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第9地区・・・・・評価額1800円
2010年03月28日 (日) | 編集 |
映画史の中では、過去にもの凄い数のエイリアンたちが地球にやって来ている。
彼らの来訪の目的は、侵略だったり、科学調査だったり、あるいは敵からの逃亡だったり様々だ。
だから、中には別に地球に来たくて来た訳ではない連中がいてもいい。
若き映画作家ニール・ブロムカンプが、ピーター・ジャクソンの支援の下に作り上げた「第9地区」に登場するエイリアンは、なんと「難民」である。

南アフリカ、ヨハネスブルグに巨大な宇宙船が飛来し、乗っていたエイリアンたちが難民化してから二十数年。
エイリアン問題を管理する多国籍機関MNUは、エイリアンを第9地区というスラム化した難民キャンプから、第10地区へと移転させる計画を立てる。
強制執行の責任者を任されたMNUエージェントのヴィカス(シャルト・コプリー)は、あるエイリアンの小屋で、奇妙な液体を浴びてしまう。
すると、彼の体は不気味な変異を起こし始め、片腕がまるでエイリアンの様な姿になってしまうのだが・・・


この作品は、ヨハネスブルグ出身で、VFXやCMの世界で活動していたブロムカンプが、2005年に自主制作した6分間の短編映画「Alive in Joburg」(YouTubeで視聴可能)の長編リメイク。
オリジナルをピーター・ジャクソンが気に入り、何とか3000万ドルを集めて、メジャースタジオのコントロールを排除した上で、好きな様に作らせた物だと言う。
サンクス、ピーター。
おかげで、ハリウッドメジャーではまずあり得ない、自由で独創的な感性とオタク魂が結合した傑作が仕上がった。

難民や移民のエイリアンの登場するSF映画は、これが初めてではない。
80年代には、人間とエイリアンの難民出身の刑事がコンビを組む「エイリアン・ネイション」や、友好的な移民に偽装したエイリアンによる侵略SFドラマ「V」などが作られている。
これらの作品に対して、本作が極めてユニークなのは、舞台をニューヨークでもロサンゼルスでもロンドンでもなく、南アフリカのヨハネスブルグに設定し、極めて風刺的な社会派娯楽作品に仕立て上げている事だ。

最初、映画はフェイクドキュメンタリーの様にスタートする。
映し出されるのは、巨大な宇宙船が何をするでもなくボーっと都市上空に浮かんでいる、なんともシュールな光景だが、街の人たちにとっては、これはもはや日常。
二十数年前に突如として現れた宇宙船に乗っていたのは、人類から“プラウン(エビ)”と差別的に呼ばれる難民エイリアン。
エビというよりはゴキブリを連想させる、見るもおぞましい造形だ。
人類は、彼らを地球に迎え入れ、難民キャンプに住まわせているが、周囲の住民は不満タラタラ。
なぜなら、キャンプの維持には巨額の税金が使われ、キャンプに入り込んだナイジェリア人ギャングの暗躍もあって、スラム化した地域の治安は極度に悪化している。
そこで、キャンプをより人里はなれた地域に移して、実質的に彼らを隔離するという計画が立てられる。
良く知られている様に、南アフリカはアパルトヘイトによる人種隔離政策が長年続き、人種間の分断が今も社会に影を落す国であり、この映画の設定がアパルトヘイトを比喩しているのは明らかだろう。
それまで人類同士の差別に苦しんできた人々が、今度は平然とエイリアンを差別するのだから強烈に皮肉が効いてる。
スラム化した難民キャンプでのエイリアンの細かな日常描写に、立ち退きを迫る人類の横暴、更にはそんなキャンプの利権を握るギャングの存在など、描写は徹底的にリアルで、異形の住人の姿さえ見なければ、これは地球のどこかにある現実を描写した映像だと思えるほどだ。

ドキュメントタッチの社会派SFとして最後まで突っ走る事も出来ただろうが、ブロムカンプは物語が進むにつれて徐々に作品を軌道修正する。
フェイクドキュメンタリーの様な物語の導入は、言わば観客を作品世界のリアルに誘うための装置
主人公であるヴィカスが、偶然エイリアンの液体を浴び、まるで「ザ・フライ」のジェフ・ゴールドブラムの様に、人間とエイリアンのハイブリッドに変異してゆくのにあわせて、作品のスタイルは一般的な映画の様にドラマチックに変貌してゆくのだ。
半分エイリアン化した事で、人間たちに追われる身となったヴィカスは、彼を変異させた液体を作った、クリストファー・ジョンソンという地球名を持つエイリアンと図らずも組む事になる。
ここから物語は、追い詰められたヴィカスと第9地区からの脱出を図るクリストファー、MNUとナイジェリア人ギャングの思惑がぶつかり合い、低予算を感じさせない第一級のSFバトルアクションとして息をもつかせぬ怒涛の展開を見せる。
本来なら人類よりも遥に高度な文明を持つはずなのに、適当な地球名を与えられて、不毛のキャンプに押し込められて全くの厄介者扱されるしかないエイリアン。
一方で、エイリアンの武器は熱心に研究しながら、彼らを実験動物の様に扱い、簡単に処刑したり、都合よく隔離しようとする人類。
彼らは半エイリアンとなったヴィカスの体さえ、自らの欲望と利益のために利用しようとするのだ。
人間とエイリアンのどちらでもあり、どちらでもなくなってしまったヴィカスの目の前にあるのは、それまで厄介な来訪者としてしか見ていなかったエイリアンたちの極めて“人間的”な素顔と、逆説的に浮かび上がる人間社会の抱える深い闇だ。

面白かったのは、本作から幾つかの点で「アバター」を連想させられた事。
勿論、製作費が本作の10倍に達する3D超大作は、対極の作品とも言えるのだが、フェイクドキュメンタリーの手法と徹底的に作りこまれた世界観によって臨場感を作り出し、観客に作品世界をリアルに体感させるという見せ方は、方法論は別として狙いは良く似ている。
そして、エイリアンというモチーフを通じて、人類の抱える問題を提起するという点。
さらに、最初は人類側にあった視点が、人類とエイリアンの間の存在となった主人公を通して徐々にエイリアン側に移り、最終的には人類とは似ても似つかないエイリアンに感情移入させるのも共通だ。
もっとも、「アバター」のナヴィは元々人間に近く、見様によっては美しいとも感じられるが、おそらく観た人の99%に嫌悪感を感じさせる造形の“プラウン”で観客を感動させるのだから、考えようによってはこっちの方が凄い事をやっているのかも知れない。
いずれにしても、体感的リアリズムというのは21世紀のSF映画のカギなのだろう。

「第9地区」は、俊英ニール・ブロムカンプのマグマの様な才気が迸る傑作だ。
エイリアン版のアパルトヘイトというユニークな着想から生まれたのは、高度な社会性を持ちながら、B級SF的なアクションとバイオレンスの猥雑な面白さもあり、熱血な友情、先の見えない恐怖、さらにはブラックな笑いすらも詰め込まれた、センス・オブ・ワンダーの塊の様な作品である。
SF映画の歴史には、数年に一度くらいの割合で予想もしなかった斬新な視点を持った作品が生まれてくるものだが、これは間違いなくその一本。
1977年が「スターウォーズ」と「未知との遭遇」が生まれた年として歴史に残ったのと同様、2009年は「アバター」と「第9地区」の年として長く記憶されるだろう。
SFヲタクは勿論の事だが、映画ファンなら新たな才能の出現を映画館で目撃するチャンスを逃すべきではない。

今回は、エイリアンがエビだったので、シュリンプカクテルと飲みたい酒を。
ロシアンリバーのスパークリング専門銘柄「J」「キュヴェ・20・ブリュット」をチョイス。
カリフォルニアワイン好きなら知らぬ人のいないジョーダンワイナリーのオーナーの娘、ジョディ女史によって設立された銘柄で、複雑なフルーツの香りと、スッキリとした辛口の喉越しが味わえる逸品。
海の幸との相性も良く、ボトルもお洒落なので、カリフォルニア土産にもお勧めだ。

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