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スリーデイズ・・・・・評価額1750円
2011年09月30日 (金) | 編集 |
その罪は、愛のために。

「スリーデイズ」は、冤罪で囚われた妻を救い出す為に、夫が綿密な脱獄計画を練り上げるフレッド・カバイエ監督のフレンチ・サスペンス映画「すべて彼女のために」を、「クラッシュ」で知られる才人ポール・ハギスがハリウッドでリメイクした作品だ。
オリジナルでヴァンサン・ランドンとダイアン・クルーガーが演じた夫婦は、ラッセル・クロウとエリザベス・バンクスにバトンタッチ。
ストーリーラインや個々の描写まで、驚く程オリジナルに忠実ながら、最終的な作品の印象はかなり異なる。
ハリウッド屈指の名脚本家、ハギスならではの脚色術が光る秀作だ。

ピッツバーグに住む大学教授のジョン(ラッセル・クロウ)は、愛する妻のララ(エリザベス・バンクス)と一人息子のルーク(タイ・シンプキンス)と共に、幸せな日々を送っている。
ところがある朝、突然踏み込んできた警察によって、ララは殺人容疑者として逮捕されてしまう。
3年後、長い裁判の末に控訴は棄却され、絶望したララは刑務所で自殺未遂を起こす。
傷つき、憔悴したララを見たジョンは、密かに彼女を脱獄させる計画を練り始める。
ようやく計画に目処が付きそうになった頃、ジョンはララが遠く離れた刑務所に移送される事を知る。
移送までに残された時間は、僅かに3日間。
焦ったジョンは計画を前倒しする為に、自ら銃を握るのだが・・・


基本的な物語は殆ど同じ。
シーンによってはカット割やアングルまで同一の所も少なくない。
先を読ませない事が前提のサスペンス映画で、この作りはある意味冒険だ。
普通はここまで忠実にリメイクすれば、少なくともオリジナルを観て筋書きを知っている観客にとって、どう考えても新鮮な体験にはなり得ないはずである。
実際、殆どフルコピーに近いオープニングを観た時は失望を禁じえなかった。
にもかかわらず、映画が終わった時、私は深い感慨と共に素晴らしい映画体験をした喜びに浸っていた。
いや、これは凄い。フレッド・カバイエには大変失礼な事は承知だが、これは言わばオリジナルの脚本に対して、ハギス先生が赤ペンを入れてベターな模範解答を示した様な作品である。

映画の上映時間は、オリジナルの96分に対して、133分と30分以上も伸びている。
実は、この時間の大半を費やして、ハギスが描いているのは、登場人物の「感情」だ。
オリジナルは、人物描写を必要最小限に抑え、テンポ良く現象を繋いでゆく事で、非常にコンパクトで引き締まったサスペンス映画の佳作となっていたが、ハギスは現象そのもの以上に、人間の感情こそがサスペンスを生むと考えている様である。
例えば逮捕される前の夫婦のちょっとしたやり取りや、ジョンが息子のルークと交わす日常の会話の数々。
映画自体が寡黙で、あくまでも行動を中心に現象を描くオリジナルに対して、リメイク版はかなり饒舌なのだが、これらの細やかな感情描写のおかげで、夫婦がいかに愛し合っているか、ルークの存在がどれほどかけがえの無い物なのかがしっかりと伝わり、家族が引き裂かれる事への痛みが増幅されるのである。
オリジナルの原題は「Pour elle(彼女のために)」だが、こちらは息子ルークの存在感が強く、ジョンの行動原理はむしろ「家族のために」という伝統的ハリウッド映画の価値観に倣っているのも興味深い。

もっとも、殆ど同じとは言っても、リメイクに当たって改変されたポイントも幾つかある。
先ずは事件の本当の犯人は誰かという点である。
オリジナルでは妻が冤罪の犠牲者という事は、全く疑いの余地無しの事実として描かれるが、リメイクは少々ニュアンスが異なるのだ。
刑務所の面会室で、口論となったジョンに対して、ララは「私が本当に犯人とは思わないの?」と迫る。
事件の証拠を調べ直すジョンのイメージでは、ララが冤罪である場合と、彼女が実は犯人である可能性のビジョンを両方見せる。
これは、ジョンの中で彼女を信じたい自分と、どこかで疑っている自分の葛藤が深まっている事を意味し、後で自分の母親がララを疑っている事にジョンが激昂するシーンの裏付けともなっているのである。

更に、オリジナルでは1シーンしか出てこない、ルークの同級生の母親のキャラクターを、オリビア・ワイルド演じるシングルマザーとルークの友達となる娘のキャラクターに膨らませているが、これは物語の終盤に、逃亡するジョンとララがルークを迎えに来ると、皆で動物園に遊びに行ってしまっているという状況を作り出すためだ。
追っ手が迫る中、二人は子供か自由かの二者択一、究極の選択を迫られるのだが、これもそれまでの物語で、家族の絆を取り戻したいという主人公の感情が深く描かれているからこそ効いてくる。
困難な状況がキャラクターの心と絡み合う事で、よりサスペンスフルなシチュエーションが作り出されるのである。

同じ事は、妻を救うためとは言え、犯罪に自ら犯罪に手を染める事になるジョンの戸惑いにも言える。
ごく普通の市民であるジョンは、脱獄の計画を進めながらも、当初はおっかなびっくりだ。
偽造パスポートの手配を依頼した男に、「お前は焦りすぎだ。きっと失敗する」と言われたり、刑務所で合鍵を試して捕まりそうになり、思いっきりビビッて嘔吐してしまったり、ジョンの中の恐れを丁寧に描く事で、観客に感情移入させるのと同時に、この人物が警察を出し抜くなんて出来そうも無いと思わせるのである。
そして、ここはオリジナルと同じだが、移送前にララを奪還するために、急遽大金が必要になったジョンは、麻薬ディーラーを襲って殺してしまう。
無実の妻を救うために、結果的に夫は本物の人殺しになってしまうというアイロニー。
覚悟を決めたジョンは、計画を完璧にするために更なる工夫を凝らしてゆくのだが、逃亡のプロセスにはリメイク版オンリーの設定が多く、オリジナルを観ていても頭脳派犯罪者ならではの騙しのテクニックに唸らされるだろう。

もう一つの大きな改変ポイントは、主人公たちを追う警察サイドの描写が増えている事だ。
追う者、追われる者のコントラストがあってこそ、追撃戦の面白さは増し、逃げ切る事への映画的カタルシスも増幅される。
観客は既にどっぷりとジョンに感情移入しているから、たとえ結末はわかっていても、彼らに逃げて欲しい、逃げ切って欲しいと思わせる感情が押し寄せ、極上のスリルを生み出すのである。
必至に逃げるジョンを見て、3年前の事件を担当した刑事が見せるある行動の描写など、前記した誰が真犯人かという疑問ともリンクして秀逸。
逃亡先が反米のチャベス大統領がいるベネズエラという辺りも皮肉が効いているが、ここでも主人公がスペイン文学の教授であるという設定が生きている。
警察が疑うハイチはフランス語圏、対するベネズエラは勿論スペイン語圏だ。
脚色で増えた設定は、最終的に全て意味ある物として回収されているのである。

勿論、優れたオルジナルがあってこそ、この映画が生まれたのは間違いないが、大技小技を満遍なく効かせたハギスの脚色テクニックの見事さには脱帽するしかない。
ハギスは、本作において、ハリウッド流のドラマツルギーの中核とは、登場人物の感情描写であるという事を完璧に示してみせた。
脚色で物語りに付け加えた全ての要素が、ジョンやララの人間性を深め、彼らの葛藤が伝わる事で、単なる現象によるサスペンスにプラスして、よく出来た心理劇としての側面を与えているのである。
だからこそ、「脱獄は容易だが、逃げ続けるのは難しい」という事実を、言葉ではなく心で見せる物語のラストがズーンと胸に突き刺さる。
本作の邦題は「スリーデイズ」だが、原題は「The next three days」である。
夫の犯した罪を知らず、幸せそうに眠る妻と子を見ながら、苦悩の表情を浮かべるラッセル・クロウのアップに続いて、このタイトルが表示される。
映画で描かれた“the last three days”は何とか上手く行ったが、次の3日間をどう逃げるか、そしてその次の3日間は・・・。
冤罪から家族を取り戻すために、本物の罪人となった男には、もはや安息は永遠に訪れないのである。

今回は、警察と逃亡者の追いかけっこに引っ掛けて「トム&ジェリー」をチョイス。
ベネズエラと言えばラムが有名だが、これはダークラムを使ったホットカクテルで、名前は勿論世界一有名な猫と鼠の宿敵コンビから。
タマゴ一個を黄身と卵白に分けて泡立て、黄身の方に砂糖をスプーン2杯ほど加えて更に泡立て、卵白と混ぜる。
ラム30mlとブランデー15mlを加えてステアし、最後にタンブラーに移して適量の熱湯を加え、ステアして完成。
冬の寒い日にありがたいカクテルだが、疲れ切った体の元気回復にも効く。

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