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かいじゅうたちのいるところ・・・・・評価額1500円
2010年01月20日 (水) | 編集 |
モーリス・センダックによって1963年に創造された、あまりにも有名な絵本「かいじゅうたちのいるところ」の初の実写映画化である。
過去にも幾度と無く企画されてきた映画化だが、最終的に本作を作り上げたのは「マルコビッチの穴」などで知られる鬼才スパイク・ジョーンズ
とにかく世界観全てを作りこむ傾向にある最近のファンタジー映画の中にあって、ハンディ風のカメラでロケーションに拘り、CG全盛時代にあえて巨大な着ぐるみによるかいじゅうたちを登場させるなど、ライブ感を重視したかなりの変り種となった。

乱暴物の少年マックス(マックス・レコーズ)は、母親(キャスリン・キーナー)に叱られて家を飛び出し、泊めてあったボートに乗って海に漕ぎ出す。
長い航海の後に、マックスがたどり着いた島には、奇妙で巨大なかいじゅうたちが住んでいた。
ひょんな事から彼らの王様となったマックスは、キャロル(ジェイムズ・ガンドルフィーニ)というかいじゅうが考えている理想の砦の建設に協力する事になる。
だが、砦を建設しても皆との仲が上手く行かないキャロルは、癇癪を起こしてしまう。
怖くなったマックスは、砦の中に自分が隠れる小部屋を作ろうとするのだが、それがさらにキャロルの怒りをかって・・・・


原作の絵本は、10分もあれば読み終わってしまうシンプルな物。
少年マックスが、船で奇妙なかいじゅうたちのいる島へ行き、そこで彼らの王様となる。
しばらく滞在して大いに楽しんだマックスは、いいかげん飽きて里心がついたので、再び船に乗って家に戻ってくる、というだけの話である。
これだけでは精々短編にしかならない(実際過去に一度だけ短編アニメとして映像化されている)ので、映画は基本構成をそのままに、背景設定を詳細化しエピソードを新たに作り上げることで、元の話を大きく膨らませている。

スパイク・ジョーンズと共同脚本のディブ・エッガーズは、先ずマックス少年を母子家庭に育ち、コミュニケーション能力に少々問題を抱えた孤独で攻撃的な少年に設定した。
映画のファーストカットから暴れながら登場するマックスは、ぶっちゃけ自分が世界の王様でないと気がすまず、他人への思いやりに欠けた可愛げのないガキんちょだ。
そんなマックスが些細な事から母親とケンカをして家を飛び出し、たまたま泊めてあったボートに乗ってかいじゅうたちの島に漂着する。
この辺りの流れは下手に作ると限りなくうそ臭くなって興醒めなのだが、後述する作劇上のロジックを何気なく匂わせる事によって、自然に観客がこの奇妙な冒険旅行に入り込めるようになっている。

島にたどり着いたマックスが出会ったのは、ルックスも性格も非常に個性的な七匹のかいじゅうたち
リーダーのキャロルは、皆と一緒に仲良く暮らす事を夢みて沢山の家を作るのだが、一番一緒にいて欲しかったKWという女の子が孤独になれる所を求めて出て行ってしまい、怒ったキャロルは癇癪を起こして皆で作った家を壊してしまう。
他にも毒舌のジュディスと木に穴を開けるのが得意で朴訥なアイラのカップル、キャロルの右腕的存在で鳥の様な姿のダグラス、寡黙なブルに、小柄でヤギの様に気弱なアレクサンダーといったかいじゅうたちが登場する。
彼らの王様になったマックスは、キャロルの夢に協力して巨大な砦を作り始める。
当初は順調に進んでゆく理想郷の建設計画だが、やがて仲間たちは独善的なキャロルと本当は力の無い王様マックスに愛想を尽かし、だんだんと離れていってしまう。

この「砦」は、冒頭の家でのシークエンスで、マックスがベットとシーツ、そして物言わぬぬいぐるみたちを集めて作った「砦」とそのままシンクロする。
母親を砦に誘ったマックスが拒絶されるように、自分の思い通りにならないと癇癪を起こすキャロルもまた、孤独を感じ仲間たちから浮いている。
そう、この「かいじゅうたちのいるところ」は、マックスの心象風景としてのファンタジーワールドであり、キャロルはマックスの合わせ鏡なのだ。
この世界がマックスの内面にあるという事は、映画の終盤で激高したキャロルがダグラスにある事をする描写でより明確に示される。
まあ原作も限りなく夢オチに近く、映画版も原作の構造をそのまま踏襲したとも言えるのだが、スパイク・ジョーンズはマックスがなぜかいじゅうたちのいる島に行ったのかという理由付けを考え、そのロジカルな回答として、家族の中のかいじゅうであるマックスが、原作とは異なり明確な個性を与えられたもう一人の自分と出会うという構造にしたのだろう。
そう考えると、ユニークなかいじゅうたちも、それぞれ人間の持つ様々な感情のメタファーである事がわかる。
現実世界で家族の王様になりたかったマックスは、かいじゅうたちの王様となり、自分そっくりのキャロルと出会うことで、初めて自分自身を知り、他人の心を尊重し思いやる事の大切さを学ぶのである。
この冒険が、マックスの内面世界への旅である事は、物語の前半からイメージとして示唆されているので、観客も子供が一人で嵐の海へ漕ぎ出すという荒唐無稽な設定をすんなり受け入れられるのだ。

よくもまあ原作のテイストをここまで再現した物だと感心させられるかいじゅうたちの造形は、ジム・ヘンソン・クリーチャー・ショップによるもの。
CGではなく実物を作る事によって、様々な物理的制約を受けるからこそのデザインテイストで、嘗ての「ダーク・クリスタル」や、知る人ぞ知る傑作テレビシリーズ「ストーリーテラー」のムードが色濃く残るアニマトロニクスの着ぐるみかいじゅうたちは、なかなかに味わい深い仕上がりだ。
ざっくりとした造形のかいじゅうたちが、複雑で繊細な内面を抱えているというギャップが、本作の隠し味になっているのだが、着ぐるみにCGによる豊かな表情をプラスすることで細やかな演技面をクリア。
アナログ技術とデジタル技術の効果的な結合を見ることが出来る。

「かいじゅうたちのいるところ」は、2010年の現在に観ると、良い意味でアナログ感が新鮮なファンタジー映画の佳作である。
ただ、基本的にマックスの精神世界で展開する話なので、かいじゅうたちのユニークなキャラクター以外に見せ場に乏しいのも確かだ。
ワクワクする物語の展開を楽しむというよりは、その裏に設定された物を深読みして、心の奥で詩的に解釈するような作品であり、正直子供向けとは言い難く、良くも悪くも淡々とした展開は、むしろ嘗て絵本に親しんだ大人客が子供時代のムードに浸るための物だろう。
話で楽しませようと思えば、この膨らませ方なら70分程度に纏めた方が観やすい映画になったはずで、101分まで引き伸ばすなら、脚色にもう一工夫合っても良かったかもしれない。
もしも子供も楽しめる内容で作るなら、個人的には原恵一あたりにアニメ化してもらっても面白いかなあという気がしている。

大人のためのファンタジーの後には、でしゃばらない優しいテイストのビール「キリン・ハートランド」をチョイス。
ビール文化の原点回帰をテーマに、1986年に生まれた少量生産銘柄で、苦味が少なく、スッキリとした柔らかな味わいが特徴だ。
ニューヨーク沖の沈没船から発見された17世紀のビンにヒントを得てデザインされたという、グリーンのボトルが美しく、作り手の大らかな遊び心が感じられる。
目と舌で味わえる、豊かな奥行きのあるビールである。

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