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孫文の義士団・・・・・評価額1800円
2011年04月25日 (月) | 編集 |
辛亥革命の指導者・孫文の暗殺を狙う刺客軍団と、彼を守る名も無き義士団の戦いを描いた、重量級の歴史アクション大作。
監督はジャッキー・チェン主演の「アクシデンタル・スパイ」で知られるテディ・チャン
建て込みに実に8年を費やしたと言う、20世紀初頭の香港を再現した迷宮の様な巨大オープンセットを舞台に展開するのは、義士たちが織り成す熱血の人間ドラマと、敵味方入り乱れての怒涛の攻防戦。
ドニー・イェンレオン・ライの素晴らしい功夫アクションもあり、見所満載、お腹一杯の139分だ。

1906年、英国領香港。
豪商のリー・ユータン(ワン・シュエチー)は、革命組織の幹部で旧友のチェン社長(レオン・カーフェイ)から、日本に滞在していた孫文が香港にやって来るという知らせを聞く。
腐敗した清朝に対する一斉蜂起の計画を、各地の組織の幹部たちと作り上げるためだ。
だが、カリスマの孫文を殺せば、革命運動は頓挫する。
帝国の支配者、西太后によって香港に送り込まれた暗殺団から孫文を守るために、急遽護衛の義士団が結成される。
暗殺団のスパイだった警官、名誉回復を願う元少林寺の僧、父の仇討ちを誓う少女・・・様々な理由で名乗りを上げた8人の義士たちが、それぞれの信念を胸に、絶望的な戦いに挑む・・・


物語は孫文到着の数日前から始まり、ザックリ言えば前半が義士団の結成を描く人間ドラマ編、後半がノンストップのアクション編という様な構成で、ちょっと黒澤明の「七人の侍」を思わせる。
面白いのは視点が特定の人物に固定されず、シークエンスごとに主役が入れ替わる様な特殊な語り口。
これによって短時間の間に、それぞれのキャラクターの抱える葛藤や背景が濃厚に描かれ、観客の感情移入を誘う仕組みである。
普通この用に視点がコロコロ変わると観難くなってしまうものだが、本作では義士団を集める話の中心に、豪商のリーという重厚なキャラクターを重石として置き、彼と息子であるチョングアンの親子の葛藤を物語の縦軸とする事で、とっちらかった印象になることを上手く防いでいる。
黒澤明は七人のキャラクターを描ききるのに4時間を費やしたが、139分と言う内容を考えれば比較的コンパクトな尺の中で、8人の義士たちに加えて悪役サイドまでキャラクターをしっかりと描写する作劇の技術は、なかなかに見事な物だ。

義士たちの戦う理由が、自由主義革命の理想という単純な物でなく、皆バラバラである事も良い。
何しろ彼らの中には、自分たちが命がけで守る、孫文とは何者かを知らない者までおり、彼らはそれぞれの秘めたる動機によって戦いに身を投じる。
ドニー・イェン演じる功夫の達人シェンは、博打で身を持ち崩し、彼を見放した妻はリーと再婚している。
シェンは最初暗殺団のスパイとして働いているのだが、やがてリーが養育しているのが、自分の実の娘である事を元妻に知らされ、葛藤の末に父親としての誇りをかけて、義士団に加わる。
だから彼が守るのは孫文ではなく、娘の育ての親であるリーなのだ。
ワン・ポーチエ演じる、リーの息子のチョングアンは、偉大な存在である父に自分を認めさせ、自分の足で人生を歩むために、孫文の影武者という危険な任務を引き受ける。
ニコラス・ツェー演じるアスーは、主人であるリーへの忠誠とチョングアンとの友情のために、クリス・リー演じる紅一点のファン・ホンは、暗殺団に殺された父の復讐のために、見た目も強烈なメンケ・バータル演じる巨漢の少林僧ワンは、自らの名誉のために。
そして、高貴な生まれでありながら、禁断の愛に人生をかけてしまい、路上生活者に身を落としたリュウ若君は、いわば自らの死に場所を定めるために戦いに加わる。

要するに、天下国家のために孫文を守ろうとしているのは、元々革命家であるリーやチェン社長だけ。
しかも、実際に義士団が守るのは本物の孫文では無く、彼が組織の幹部達と密会する間、敵の目を逸らし時間稼ぎするのために仕立てられた影武者のチョングアンである。
その場にいない孫文のために、敵味方が命を懸けて戦うという皮肉。
見方によっては、リーたちが革命と言う自らの大儀のために、義士たちを利用したとも言えるのである。
たとえ自らを慕う者たちを犠牲にしたとしても、その命で国を変える。
何で読んだのか忘れたが、「歴史を作るのは物言わぬ大衆ではなく、覚悟を決めた少数の過激派である」という言葉を思い出した。
個人では抗し難い巨大なうねりが、名も無き市井の人々である義士たちの人生を飲み込んでゆく様は、歴史の残酷さを感じさせる。
登場人物それぞれの異なる想いが複雑に絡み合い、物語を重層的にしているが、人間関係の葛藤は悪役サイドまで及んでおり、現場で義士団を率いるチェン社長が、暗殺団のボスキャラであるヤン将軍と師弟関係にあり、暗殺団もまた別種の大儀を掲げているあたり、単純な勧善懲悪に陥る事無く、物語の格調とリアリティ高めている。

そして、全ての役者が揃い、孫文が香港に到着し、彼を乗せた人力車が走り出すと、見せ場満載のアクション編の幕が開く。
孫文暗殺の謀は実際に何度もあったらしいが、本作はあくまでもフィクション。 
巨大なセットは複雑な迷宮の様に入り組んでおり、あの手この手で襲ってくる刺客達との戦いは多分にゲームライクで、疾走する人力車に引っ張られるように、アクションもノンストップで一気に加速してゆく。
矢が雨の様に降り注ぐ中、通行人や獅子舞に紛れ込んだ敵がワラワラと襲い掛かり、進路には爆薬が仕掛けられている。
激しい戦いの中で、義士たちも一人、また一人と倒れて行くのである。
ユニークなのは、彼らが死ぬ毎に、亡骸の描写に合わせ、まるで実在の人物であるかのように、「○○(名前)、○○年~○○年、○○出身」という字幕が出るのだ。
ちょっとズルイ手法ではあるが、キャラクターの存在により現実感が出て、観客のシンパシーを誘うのは確かだろう。
後半1時間に及ぶ、長大なアクションシークエンスの中でも、個人技の大きな見せ場は二箇所。
ドニー・イェンVS敵の中ボスの、超気合の入った功夫バトルと、レオン・ライ演じるリュウ若君の鉄扇を使った流麗な立ち回りだ。
基本的に人力車を追って動きながらの戦いが基本となる本作だが、この二人の戦いはじっくりと腰をすえて描かれており、アクションのフルコースのメインディッシュとして、素晴らしい仕上がりである。

そして、この革命を巡る熱く重厚な物語のクライマックスに、テディ・チャンは驚くべき仕掛けを用意している。
敵のボスが、遂に影武者のチョングアンの乗った人力車に迫る時、車夫を失った人力車はスローモーションで階段を転げ落ちてゆくのである。
このシーンがエイゼンシュテインの歴史的傑作、「戦艦ポチョムキン」におけるオデッサ階段のシーンをモチーフとして描かれているのは明らかだ。
1905年に起こったポチョムキン号の反乱を、ロシア革命の前章として描いた偉大な先人への、辛亥革命の前章として本作を作り上げたチャン監督からの大いなるオマージュであろう。
また原題の「十月圍城」とは「十月の包囲された街」という意味だが、物語の中では特に季節が意味を持つことは無いので、これもまたポリシェヴィキによる10月革命を描いたエイゼンシュテインの「十月」(原題:Октябрь)を意識した物と見る事が出来るだろう。

そう、本作のキーワードは“革命”なのだ。
この物語はフィクションだが、実際の革命の裏でも、様々権謀術策によって多くの血が流れたに違いない。
テディ・チャンは、時代の巨大なうねりの中、孫文というアイコンに振り回され、戦いの中で命を落としてゆく人々を通して、歴史の無情とそれでも自らの生き様を突き詰めるしかない人間存在の儚さを見事なコントラストに描き出した。
これは正に中国映画界にしか作れない、正統派娯楽映画の傑作だが、中東でジャスミン革命が火を噴いた2011年に観ると、次なる革命の時代の胎動を予告した作品の様にも思えてくるのである。

孫文と言えば神戸縁の人物でもあり、今回は灘の泉酒造から「仙介 特別純米酒」をチョイス。
泉酒造は250年以上の歴史を持つ酒蔵で、多分酒豪であったという孫文も飲んだ事だろう。
仙介は、米の甘みと適度な酸味を持つまろやかな酒で、冷でも良いが少し暖めたぬる燗にすると美味い。
この蔵は阪神・淡路大震災で大きな被害を受け、長く委託醸造状態だったが、漸く4年前に自家醸造を再開した。
不屈の闘士は孫文に通じる部分がある?

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