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インセプション・・・・・評価額1750円
2010年07月24日 (土) | 編集 |
「ダークナイト」の大ヒットで、名実共にハリウッドのトップディレクターとなった、鬼才クリストファー・ノーランの最新作。
デビュー以来、人間の心の持つ様々な側面をモチーフとしてきたノーランが、今回選んだのは“夢”の世界。
「インセプション」は、人間がもっとも無防備となる夢の中でターゲットの頭に侵入し、“アイディア”を盗み出すプロフェッショナルを描いたSFサスペンスだ。
※完全ネタバレ注意

ドム・コブ(レオナルド・デカプリオ)は、他人と夢を共有する事で、アイディアを盗み取る特殊な産業スパイ。
だが、彼は妻殺しの容疑をかけられた逃亡者でもある。
嘗てコブは、妻のモル(マリオン・コティヤール)と共に夢の深層へのダイブを繰り返していた。
やがて夢と現実の区別がつかなくなったモルは自殺し、コブは故郷のアメリカに幼い二人の子供を残して流浪の生活を送っている。
そんな彼に巨大企業を率いるサイトー(渡辺謙)が、新たな仕事を依頼してきた。
その内容は、アイディアを盗むのではなく、ライバル企業の後継者であるロバート(キリアン・マーフィー)の夢に侵入し、自分から会社を解体する様に“アイディア”を植えつけると言う極めて危険で困難なもの。
だが、自らの犯罪歴の抹消を条件に依頼を引き受けたコブは、作戦を成功させるためにスペシャリストで編成されたチームを作り始める・・・


毎度の事ながら、よくまあこんな迷路というかパズルというか、複雑怪奇なプロットを構成できるものだ。
他人の頭の中へ侵入するというコンセプト自体は、SFの世界では結構昔からある。
だが、本作の場合は単に他人の夢に侵入するのではなく、特殊な装置を使ってターゲットをあらかじめ設計された“第三者の夢”に誘導し、その中で相手の潜在意識にある“アイディア”を盗み出すのである。
また夢がいつくもの階層、つまり夢の中の夢、そして更にそのまた夢という具合に分かれていて、クライマックスのロバートへ“アイディア”を植えつける作戦では、その全ての階層で別々の出来事が同時進行する。
観てるだけでもややこしいのに、これをきっちりと構成出来る脳ミソには恐れ入る。

面白かったのは、夢の階層が深くなるたびに、夢の中で経過する時間と実時間との間にずれが大きくなってゆくという設定だ。
現実の1時間が夢の中では20時間、夢の中の夢では17日、その更に夢だと11ヶ月と、どんどんと長くなってゆくのである。
若い頃にコブと妻のモルは、この深層へのダイブを繰り返したがために、夢の中で50年もの歳月を過ごす事になる。
結果、夢の世界こそが現実になってしまったモルは、現実世界を受け入れられず、自ら命を絶ってしまう。
なぜなら夢の世界で死ねば、現実で目覚めるという決まりがあるため、夢と現実が逆転しているモルにとっては、この世界での死が本当のあるべき世界へ帰る事に他ならなかったのだ。
実は、モルがこの様な考えに取り付かれた原因こそが、コブが夢の世界で彼女に植えつけた“アイディア”によるものなのである。
余りにも長くなりすぎた夢の世界に安住し、現実に戻ろうとしないモルに対して、コブは“この世界は現実ではない”という“アイディア”を植えつけるのだが、その思念はモルの中で増殖し、現実世界に戻った後も彼女を支配してしまう。
つまり、コブは図らずも彼女の死の原因を植えつけてしまった訳で、サイトーの依頼の実行は、コブにとって自らのトラウマに向き合い、戦う事でもあるのだ。
ちなみに、現実の僅かな時間が夢の世界では永遠ともなるという考えは、伊藤潤二の短編漫画「長い夢」に描かれた内容に酷似している。
偶然だろうが、こちらも傑作と言って良い作品なので、興味ある人は一読をお薦めする。

さて、コブを演じるのは、妻が自殺してしまう「レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで」や、妻殺しの嫌疑をかけられる「シャッターアイランド」と、なぜか最近妻との関係がトラウマとなる役が続いているレオナルド・ディカプリオ
最近ではスコセッシ作品の顔という印象が強いが、同じように同一俳優とのコンビ作が多い、クリストファー・ノーランとの相性は悪くない様だ。
この濃密な心理劇の中で、彼は自らの内面に隠した妻の死の真相に対する贖罪の念と、愛する家族の待つ故郷への望郷の念との間で、複雑な葛藤を繊細に演じてみせる。
モルを演じるマリオン・コティヤール「パブリック・エネミーズ」が記憶に新しいが、今回は夢の世界の住人で、実はコブの思念の投影であるという難しい役を、ムーディーに演じた。
他のキャストの面々も凄い。
依頼人のサイトーは、我らが渡辺謙が大物オーラを輝かせながら貫禄たっぷりに演じ、日本ロケのシークエンスもある。
潜入チームは、コブのパートナーのアーサーに、「(500)日のサマー」でブレイクしたジョセフ・ゴードン=レヴィット、作戦の舞台となる夢の世界を構築する「設計士」のアリアドネにエレン・ペイジ、他人に成りすましてターゲットを誘導する「偽装師」のイームスにトム・ハーディ、深い眠りをもたらす沈静剤を作る「調合師」のユスフにディリープ・ラオ
更にターゲットのロバートにキリアン・マーフィー、父親のモーリスにピート・ポスルスウェイト、そしてコブの恩師にしてモルの父親であるマイルス教授にマイケル・ケインと、殆どハリウッドの演技派見本市の様である。

一つの物語が現実を含めて五つの世界で同時進行するという正に迷宮の様な物語を、クリストファー・ノーランは大オーケストラのコンダクターの様に、多くの登場人物に役割を割り振りながら、わかりやすく、テンポ良く、スリリングに描いてゆく。
舞台は東京からパリ、タンジールへ、そして現実から夢へ、夢からまた夢へと目まぐるしく移り変わるが、その流れは完璧に計算され、制御されている。
本作は上映時間が2時間28分もの長尺だが、飽きる暇は全くない。
夢の世界での葛藤と息つく間もない冒険の果てに、コブがたどり着いたのは・・・・。
物語の終わりは、物凄く絶妙なところでカットアウトされているので、彼のいる場所に関してはどちらの解釈も可能であり、観客一人一人に委ねられている。
心情的にはコブは虚無の中でトラウマを克服したと思いたいところだが、このあたりで思考のキャッチボールが出来るあたりが、ノーラン作品の魅力だろう。
もっとも、一度観ただけでは投げられてる事に気付かなかったボールが沢山ありそうで、作品の全貌を掴みたくて、もう一回二回と観てしまいそうなあたり、相当に意地悪ではあるが。

本作は、思い返しても欠点らしい欠点を見出せない、限りなくパーフェクトな仕上がりである。
個人的には、せっかくイマジネーションの神秘なる世界を舞台にしているのだがら、ビジュアル的にもう少し遊んで欲しかったというのが唯一の不満点だ。
勿論、作戦の第一階層はターゲットに夢と気付かせてはならないという縛りがあったが、第二階層でネタをばらしたのだから、第三階層ではもう少しぶっ飛んでも良かったのではないか。
エレン・ペイジが設計士として夢を構築する練習のシークエンスが視覚的にかなり面白かっただけに、クライマックスでもあれ以上のイメージを期待してしまった。
まあ、これはあくまでも“私の観たかったもの”が作品に含まれていなかったというだけで、好みの問題でもあるので、作品自体の欠点とは言えないだろう。
クリストファー・ノーランの、ダークでディープな迷宮にどっぷりつかりたい人には、文句無しでお薦めだ。

今回は凝りに凝った映画に対してストレートに「ドリーム」をチョイス。
ブランデー40mlとオレンジ・キュラソー20ml、ぺルノ・アブサン1dashをシェイクしてグラスに注ぐ。
スイートだが度数の高い酒の組み合わせで、アニスの独特の香りが強いアクセントを添える。
まあ映画同様に好みの分かれそうなカクテルだが、本物の夢の世界へと誘ってくれる。

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