fc2ブログ
酒を呑んで映画を観る時間が一番幸せ・・・と思うので、酒と映画をテーマに日記を書いていきます。 映画の評価額は幾らまでなら納得して出せるかで、レイトショー価格1200円から+-が基準で、1800円が満点です。ネット配信オンリーの作品は★5つが満点。
■ お知らせ
※基本的にネタバレありです。ご注意ください。
※当ブログはリンクフリーです。内容の無断転載はお断りいたします。
※ブログ環境の相性によっては、TB・コメントのお返事が出来ない事があります。ご了承ください
エロ・グロ・出会い系のTB及びコメントは、削除の上直ちにブログ管理会社に通報させていただきます。 また記事と無関係なTBもお断りいたします。 また、関係があってもアフェリエイト、アダルトへの誘導など不適切と判断したTBは削除いたします。

■TITLE INDEX
タイトルインディックスを作りました。こちらからご利用ください。
■ ツイッターアカウント
noraneko285でつぶやいてます。ブログで書いてない映画の話なども。
■ FILMARKSアカウント
noraneko285ツイッターでつぶやいた全作品をアーカイブしています。
インシテミル 7日間のデスゲーム・・・・・評価額1200円
2010年10月27日 (水) | 編集 |
「インシテミル 7日間のデスゲーム」というタイトル通り、近頃流行の不条理デスゲーム物。
大金のかかった心理実験で極限状態に置かれた人間達が、疑心暗鬼から自滅してゆくという、なんだか「ライアーゲーム」「es[エス]」を合体させたような作品である。
正直、このジャンルは粗製濫造気味で、最近観た漫画家の江川達也監督作「KING GAME キングゲーム」も絶望的につまらなかった。
まあこちらはベテランの中田秀夫監督だけに、それほど悪い作品ではないのだが、なんだかあちこちに既視感を感じてしまい、全てがちょっとずつ残念な作品だ。

フリーターの結城理久彦(藤原竜也)は、コンビニで偶然出会った須和名祥子(綾瀬はるか)に紹介された、時給112000円というバイトに共に応募する。
二人の他に集められたのは、偽研修医の大迫雄大(阿部力)と恋人の橘若菜(平山あや)、学生の真木雪人(大野拓郎)、ウェッブデザイナーの関水美夜(石原さとみ)、リストラ中年の西野宗広(石井正則)、主婦の渕佐和子(片平なぎさ)、無口な岩井荘助(武田真治)、そしてアル中の元社長、安東吉也(北大路欣也)の10名。
それは、暗鬼館という地下に作られた隔離施設で、ルールを守りながら7日間を過ごすという心理実験のはずだった。
ところが、個室へと入った理久彦は、部屋の中に武器とカードが入った箱があるのを発見する。
カードには、その武器の登場する推理小説のタイトルと、殺害方法が指定されていた・・・・


この手のデスゲーム物が流行始めたのは、やはり2004年に「ソウ」がヒットしてからではないかと思う。
以来東西で様々なフォロワーが登場したが、総じてスプラッターホラー色の強い洋物に対して、和物はゲーム的な要素が強いのが特徴と言えるだろう。
ゲームであるからにはルールが必要で、本作にも幾つかの基本ルールが設定されている。
まず舞台となるのは、“実務連絡機構”なる謎の組織が運営する“暗鬼館”という脱出不可能な地下施設。
ここに、心理実験という名目の元に、様々な背景を持つ10人の老若男女が集められる。
実験の期間は7日間で、時給はなんと112000円!
当然、美味しい話には裏があり、どうやらこの実験では何らかの事件が起こる事が設定されていて、事件が起こったら自分達で解決しなければならないという。
事件解決には誰かが“探偵”となり、“犯人”を特定する。
そして意見が別れた場合は、多数決で誰が犯人かを決定するというもの。
さらに、館内には“ガード”と呼ばれるロボットが巡回しており、消灯時間に個室から出る事は禁止されるている。
第一日目は何事もなく過ぎるが、翌朝の目覚めと共に、お約束通り第一の殺人が起こるという訳だ。

原作は、米澤穂信によるベストセラー小説らしいが、未読。
閉鎖空間に隔離された10人の登場人物たちが、一人また一人と姿無き殺人犯に殺されてゆくという展開は、所謂クローズド・サークル・ミステリの代表作であるアガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」をモチーフとしている。
10人のインディアン人形などのアイテムも踏襲されており、劇中でもクリスティとの類似性に言及されているので確信犯的ではあると思うが、登場人物たちが互いを犯人と疑い、疑心暗鬼から自滅して行くという大筋まで同じなので、ぶっちゃけオマージュとパクリのギリギリの境界線にある作品だと思う。

本作はホリプロ創立50周年の企画物だそうで、10人を演じるのは全員ホリプロ所属の俳優達。
藤原竜也綾瀬はるから若手有望株から、2時間ドラマの女王片平なぎさ、大ベテランの北大路欣也まで、ホリプロオールスターズはなかなかに壮観だ。
もっとも、豪華キャストも10人もいると、全員を目立たせるのは至難の業。
そのあたりは作り手も心得ていて、キャラの強い片平なぎさや石井正則、武田真治と言った個性派は早々に前半で退場するも、登場した時から死亡フラグ立ちまくりの真木雪人などかわいそうなくらいに存在感が無い。
まあ彼以外は、筋立て上物凄くわかりやすいステロタイプな役柄ながら、それなりに描写されていたので、群像劇としてのバランスは悪くは無いのだが。
ちなみにエンドクレジットは、やっぱり年功序列だった。

ただ、物語までがあまりにもわかりやす過ぎなのは、一応ミステリを売りにする作品としていかがなものか。
最大の問題は、肝心の犯人探しゲームがアバウト過ぎて、推理物としては全く成立していない事だろう。
早々に殺人事件が発生し、阿部力の偽医者がいきなり犯人を名指しするのだが、これが「えっ、そんな曖昧な推理で良いのか?」というくらいテキトーなもの。
そもそも犯人が誰か意見が別れたら、多数決で決定してOKというルールが存在する時点で、実は推理物としては破綻しているのである。
かと言って、心理劇としてみた場合も、登場人物の思考・行動があまりにもステロタイプに造形され過ぎており、生身の人間の葛藤というよりも、それぞれが忠実に作劇上当てはめられた役割を演じている様にしか見えない。
よって誰が何の役なのか簡単に読めてしまい、事件の糸を引く黒幕の正体などもイージー過ぎてバレバレだ。
主人公を演じる藤原竜也の、まるで舞台劇の様に抑揚たっぷりの演技も、物語の嘘くささを余計に際立たせてしまっている。

また密室劇であるから空間のデザインは非常に重要なはずだが、残念ながら相当にチープ。
デザインそのものにコンセプトが感じられず、物語にも空間の構造が生かされていない。
何しろ壁に見取り図が張られているにも関わらず、どこに何があるのか非常にイメージしにくいのだ。
ダイニングテーブルにこれ見よがしに置かれた10人のインディアン人形なども、クリスティとの関連を示唆する以上の意味を持っていないし、この手のデスゲーム物と人形と言うと、自動的に「ソウ」を連想させてしまうのもマイナス。
物語上重要な役割を果す“ガード”のデザインなんて、まるで70年代の特撮番組から抜け出てきた様な代物で、プラスチックのおもちゃにしか見えない。
いくらなんでも今の時代にこれは無いだろう。

基本的に冒頭とラスト意外は施設の中だけで進行する物語だが、途中で一箇所だけカメラが外へ出て、人々が暗鬼館で起こっている実験をネット中継で観ている様子が描写される。
この実験とは、要するに営利ショーであるという事だが、このシーンは無いほうが良かった。
目的がはっきりしない方が理不尽さが強調されるし、ネタ晴らししてしまった瞬間に今度は設定の辻褄が合わなくなってくる。
過去に何度も実験が行われ、世界中の人が見てるようなショーなら、主人公達が知らない事が不自然だし、そもそも7日もの間にいつ起こるとも知れない殺人事件を待たなきゃならないなんて、リアルタイムのショーとして成立しないだろう。
思うに、このシーンをわざわざ入れているのは、本作のテーマ的な部分と関連するのだろうが、正直ラストまで観ても、私にはこれがどういう話なのか、何が言いたいのかが良くわからなかった。
生き残った二人は、結局この死のゲームを通して何を思い、何を得たのだろう。
彼らの心情が伝わってこないので、命がけでゲットした一億円が詰まった鞄を投げ捨てるのも、何故なんだろうと思ってしまった。
まあ一言で言えば、10人がゲームライクにテンポ良く殺しあって、最後には何にも残らない、そんな映画である。

ところで「インシテミル」って変なタイトルは何語だろう?ひょっとして“INCITE MILL”なのかな?
“INCITE”は刺激とか扇動とか言う意味があるし、“MILL”は本来製粉工場の事だが、殴り合いという意味もあるから、くっつけて“扇動的な殴り合い”というようなニュアンスだろうか。
色々な意味でわかりやす過ぎるこの映画、一番ミステリアスなのは、実はこのタイトルだったりして。

今回は、大金が掛かったゲームにちなんで、「ミリオンダラー」をチョイス。
ドライ・ジン45ml、 スイート・ベルモット15ml、 パイナップル・ジュース15ml、グレナデン・シロップ1tsp、卵白1個をシェイクしてグラスに注ぎ、仕上げにカットしたパイナップルを飾る。
非常に歴史の古い一品で、パイナップルジュースの酸味が効いたオレンジのカクテルに浮かぶふわりとした卵白の泡の白が華やいだ雰囲気を作る。
ちょっと物足りない映画の口直しに。

ランキングバナー 
記事が気に入ったらクリックしてね

こちらもお願い

ゴードン・ドライ・ジン 正規 40度 700ml

ゴードン・ドライ・ジン 正規 40度 700ml

価格:1,260円(税込、送料別)





スポンサーサイト