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借りぐらしのアリエッティ・・・・・評価額1600円
2010年07月20日 (火) | 編集 |
二十一世紀に入ってからのジブリ作品で、一番好きかも。
タイトルロールの「借りぐらしのアリエッティ」は、古い屋敷の床下にひっそりと暮らし、必要なものを人間からちょっとだけ“借りる”事で生活している小人一家の一人娘。
彼女が図らずも「人間に見られれてはいけない」という掟を破ってしまった事で、一家の穏やかな秘密の暮らしは終わりを告げる事になる。
自然豊かな田舎の古い家、日常のほんの裏側に潜む不思議、少年と小人(妖精?)のふれあいなど、ジブリのブランド化の原点ともいえる「となりのトトロ」との共通項が多く見え、将来に希望と不安を抱えた若者達の物語という点では「耳をすませば」を思わせる部分もある。
「崖の上のポニョ」の“お魚の大波”シークエンスなどを手がけた敏腕アニメーターで、これが監督デビュー作となる米林宏昌は、普段見慣れた人間の世界を、地上数センチの小人の視点から眺める事で不思議が一杯詰まった幻想世界へ見事に変貌させている。
94分というコンパクトな物語は、極めてシンプルながらもテーマ性もしっかりしており、所謂ロー・ファンタジーの佳作と言える作品に仕上がった。

十四歳のアリエッティ(志田未来)は、小人の少女。
人間の家の床下に住み、角砂糖やティッシュペーパーなどの日用品を、少しだけ拝借してくる“借りぐらし”の一族だ。
アリエッティが始めての“借り”に出た夜、病気療養でその家にやって来たばかりの人間の少年・翔(神木隆之介)に見つかってしまう。
人間に姿を見られたら、もうその家にはいられない。
責任を感じたアリエッティは、家族を守るためにある行動に出るのだが・・・


人間の家の床下に、いかにもヨーロッパ的な内装の家を作って住んでいる小人たち。
メアリー・ノートンの原作は未読なので比較は出来ないが、映画では日本が舞台となっているのに、なぜか主人公の少女は原作と同じアリエッティというイタリア人みたいな名前のまま。
もっともこのあたりはアニメーションのいい所で、適度に無国籍な世界観故に直ぐに気にならなくなる。
アニメーター出身の監督らしく、ビジュアル面は圧巻の仕上がりである。
アリエッティの身長は角砂糖から推察するに10センチくらいだろうか、このスケールから眺めた世界の新鮮なこと!
もちろん今までも実写の「ミクロキッズ」を初め、小人の出てくる作品は沢山あるし、70年代の日本アニメには昆虫を主人公とした極小目線の作品も珍しくなかった。
だが10センチの世界から見た世界と、小人たちの生活のディテールを徹底的に突き詰めた本作の描写は、デザイン的なレベルが極めて高い事もあり、過去の作品とは一線を画するユニークさがある。
音響デザインにも凝っていて、人間のキッチンを始めて見たアリエッティの脳裏で、今まで床下で聞いていたであろう様々な生活音が重低音でリフレインする描写は面白かった。

アリエッティたち“借りぐらし”の一家は、上の家に住む人間達から様々な物を借りる、というよりも必要最小限の量をもらって生活している。
つまり人間と共生しているのだが、危険な人間とは決してふれあう事は許されず、もしも見つかれば捕まる事を恐れて引っ越さなければならない。
彼らの“借りぐらし”は、“狩ぐらし"であるのと同時に“仮ぐらし”に通じる。
ファンタジー世界の住人でありながら、本作の小人たちは自らの身を守る“魔法”を持たない。
彼らには恒久的に安心して生活できる住処はどこにも無く、常に緊急事態に備えなければならない、切ないくらいに脆い流浪の生命なのである。
おそらくはそうして何十年も続いてきたであろう小人達の掟は、アリエッティと病気療養のためにこの家にやって来た少年・翔によって破られる。
偶然アリエッティの姿を見た翔は、彼女とコミュニケーションをとろうとし、アリエッティもまた自らと家族を守るために翔の前に姿を現す。
この二人、基本的には共に善意の人なのだが、お互いに良かれと思ってとった行動が、若さゆえの独りよがりとなり、結果的にアリエッティの一家の生活を滅茶苦茶にしてしまう。
面白いのは、種族も環境も全く異なる、片方は人間ですらない二人が、実は結構似た者同士だという事。
物語の中盤、翔がアリエッティに「君達は滅びゆく種族なんだね」と告げるシーンがある。
「そんなことはない!」と反論するアリエッティだが、この世界に住む人間の数が60億以上と聞いて、生まれてからたった三人の家族だけで生きてきた彼女は、ショックを受けて口ごもってしまう。
絶対的な強者である人間が、傲慢に言い放った様に聞こえるこの台詞だが、実は翔は重い心臓病に侵されて、成功率の低い手術を控える身で「滅びゆく」という言葉は自らに向けられたものでもあるのだ。
種としての未来と個としての未来の違いはあれど、これは自分達の未来に、大きな不安を抱えた少年と少女が出会い、自分達の招いた混乱を収拾する過程で、心を通じ合い成長して行く物語なのである。

二人が出会ったことで、翔の家でのアリエッティたちの“借りぐらし”は破綻してしまうわけだが、米林宏昌監督は、物語の終わりに困難に満ちた二人の未来に小さな希望の火を灯らせる。
去り行くアリエッティに向かって、翔は「アリエッティ、君は僕の心臓の一部だ」という言葉を送る。
自分の将来を悲観していた翔にとって、アリエッティ一家を助ける小さな冒険は、生を実感する体験だっただけでなく、たとえ滅びゆく種族であっても決して未来を諦めない彼女達に、生きる力を教えられた時間に他ならない。
またアリエッティにとっては、結果的に住処を追われた事で、“借りぐらし”せずに自力で生きている野生児スピラーと出会い、新しい人生の冒険に踏み出す事が出来たのである。
米林監督によると、彼は宮崎駿の脚本をそのまま使わず、シーンごとに取捨選択した上で、独自の描写を盛り込んでいったと言う。
宮崎駿の書いた脚本を読んだ訳ではないので、これはあくまでも想像に過ぎないのだが、本作は当初の構想よりもパーソナルな青春映画としての色彩が強くなっているのではないだろうか。
人間から“借りぐらし”している小人の世界は、地球と言う巨大な家から借り過ぎなくらい借りまくっている人間自身の比喩でもあるはずで、前記した「滅び行く種族」という台詞も宮崎駿の中ではもう少し広い意味を持っていた様な気がする。
アリエッティと翔の未来で、まるで希望と絶望がせめぎあっているかの様な一種独特な情感を持つラストも、二人の映画作家が物語に託したものが、別々のベクトルを持っているからではないか。
個人的には広げすぎたイメージを具現化できず、崩壊させてしまっている近頃の宮崎作品を観れば、小粒ながらも描きたい事を明確に絞り込んだ本作の方向性は正解に思える。
この作品に関しては、むしろ米林的なる部分をもっと主張しても良かったかもしれない。

物語として惜しむらくは、アリエッティ一家を捕まえようとするお手伝いのハルさんが、なぜあれほど小人にネガティブな執着をするのかが良くわからない事で、結果彼女はアリエッティと翔の単なる妨害者にしか成りえておらず、少々浮いた存在になってしまっている。
どうやらハルさんも子供の頃に小人を見たという設定がある様なので、例えば小人を見たと言った事で大嘘つき呼ばわりされたとか、彼女の小人に対する感情のバックストーリーを一言でも良いから盛り込んでおけば、物語の中での立ち位置がより必然性を持つものになっただろう。
あと、例によってキャラクターの声を声優でなく実写の俳優が演じているのだが、これもハルさんを演じる樹木希林の声に特徴がありすぎて、本人の顔が浮かんでしまって困った。
しばしばキャラクターを記号化して演じてしまう声優ではなく、俳優の自然な演技力を生かすという考え方はわかるが、この手法はメリットと同じくらいデメリットもあるので、慎重なキャスティングと演出が求められるのは間違いないだろう。

「借りぐらしのアリエッティ」には、派手なアクションも無いし、手に汗握るスリルもない。
だが物語はわかりやすく、テーマ性は明確で、何よりも途中からぶっ壊れてゆかない(笑
これは例えて言えば、若いシェフが心をこめて作り上げたシンプルな味の和風パスタ。
コース料理の様な絢爛さや、ファーストフードの様な刺激はないが、じっくりと味わえばその丁寧な仕事を十分に堪能する事が出来る。
“お題”その物をもっと自由にしてあげれば、このシェフはもっと伸びる様な気がする。
個人的には、宮崎駿にももう一発派手な花火を打ち上げてもらいたいが、こういう作品をきっちりと作れる次世代の作家がようやくジブリ内部から出てきたのは素晴らしい事であると思う。
米林宏昌監督の次回作にも大いに期待するが、仕事の確かさはわかったから次はもう少し弾けた作品も観てみたいかな。
ちなみに音楽がいつもの久石譲ではなく、フランス人ハープ奏者のセシル・コルベルなのもちょっと新鮮で、予告編やCMでも使われているテーマ曲は妙に耳に残る。
ジブリ作品は、いつもこのあたりが上手い。

今回は、ハーブを愛する小人たちに合わせ、フランスのパジェス社の「ヴェルヴェーヌ・デュ・ヴェレ」をチョイス。
30種類以上のハーブをブランデーに浸して作られた鮮やかな緑の酒。
本来薬酒で、全体の24%がエキス分、アルコール度数は55°とかなり強い。
味わいはかなりドライな印象で、カクテルベースにしたり、紅茶に加えても良いし、お菓子作りなどにも使える。
アリエッティの家では、お酒も借りていたのかな?

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