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ダンシング・チャップリン・・・・・評価額1700円
2011年04月22日 (金) | 編集 |
「ダンシング・チャップリン」は、バレエ界の巨匠、ローラン・プティが名ダンサー、ルイジ・ボニーノの為に創作し、1991年に初演されたバレエ、「チャップリンと踊ろう」を映画化した作品である。
とはいっても、これは単に舞台の内容を撮影した記録映画ではない。
映画監督・周防正行は、本来の2幕20場の舞台を1幕13場に再構成し、メイキングとの2部構成として、フィルムというタイムカプセルの中に永遠に封じ込め、極めて風変わりな、しかし宝石の様に美しい創造の物語として結晶させている。

2009年7月。
東宝撮影所で一本の映画がクランクインする。
タイトルは「ダンシング・チャップリン」で、バレエの演目を再構成、映画化するという前代未聞の企画である。
だがクランクインを迎えるまでには、紆余曲折があった。
監督の周防正行は作者であるローラン・プティと演出を巡って葛藤し、東京のリハーサルスタジオでは、舞台と勝手の違いにダンサーたちが戸惑う。
果たして、予定通り撮影する事はできるのだろうか・・・・?


私はバレエに関しては殆ど門外漢だが、それでも巨匠ローラン・プティの名前と、彼の代表作の一つである「チャップリンと踊ろう」のタイトル位は知っている。
これは、二十世紀前半を代表する喜劇王、チャーリー・チャップリンと彼の傑作映画群をモチーフに、バレエとして新たに創作された作品である。
主演に選ばれたのはルイジ・ボニーノ
プティはボニーノのためにこの作品を作り、世界で唯一彼だけに踊る事を許して来た。
本作は、初演以来170回も踊り続けて来たボニーノが還暦を迎えて、このままでは幻の舞台になる事を危惧した周防監督が、映画として後世に残そうと考えた事から企画がスタートしたと言う。
映画は、前半が「アプローチ」と名付けられたメイキング、後半が「バレエ」パートの二部構成となり、二つの合間には観客の気持ちをリセットさせる為に5分間のインターミッションが挟まれる。

本番の前に、あえて創作の過程を見せてしまうというアイディアが秀逸だ。
「アプローチ」では、チャップリン晩年の地であるスイスを訪ね、オリジナルの舞台の作者であるプティと話し合い、映画化への戦略を構想する周防監督の姿と、東京でのダンサー達の入念なトレーニングの様子を交錯させ、それぞれの闘いが描かれる。
バレエ作品を映画化すると行っても、事はそう簡単ではない。
普通にステージをカメラで記録するだけでは、単なる舞台中継と変わらなくなってしまう。
あくまでも映像作品として再構成したい周防監督は、映画ならではの演出として、警官の出てくる舞台の一部を実際の公園で撮影したいとプティに提案する。
チャップリンにオマージュを捧げ、これが単なる記録ではなく、一本の独立した“映画”である事を示したかったのだろう。
だが、ダンサーの踊りにフォーカスして欲しいプティは「それならボクはやらない」となかなか首を縦に振らない。
この辺りはオリジナル作者の拘りと、彼の仕事を最大限リスペクトしつつも、あくまでも映画を撮ろうとする監督との創造の鬩ぎ合い、産みの苦しみである。

一方、東京ではダンサーたちが、ただでさえ難易度の高い振り付けを、クローズアップを含む映画として成立させなければならないという困難なハードルに立ち向かう。
遠くの客席から観る舞台なら気にならない様な、身体のちょっとしたふらつきが、映画になると致命的に目立ってしまう。
一発勝負の舞台と違い、監督がOKするまで繰り返し同じ動きを演じなければならないという問題もある。
ヒロインを演じる草刈民代をリフトする役の若いダンサーが、どうしても彼女を上手く支えられず、急遽代役がヨーロッパから呼び寄せられるが、残された日数はわずか数日!
これら様々な葛藤が描かれる「アプローチ」では、その問題の解は明確には示されず、映画はクランクインの日を迎えてしまうのである。

そして、五分間の暗転の後に、バレエ「ダンシング・チャップリン」が始まる。
このプロジェクトが多くの問題を抱えていた事を、「アプローチ」によって知らされている観客の期待と興味は既に十分に高まっている。
大苦戦していたリフトの動きは大丈夫なのだろうか?
「警官と公園と女性がいれば映画は撮れる」というチャップリンの言葉から、舞台のクローズドな空間を、映画的に開放したいという周防監督の願いは、プティに認められたのだろうか?
例えバレエと言う芸術に馴染みがなくても、それまでの1時間に一つの作品を創りあげる戦いを見てきた観客は、すっかり舞台に向き合う準備はできているのである。

やがてフィルムが再び回りはじめ、漆黒の世界に光が差し、主人公であるチャップリンが現れると、そこからはもうあっという間。
ダンサーの肉体が躍動し、嘗て観た映画の名シーンが、次々と美しいバレエの演目となって蘇り、映画ファンもバレエファンも等しく魅了される1時間10分の夢空間が広がる。
面白い事に、バレエの振り付けとしてカリカチュアが強められたチャップリンの動きは、まるで20年代初期のカートゥーン・キャラクターそのものだ。
実は、アメリカン・カートゥーン史上最初のスーパースターである“フェリックス・ザ・キャット”の作者、オットー・メスマーは、1923年の「Felix in Hollywood」の中で、チャップリンをキャラクターとして描き、フェリックスと共演させている。
メスマーは、この時にチャップリンのコミカルな動きを徹底的に研究し、後にフェリックスの演技に生かしたそうである。
だから、チャップリンの動きをベースとした本作の振り付けが、カートゥーンチックになるのは必然なのだ。
余談の余談になるが、チャップリンをモデルにしたフェリックスの演技にインスピレーションを得て、今度はその大袈裟な動きを自らのギャグに取り入れたのがアクション派の喜劇王、バスター・キートンである。

「ダンシング・チャップリン」は、チャップリンからプティ、そして周防正行へと受け継がれた創作の連鎖の、現時点での最も幸福な終着点となった。
単なる記録ではなく“映画としてのバレエ”という困難なテーマは、年齢を重ねたルイジ・ボニーノがチャップリンその人に重なり、舞台と映画が一体化するラストシーンに見事に結実していると言えるだろう。
それにしても、飛び、回転し、持ち上げ、圧倒的な肉体の迫力を伝えてくるダンサーたちの若いこと!
ボニーノが60歳なんて、何かの冗談に思えてくる。
そして本作は、周防監督の愛妻でもある、草刈民代のバレエダンサーとしての引退の花道ともなった。
チャップリンに愛されたヒロインを、一人で全て演じた彼女はとても魅力的に描写され、カメラを通しても深い愛情が伝わってくる。
色々な意味でご馳走様な、素晴らしく気持ちの良い“映画”である(笑

今回は周防監督がクランクインの前に観直したというチャップリンの代表作から「ライムライト」をチョイス。
材 料ドライジン30ml フランボワーズリキュール6ml オレンジジュース18ml レモンジュース適量をシェイクしてグラスに注ぐ。
最後にマラスキーノチェリーを飾って完成。
柑橘類のフルーティなフレーバーを、ジンがしっかりと支える、フレッシュで爽やかな味わいだ。
日本人、鈴木国明氏によって30年ほど前に考案されたカクテルで、ここにも創作の連鎖がある。

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