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ゴーストライター・・・・・評価額1700円
2011年09月03日 (土) | 編集 |
隠された陰謀を知った時、名も無き“幽霊”は、生き残れるのか?
「ローズマリーの赤ちゃん」「テス」「戦場のピアニスト」など、映画史を彩る数々の傑作を生み出してきた巨匠、ロマン・ポランスキー監督による、正統派の巻き込まれ型サスペンス。
政治スキャンダルの渦中にある、イギリス前首相の自叙伝を担当する事になったゴーストライターが、ひょんな事から米英両国の関係に絡む重大な機密を知ってしまう。
良い意味で古典的、上質の探偵小説を読んでいる様な、知のカタルシスを味わえるさすがの秀作である。
原作は、ナチスが第二次大戦に勝利した世界を描いた「ファーザーランド」などで知られる英国人作家、ロバート・ハリスの小説「The Ghost(邦題:ゴーストライター)」で、ハリスとポランスキーが共同で脚色している。

イギリス前首相のアダム・ラング(ピアーズ・ブロスナン)の自叙伝の執筆を依頼されたゴーストライター(ユアン・マクレガー)は、あまり気乗りしないままラングの滞在する米国東海岸の孤島にある別荘を訪れる。
彼の前任者は、長年ラングの側近を務めた男だったが、フェリーから転落して謎の死を遂げていた。
ところが執筆を始めた途端、ラングは在任中にテロ容疑者を違法にCIAに引渡し、拷問に加担したとして、政敵で元外相のライカート(ロバート・パフ)によって、国際刑事裁判所に告発されてしまう。
押しかけたデモ隊によって、別荘に軟禁状態になってしまったゴーストは、ふとした事から前任者が遺した奇妙な写真を発見するのだが・・・


“回転ドア”と揶揄されるほど、首相がコロコロ変わる日本ではあまり馴染みがないが、それなりの長期政権が多い欧米では、首相や大統領が退任すると、必ずと言って良いほど自叙伝や回想録が出版される。
戦争や政争、経済問題などからプライベートに至るまで、在任中には立場的に言えなかった、国家の首脳のホンネが垣間見られるこの種の本は、元々国民の政治意識が高い事もあり、ベストセラーも珍しくない。
ただ、当たり前だが、彼ら政治家は弁舌は巧みであっても作家ではないので、数百ページにも及ぶ本を面白く仕上げる術など持っていない。
そこで、コッソリと本人に成り代わって本を仕上げるお助け人、ゴーストライターの登場となるのである。

それにしても、ゴーストライターとは上手い言葉だと思う。
タテマエとしては存在しない、いわば公然の秘密である彼らは、どんなに本が売れたとしても決してスポットライトを浴びる事はなく、一般に名前を知られる事もない。
だから本作の主人公も、役名すら与えられず、最初から最後まで幽霊扱いである。
何しろ彼はクライアントのラングに出会った時、名を名乗るのでは無く「私は貴方のゴーストです」と自己紹介するのだ。
本来、ゴーストライターは、クライアントの文体を真似、自身の作家性を消し去ってオーダー通りに本を仕上げるある種の職人である。
だが、本作のゴースト氏は、ほんの少し“ホンモノの作家”に未練を持っている。
物書きとしてプライドが高く、事務的な回想録ではなく、作者(つまりは自分の)のハートを感じさせる物をと主張し、ニセモノと言われれば傷つく。
それ故に、姿無きゴーストの枠をはみ出して、自分の好奇心を追求した結果、歴史の裏側に暗躍する別種のゴーストである、諜報の世界に首を突っ込んでしまう、というプロットは中々にシニカルだ。

本作はポリティカル・サスペンスのカテゴリに入る作品だが、殆ど出ずっぱりで主人公のゴーストを演じる、ユアン・マクレガーの飄々とした役作りのおかげもあって、堅苦しさはない。
彼を予想もしない状況に巻き込むラングを、元ジェームズ・ボンド俳優のピアーズ・ブロスナンに演じさせるというキャスティングも、作り手の粋なセンスを感じさせる。
傲慢だが人を惹きつける政治家らしい魅力のあるラングには、政治的な盟友でもあるルースという妻がいるが、どうやら秘書のアメリアとも不倫関係にあるらしい。
映画の前半部分は、ラングの別荘にやって来たゴーストが、腹に一物抱え、密かな火花を散らす住人たちの関連性を、傍観者として観察してゆく描写が続く。
やがて、ゴーストはルースとの関係を深めてゆくのだが、それぞれの登場人物の見せる感情や細かなやり取りにも、後々効いてくる物語のキーが巧妙に隠されているのである。

そして、ラングが戦犯容疑者として告発され、ゴーストが前任者の謎の死を追及し始めると、映画はいよいよサスペンス色を強めてゆく。
だがそれは、派手な銃撃戦とかカーチェイスとか、ビジュアル的なスリルを追求したものではなく、前半部分に綿密に仕掛けられていた伏線を手がかりに、少しづつ謎の真相に近づいてゆくという推理物の王道のスタイル。
前任者は本当に事故死したのか?それとも殺されたのか?だとすると、一体彼はラングの何を知ってしまったのか?
ポランスキーは、隅々まで計算された作品世界で、遊び心のスパイスを効かせながら登場人物を動かし、人間の心理という最もミステリアスな要素から事件の核心に迫ってゆく。
逃げ場の無い孤島に建つ、モダーンで無機質なラングの別荘と、ゴーストの宿泊する安ホテルのレトロな佇まい、闇夜に光を放つ岬の灯台。
凝った舞台装置が作り出す、いかにも映画的コントラストや、クラシカルでありながら外連味を感じさせる音楽の使い方も作品の不穏なムードを高めて行く。
軽快なテンポで物語が紡がれ、全盛期のヒッチコック映画の様に、スリルと適度なユーモアがうまい具合に共存しているのだ。

原作のロバート・ハリスは、口さがない筋からは“ブッシュのプードル”と蔑まれた元イギリス首相のトニー・ブレアと親交があったらしいが、飼い犬どころかイギリス自体が人知れずCIAに支配されているという本作の筋書きは、自国に対する相当に自虐的なシニシズムに溢れている。
うがった見方をすれば、ロマン・ポランスキーが本作を撮ったのも、この視点を面白がった故とも思えるのである。
よく知られている様に、ポランスキーは、ハリウッドで活躍していた1977年に、少女への強姦容疑をかけられて逮捕され、裁判中にアメリカを出国し、以来34年間に渡って逃亡生活を続けている。
ポランスキー本人は冤罪を主張しているが、本作でラングが国際刑事裁判所に告発され、同条約を批准していないアメリカに事実上の逃亡者として滞在しているのは、ポランスキー自身の合わせ鏡の様だ。
「アメリカ以外に行ける国は」と聞くラングに、弁護士が「イラクに北朝鮮にイスラエル・・・」と答えるのは強烈な意趣返しだろう。
28歳の時に「水の中のナイフ」で鮮烈なデビューを飾って以来、波乱万丈の人生を送りながら、ポランスキーの創作に懸けるエネルギーが半世紀にも渡って枯渇しないのは、彼を取り巻く世界に対する反骨精神が、映画作りの原動力になっているからかもしれない。

今回は、極上の白ワインの様な映画だったのだが、実はカリフォルニアのサンタ・クルーズ・マウンテンには、その名も「GHOSTWRITER」と言うワイナリーがある。
ナパなどメジャーなワインカウンティに比べると産地の知名度も低く、残念ながら日本には殆ど入っていないが、今回はその「シャルドネ2009」を合わせたい。
所謂シャルドネらしさは持っているが、若い頃のポランスキーの映画の様に、実験精神旺盛なユニークな味わいのワイン。
リンゴを思わせるフルーティな香りに、やや酸味が強めでくっきりとした輪郭が特徴的だ。
現地でのお値段は30ドル前後と、カリフォルニアワインとしてはそれなりだが、円高の今なら相当にお買い得である。
サンフランシスコ方面に旅行の際は、お土産としてお勧めだ。
http://www.facebook.com/ghostwriterwine

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