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2010年02月04日 (木) | 編集 |
・゜゜(ノД`)゜゜・ウワァァァァァァァァァァァン!!
予告編を見て、離婚した夫婦の話なのかなあと思っていたら、完全に騙された。
まさか、まさか、こんな切ない話だったなんて!
途中から完全に涙腺が決壊して、号泣してしまった。
観賞時にハンカチとティッシュが必需品な「今度は愛妻家」は、間違いなく「GO」に並ぶ行定勲の最高傑作である。
自堕落な生活を送るカメラマンの俊介(豊川悦司)は、妻のさくら(薬師丸ひろ子)に愛想を尽かされて、一人旅立たれてしまう。
うるさい妻がいなくなって清々すると思ったのもつかの間、いないならいないで人生から何かが抜け落ちたかの様な喪失感に悶々とする日々。
新人モデルの蘭子(水川あさみ)の誘惑にも心が動かず、蘭子はいつの間にかアシスタントの誠(濱田岳)と懇ろな仲に。
腑抜けの様な生活を送る俊介の前に、ひょっこりと帰ってきたさくらが、離婚する前に写真を撮って欲しいと頼むのだが・・・
脚本が素晴らしく良く出来ている。
物語は殆ど主人公である俊介の家の居間で展開し、メインの登場人物は僅かに5人。
なんだか演劇みたいな構成の作品だなあと思っていたら、原作は中谷まゆみによる舞台劇で、「スカイ・クロラ」の伊藤ちひろが映画用の脚本にリライトしている。
なるほど、これは原作者と脚本家が女性で、監督が男性だからこそ描けた作品という気がする。
本作の場合、主人公は夫である俊介で、物語も彼の目線で語られるのだが、大人の男と言うよりもまるでワガママな子供の様な俊介の造形は、女性がじっくりと男性を観察し、男性の中の色々なキャラクターを上手くカリカチュア化する事で作りあげた様に思える。
恐らく男性が書いたら、このキャラクターは率直に言ってかなり恥ずかしいはずで、ここまで素直に描きこめたか疑問だ。
そして、女性による男性への冷静な視線と願望が織り交ざったキャラクターを、男性である行定監督がリアルに演出し、高い演技力を持つ豊川悦司が演じることで、なんとも魅力的な主人公のキャラクターが出来上がった。
物語の前半は、このトヨエツ演じる俊介に、若いアシスタントの誠と新人モデルの蘭子、そして正体不明のゲイバーの経営者、文太といった登場人物たちが絡み、忘れた頃にひょこひょこ帰ってくるさくらとの絶妙の掛け合いもあり、コメディタッチに展開する。
だが、この作品の真の凄さが表れるのは、帰宅したさくらが俊介に離婚を宣言し、最後に自分の写真を撮って欲しいという辺りから。
実は写真のエピソードを境にして、物語は全く予想外の方向に劇的に展開してゆき、前半の全てのエピソードは後半の伏線という二重構造となっているのがわかって来る。
私はこの作品を観ていて、妻の家族に対する壮絶なまでの愛を描いた、ファンタジー映画の秀作、「いま、会いにゆきます」を思い出した。
もちろん内容は全く異なるのだけど、あの作品も綿密に作られた物語のロジックが秀逸で、後半が前半の種明かしになるという構造を持ち、意味深なタイトルが最後の最後に効いてくるあたりは少し似ている。
非常に凝った構造を持つ物語に対する、行定監督の演出もとても細やかで丁寧だ。
前半部分には、物語上だけでなく、演出的にも後半にかかる様々な仕掛けが施されており、それが観客に微妙な違和感を残してゆくのだ。
例えば、俊介が街で誘う井川遥演じるゆりのちょっとしたセリフや表情の演出。
後から考えれば辻褄が合う様に、全てのシーンの整合性が考えられているのである。
そして何よりも、妻のさくらを演じる薬師丸ひろ子を、何とキュートに撮っている事か。
60年代生まれの私の世代にとって、彼女は青春ど真ん中のスーパーアイドルである。
たぶん68年生まれの監督にとってもそれは同じ事で、彼女を撮る視線はまるで憧れの女性を愛でるかの様に、優しさと尊敬がにじみ出ている。
だからこそ、近年演じる事が多くなっていた母親役と違って、この映画の子供のいない「妻」役の薬師丸ひろ子は、正に80年代が戻ってきたかと思うくらい可愛い。
俊介じゃなくても思わず惚れちまいそうだ。
彼ら二人以外の登場人物もいい。
誠役の濱田岳と文太役の石橋蓮司は、それぞれ事情を知りつつも、俊介にどう接して良いのかわからない戸惑いと葛藤を巧みに演じていた。
文太がゲイであるという設定は、いかにも演劇的な物で、映画版ではそれほど必然性があるとは思わなかったが、彼の本当の立場が明かされてからはグイグイと感情移入させられた。
唯一、蘭子のキャラクターが、若干全体のトーンから浮いているのが少し気になるが、これは他の登場人物が全て事情を知っていて、彼女だけが一家への乱入者という立場があるので、ある程度致し方ないと思う。
正直、私は水川あさみという役者さんにあまり魅力を感じた事がないのだが、今回初めて「良いかも?」と思える瞬間が幾つもあったのだから、むしろ大したものと言うべきだろう。
全体に役者の演技で見せる部分の多いこの作品、行定監督の特出が最大限生きていると思う。
「今度は愛妻家」というタイトルには、観る人ごとに様々な意味を見出すことが出来るだろう。
これは夫婦の愛を描いた切ないラブストーリーであり、同時に一つの家族の形を描いた暖かいファンタジーでもある。
結婚している人たちにはもちろん、長く付き合っているパートナーがいる人にも、是非ともカップルで観て欲しい作品だ。
観終わった時、隣にいる人の事を、たまらなく愛しく感じるはず。
もちろん、私の様なお一人様が観ても十分泣ける。
物語の妙と、素晴らしい演技を楽しむことの出来る、邦画らしい観応えのある快作である。
今回は俊介とさくらの思い出の地、沖縄の泡盛「請福」から、クースー(古酒)を作るために甕入りをチョイス。
泡盛は3年以上寝かせると、クースーと言われる様になり、時を経るほどにまるで長年連れ添った夫婦の様にマイルドに深みを持ってゆく。
戦争で殆どのクースーが割れてしまったそうだが、それ以前には百年物も珍しくなかったという。
私は以前石垣で50年物のクースーを飲ませてもらった事があるが、それは高級ウィスキーも驚くほど芳醇でコクのある酒に変貌していた。
そこまで熟成させた物は、なかなか手に入れる事は難しいが、泡盛は仕次ぎという方法で、家庭でも延々熟成させる事が出来る。
仕次ぎとは、例えば10年物の酒をある程度飲んで甕の中が減ったら、その分今度は8年物を注ぎ足し、8年ものには5年物をという風に、延々と継ぎ足してゆくことである。
こうする事で、50年でも100年でも持つというワケだ。
新婚旅行で泡盛の甕を一つ買い、沖縄旅行に行くたびに酒を買って、50年後の金婚式に振舞うなんてどうだろうか。
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予告編を見て、離婚した夫婦の話なのかなあと思っていたら、完全に騙された。
まさか、まさか、こんな切ない話だったなんて!
途中から完全に涙腺が決壊して、号泣してしまった。
観賞時にハンカチとティッシュが必需品な「今度は愛妻家」は、間違いなく「GO」に並ぶ行定勲の最高傑作である。
自堕落な生活を送るカメラマンの俊介(豊川悦司)は、妻のさくら(薬師丸ひろ子)に愛想を尽かされて、一人旅立たれてしまう。
うるさい妻がいなくなって清々すると思ったのもつかの間、いないならいないで人生から何かが抜け落ちたかの様な喪失感に悶々とする日々。
新人モデルの蘭子(水川あさみ)の誘惑にも心が動かず、蘭子はいつの間にかアシスタントの誠(濱田岳)と懇ろな仲に。
腑抜けの様な生活を送る俊介の前に、ひょっこりと帰ってきたさくらが、離婚する前に写真を撮って欲しいと頼むのだが・・・
脚本が素晴らしく良く出来ている。
物語は殆ど主人公である俊介の家の居間で展開し、メインの登場人物は僅かに5人。
なんだか演劇みたいな構成の作品だなあと思っていたら、原作は中谷まゆみによる舞台劇で、「スカイ・クロラ」の伊藤ちひろが映画用の脚本にリライトしている。
なるほど、これは原作者と脚本家が女性で、監督が男性だからこそ描けた作品という気がする。
本作の場合、主人公は夫である俊介で、物語も彼の目線で語られるのだが、大人の男と言うよりもまるでワガママな子供の様な俊介の造形は、女性がじっくりと男性を観察し、男性の中の色々なキャラクターを上手くカリカチュア化する事で作りあげた様に思える。
恐らく男性が書いたら、このキャラクターは率直に言ってかなり恥ずかしいはずで、ここまで素直に描きこめたか疑問だ。
そして、女性による男性への冷静な視線と願望が織り交ざったキャラクターを、男性である行定監督がリアルに演出し、高い演技力を持つ豊川悦司が演じることで、なんとも魅力的な主人公のキャラクターが出来上がった。
物語の前半は、このトヨエツ演じる俊介に、若いアシスタントの誠と新人モデルの蘭子、そして正体不明のゲイバーの経営者、文太といった登場人物たちが絡み、忘れた頃にひょこひょこ帰ってくるさくらとの絶妙の掛け合いもあり、コメディタッチに展開する。
だが、この作品の真の凄さが表れるのは、帰宅したさくらが俊介に離婚を宣言し、最後に自分の写真を撮って欲しいという辺りから。
実は写真のエピソードを境にして、物語は全く予想外の方向に劇的に展開してゆき、前半の全てのエピソードは後半の伏線という二重構造となっているのがわかって来る。
私はこの作品を観ていて、妻の家族に対する壮絶なまでの愛を描いた、ファンタジー映画の秀作、「いま、会いにゆきます」を思い出した。
もちろん内容は全く異なるのだけど、あの作品も綿密に作られた物語のロジックが秀逸で、後半が前半の種明かしになるという構造を持ち、意味深なタイトルが最後の最後に効いてくるあたりは少し似ている。
非常に凝った構造を持つ物語に対する、行定監督の演出もとても細やかで丁寧だ。
前半部分には、物語上だけでなく、演出的にも後半にかかる様々な仕掛けが施されており、それが観客に微妙な違和感を残してゆくのだ。
例えば、俊介が街で誘う井川遥演じるゆりのちょっとしたセリフや表情の演出。
後から考えれば辻褄が合う様に、全てのシーンの整合性が考えられているのである。
そして何よりも、妻のさくらを演じる薬師丸ひろ子を、何とキュートに撮っている事か。
60年代生まれの私の世代にとって、彼女は青春ど真ん中のスーパーアイドルである。
たぶん68年生まれの監督にとってもそれは同じ事で、彼女を撮る視線はまるで憧れの女性を愛でるかの様に、優しさと尊敬がにじみ出ている。
だからこそ、近年演じる事が多くなっていた母親役と違って、この映画の子供のいない「妻」役の薬師丸ひろ子は、正に80年代が戻ってきたかと思うくらい可愛い。
俊介じゃなくても思わず惚れちまいそうだ。
彼ら二人以外の登場人物もいい。
誠役の濱田岳と文太役の石橋蓮司は、それぞれ事情を知りつつも、俊介にどう接して良いのかわからない戸惑いと葛藤を巧みに演じていた。
文太がゲイであるという設定は、いかにも演劇的な物で、映画版ではそれほど必然性があるとは思わなかったが、彼の本当の立場が明かされてからはグイグイと感情移入させられた。
唯一、蘭子のキャラクターが、若干全体のトーンから浮いているのが少し気になるが、これは他の登場人物が全て事情を知っていて、彼女だけが一家への乱入者という立場があるので、ある程度致し方ないと思う。
正直、私は水川あさみという役者さんにあまり魅力を感じた事がないのだが、今回初めて「良いかも?」と思える瞬間が幾つもあったのだから、むしろ大したものと言うべきだろう。
全体に役者の演技で見せる部分の多いこの作品、行定監督の特出が最大限生きていると思う。
「今度は愛妻家」というタイトルには、観る人ごとに様々な意味を見出すことが出来るだろう。
これは夫婦の愛を描いた切ないラブストーリーであり、同時に一つの家族の形を描いた暖かいファンタジーでもある。
結婚している人たちにはもちろん、長く付き合っているパートナーがいる人にも、是非ともカップルで観て欲しい作品だ。
観終わった時、隣にいる人の事を、たまらなく愛しく感じるはず。
もちろん、私の様なお一人様が観ても十分泣ける。
物語の妙と、素晴らしい演技を楽しむことの出来る、邦画らしい観応えのある快作である。
今回は俊介とさくらの思い出の地、沖縄の泡盛「請福」から、クースー(古酒)を作るために甕入りをチョイス。
泡盛は3年以上寝かせると、クースーと言われる様になり、時を経るほどにまるで長年連れ添った夫婦の様にマイルドに深みを持ってゆく。
戦争で殆どのクースーが割れてしまったそうだが、それ以前には百年物も珍しくなかったという。
私は以前石垣で50年物のクースーを飲ませてもらった事があるが、それは高級ウィスキーも驚くほど芳醇でコクのある酒に変貌していた。
そこまで熟成させた物は、なかなか手に入れる事は難しいが、泡盛は仕次ぎという方法で、家庭でも延々熟成させる事が出来る。
仕次ぎとは、例えば10年物の酒をある程度飲んで甕の中が減ったら、その分今度は8年物を注ぎ足し、8年ものには5年物をという風に、延々と継ぎ足してゆくことである。
こうする事で、50年でも100年でも持つというワケだ。
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