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サンザシの樹の下で・・・・・評価額1600円
2011年07月03日 (日) | 編集 |
文化大革命の嵐が吹き荒れる時代、サンザシの樹の下ではじまる儚い初恋の物語。
巨匠チャン・イーモウ(張 芸謀)監督の青春ラブストーリーと言えば、嘗てチャン・ツィーを一躍スターダムに押し上げた「初恋のきた道」が真っ先に思い浮かぶが、この「サンザシの樹の下で」は正にあの路線。
原作は、中国系アメリカ人作家エイミーが、中国出身の友人の手記を元に書き上げた同名小説。
激動の時代を舞台に、女子高生ジンチュウと青年スンの幼く、しかし運命的な恋を描いた佳作である。
※一部ネタバレ注意

1970年代初頭。
農民の生活こそが素晴らしいという革命の教えによって、辺境の村に派遣された女子高生ジンチュウは、村長の家に住む事になり、そこで家族同然の生活をしている青年スンと出会う。
村はずれで坑道を掘っている地質調査隊に属するスンは、慣れない農村の生活に戸惑うジンチュウを、何かと気にかけてくれる。
やがて、二人の間には仄かな恋心が生まれる。
しかし、文革の時代にあって、ジンチュウの両親は反革命分子として迫害を受けており、ジンチュウは世間の冷たい視線を浴びながら、模範的な生徒として教職に就けるように努力している身。
もし恋愛に現をぬかしている事が知れたら、確実に非難される。
正式に教師として採用されるまで、会わないで欲しいというジンチュウの母の願いを受け入れ、スンはジンチュウの前から去る。
ところが、それからしばらくして、ジンチュウはスンが重病で入院したという知らせを聞く・・・・


2000年代に入ってから、「HERO」や「王妃の紋章」など絢爛豪華な時代劇を多く作って来たチャン・イーモウだが、正直この画は派手だけど中身スカスカ路線をあまり評価していない私としては、彼が90年代に得意とした歴史観のある市井の人々の物語に回帰した事は嬉しい。
本作の舞台となる70年代初頭は、文化大革命の恐怖政治によって、ありとあらゆる抑圧が人々に重くのしかかっていた時代。
人間のネガティブな側面が最大化した時代だからこそ、本作に描かれるジンチュウとスンのあまりにもピュアな愛は、まるで二人の周りだけが浄化された空間の様に透明な清涼を感じさせる。

だが、密告が奨励され、反革命の大義名分の下に危険分子が排除される社会では、恋愛すら迫害の理由になりうる。
ジンチュウの両親は走資派(共産党内で資本主義寄りだと粛清された一派)として弾圧されている。
また当時の中国では、農民や軍人が上位で、地主や知識人は下位とされており、父親が地主出身で、母親が教師というジンチュウの家は正に「出が悪い」被差別階級だ。
それだけに、彼女が絶望的な生活から抜け出すには、彼女自身の党への忠誠を示し、真面目かつ謙虚な人間と証明し続ける事が必要なのだ。
そんなジンチュウが、スンとの恋愛関係を続ける事は、単純に歳が若すぎるという以上に、彼女の将来にとって危険を伴うのである。

他の時代、或いは他の国だったら、何の問題もない二人の恋愛には、政治の時代と言う巨大な壁が立ちはだかる。
しかし、大体において、人目を憚る恋ほど燃えるもの。
途中、ひょんな事からジンチュウの母親に付き合っている事がバレ、娘を思う母の願いを受け入れたスンは一旦身を引くが、それすらもより深い部分での二人のつながりを強固にしたに過ぎない。
チャン・イーモウは、プラトニックな恋愛模様のディテールを淡々と描きながら、大きな時間経過や物語の展開を、字幕の解説によって大胆に進めるという独特の手法をとっている。
まあストーリーテリングの原則から言えば、物語の転換点を一気にすっ飛ばすというのは禁じ手に近い気もするが、これによって昔話を読み進めるような、一風変わったムードが生まれているのも事実。
そして、スンの突然の入院と、彼を見舞ったジンチュウが再会するエピソードの辺りからは、決して結ばれない恋人同士の悲恋劇の色彩が一気に強くなる。 
川を上手く使って二人の距離感を描き出す辺りは実に映像的で、特に恋人達が両岸に隔てられながらジェスチャーで抱擁を交わすところは、あの「また逢う日まで」の“ガラス越しのキス”に匹敵する切ない叙情を感じさせ、本作屈指の名シーンとなっている。

主人公の二人を演じるのは共に新人。
青年スンを、中国生まれカナダ国籍のショーン・ドウが朴訥な存在感で好演。
“良い人”を絵に描いたようなキャラクターを、嫌味なく作り上げた。
そして第二のチャン・ツィー?として期待されているのが、ジンチュウを演じたちょっと浅田真央似のチョウ・ドンユイ
触れると砕けてしまいそうな、儚げなムードを持つ美少女だ。
「初恋のきた道」の時はモコモコした衣装のチャン・ツィーが、手をピンと伸ばして走る姿が何とも可愛かったが、どうやらチャン・イーモウは美少女の走りに拘りを持っているらしい。
今回のチョウ・ドンユイは、ツィーとは対照的に薄着で腕を曲げた姿勢ながら、走ってゆく後姿をスン目線で愛おしく捉えたカットが多く、印象的に撮られている。
彼女は次回作「湘江北去」において、29歳の若さで非業の死を遂げた毛沢東の妻、楊開慧を演じ、中国メディアによればかなりの好演を見せているそうで、今後の飛躍が楽しみな人だ。

それにしても、スンが所属している“地質調査隊”が掘っている鉱物とは一体何か。
ジンチュウが事情を聞きに行くと、この調査隊では白血病患者が相次いでいる事がわかる。
劇中では何となく示唆されるだけなのだが、おそらくはウランなど核関連の鉱物を扱っていたのだろう。
どうやら現場のスンたちはそれが何かは知らされておらず、当時の中国としてはかなりの高給が支払われているらしい描写もある。
たぶん、こうやって知らずに危険な物を扱わされ、何もわからないまま死んでいった人たちは、世界中に沢山いるのだろうなと思う。
もちろんこの映画の本質はそんな部分ではないのだけど、時期が時期だけに、どうしてもこの偶然が気になってしまった。

映画のラストで、ジンチュウがその後アメリカに渡ったいう字幕が出る。
彼女の身の上に、この後どの様な事が起こったのかは本作では明かされない。
もしかしたら文化大革命の進行と共に、更なる困難が待ち受けていたのかもしれないし、スンを失った喪失感が国を去らせたのかもしれない。
確かな事は何もわからないが、アメリカに渡ったジンチュウ(本名はシォンイン)の書いた手記のうち、高校時代の初恋を描いた部分が、やがて小説化されてベストセラーとなり、遂には嘗て迫害を受けた中国で映画化され、大ヒットしたというのだから、時代の巡り会わせとは何とも面白く、また皮肉なものである。
恋愛映画としても良い作品だが、ある種の極めてパーソナルな歴史劇として観ると、より深みを感じる事ができる。

今回は、鹿児島の黄金酒造の芋焼酎、その名も「初恋」をチョイス。
この蔵は非常に芋の風味が強い「蘭」で有名だが、こちらは芋の持つ甘みや風味を生かしながら、キレすっきり、口当たりをソフトにして、飲みやすくした印象だ。
多分芋焼酎のイモ!という主張が苦手な人にも飲みやすい、名前の通りに優しい味わいのお酒だ。
オン・ザ・ロックやソーダ割りでシンプルに飲むのがお勧め。

そう言えばイーモウがコーエン兄弟の「ブラッド・シンプル」をコメディとしてリメイクした「三槍拍案驚奇」はもう日本では公開されないのかな。観たいんだけど。

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