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ザ・ファイター・・・・・評価額1600円
2011年04月05日 (火) | 編集 |
ボクシングの元スーパーライト級の名選手、ミッキー・ウォードと兄のディッキー・エクルンドの半生を描く、実話ベースの人間ドラマ。
複雑に入り組んだ家族の葛藤を、マーク・ウォールバーグ、クリスチャン・ベール、メリッサ・レオら名優たちが味わい深く演じ、リアルに作りこまれた迫力のボクシング・シーンは目が離せない。
監督は「スリー・キングス」のデビッド・O・ラッセル
本年度のアカデミー助演男優賞・助演女優賞をダブル受賞した話題作だ。

ミッキー(マーク・ウォールバーグ)は、道路舗装の仕事をしながらチャンピオンを目指してボクシングに打ち込んでいる。
彼の兄のディッキー(クリスチャン・ベール)も、将来を嘱望された天才ボクサーだったが、いつしか落ちぶれ、ジャンキーたちの巣窟に屯する日々を送っている。
そんな不肖の兄でもミッキーにとっては信頼するトレーナー。
マネージャーの母アリス(メリッサ・レオ)らと共に、アメリカンドリームを夢見ている。
だがある時、ウェイトの違う相手との試合をディッキーが安請け合いしてしまったことで大敗し、兄に対する不信感を抱くようになるミッキーの元に、大手ジムからの引き抜きの話が持ち込まれる。
焦ったディッキーは、ミッキーを引きとめる金を作るために犯罪に手を染めてしまい、遂に刑務所送りになってしまう。
恋人のシャーリーン(エイミー・アダムス)にも説得されたミッキーは、今度こそ家族と手を切って、ボクサーとして自立を目指すのだが・・・


舞台となるのは、ボストンから車で一時間ほど北西に位置するマサチューセッツ州ローウェル。
19世紀に繊維産業で栄えたこの街は、最盛期には多くの新移民を迎え入れ、特にアイルランド系の移民が多く流入した。
本作も、そんなアイルランド系大家族を巡る物語である。
兄ディッキーは、嘗て“ローウェルの誇り”と謳われた天才ボクサーだったが、意思の弱さからドラッグに溺れ、今は落ちぶれている。
弟のミッキーは、努力型で地道に力をつけて来たが、いつも兄によって足を引っ張られ、チャンスを生かせないでいる。
この見事なまでに対照的な二人を軸に、アメリカンドリームへの挑戦と、家族の絆の再確認を描いた正統派のハリウッド映画だ。

今、イッちゃってるキャラクターを演じさせたら天下一の、クリスチャン・ベールの怪演がとにかく目立つ。
彼が演じるディッキーは、カリスマ性があり目立つ事が大好き。
ボクシングの実戦から遠ざかっている今も、自分を取材に訪れたケーブルテレビのスタッフを引き連れて、「ハリウッドが俺の映画を作ってるんだ!」とスター気分で街を練り歩く。
実はそれは薬物汚染の深刻さを啓蒙するためのドキュメンタリーで、堕ちた偶像としてディッキーを取材しているだけなのだが、ドラッグと家族と言う逃げ込める場所のある彼にとっては、そんな世知辛い現実はどうでも良いのだ。

一方のミッキーは、そんな兄の陰に隠れた地味キャラで、彼もまた閉塞感を感じつつも、兄と袂を別つ事が出来ない。
ディッキーに憧れてボクシングを始めたミッキーは、自分の実力を信じられず、兄がいないとダメだと、自ら刷り込みをしてしまっているのである。
面白いのはそんな二人の関係が、映画の印象にもそのまま現れている事で、物語の主人公は明らかにミッキーなのに、観ているとどうしてもエキセントリックで派手なキャラクターのディッキーに目が行ってしまう。
アカデミー賞で、助演男優賞を受賞したベールに対して、主演のウォールバーグがノミネートもされなかったのも何となく納得だ。
もっとも、ウォールバーグは華が無いとは言え、受身のキャラをきっちりと演じており、ちょっとかわいそうな気もするが。

そして、同じくアカデミー賞で助演女優賞を受賞したのが、子離れできないモンスターママ、アリスを演じるメリッサ・レオ。
彼女はステージママならぬリングママとして、ずっと二人の息子の試合を仕切っている。
どうやらこの一家は女系家族で、二人の息子と父の他は、覚え切れないくらいの小姑軍団が同居しており、彼女らは働きもせずに家に屯してずっとグダグダと文句を言っている。
要するに、父以外の家族全員がミッキーのファイトマネーにたかっているという構図なのである。

マザコンでブラコンのミッキーは、そんな状況にずっと甘んじていたのだが、自分の将来よりも目先の金を優先する兄や母の態度に、徐々に不信感を募らせ、遂に決定的な事件が起こる。
ミッキーを地元に引き止めるために、ディッキーはあろう事が警察に化けて窃盗を働き、現行犯逮捕されてしまうのだが、その時にディッキーを助けようとしたミッキーも、ボクサーの命とも言うべき拳を負傷してしまうのである。
モンスターママのアリスにも気迫で負けない、気の強い恋人のシャーリーンと父の後押しもあって、ミッキーは漸く街の警官のオキーフをトレーナーに、実業家のサルをマネージャーに新チームを作り上げ、途端に連勝街道を突き進み始める。
それまでディッキーやアリスの理不尽さを見せ付けられているからこそ、やっと家族から離れ自らの運命を切り開き始めたミッキーは、誰もが好感を抱く等身大のヒーローだ。
だから出所したディッキーが、再びミッキーのトレーナーをやりたいと言い出した時には、観客は「頼む、ミッキーは十分お前らに尽くしたじゃないか、もう放っておいてくれ!」と懇願する様な気持ちになるのである。
ところが、ミッキーもオキーフやシャーリーンとの軋轢を承知で、あっさりとディッキーの申し出を了承してしまうのだ。

もっとも、これにはちゃんと理由があって、いかに落ちぶれたとは言え、ディッキーは天才と謳われた元ボクサー。
対してオキーフは、誠実な人物だが決して一流のトレーナーとは言えない。
実際に、弱い相手の時には楽に勝てても、上位選手相手にオキーフの作戦は通用せず、刑務所で面会の時に聞いたディッキーのアドバイスによって、辛勝したというエピソードを踏まえての決断なのだ。
結果的に、ラストチャンスを与えられたディッキーもドラッグと手を切る決意をし、ミッキーの周りにいる全ての人々が、漸く心を一つにしたところで、クライマックスのWBUタイトル戦へと雪崩れ込んでゆく。
正に終わり良ければ全て良しで、揉めに揉めたグチャグチャの家族ドラマは、以前よりベターな関係となり、修復されるのである。
まあ散々ミッキーに対する家族のエゴを見せられた観客からすれば、「何だよ結局お前らだけで仲直りして!こっちは置き去りかよ!」と言いたくもなるのだが、結果的にミッキーを含めて全員が幸せになったのだから、これで良いのだろう。
テーマ的な決着がついてからのタイトル戦のシーンは、テレビの中継カメラの視点を上手く使ったドキュメントタッチの迫力ある物で、結末がわかっていても手に汗握る。
格闘技映画としても、水準以上の仕上がりだ。

ブルーカラーの貧しい白人社会が背景にあり、尚且つ家族関係が物語のキーであるあたり、本作はダーレン・アロノフスキーの「レスラー」を思わせる。
実は本作の監督として、デビッド・O・ラッセルの前に雇われたのはアロノフスキーであり、当初の決定稿が上がったのは彼が監督だった時点で、最終的にはエグゼクティブ・プロデューサーの一人として製作チームに残っている。
「レスラー」では、主演のミッキー・ロークの人生をドラマの内容と被らせていたが、こちらでは実話をベースにし、映画のラストに本物のミッキーとディッキーを登場させるなど、現実と虚構との関連性を含め、完成作品にもコンセプトは似た部分がある。
デビット・O・ラッセルはもちろん堅実な良い仕事をしているが、もしもアロノフスキーが監督していたら、プロレス映画、ボクシング映画、更にある意味スポーツであるバレエ映画を連続で撮っていた事になり、それはそれで観てみたかった気もする。

今回は、アイルランド系のかなり濃い家族の話なので、アイルランドをルーツに持つ濃厚な黒ビール「ギネス・エクストラ・スタウト」をチョイス。
クリーミーな泡とコクの塊の様な味わいはギネスならでは。
こんなビールは、やはり冬が寒く、狭い家の中で大家族が密接な関係を築いていた文化ならではのものだろう。
ちなみに、英国人の選ぶ「過去四十年間の最も重要な発明」は、ギネスの缶ビールに入っている泡立ちを良くするための小さなボールなのだそうな(笑)

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