー、そしてもちろんタイトル通りにペンギンまでもがギュウギュウに詰め込まれている。
良くも悪くも節操のない舞台装置とキャラクターを、意外と破綻なく一つに纏め上げてしまうのは、実に日本的であり、りんたろう的だ。
他のどの作品にも似ておらず、おそらく日本以外のクリエイターでは思いもつかない作品世界だろう。
このぶっ飛んだ世界観ゆえに、ペンギンのコスプレに身を包んだ少女、というかなり変な主人公も特に違和感なく存在できているのである。
もっとも、CGアニメーションで鬼門となりやすい、キャラクター造形としては本作の主人公も疑問が残る。
他に出来の良いキャラクターもいるので、これはデザインそのものよりもココというキャラクター単体のモデリングの問題という気がするが、どうにも可愛くないのだ。
気持ちがきちんと描かれているので、一応感情移入は出来るものの、もうちょっと親しみのあるデザインに出来なかったものか。
主人公の造形でビジネス的な意味でもかなり損をしている気がする。
まあ、それはさておき本作は技術的にも結構面白い試みをしている。
キャラクターアニメーションはかなりリミテッドを強調する作りで、モーションは4コマ打ちが目立つ。
CGアニメーションでは2コマは珍しくないが、ここまで全体にコマ数を落としているのは劇映画でははじめて観た。
ただ担当しているアニメーターのスキルに結構差があり、出来の良い部分と悪い部分の差がハッキリでてしまっているのはちょっと勿体無い。
おそらくりんたろうのイメージには、日本型リミテッドセルアニメの独特のアクションがあったのだと思うが、CGアニメーターでこのノウハウに精通している人間は少ないし、海外スタッフが担当した部分もあるだろうから、クオリティコントロールは相当に難しかっただろう。
舞台装置たる異世界は、かなり細かく作りこまれ、色彩設計もなかなか面白い。
ただ個人的にはもう少し空気感を出して、照明をリアルに近づけ、人形アニメの様なムードにしても良かったと思う。
もちろんその分だけ金と時間がかかるし、これはこれで独特のムードがあるから悪くはないのだけど。
物語は、実世界で心に小さな葛藤を抱えた少女が、異世界での冒険を通じて成長し、その葛藤を超えてゆくという実にシンプルな寓話だ。
物語の中心にいるのはココとゴブリンのチャリー、そして堕天使のザミー。
彼ら三人は皆心の中に三者三様の葛藤を感じているが、それが大きすぎるザミーはファンタジーワールドのダークサイドに身を置いてしまっている。
最初敵対関係にある三人が、やがて村を救う冒険を通じて、信頼できる友となる展開は、この手のファンタジーの王道。
物語の冒頭で、天から落ちてくる金色の羽や、七福神の水盤の鳴らない音など、細かな設定も伏線として上手く生かされている。
ディテールを詰め込むだけ詰め込んでいる割には、物語はわかりやすく、年少の子供でも十分に理解できるだろう。
惜しむらくは、ココの持っている「ペンギンは飛ぶ」というイメージへの拘りが物語の中で少々浮いている事だろう。
亡き父が彼女に残した記憶が具体的に描写されるのは、最後の最後に回想シーンでちょこっと触れられるだけ。
あのシチュエーションだけでは、たまたまそこにペンギンがいたというだけで、ココがそこまでのペンギンオタクになる理由付けには弱い。
父親が語ったという「ペンギンと一緒に飛んだ」という言葉の意味も明かされていない。
飛べない鳥が飛ぶ、というテーマ的な意味付けは理解できるものの、ストーリー的な理由付けはちょっと無理やり感があり、結果として、「そもそも何でペンギン?」という疑問が最後まで残ってしまったのは残念だ。
「よなよなペンギン」は、りんたろう監督が68歳にして新しい表現に挑んだ意欲作だ。
私は以前から、異世界ファンタジーは、観客がその世界へ行ってみたくなったら半分勝ちだと思っているが、この作品の半分狂ったような世界観はそれなりに魅力的だ。
物語の基礎にあたる部分がやや弱いのが惜しまれるが、無国籍な世界の中で、これまた無国籍なキャラクターたちが繰り広げる冒険は、良い意味で子供っぽいワクワクする楽しさがある。
正月映画の中では注目度は低めの作品だが、漫画原作でない良質なキッズムービーとしてお勧めしたい。
今回は、「よなよなエール」で決まり。
というか、この映画のタイトルは絶対このビールから思い付いたのだと思う。
軽井沢のヤッホー・ブルーイングが手がけるあまりにも有名な地ビール。
本作はよなよなペンギンの格好をして歩き回る変な女の子の話だったが、映画の後の大人の時間は、お父さんお母さんだけでよなよなエールを楽しもう。
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マッドハウスを中心に、フランス、タイの制作チームと組み、総制作費は15億円に及ぶという大作映画だ。
ある種の異世界ファンタジーだが、ハリウッド製のCGアニメーションとは一線を画する独特の世界観は、一見の価値がある。
ココ(森迫永依)は、いつも亡き父が買ってくれたペンギンのコートを着ているちょっと変わった女の子。
父が生前話してくれた、空を飛ぶペンギンの存在を信じている。
ある夜、ココはペンギンの置物を拾い、家に持って帰るのだが、中に入っていた人形が突然動き出す。
人形は、ココをペンギンストアの開店セールに招待するという。
だが、ペンギンストアはゴブリンたちが暮らす不思議な世界への入り口で、ココを誘った人形はゴブリンの少年チャリー(田中麗奈)だったのだ。
この世界では老いた悪魔ブッカ・ブー(田中裕二)が力を盛り返し、子分のザミー(大田光)が毎日の様に村を襲っていた。
ゴブリンたちは、ココの事を伝説の勇者「飛べない鳥様」だと思い込み、村を助けてくれと言うのだが・・・
多国籍スタッフによる映画だからという訳ではないだろうが、映画の中身も多国籍、いや全くの無国籍。
和洋中のビジュアルがごちゃ混ぜになった世界観に、キリスト教の天使から日本の七福神、欧州民話のゴブリンやフェアリー、そしてもちろんタイトル通りにペンギンまでもがギュウギュウに詰め込まれている。
良くも悪くも節操のない舞台装置とキャラクターを、意外と破綻なく一つに纏め上げてしまうのは、実に日本的であり、りんたろう的だ。
他のどの作品にも似ておらず、おそらく日本以外のクリエイターでは思いもつかない作品世界だろう。
このぶっ飛んだ世界観ゆえに、ペンギンのコスプレに身を包んだ少女、というかなり変な主人公も特に違和感なく存在できているのである。
もっとも、CGアニメーションで鬼門となりやすい、キャラクター造形としては本作の主人公も疑問が残る。
他に出来の良いキャラクターもいるので、これはデザインそのものよりもココというキャラクター単体のモデリングの問題という気がするが、どうにも可愛くないのだ。
気持ちがきちんと描かれているので、一応感情移入は出来るものの、もうちょっと親しみのあるデザインに出来なかったものか。
主人公の造形でビジネス的な意味でもかなり損をしている気がする。
まあ、それはさておき本作は技術的にも結構面白い試みをしている。
キャラクターアニメーションはかなりリミテッドを強調する作りで、モーションは4コマ打ちが目立つ。
CGアニメーションでは2コマは珍しくないが、ここまで全体にコマ数を落としているのは劇映画でははじめて観た。
ただ担当しているアニメーターのスキルに結構差があり、出来の良い部分と悪い部分の差がハッキリでてしまっているのはちょっと勿体無い。
おそらくりんたろうのイメージには、日本型リミテッドセルアニメの独特のアクションがあったのだと思うが、CGアニメーターでこのノウハウに精通している人間は少ないし、海外スタッフが担当した部分もあるだろうから、クオリティコントロールは相当に難しかっただろう。
舞台装置たる異世界は、かなり細かく作りこまれ、色彩設計もなかなか面白い。
ただ個人的にはもう少し空気感を出して、照明をリアルに近づけ、人形アニメの様なムードにしても良かったと思う。
もちろんその分だけ金と時間がかかるし、これはこれで独特のムードがあるから悪くはないのだけど。
物語は、実世界で心に小さな葛藤を抱えた少女が、異世界での冒険を通じて成長し、その葛藤を超えてゆくという実にシンプルな寓話だ。
物語の中心にいるのはココとゴブリンのチャリー、そして堕天使のザミー。
彼ら三人は皆心の中に三者三様の葛藤を感じているが、それが大きすぎるザミーはファンタジーワールドのダークサイドに身を置いてしまっている。
最初敵対関係にある三人が、やがて村を救う冒険を通じて、信頼できる友となる展開は、この手のファンタジーの王道。
物語の冒頭で、天から落ちてくる金色の羽や、七福神の水盤の鳴らない音など、細かな設定も伏線として上手く生かされている。
ディテールを詰め込むだけ詰め込んでいる割には、物語はわかりやすく、年少の子供でも十分に理解できるだろう。
惜しむらくは、ココの持っている「ペンギンは飛ぶ」というイメージへの拘りが物語の中で少々浮いている事だろう。
亡き父が彼女に残した記憶が具体的に描写されるのは、最後の最後に回想シーンでちょこっと触れられるだけ。
あのシチュエーションだけでは、たまたまそこにペンギンがいたというだけで、ココがそこまでのペンギンオタクになる理由付けには弱い。
父親が語ったという「ペンギンと一緒に飛んだ」という言葉の意味も明かされていない。
飛べない鳥が飛ぶ、というテーマ的な意味付けは理解できるものの、ストーリー的な理由付けはちょっと無理やり感があり、結果として、「そもそも何でペンギン?」という疑問が最後まで残ってしまったのは残念だ。
「よなよなペンギン」は、りんたろう監督が68歳にして新しい表現に挑んだ意欲作だ。
私は以前から、異世界ファンタジーは、観客がその世界へ行ってみたくなったら半分勝ちだと思っているが、この作品の半分狂ったような世界観はそれなりに魅力的だ。
物語の基礎にあたる部分がやや弱いのが惜しまれるが、無国籍な世界の中で、これまた無国籍なキャラクターたちが繰り広げる冒険は、良い意味で子供っぽいワクワクする楽しさがある。
正月映画の中では注目度は低めの作品だが、漫画原作でない良質なキッズムービーとしてお勧めしたい。
今回は、「よなよなエール」で決まり。
というか、この映画のタイトルは絶対このビールから思い付いたのだと思う。
軽井沢のヤッホー・ブルーイングが手がけるあまりにも有名な地ビール。
本作はよなよなペンギンの格好をして歩き回る変な女の子の話だったが、映画の後の大人の時間は、お父さんお母さんだけでよなよなエールを楽しもう。

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