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アジョシ・・・・・評価額1700円
2011年09月27日 (火) | 編集 |
「アジョシ(아저씨)」とは“おじさん”の意味である。
いかにも訳アリな影のある主人公と、薄幸そうな少女との物語という事で、「レオン」的な作品を想像していたが、全く違っていた。
これは韓国らしい“恨(ハン)”の文化が生み出した、コリアン・ハードボイルド。
主演のウォンビンがとにかくカッコ良く、クライムアクション映画としても一級品だ。
哀しい過去を持つ男の贖罪の物語は、おばさまファンに独占させておくにはもったいない、暗い情念渦巻く漢の映画である。
監督・脚本はこれが二作目となる新鋭イ・ジョンボム

古ぼけたビルで質屋を営むテシク(ウォンビン)は、天涯孤独。
客以外はたまに隣の部屋に住む少女、ソミ(キム・セロン)が訪ねてくる程度。
ある夜、外出していたテシクが店に戻ると、見知らぬ男たちがいて、ソミの母親から預かったバッグを渡せと言う。
クラブダンサーをしている母親が、組織から麻薬を盗んだのだと言う。
薬を取り戻した男たちは、母親とソミを拉致して逃走する。
テシクの常人とは思えない身のこなしや、銃にも動じない態度に興味を持った組織のボス、マンソク兄弟(キム・ヒウォン、キム・ソンオ)は、ソミを人質にしてテシクに麻薬の運び屋をさせようとするのだが・・・


ウォンビンによるウォンビンのための映画。
ポン・ジュノ監督の「母なる証明」では、殺人容疑をかけられる知的障害者の青年という、今までとは一味違ったキャラクターを演じ、演技派としても高い評価を受けたウォンビンだが、今回は久々の主演作でスターオーラ全快だ。
もちろん、単にカッコ良いだけではなく、彼が非常に上手い俳優だという事も改めて実感した。
よく目の演技と言うが、本作の場合ポーカーフェイスであまり表情の変わらないキャラクターにも関わらず、繊細な内面の感情をほとんど瞳の表情だけで表現しているのだから恐れ入る。
彼は本作で、韓国映画界最高の栄誉である大鐘賞主演男優賞を受賞したが、それも納得の名演である。
そう言えば「母なる証明」の時も、ウォンビンの役柄は“小鹿の様な純粋な目を持つ青年”と表現されていたが、ピュアな透明感と底なしの虚無を同時に感じさせる圧倒的な目力は、彼の俳優としての最大の武器だろう。

本作でウォンビンが演じるのは、古ぼけたビルで細々と質屋を営む男、テシク。
厭世的な雰囲気のある謎めいた男だが、なぜか隣に住む少女ソミだけは、彼を“アジョシ”と呼んで懐いている。
ソミに父親はおらず、クラブダンサーの母親はヒモの様なチンピラと付き合っている。
彼女を見つめるテシクの瞳には、いつも哀しみが浮かんでいる様に見えるが、彼の心の中にある闇が何なのか、まだここでは見えない。
ところが、麻薬組織がソミと母親を拉致し、テシクに運び屋をさせて罪を着せようとした事から、物語は一気に動き出す。
テシクの正体は、嘗て軍の秘密部隊の隊員として数々の潜入工作や暗殺任務で活躍し、存在そのものが国家機密である戦闘の超エキスパート
彼はソミを救い出すために、その秘めたる能力を駆使して、少しずつ組織の中核に迫ってゆくのである。

たまたま犯罪者が狙った相手が、実はその道のプロフェッショナルだったというのは、やや都合が良過ぎる気もするが、先日公開された「悪魔を見た」「96時間」などとも被る、ある意味サスペンス映画の王道パターンの一つだ。
ウォンビンの鍛え抜かれた肉体もその説得力を増し、バイオレンス描写も容赦が無い。
イ・ジョンボム監督のアクションのディテールに対するこだわり、例えばテシクが銃をオーダーする時に、「(装弾数の少ない)コルトやトカレフでなく10連発以上の半自動拳銃を・・・」と言ってグロックを手にする辺りも、その後の描写とリンクしてリアリティを生み出している。
たった一人で組織に乗り込んだテシクが、十数人もの敵を鮮やかな殺陣で倒してゆくクライマックスは、ハリウッド映画も真っ青の圧巻の迫力だ。

そして物語が進むに連れて、テシクが抱える哀しい過去も明らかになってくる。
彼は数年前、敵の報復攻撃によって妊娠中だった妻を殺され、自らも銃撃によって重症を負っていたのだ。
テシクがソミを見つめる哀しい瞳は、彼女を通して天国にいる妻と生れる事の出来なかった我が娘に向けられた物だったのである。
それ故に彼は、ソミと過剰に馴れ合うのを当初は恐れている様に見える。
物語の序盤に、テシクは通りの真ん中でカバンを盗んだと警察に疑われているソミに出くわす。
母親の連絡先を教えろと言われたソミは、テシクをパパだと指差すのだが、テシクは黙って立ち去ってしまう。
このシーンは二人の関係を象徴して、極めて印象的だ。
例え自分を見捨てたとしても、「アジョシを嫌いになれない」というソミの言葉に、何も返すことが出来ないテシク。
我が子を愛することの出来なかったテシクと、父の愛を知らないソミが惹かれあうのは必然なのである。

ソミを演じるのはウニー・ルコント監督の「冬の小鳥」でデビューしたキム・セロン
ナチュラルな存在感と豊かな感情表現は、天性の才能を感じさせ、実際の出番は決して多くないにも関わらず、強い印象を残す。
敵のボスキャラであるマンシク兄弟には、キム・ヒオンキム・ソンオ
頭脳派の兄と切れキャラの弟は、子供たちを集めて麻薬の精製工場で働かせ、使い物にならなくなると臓器ドナーにして殺してしまうという、なんともえげつない悪役を好演している。
この全く同情の余地のない二人を、戦いの覚悟を決めて身なりもパリッとしたテシクが、圧倒的な戦闘力で追い詰めてゆく終盤は、まさにノンストップ。
兄弟の最後も、いかにも卑劣漢らしく、映画的カタルシスを感じさせるお見事な死にっぷりだ。
悪役サイドで彼ら以上に存在感があるのが、殺し屋ロワンを演じたタヨナン・ウォンタラクンだろう。
坂本順治監督の「闇の子供たち」にも出演していたタイの俳優だが、悪玉でありながら儀を果すという、いかにもアジア的美徳を感じさせる美味しいキャラクター。
テシクとのナイフを使った一対一の壮絶な格闘は、クライマックス中でも闘争本能を刺激される本作屈指の名シーンである。

そして激しい戦いの末に、テシクは遂にソミを助け出すのだが、このシーンは前半のソミが泥棒に間違えられ、テシクが立ち去ってしまうシーンの対となっている。
信じたかった時に立ち去ってしまった“おじさん”は、今は血だらけになりながらも自分を助けに来てくれた。
社会の片隅に生きる孤独な二つの魂は、愚劣な犯罪に巻き込まれた事で強く惹かれ合い、今度こそしっかりと抱擁を交わすのである。
それまで全くといっていいほど表情を変えなかったテシクが、ソミに見せる最後のはにかんだ笑顔はまさしく父親そのものだ。
孤独な少女は、ほんの束の間それまでずっと渇望してきた“愛”を得て、心を閉ざしたヒーローは漸く贖罪と言う牢獄から解き放たれたのである。
ロジカルに組み立てられた物語の妙、キャラの立った俳優達の魅力、そして素晴らしく切れ味鋭いアクションという娯楽映画のフルコースを堪能できる、韓国映画の底力を感じさせる傑作だ。

今回は、破壊力抜群の映画に合わせて韓国名物「爆弾酒」をチョイス。
なみなみと注いだビアジョッキに、焼酎のショットグラスを沈める。
世界中にあるビールと蒸留酒のカクテルの韓国流バリエーションだが、一杯でもかなり酔っ払い、量を飲めば二日酔い必至の凶悪な酒である。
私は怖くてやった事が無いが、逆に焼酎の中にビールのグラスを落す「水素爆弾酒」というのもあり、度数から言ってもより悪酔いしそうだ。
まあ映画のテシクなら何杯飲んでも平気な顔をしてそうだが(笑

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