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カラフル・・・・・評価額1750円
2010年08月24日 (火) | 編集 |
原恵一監督の最新作「カラフル」は、ファンタジーの形で魂の再生を描いたホームドラマ。
制作は「ガンダム」などで知られるサンライズで、同社の内田健二社長から原監督へ企画が打診され、異色のコラボレーションが実現したという。
まあ今の日本の演出家で、この人ほど期待を裏切らない人もいないだろうが、今回も比較的地味な内容ながら、全てがハイレベルに仕上がった秀作となった。

死んだはずの「ぼく」(冨澤風斗)に、小学生の様な格好をした天使(マイケル)が告げる。
「おめでとうございます!抽選に当たりました!」
「ぼく」は、生前大きな罪を犯したことで、本当なら輪廻のサイクルから脱落するはずだったが、特別に下界で再チャレンジするチャンスを得たらしい。
こうして下界に戻った「ぼく」は、プラプラと名乗る天使に導かれ、自殺した小林真という中学生の体に入りこみ、半年間の仮の生を生きることに。
突然生き返った息子に、両親は大喜び。
だが、小林真として振舞ううちに、「ぼく」はこの一見幸せそうな家族が、複雑な葛藤を抱えている事を知ってしまう・・・


原作は、直木賞作家の森絵都の小説だが、天使に導かれて生を見つめ直すという設定は、フランク・キャプラの「素晴らしき哉、人生!」を思わせる。
しばしば木下恵介や小津安二郎に比較される原恵一が、いわばアメリカの木下とも言うべきキャプラ的物語にアプローチしたのは面白い。
もっとも、ハリウッド的なる幸せを追求する事に躊躇の無いキャプラに対して、原恵一の描く物語は良い意味で日本的で、爽やかさと曖昧さが融合した独特の味わいを持つ。

タイトルとは対照的に、モノトーンの寂しげな映像が印象的だ。
殆ど実写と見紛うばかりなリアルな背景は、観客と作品世界との距離を縮めるが、同時に本来“絵”に過ぎないキャラクターを浮かせる危険をはらむ。
だが、細やかに内面を造形、演出され、丁寧に命を吹き込まれたキャラクターは、下手な実写作品以上にエモーションを感じさせる。
背景をどこまで実写に近づけるかというさじ加減も、物語の進行の中で細かく計算されており、この一見実写でも作れそうな写実的アニメは、実は虚構と現実が奇妙な調和のなかに溶け合った、アニメでしか成立し得ない世界なのである。
この原作は、嘗て森田芳光脚本、中原俊監督で同名の実写映画化されている。
個人的な印象ではあるが、今回のアニメのキャラクターは、生身の実写キャラクターを、リアルではなくリアル感で遥かに超えていたと思う。

主人公は人生再挑戦のチャンスを与えれ、小林真として生き返った「ぼく」という変則的な存在
死ぬと生前の記憶を失うので、「ぼく」は自分が何者かも覚えていない。
小林真の体を半年間借りるのは“ホームステイ”で、その間は自分の罪を思い出す“修行”の期間という位置付けなのだ。
まっさらの状態で再生した「ぼく」は、やがて小林真とは何者か、彼の生きてきた世界とはどの様な世界なのかを知って愕然とする。
一見普通に見える小林家は、優しさだけがとり得のうだつの上がらない父、フラメンコ教室のインストラクターと不倫関係にあった母、出来の悪い弟を見下してる兄に囲まれた、真にとっては全く気の休まらない所だ。
学校に行っても友達は一人もおらず、密かに好意を持っている後輩の桑原ひろかは中年男と援助交際中。
真にとって心から安らげる場所は、好きな絵を描く美術部の部室だけなのだ。
そんなこの世の地獄に生きる真を知るにつれて、「ぼく」は新しい人生にどう向き合えば良いのかがわからなくなる。

何とか生活に慣れようとしてみるものの、献身的に世話を焼く母親も、優しく接する父親も、表層だけ取り繕う偽善者に見えてしまうし、無口な兄は理解し難く、話しかけてくる数少ないクラスメートはうっとおしく、周りの者全てに辛く当たってしまう。
唯一の例外は、恋心を抱いているひろかに接する時だけだ。
真の抱えていた葛藤というのは、程度の差こそあれ誰もが思春期に通り過ぎる類のもので、だからこそ彼の心情は非常にわかりやすい。
観客は皆、彼を理解できる反面、そこに自分自身の過去を観て少々気恥ずかしくなるのではないか。
だが、閉じこもってばかりでは“修行”にならぬ、別に小林真と同じ生き方をしなくても良いのだと、プラプラに叱られた事で、「ぼく」は小林真の殻を少しずつ破り始める。
初めての友人となる早乙女と、廃線となった玉川線の後を辿る短い旅の描写は、現実の風景が驚くほど完全に再現されており、その描写の精密さは基本的に写実的な本作の中でも突出している。
ここは真の中の「ぼく」が初めて現実を肯定的に受け止めるシークエンス故に、ハッとするような日常の美しさをリアリズムの中に描写する事が必要なのだろう。

もちろん、人間突然大人になったりはしないから、相変わらずネチネチと母親を責めてみたり、自分を気にする女生徒の信頼を裏切ってみたり、ネガティブな行動も続く。
だが、人とつながり世界とつながる事を覚えた「ぼく」は、いくつものささやかな“幸せ”を知ってゆく。
友達と並んで歩く幸せ、家族で鍋を囲む幸せ、自分の事を気にかけ、心配してくれる人がいる幸せ。
本作では真の食事のシーンが極めて象徴的に使われており、母と囲む空虚な食卓、父と出かけるラーメン店、早乙女と分け合うフライドチキンと肉饅などが、それぞれの段階の心の有様を端的に描写してゆく。
そして「ぼく」はようやく理解する。
今までの「ぼく」は人間を一つの色に染めて見ていたが、人間というのは単色で描けるほど単純ではなく、カラフルなのが当たり前で、一人のカラフルは沢山カラフルに支えられて生きていると言う事と、自分が生前どんな罪を犯したのか。

物語の結末は、意外性のある物だが、特にびっくりさせようと言う意図は見えない。
感の良い人なら、「ぼく」が小林真の心情に同化するあたりで気付くだろうし、物語上も途中からさり気無く「ぼく」が何者か示唆されている。
意外なのは、むしろプラプラが明かす自らの過去だが、「ぼく」との対照となってテーマ性をくっきりと浮き立たせる効果があった。
原監督の作品は、しばしば脚本のロジックで細部が破綻する事があるが、今回はベテランの丸尾みほが脚本を担当し、叙情的な演出と細部までロジカルにキッチリと構成された脚本と言う理想的な組み合わせとなった。

主人公の「ぼく」の声優は、「河童のクゥと夏休み」で、タイトルロールのクゥを演じた冨澤風斗
天使のプラプラに子供タレントのまいける、小林真の両親を麻生久美子と高橋克己、兄の満を中尾明慶、真の初めての友達になる早乙女に入江甚儀、密かに想っている桑原ひろかに驚きの南明奈
一番面白かったのが、ちょっと変な同級生、佐野唱子を演じた宮崎あおい
エンドクレジットまで全然誰だかかわらなかった。相当に器用な人だ。
アニメ声優と実写俳優が入り混じるキャスティングだが、作品世界に十分フィットしていて違和感は無い。
まいけるの舌足らずの大阪弁などは、どう考えても演技が上手いとは言えないのだけど、キャラクターとしてしっかり説得力があるのだ。

「カラフル」は、ある意味現在の日本のアニメーションの本流からは最も遠い存在だろう。
ロボットも、萌え系の女の子も、グッズになりそうなキャラクターは一切出てこないし、スペクタクルな映像も無い。
物語も決してドラマチックではなく、終始淡々と地味に展開する。
だが、リアルな葛藤を抱えるキャラクター達に物語に引き込まれ、観終わると深い感動がじわじわと心に浸透するように、心地よく広がって行き、長く余韻が続く。
うまく言葉では説明出来ないが、原恵一の作品には理詰めではない叙情的な美しさがあり、それが心の奥底の琴線を静かに揺さぶるのである。
彼の特質を端的に表しているのが音楽のチョイスかもしれない。
尾崎豊の「僕が僕であるために」、アンジェラ・アキの「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」、そしてTHE BLUE HEARTSの「青空」のカバーが、それぞれ絶妙のタイミングで使われる。
まあ、あまりにもドンピシャすぎてベタな気もするが、涙腺をギュッと刺激されるのは間違いなく、特にエンディングテーマになっている「青空」は歌詞の意味を考えるとより味わい深い。

今回はタイトル同様にとてもカラフルなカクテル、「エンジェルズ・ディライト」をチョイス。
シェリーグラスを用意し、グレナデン・シロップ、クレーム・ド・バイオレット、ホワイト・キュラソー、生クリームの順番に各15mlを丁寧に注いでゆくと、虹の様にクッキリとした縞模様が出来上がる。
グラスにスプーンの背を沿わせて、そっと注ぎいれるのがコツ。
比重の関係で模様が生まれるので、他の組み合わせを実験してみるのも楽しい。
四種類以上のカラフルな虹を作ることも可能だ。

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