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2010年01月27日 (水) | 編集 |
久しぶりのブルース・ウィリス主演作「サロゲート」は、自分の分身の様な身代わりロボットが仕事を含む日常生活をこなし、人間は自宅からそれらを遠隔でオペレートする未来世界を描いたSFサスペンス。
要するに、例の大ヒット映画の元ネタでもあるインターネット上の“アバター”が実体化して社会活動を代行し、人類全体が総引きこもり状態になってしまったような世界である。
「ターミネーター3」のジョナサン・モストウ監督作品だが、所々にそれっぽい描写があるのが可笑しい。
ディテールの作り込みが甘く、アイディアを生かし切れていないのがやや物足りないが、B級エンタメとしてそこそこ楽しめる一本だ。
天才科学者のキャンター博士(ジェイムス・クロムウェル)によって、人生の代行ロボット“サロゲート”が開発されてから14年。
人口の98%がサロゲートを使用し、街を歩いているのはロボットだけで、人々はその殆どが自宅からサロゲートをオペレートする事で暮らしている。
殺人も、疫病も無く、戦争ですら人が死なない世界。
ところが、何者かによってサロゲートが破壊され、オペレートしていた人間までもが死亡するという事件が起こる。
トム・グリアー刑事(ブルース・ウィリス)は、殺された人間がキャンター博士の息子で、たまたま博士のサロゲートをレンタルしていた事を突き止める・・・
人類全体が引きこもり化し、自分そっくりの代行ロボットが社会生活を担うって・・・どこかで聞いたような話だと思っていたが、この映画の世界観って諸星大二郎の短編漫画「夢見る機械」そのものじゃん!
本作の原作はもちろん諸星大二郎ではなくて、ロバート・ヴェディティのグラフィックノベルなのだが、いやはやここまで似ているというのは驚きである。
まあ「夢見る機械」は知る人ぞ知るアングラな漫画なので、パクッた訳ではないだろうが、36年も前に描かれた漫画にようやく時代が追いついたと思うべきか。
ちなみにこの漫画は、過去にフジテレビの「世にも奇妙な物語」枠で一度だけ短編ドラマ化されている。
もっとも、ロボットしかいない社会という世界観は共通するものの、諸星漫画のロボットは人間の記憶や性格を移植された自立型で、引きこもった本人は「マトリックス」に出て来る様な機械で、「永遠に続く理想の夢」を見ているという非常にSFチックな設定。
対してこちらは、21世紀の現在においては必ずしも絵空事とは言えない、人間が遠隔でオペレートし、ロボットの見る物、感じるものをヴァーチャルで体験するというリアルな設定となっている。
正にネットのアバターの進化系の様な設定には、それなりに説得力がある。
理想の自分になれるから、頭の薄いブルース・ウィリスのサロゲートは髪の毛フサフサだったり、チビでデブのオヤジが金髪美女になっていたりするのも、いかにもありそうだと思わされる。
ネット依存症があるのだから、サロゲート依存症もあって当然でしょ、という事なのだろう。
米軍がロボット兵士に切り替わっていたりするのも、無人兵器がどんどん実用化されている現実を考えるとリアルだ。
ただし、サロゲートを使う事で、犯罪からも病気からも逃れられる理想社会が実現しているというのはかなり疑問。
一日中あんな椅子に座りっぱなしで体を全く動かさないのだから、健康には思いっきり悪そうだし、殺人事件だって別に路上強盗や通り魔だけとは限らないだろう。
人々がサロゲートのオペレートに夢中になってるのだから、泥棒は入り放題だし、他人名義の携帯電話が犯罪に使われるのと同じように、未登録やハッキングされたサロゲートを使った犯罪が横行するんじゃなかろうか?
それに発明されてからたった14年で、98%の人がサロゲートを使ってる設定になってたけど、いくらなんでも浸透速度早すぎ。
どんだけ安いんだ、サロゲート。
仮にこのあたりは映画的なウソと考えて突っ込まないとしても、サロゲートがそこまで人々を夢中にさせるほどの力があるように見えてこないのはちょっと問題。
現在でも、社会的なストレスやコンプレックスから、ネット依存症や引きこもりになってしまう人がかなりの数いる訳で、本作の主人公のグリアー刑事夫妻の場合は、どうやら愛する息子の事故死という現実からの逃避が切っ掛けだった様だ。
ただ、ネット依存症と違って、サロゲートではそれほど引きこもり効果は強くないように思えてしまう。
本作と似た設定の映画に、邦画の「ヒノキオ」があるが、あの映画では心と体に傷を負って引きこもりとなってしまった少年が、少しずつ外の世界へとでて行くための体験ツールとしてロボットが位置づけられていた。
こちらでは逆にサロゲートが引きこもりのための手段になっている訳だが、「ヒノキオ」よりもはるかにハイテクなロボットに、自分の五感をシンクロさせる事が出来るのだから、見た目が違うだけで、実質本人が外へ出ているのと感覚的には変わらないのではないのか。
ネットと違って、それ自体は世界中の情報にアクセスできたりする訳でもないし、外出する事で起こりえる肉体的リスクが低減される以外には日常生活が大きく変わるとも思えず、それ故にグリアー夫妻の間にあるサロゲートを使うことへの葛藤が、今ひとつピンと来ないのだ。
正直なところ「サロゲート」は、ハリウッド製SF大作と考えると、内容的にもビジュアル的にも少々物足りない。
マイケル・フェリスとジョン・ブランカトーの脚本は、どうも物語を前に進めるのに精一杯で細部が荒っぽく、アイディアを上手く使いこなせていない様に思える。
まあこの二人が担当した、「ターミネーター3&4」も似たようなものだったので、これが彼らの個性なのかもしれないけど・・・、作り方によっては、かなり深く精神性を描ける設定なのに勿体無い。
だが上映時間が89分と今時の映画にしてはかなり短い本作、SF設定の荒さやドラマ的な底の浅さという部分には目を瞑って、B級プログラムピクチャーの類として観れば、スピーディーでテンポ良く、それなりに楽しめる一本である。
事件の捜査の部分は、まるで時間に追い立てられる様にあまりにも簡単に進んでいってしまうので、ミステリとしての見所はそこそこだが、ジョナサン・モストウの職人的な上手さが生きるアクションシークエンスはさすがに切れ味良く、エキサイティングだ。
好意的に観れば「ターミネーター」+「ダイハード」な訳で、なかなかに出来は良い。
サロゲートに完全依存してしまっている人類、という設定に違和感さえ感じなければ、興味深い世界観とスピーディな展開、適度なアクションと見所はバランス良く揃い、物語的にも特に大きな破綻無く、そつなく纏められているので、安心して観ていられる作品だろう。
今回は、ロボットという言葉を生み出した劇作家カレル・チャペックの母国、チェコのビール「ピルスナー ウルケル」をチョイス。
元々ロボットは労働を意味するチェコ語ROBOTAから作られた造語で、機械人間の反乱を描いた戯曲「ロボット」は全てのロボットSFの元祖と言える。
ちなみにこのビールは世界中にあるピルスナービールの元祖。
チェコ、侮りがたしである。
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「ターミネーター3」のジョナサン・モストウ監督作品だが、所々にそれっぽい描写があるのが可笑しい。
ディテールの作り込みが甘く、アイディアを生かし切れていないのがやや物足りないが、B級エンタメとしてそこそこ楽しめる一本だ。
天才科学者のキャンター博士(ジェイムス・クロムウェル)によって、人生の代行ロボット“サロゲート”が開発されてから14年。
人口の98%がサロゲートを使用し、街を歩いているのはロボットだけで、人々はその殆どが自宅からサロゲートをオペレートする事で暮らしている。
殺人も、疫病も無く、戦争ですら人が死なない世界。
ところが、何者かによってサロゲートが破壊され、オペレートしていた人間までもが死亡するという事件が起こる。
トム・グリアー刑事(ブルース・ウィリス)は、殺された人間がキャンター博士の息子で、たまたま博士のサロゲートをレンタルしていた事を突き止める・・・
人類全体が引きこもり化し、自分そっくりの代行ロボットが社会生活を担うって・・・どこかで聞いたような話だと思っていたが、この映画の世界観って諸星大二郎の短編漫画「夢見る機械」そのものじゃん!
本作の原作はもちろん諸星大二郎ではなくて、ロバート・ヴェディティのグラフィックノベルなのだが、いやはやここまで似ているというのは驚きである。
まあ「夢見る機械」は知る人ぞ知るアングラな漫画なので、パクッた訳ではないだろうが、36年も前に描かれた漫画にようやく時代が追いついたと思うべきか。
ちなみにこの漫画は、過去にフジテレビの「世にも奇妙な物語」枠で一度だけ短編ドラマ化されている。
もっとも、ロボットしかいない社会という世界観は共通するものの、諸星漫画のロボットは人間の記憶や性格を移植された自立型で、引きこもった本人は「マトリックス」に出て来る様な機械で、「永遠に続く理想の夢」を見ているという非常にSFチックな設定。
対してこちらは、21世紀の現在においては必ずしも絵空事とは言えない、人間が遠隔でオペレートし、ロボットの見る物、感じるものをヴァーチャルで体験するというリアルな設定となっている。
正にネットのアバターの進化系の様な設定には、それなりに説得力がある。
理想の自分になれるから、頭の薄いブルース・ウィリスのサロゲートは髪の毛フサフサだったり、チビでデブのオヤジが金髪美女になっていたりするのも、いかにもありそうだと思わされる。
ネット依存症があるのだから、サロゲート依存症もあって当然でしょ、という事なのだろう。
米軍がロボット兵士に切り替わっていたりするのも、無人兵器がどんどん実用化されている現実を考えるとリアルだ。
ただし、サロゲートを使う事で、犯罪からも病気からも逃れられる理想社会が実現しているというのはかなり疑問。
一日中あんな椅子に座りっぱなしで体を全く動かさないのだから、健康には思いっきり悪そうだし、殺人事件だって別に路上強盗や通り魔だけとは限らないだろう。
人々がサロゲートのオペレートに夢中になってるのだから、泥棒は入り放題だし、他人名義の携帯電話が犯罪に使われるのと同じように、未登録やハッキングされたサロゲートを使った犯罪が横行するんじゃなかろうか?
それに発明されてからたった14年で、98%の人がサロゲートを使ってる設定になってたけど、いくらなんでも浸透速度早すぎ。
どんだけ安いんだ、サロゲート。
仮にこのあたりは映画的なウソと考えて突っ込まないとしても、サロゲートがそこまで人々を夢中にさせるほどの力があるように見えてこないのはちょっと問題。
現在でも、社会的なストレスやコンプレックスから、ネット依存症や引きこもりになってしまう人がかなりの数いる訳で、本作の主人公のグリアー刑事夫妻の場合は、どうやら愛する息子の事故死という現実からの逃避が切っ掛けだった様だ。
ただ、ネット依存症と違って、サロゲートではそれほど引きこもり効果は強くないように思えてしまう。
本作と似た設定の映画に、邦画の「ヒノキオ」があるが、あの映画では心と体に傷を負って引きこもりとなってしまった少年が、少しずつ外の世界へとでて行くための体験ツールとしてロボットが位置づけられていた。
こちらでは逆にサロゲートが引きこもりのための手段になっている訳だが、「ヒノキオ」よりもはるかにハイテクなロボットに、自分の五感をシンクロさせる事が出来るのだから、見た目が違うだけで、実質本人が外へ出ているのと感覚的には変わらないのではないのか。
ネットと違って、それ自体は世界中の情報にアクセスできたりする訳でもないし、外出する事で起こりえる肉体的リスクが低減される以外には日常生活が大きく変わるとも思えず、それ故にグリアー夫妻の間にあるサロゲートを使うことへの葛藤が、今ひとつピンと来ないのだ。
正直なところ「サロゲート」は、ハリウッド製SF大作と考えると、内容的にもビジュアル的にも少々物足りない。
マイケル・フェリスとジョン・ブランカトーの脚本は、どうも物語を前に進めるのに精一杯で細部が荒っぽく、アイディアを上手く使いこなせていない様に思える。
まあこの二人が担当した、「ターミネーター3&4」も似たようなものだったので、これが彼らの個性なのかもしれないけど・・・、作り方によっては、かなり深く精神性を描ける設定なのに勿体無い。
だが上映時間が89分と今時の映画にしてはかなり短い本作、SF設定の荒さやドラマ的な底の浅さという部分には目を瞑って、B級プログラムピクチャーの類として観れば、スピーディーでテンポ良く、それなりに楽しめる一本である。
事件の捜査の部分は、まるで時間に追い立てられる様にあまりにも簡単に進んでいってしまうので、ミステリとしての見所はそこそこだが、ジョナサン・モストウの職人的な上手さが生きるアクションシークエンスはさすがに切れ味良く、エキサイティングだ。
好意的に観れば「ターミネーター」+「ダイハード」な訳で、なかなかに出来は良い。
サロゲートに完全依存してしまっている人類、という設定に違和感さえ感じなければ、興味深い世界観とスピーディな展開、適度なアクションと見所はバランス良く揃い、物語的にも特に大きな破綻無く、そつなく纏められているので、安心して観ていられる作品だろう。
今回は、ロボットという言葉を生み出した劇作家カレル・チャペックの母国、チェコのビール「ピルスナー ウルケル」をチョイス。
元々ロボットは労働を意味するチェコ語ROBOTAから作られた造語で、機械人間の反乱を描いた戯曲「ロボット」は全てのロボットSFの元祖と言える。
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