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アメリア 永遠の翼・・・・・評価額1300円
2010年12月09日 (木) | 編集 |
空を飛ぶ事が、まだ命懸けの冒険だった時代。
女性初の大西洋単独横断飛行を初め、数々の飛行記録を作り、1937年に太平洋上空で行方不明となった、伝説的な航空冒険家、アメリア・イヤハートの半生を描いた伝記映画。
「レインマン」のロン・バスが脚本を担当し、「モンスーン・ウェディング」のミーラ・ナイール監督がメガホンを取った。
まるで記録映画から抜け出したかの様な、ヒラリー・スワンクの演技は見ものだが、なんだか作劇が迷走気味で、作り手がイヤハートという人物を捉えきれていない様に思える。

1928年の4月。
アメリア・イアハート(ヒラリー・スワンク)は、出版人のジョージ・パットナム(リチャード・ギア)と出会い、大西洋横断飛行に挑戦するチームに参加しないかと誘われる。
チャレンジは成功し、パットナムのプロモーション手腕もあり、イヤハートは一躍時代のシンボルとして祭り上げられる。
私生活ではパットナムと結婚し、1932年には遂に大西洋単独横断にも成功、パイロットとして頂点を極めるが、純粋に飛び続けたいという気持ちと、その資金を稼ぐためにスターを演じる事とのギャップは、彼女の中で徐々に大きくなってゆく。
そして1937年、彼女は最後の夢として、世界一周飛行へのチャレンジを表明するのだが・・・・


アメリア・イヤハートという名を始めて聞いたのは、今から25年ほど前だろうか。
航空史上の先駆者達を特集したドキュメンタリー番組の中で、多くの男性に混じってただ一人紹介されていた女性が彼女で、独特の響きの名前が記憶に残った。
その後、私は米国に移り住み、イヤハートが今なお愛されている国民的なスーパーヒロインである事を知った。
私の知人は愛娘にアメリアと名付けるほどの熱烈なファンで、彼女の本を沢山貸してくれた。
そして私もいつしか、男尊女卑の風潮が色濃く残る時代、周りの偏見を物ともせずに、自らの夢に向って飛び続けたイヤハートの姿に、すっかり魅了されてしまったのだ。
彼女の挑戦は、自らを社会に認めさせただけでなく、世界中の虐げられた女性とマイノリティに勇気と希望を与え、後に続く多くのチャレンジャーの心の支えとなった。
だからこそ、一冒険家という存在を超えて、アメリア・イヤハートの名は今も残っているのである。

そんな人気者の彼女の生涯は、以前にも何度かテレビドラマ化されている他、歴史的人物としてフィクションへのゲスト出演も多い。
「スタートレック・ヴォイジャー」では宇宙人に誘拐されていたし、最近では「ナイトミュージアム2」でのベン・スティラーとの一夜限りの恋が記憶に新しい。
あの映画でエイミー・アダムズが演じたイヤハート像が、いわばアメリカ人の心の中で理想化された姿だとしたら、本作でミーラ・ナイール監督とヒラリー・スワンクが描こうとしたのは、グッとリアルな等身大のイヤハートと言えるだろう。
しかしながら、ナイール監督は、彼女をどう描くのか、終始迷っている様に見える。
ストイックな航空冒険家としての彼女、ジョージ・パットナムの妻としての彼女、恋多きスターとしての彼女、後進に対するライバル心に揺れる彼女。
多分どれもがアメリア・イヤハートの実像であり、それ故にあれもこれも描こうとして物語の行く先が定まらないのである。

映画は、イヤハート最後の冒険となった、世界一周飛行への旅立ちのシーンから始まり、旅の進行と平行してそこに至るまでの過去が描かれる。
先ずは1928年のパットナムとの出会いから、初の大西洋横断の成功。
イヤハートが国民的スターとなったのは、彼女の成し遂げた挑戦と結果以上に、人生のパートナーでもある出版人のパットナムの宣伝手腕が大きな要因になったのは良く知られているし、本作も二人の関係を物語のコアにしようとしている。
どうもイヤハートとパットナムというのは、単なる夫婦というよりも、友情と愛情とビジネス的な利害が複雑に絡み合った“同士”の様な関係であったらしい。
だが、映画では結婚するまでのお互いに対する感情が殆ど描かれないので、なぜパットナムが彼女に惹かれ、なぜイヤハートが彼の愛を受け入れたのかが今一つ良くわからない。

飛ぶ事にとりつかれた女と、彼女を支える男の関係を全体の土台にするのであれば、飛びたい理由をきちんと描かなければ、それは伝わらないはずである。
それは実は、本作では描かれない1928年以前のイヤハートの人生を紐解くとわかってくるのだが、ロン・バスとアンナ・ハミルトン=フェランの脚本は飛行家イヤハートの誕生の理由を描かずに、単に「飛ぶのが好きだから」で終わらせてしまっている。
「好きだから」「したいから」で物事が進むなら人生楽チンだが、これではイヤハートがどうしても空を飛びたいという切実さが伝わってこないので、彼女に答えるパットナムの気持ちも見えない。

伝記物の場合、対象となる人物の人生のどの部分を切り取るのかは非常に重要な判断だが、希代の航空冒険家を描くのに、彼女が飛ぶ理由を曖昧なままにしたのは明らかに作劇の失敗である。
物語のベースとなる、キャラクターの動機付けが弱いので、以降も物語は揺れ動く。
パットナムによって、時代の象徴となったイヤハートは、単独飛行で二度目の大西洋横断を成功させ、いよいよその地位は不動のものとなる。
若く優秀な陸軍パイロットのジーン・ヴィダルとの浮気や、スターとして振舞う事への葛藤なども描かれるが、どれもごくごく表層的にしか描かれないので、イヤハートの内面がどの様に変化しているのか感じ取れない。
映画ではほぼ10年間の時間が描かれているのだが、大いなる人生の流れと言うよりは、ぶつ切りの断片をつなげ合わせたという印象だ。
ちなみに、映画の中でイヤハートに「パパと結婚して!」と大胆なお願いをするジーンの息子ゴアは、後の大作家であり、映画ファンには「パリは燃えているか」や「ベン・ハー」の脚本家(トラブルによりクレジットされていない)として知られるゴア・ヴィダルである。

「アメリア 永遠の翼」は、歴史上のアイコンとして祭り上げられた姿ではなく、リアルな人生を生きた一人の女性としてのアメリア・イヤハートを描こうとした意欲作だが、残念ながら少し熱意が空回りしてしまっている。
確かにヒラリー・スワンクの激似っぷりは凄いが、肝心の物語がダイジェストでは、いくら俳優が頑張っても伝わる事には限りがある。
この手の映画にしては短めの111分という上映時間で、物語のベースを曖昧にしたまま10年の歳月を描くのは無理があったのではないか。
クライマックスのハウランド島への飛行シーンは、さすがに緊迫していて見応えがあるが、そこから彼女の人物像が見える訳ではなく、本作は図らずも現実の彼女と同じように、着地すべき陸地を見失ってしまった様に思える。
結果的に、今までに伝えられているイヤハート像の表層をなぞっただけで終わってしまったのは、イヤハートのファンとしては何とも残念である。

1937年7月2日に、ハウランド島へ向う途中消息を絶ったイヤハートと愛機のロッキード・エレクトラがどうなったのかは、未だに多くの謎に包まれている。
アメリカ政府は当時の金額で400万ドルを費やして、大捜索を行ったが遂に発見される事はなかった。
燃料切れで墜落したというのが定説ではあるが、キリバスの島に漂着したという説から、当時アメリカと対立しつつあった日本軍によって、スパイ機と間違えられて撃墜されたという珍説まである。
何れにしても忽然と太平洋上空から消え、機体の断片すら発見されていないという事が、生存説を含めた様々な憶測を生む原因になっているのだろう。
ミステリアスな空の女王は、今なお大空へのロマンと共に、人々の心に生き続けているのだ。

今回は、イヤハートが大西洋単独横断の時に着陸したアイルランドから、アイリッシュウィスキーの「カネマラ 12年」をチョイス。
アイリッシュウィスキーの特徴は、まろやかかつスモーキーさが控えめで、ウィスキーが苦手な人にも比較的飲みやすい事かもしれない。
こちらはピート香をつけているが、全体にスパイシーですっきりとした味わいだ。
アイリッシュコーヒーやクローバーナイトなどのカクテルベースにも良い。
80年の昔、アイルランドの牧草地に舞い降りた、航空時代の先駆者に乾杯!

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