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トゥルー・グリット・・・・・評価額1800円
2011年03月20日 (日) | 編集 |
いや、これは驚いた!
コーエン兄弟による「勇気ある追跡」のリメイク企画が進行中で、しかも主演がジェフ・ブリッジスと聞いた時には意外な感じがした。
1969年に作られたオリジナルは、オールドハリウッドの象徴であるジョン・ウェインが、最初で最後のアカデミー主演男優賞を獲得した作品として知られる。
隻眼で大酒のみ、豪放磊落な保安官、ルースター・コグバーンはウェインの当たり役となり、75年にはキャサリン・ヘップバーンとの共演で、続編「オレゴン魂」も作られている。
だが、映画史的に見ると、67年にはアーサー・ペン監督が「俺たちに明日はない」を発表し、ハリウッドの本流は、古めかしい西部劇からニューシネマの時代へと大きく潮目が変わっている。
そしてコーエン兄弟にしても、ブリッジスにしても、明らかにニューシネマ寄りの才能であり、オリジナルが体現するオールドハリウッドとは相容れない様に思ったのだ。
まあ結果的に言えば、そんな心配は全くの杞憂だった。
「トゥルー・グリット」は、キャラクター造形を中心にオリジナルの長所を生かしながらも、作劇をモダンにリファインし、尚且つ“なぜ今この作品のリメイクなのか”という問いに明確な答えを出している。
正にリメイクのお手本、西部劇の歴史に生まれた新たなる金字塔である。

1870年代末のアーカンソー。
14歳の少女マティ(ヘイリー・スタインフェルド)は、雇い人のトム・チェイニー(ジョシュ・ブローリン)に父を殺された。
チェイニーは、連邦保安官以外には手出しの出来ない先住民居留区に逃走。
マティは、大酒飲みだが“トゥルー・グリット”(本物の勇気)を持つと評判の保安官、ルースター・コグバーン(ジェフ・ブリッジス)を雇い、チェイニーを追跡しようとする。
別の事件でチェイニーを追うテキサス・レンジャーのラビーフ(マット・ディモン)も加わり、三人は居留区の捜索に乗り出すのが、チェイニーは悪名高いネッド・ペッパー(バリー・ペッパー)率いる強盗団に加わっている事が明らかになる・・・


この作品を一言で表せば、親を殺された少女による復讐譚。
物語は極めてシンプルで、その分個性的なキャラクターたちによる人間ドラマの色彩が強い。
そのため、オリジナルでは2時間8分という比較的長めの上映時間のうち、捜索の旅に出るまでに50分近くを費やして、マティ、ルースター、ラビーフのキャラクターをじっくりと描いていたが、リメイク版ではこの前半部分を30分程度に短縮している。
それでも、シーン構成や台詞の工夫によって、個々の人物像を効率的に描写する事で、キャラクターの魅力はしっかりと伝えている。

主人公のマティは、14歳にして父の経営する農場で経理を任されており、その押しの強さ、口の立つ事と言ったらナニワのおばちゃんもびっくり。
「弁護士のダゲッド先生に頼んで、訴えるわよ!」が口癖で、交渉術も大人顔負け。
あっという間に保安官を雇う経費を捻出し、自分の乗る馬までも手に入れてしまう。
演じる新星ヘイリー・スタインフェルドは、マティ役でいきなりアカデミー賞の助演女優賞ににノミネートされた注目株だが、基本的にこの話はマティを語り部に、彼女を軸に話が進んで行くので、よく考えるとなんで主演女優賞にノミネートされなかったのか不思議。

そして、ルースター・コグバーンを演じるのはジェフ・ブリッジス
あまりにもジョン・ウェインの印象が強い伝説的なキャラクターだが、意外や意外、これが驚くほどのはまり役で、元祖のウェインに決して負けていない。
孫ほどの年齢の雇い主を、最初は子ども扱いしつつも、やがて徐々に心を通じ合わせる繊細な演技、平原を駆け抜けながらの馬上の決闘という、西部劇ファンが泣いて喜ぶ見せ場まで、重量級の存在感を見せ付ける。

そしてもう一人、テキサス・レンジャーのラビーフを演じるのはマット・ディモン
リメイク版の大きなポイントが、ラビーフの単独行動が多い事だろう。
オリジナルでも、このキャラクターの扱いには脚本家が苦戦した跡が見えたが、コーエン兄弟は本作を明確にマティとコグバーン二人の物語とし、ラビーフに関しては脇役と割り切って構成している。
そのため、彼の出番その物はあまり多くないのだが、別行動している事で、オリジナルとは異なる見せ場を作り出しているのである。
例えば、川辺の小屋でネッド・ペッパーを待ち伏せするシーンは、オリジナルでは三人の共同作戦だったが、リメイク版では崖の上でマティとコグバーンが待ち伏せしているのを知らないラビーフが、偶然小屋の前でペッパーと鉢合わせしてしまう。
カメラはマティの視線で、眼下で起こっている事を俯瞰のロングショットで捉えて行く。
観客はマティと同じ様に、下で何が起こっているのかが良くわからず、これから何が起こるのかを予測できずに非常にスリリングだ。
ただ、この様に細部は異なっているものの、基本的に復讐を果すまでの物語はオリジナルとそう大きくは変わらない。
快調なテンポを持つ良く出来た娯楽映画ではあるが、なぜ今この作品をリメイクしたのかという“理由”は、この時点ではまだ見えないのである。

マティら三人は、紆余曲折の末にチェイニーを含むペッパーの一味と対決し、マティがチェイニーを射殺する。
だがその時に、マティは誤って蛇の巣穴に落ち、ガラガラ蛇に噛まれてしまう。
コーエン兄弟が、2010年の現代にこの作品をリメイクした真の理由、本物の映画力を見せ付ける圧巻のクライマックスはここからだ。
毒が体中にまわる前に、傷ついたマティを医者に診せるために、コグバーンが馬で運ぶ。
朦朧とする意識の中で、マティが見たもの。
それは彼女の復讐の結果である、平原に横たわるいくつもの死体。
やがて空には降る様な星空が広がり、西部の大自然の美しさと人間のちっぽけさを際立たせ、賛美歌「主の御手に頼る日は」の郷愁を誘うメロディが、画面にぴったりとはまり情感を盛り上げる。
この歌の歌詞は、神の御手の導きを信じて進めば、何も恐れることはなく、心は常に平穏でいられるという意味で、マティの見せる子供とは思えない信念と、タイトルでもある“本物の勇気”の拠り所が見て取れる。
音楽はいつもの様にカーター・バーウェルが担当しているが、賛美歌をテーマ曲として使いながら、映画的記憶を刺激する正統派西部劇らしいスコアを提供しており、彼のベストワークの一つと言って良い。

そして、マティの命を救うために、懸命に走り続けた愛馬リトル・ブラッキーも、遂に力尽きる。
瀕死の状態の馬を苦しませないために、コグバーンはマティの目の前でリトル・ブラッキーを射殺するのである。
馬が倒れる描写はオリジナルにもあったが、それはルースターの馬で、リメイク版ではあえてマティの愛馬を使い、廃馬するまでを見せる事で、復讐の代償としての彼女の痛みを増幅させている。
弱肉強食の西部で、マティは見事に父の仇を討ち、それはおそらく当時の規範からすれば、正しいとされていた行為たったはず。
しかし、結果的にそれがもたらしたものは一体何か。
実のところ、クライマックスからラストにかけても、構成要素としてはオリジナルとそれほど変わらない。
コーエン兄弟は、それらの演出的な解釈を変える事で、作品に現代的な視点と新たなテーマを与える事に成功しているのである。
唯一オリジナルと大きく異なるのが、物語の後日談として四半世紀後のマティが描かれる事だろう。
この部分は、ちょっと昨年の傑作アニメ「ヒックとドラゴン」にも通じる驚きの仕掛けがしてあるのだが、リメイク版のテーマを決定付けていたと思う。
正直、復讐を果すまでの展開は幾つか気になる点もあったのだが、怒涛のクライマックスは正に映画、些細な欠点を全て吹き飛ばすくらいの圧倒的な力があった。

もしも本作を気に入った人には、是非69年版の観賞もお勧めしたい。
オールドハリウッドが最後の輝きを見せたオリジナルと、同じ物語でありながら明らかに9.11以降の二十一世紀の空気を持つ本作。
二つの作品を観比べる事が出来るのも、リメイク物の醍醐味だ。
コーエン兄弟は、これはあくまでもチャールズ・ポーティスの原作の再映画化であって、69年版の影響は受けていないと語っているが、その割には細かい描写がオーバーラップする場面も多く、本当は結構研究している気がする(笑
因みに、今年のアカデミー賞レースでは、本作は10部門のノミネートを受けていながら、残念ながら無冠に終わった。
まあアカデミー賞が西部劇に冷たいのは昔からだし、さらにリメイク物というハンディも考えれば、無冠の理由は想像できるが、これはオールドハリウッドとニューシネマが、40年の時を経て幸福な邂逅を果した記念碑的な名品である。
ハリウッドは、この映画に何らかの賞を贈っても良かったように思うのだが。

今回は、ちょっと影の薄かったラビーフの出身地、テキサスの名を持つバーボン「イエロー・ローズ・オブ・テキサス」の12年ものをチョイス。
とは言っても、これを作っているのは二世紀以上の歴史を持つケンタッキー州の老舗、ケンタッキー・リザーヴ・ディスティリングなのだけど。
50度以上の強い酒だが、喉ごしは意外にまろやかで、柔らかな香りが余韻を演出してくれる。
「テキサスの黄色いバラ」とは、南北戦争時代に流行したバラードのタイトルで、「テキサス美人」を表す言葉。
本作は南北戦争の十数年後が舞台で、コグバーンもラビーフも従軍経験者として描かれている。
彼らもきっと、このバラードを聴いていたに違いない。

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