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2011年08月20日 (土) | 編集 |
欲望渦巻く虚飾の館は、一人の女の“愛”によって崩壊する。
「ハウスメイド」は、1960年に大ヒットした故・キム・ギヨン監督の古典「下女」を、「ディナーの後に」などで注目されたイム・サンス監督がリメイクした作品。
大邸宅にやって来た一人のメイドが巻き起こす愛憎劇を、サスペンスフルに描き出し、オリジナルとテイストはかなり異なるが、なかなかに楽しめる。
※オリジナル「下女」のネタバレあり。
上流階級の邸宅に、メイドとして雇われる事になったウニ(チョン・ドヨン)は、当主のフン(イ・ジョンジェ)、双子を妊娠中の妻ヘラ(ソウ)、六歳の娘ナミ(アン・ソヒョン)、そして古参のメイドであるビョンシク(ユン・ヨジョン)らに囲まれ、住み込みで仕事を始める。
やがてフンに誘惑されたウニは、求められるままに彼に身を委ね、二人の秘密の関係が続く。
だが、ウニが妊娠し、その事がヘラの知るところになると、屋敷の中でウニの身に不可解な事件が起こり始める・・・・
金持ちの一家が、住み込みのメイドによってメチャクチャにされてゆくという基本設定は同じだが、オリジナルをそのままリメイクしたというよりも、リスペクトしつつも素材として使い、時代に合わせて大幅に再構築したという印象が強い。
何しろ「下女」の公開は、半世紀前の1960年だ。
当時の韓国は、一人当たりGDPが160ドル程度のアジア最貧国の一つ。
漢江の奇跡を経て豊かになった現代韓国とは、社会情勢も生活水準も、何よりも人々の意識が違いすぎて、そのままではプロットが説得力を持たなくなってしまっているのである。
オリジナルでは、紡績工場の音楽倶楽部でピアノを教えている、厳格な音楽家のトンシクの家が舞台となる。
ある時、彼にラブレターを送った女子工員ソニョンが、その事を公にされて会社にいられなくなってしまう。
ソニョンの友人だったキョンヒは、トンシクに個人教授を頼み、親しくなると今度は若く美しいメイド、ミョンスクを彼の家に送り込む。
やがてトンシクと関係を持ち、妊娠したミョンスクは、世間体を恐れて事態を公にしたくない裕福な一家を支配してゆくというストーリーだ。
トンシクの息子チャンスン役で、子役時代の名優アン・ソンギが出演している事でも知られる。
ユニークなのが、物語が関係者全員死亡という壮絶な悲劇で終わった後、いきなり主人公のトンシクがピンピンしてスクリーンに現れ、実は今までの話は全て“教訓”だと観客に語りかけるのである。
ここでわかる様に、物語の背景に流れるのは、貧富の格差が現代よりも遥かに深刻な時代における、持たざる者の欲望の切実さと、厳格な儒教的道徳観念であり、様々な分野で社会の解放が進んだ現代韓国では、作品の前提そのものが成立しないのは明らかだ。
イム・サンス監督は、半世紀前に作られた古典から、物語の基本骨格と幾つかの象徴的なモチーフを取捨選択し、当時とは別種の葛藤を抱えた21世紀の韓国らしい、シニカルなテイストのサスペンスに生まれ変わらせている。
現代から見れば、精々小金持ちにしか見えなかった音楽家の一家は巨大な財閥ファミリーに、ごく普通の一軒屋は宮殿の如き大邸宅に姿を変え、元の設定は当主であるフンの趣味がピアノ演奏というあたりに痕跡を残す。
フンと妻のヘラはそれぞれ愛欲・物欲・独占欲・権力欲など様々な欲望に取り付かれた存在で、社会全体は豊かになったものの、物質主義に支配され、精神的な拠り所としての家族を失いつつある現代を、この一族に象徴させようとしている様である。
財閥の御曹司として、欲しいものはすべて手に入れてきたフンは、当たり前の様にメイドのウニを誘惑し、彼女もまた余りにも従順に身を任せ、一夜を共にする。
翌朝、フンが小切手を渡す事からも、割り切った関係であるが、ウニが妊娠してしまった事から、事態は大きく動き出す。
おそらくフンにとって、ウニを妊娠させた事は、より多くの後継者候補を残すという“保険”である。
だがそれは、本妻のヘラにとっては、自分の子供のライバルが増える事を意味する。
古参メイドのビョンシクが、ウニ本人よりも先に彼女の妊娠に気付き、その事がヘラとその母に伝えられると、もはや男のフンは蚊帳の外で、ここからの展開はグチャグチャ、ドロドロの昼メロチックな女の争いだ。
オリジナルでは非常に受身のキャラクターだった妻のヘラは、夫を奪ったウニに対して無慈悲な報復を行い、深く傷つけられたウニは、それまでの流されるキャラクターが嘘の様に、魂の慟哭と共に一族への復讐を宣言するのである。
ウニを演じるのは、「シークレット・サンシャイン」の、息子を殺され、心のバランスを壊してしまう母親役が記憶に新しい、韓国を代表する大女優チョン・ドヨン。
犬の様に従順でありながら猫の様にミステリアスで、内面に激しい情念を秘めた、半分天然で何ともとらえどころの無い不思議なキャラクターを好演している。
面白いのは、オリジナルのキョンヒを変形させた様なビョンシクのキャラクターだ。
演じるヨン・ユジョンは、キム・ギヨン監督が「下女」に続く使用人三部作の第二作として発表した「火女」でデビューした大ベテラン。
ビョンシクは長年この一族にメイドとして仕えながらも、かなりの部分自分自身のために利用している様なフシがある。
元々ウニを採用したのもビョンシクであり、彼女がフンのタイプである事も、彼女の中にある危険なパッションも当然見抜いていたはずだ。
ヘラの母親にウニの妊娠を告げ口したかと思うと、今度はウニにシンパシーを感じている様な行動をとる。
いわば天秤の右と左を行き来して手玉にとっている人物で、彼女の存在がそもそも事件を事件たる物にしているのだが、ウニもヘラもその事には気付かない。
もう一人、物語のキーパーソンとなるのは、一族の一人娘のナミの存在だ。
彼女は、欲望に塗れた屋敷の中で、ただ一人達観しているというか、とても冷静にエキセントリックな大人たちの争いを観察しているのである。
ウニが恐るべき方法で復讐を遂げた後、唐突に訪れる何ともシュールな味わいのラストシーンは、ナミを主役にして描かれている。
聡明な子供にとって、大人たちの欲望丸出しの愛憎劇は、とんだブラック・コメディだったという事だろう。
子供は親を選べないと言うが、ナミがいったいどんな大人に成長するのか、彼女の6歳にして全てを諦めた様な、虚ろな瞳が心に残る。
因みにオリジナルの「下女」はマーチン・スコセッシがリスペクトしている事でも知られ、2008年に彼がチェアマンを勤めるワールド・シネマ・ファンデーションの支援によって、現存するフィルムをレストアしたデジタルリマスター版が作られた。
残念ながら日本版は発売されていないが、コリアン・フィルム・アーカイブから発売されているDVDは、リージョンフリーで日本語字幕も付いているので、本作で興味を持たれた方には是非観賞する事をお勧めする。
韓国映画史のエポックである事は勿論だが、今観ても荒削りながら奇妙なパワーのある作品なのである。
今回は血の様な赤。
「天地人」のラベルで知られるルー・デュモンの「フィサン・ルージュ」の2008をチョイス。
韓国は空前のワインブームに沸いているらしいが、これはワイン造りの夢を抱いた日本人の仲田晃司氏が、単身渡仏して設立した若い銘柄。
フルーティな風味と心地よい酸味が、適度な強さを持つボディとベストマッチ。
非常に飲みやすく、高温多湿な夏でも重過ぎない事もあって、日本や韓国などアジア圏で大人気の一本だ。
こちらからは、より良い物を造りたいという“幸せな欲望”が感じられる。
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「ハウスメイド」は、1960年に大ヒットした故・キム・ギヨン監督の古典「下女」を、「ディナーの後に」などで注目されたイム・サンス監督がリメイクした作品。
大邸宅にやって来た一人のメイドが巻き起こす愛憎劇を、サスペンスフルに描き出し、オリジナルとテイストはかなり異なるが、なかなかに楽しめる。
※オリジナル「下女」のネタバレあり。
上流階級の邸宅に、メイドとして雇われる事になったウニ(チョン・ドヨン)は、当主のフン(イ・ジョンジェ)、双子を妊娠中の妻ヘラ(ソウ)、六歳の娘ナミ(アン・ソヒョン)、そして古参のメイドであるビョンシク(ユン・ヨジョン)らに囲まれ、住み込みで仕事を始める。
やがてフンに誘惑されたウニは、求められるままに彼に身を委ね、二人の秘密の関係が続く。
だが、ウニが妊娠し、その事がヘラの知るところになると、屋敷の中でウニの身に不可解な事件が起こり始める・・・・
金持ちの一家が、住み込みのメイドによってメチャクチャにされてゆくという基本設定は同じだが、オリジナルをそのままリメイクしたというよりも、リスペクトしつつも素材として使い、時代に合わせて大幅に再構築したという印象が強い。
何しろ「下女」の公開は、半世紀前の1960年だ。
当時の韓国は、一人当たりGDPが160ドル程度のアジア最貧国の一つ。
漢江の奇跡を経て豊かになった現代韓国とは、社会情勢も生活水準も、何よりも人々の意識が違いすぎて、そのままではプロットが説得力を持たなくなってしまっているのである。
オリジナルでは、紡績工場の音楽倶楽部でピアノを教えている、厳格な音楽家のトンシクの家が舞台となる。
ある時、彼にラブレターを送った女子工員ソニョンが、その事を公にされて会社にいられなくなってしまう。
ソニョンの友人だったキョンヒは、トンシクに個人教授を頼み、親しくなると今度は若く美しいメイド、ミョンスクを彼の家に送り込む。
やがてトンシクと関係を持ち、妊娠したミョンスクは、世間体を恐れて事態を公にしたくない裕福な一家を支配してゆくというストーリーだ。
トンシクの息子チャンスン役で、子役時代の名優アン・ソンギが出演している事でも知られる。
ユニークなのが、物語が関係者全員死亡という壮絶な悲劇で終わった後、いきなり主人公のトンシクがピンピンしてスクリーンに現れ、実は今までの話は全て“教訓”だと観客に語りかけるのである。
ここでわかる様に、物語の背景に流れるのは、貧富の格差が現代よりも遥かに深刻な時代における、持たざる者の欲望の切実さと、厳格な儒教的道徳観念であり、様々な分野で社会の解放が進んだ現代韓国では、作品の前提そのものが成立しないのは明らかだ。
イム・サンス監督は、半世紀前に作られた古典から、物語の基本骨格と幾つかの象徴的なモチーフを取捨選択し、当時とは別種の葛藤を抱えた21世紀の韓国らしい、シニカルなテイストのサスペンスに生まれ変わらせている。
現代から見れば、精々小金持ちにしか見えなかった音楽家の一家は巨大な財閥ファミリーに、ごく普通の一軒屋は宮殿の如き大邸宅に姿を変え、元の設定は当主であるフンの趣味がピアノ演奏というあたりに痕跡を残す。
フンと妻のヘラはそれぞれ愛欲・物欲・独占欲・権力欲など様々な欲望に取り付かれた存在で、社会全体は豊かになったものの、物質主義に支配され、精神的な拠り所としての家族を失いつつある現代を、この一族に象徴させようとしている様である。
財閥の御曹司として、欲しいものはすべて手に入れてきたフンは、当たり前の様にメイドのウニを誘惑し、彼女もまた余りにも従順に身を任せ、一夜を共にする。
翌朝、フンが小切手を渡す事からも、割り切った関係であるが、ウニが妊娠してしまった事から、事態は大きく動き出す。
おそらくフンにとって、ウニを妊娠させた事は、より多くの後継者候補を残すという“保険”である。
だがそれは、本妻のヘラにとっては、自分の子供のライバルが増える事を意味する。
古参メイドのビョンシクが、ウニ本人よりも先に彼女の妊娠に気付き、その事がヘラとその母に伝えられると、もはや男のフンは蚊帳の外で、ここからの展開はグチャグチャ、ドロドロの昼メロチックな女の争いだ。
オリジナルでは非常に受身のキャラクターだった妻のヘラは、夫を奪ったウニに対して無慈悲な報復を行い、深く傷つけられたウニは、それまでの流されるキャラクターが嘘の様に、魂の慟哭と共に一族への復讐を宣言するのである。
ウニを演じるのは、「シークレット・サンシャイン」の、息子を殺され、心のバランスを壊してしまう母親役が記憶に新しい、韓国を代表する大女優チョン・ドヨン。
犬の様に従順でありながら猫の様にミステリアスで、内面に激しい情念を秘めた、半分天然で何ともとらえどころの無い不思議なキャラクターを好演している。
面白いのは、オリジナルのキョンヒを変形させた様なビョンシクのキャラクターだ。
演じるヨン・ユジョンは、キム・ギヨン監督が「下女」に続く使用人三部作の第二作として発表した「火女」でデビューした大ベテラン。
ビョンシクは長年この一族にメイドとして仕えながらも、かなりの部分自分自身のために利用している様なフシがある。
元々ウニを採用したのもビョンシクであり、彼女がフンのタイプである事も、彼女の中にある危険なパッションも当然見抜いていたはずだ。
ヘラの母親にウニの妊娠を告げ口したかと思うと、今度はウニにシンパシーを感じている様な行動をとる。
いわば天秤の右と左を行き来して手玉にとっている人物で、彼女の存在がそもそも事件を事件たる物にしているのだが、ウニもヘラもその事には気付かない。
もう一人、物語のキーパーソンとなるのは、一族の一人娘のナミの存在だ。
彼女は、欲望に塗れた屋敷の中で、ただ一人達観しているというか、とても冷静にエキセントリックな大人たちの争いを観察しているのである。
ウニが恐るべき方法で復讐を遂げた後、唐突に訪れる何ともシュールな味わいのラストシーンは、ナミを主役にして描かれている。
聡明な子供にとって、大人たちの欲望丸出しの愛憎劇は、とんだブラック・コメディだったという事だろう。
子供は親を選べないと言うが、ナミがいったいどんな大人に成長するのか、彼女の6歳にして全てを諦めた様な、虚ろな瞳が心に残る。
因みにオリジナルの「下女」はマーチン・スコセッシがリスペクトしている事でも知られ、2008年に彼がチェアマンを勤めるワールド・シネマ・ファンデーションの支援によって、現存するフィルムをレストアしたデジタルリマスター版が作られた。
残念ながら日本版は発売されていないが、コリアン・フィルム・アーカイブから発売されているDVDは、リージョンフリーで日本語字幕も付いているので、本作で興味を持たれた方には是非観賞する事をお勧めする。
韓国映画史のエポックである事は勿論だが、今観ても荒削りながら奇妙なパワーのある作品なのである。
今回は血の様な赤。
「天地人」のラベルで知られるルー・デュモンの「フィサン・ルージュ」の2008をチョイス。
韓国は空前のワインブームに沸いているらしいが、これはワイン造りの夢を抱いた日本人の仲田晃司氏が、単身渡仏して設立した若い銘柄。
フルーティな風味と心地よい酸味が、適度な強さを持つボディとベストマッチ。
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