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ツレがうつになりまして。・・・・・評価額1550円
2011年10月04日 (火) | 編集 |
もしも、愛する人が“うつ病”になってしまったら?
「ツレがうつになりまして。」は、ある日突然夫が心の病にかかってしまった夫婦を描く、細川貂々原作のベストセラーエッセイ漫画の映画化。
「日はまた昇る」などで知られる佐々部清監督は、予期せぬ病と向き合う事になった若い二人の、それぞれの心の変遷を適度なユーモアを交えながら描き出す。
主人公の売れない漫画家ハルさんを宮崎あおい、生真面目な“ツレ”を堺雅人が好演している。

漫画家の高崎晴子(宮崎あおい)は、外資系企業のカスタマーサービスセンターに勤める夫の幹夫(堺雅人)とペットのイグアナの二人と一匹暮らし。
慎ましくも幸せな日々を送っていたが、次第に幹夫の様子がおかしくなる。
繊細で生真面目な幹夫は、うつ病を発症してしまったのだ。
働けなくなった幹夫に変わって、図らずも一家の大黒柱になってしまった晴子は、必死に仕事を得ようとするのだが、連載していた漫画も打ち切りが決まってしまう・・・


「うつは心の風邪」という台詞が出てくるが、確かに周りを見渡しても、風邪と同じ位うつの人がいる。
今、都会で暮らしている社会人で、職場や私生活に全くうつの知人・友人がいないという人はまずいないのではないだろうか。
勿論これは、単に現代人のストレスでうつに罹る人が増えただけでなく、心の病に対する理解が進んだ事で、今までは見過ごされていた人が患者と認定される様になった事が大きいのだろう。

本作の主人公である高崎夫婦は好対照だ。
子供はまだおらず、物言わぬイグアナをペットに、妻ハルさんの趣味であるちょっと古いガラス瓶や、細々した“面白そうな物”に囲まれて暮らしている。
まあ漫画家という仕事からも想像は出来るが、ハルさんは良い意味でちょっとアバウト。
凝り性で、感情を隠さず、直感的な生き方をする女性だ。
対して、夫の“ツレ”こと幹夫は、ハルさんが爆睡している早朝から、毎日会社に持ってゆく弁当を調理し、毎日種類を変える付け合わせのチーズを、曜日ごとに小分けしているほどキッチリした性格。
仕事は外資系ソフトウェア企業の実質的なクレーム担当で、おまけに職場は相次ぐリストラで一人一人の仕事量が激増している状況である。
正に、うつになるべくしてなった、人と環境と言えるだろう。

体調の異変を感じて病院に行ったツレは、そこでうつ病の診断を受ける。
真面目一徹の仕事人間にとってこれはショックだ。
もちろんうつの辛さは男女共通だろうが、特に男性は自分が社会(会社)に必要とされているという、妙な自信が自己存在の拠り所だったりするケースが多いので、会社に行けないイコール自己否定に繋がってしまう。
本作のツレも働く事が出来なくなり、亀の様に布団に篭って泣き暮らし、遂には自殺願望に取り憑かれるほどに追い詰めれれてしまうのである。

そんな時に彼を救うのは、愛妻ハルさんの存在だ。
もちろん、彼女にとっても生活を支えて来た夫が倒れた事は一大事。
改めてプロの漫画家としてお金を稼がねばならなくなり、結果的に自分が何を表現したいのかという根源的テーマに向き合う事になる。
その事がツレとの衝突を生む事にもなるのだが、基本的に彼女は根が楽天的。
葛藤を深めながらも、そこから新しいアイディアを生み出す柔軟な心を持っている。
もしもハルさんがツレに輪をかけた様な真面目人間だったら、こんなにホンワカした映画にはならなかっただろう。
ツレの心を思いやりながらも、ポジティブな未来を信じるハルさんは、心が暗いトンネルに迷い込んでしまったツレにとって、出口へと導いてくれる灯りの様な存在だったのかもしれない。

ハルさんを演じる宮崎あおいがカワイ過ぎる
ぶちゃけ、どんなに辛い仕事でも彼女が家で待ってると思うだけで、気分はハイテンション、うつになんてなり様が無い気もするが、まあそれは性格次第なのだろう。
宮崎あおいと結婚してもうつになっちゃうツレを演じるのは、今や日本映画随一の性格俳優となった堺雅人だ。
この人の微笑は独特の味わいがあるが、今回もその泣き笑いのような表情で、コミカルさを感じさせつつも、心が壊れてゆく様を繊細に演じている。
基本的には困難に直面した夫婦の心のあり様を描いた作品なので、他の登場人物は流れの中で彼らに絡む程度。
上映時間の殆ど、二人が殆ど出突っ張りの状況が続くが、佐々部清監督は病からの回復に必要な長い時間を季節感たっぷりに描き、一本調子に陥る事を防いでいる。

世界観やビジュアルの遊び心も良い。
二人の暮らす昭和を感じさせるレトロな平屋は、手作りのイグアナ小屋や可愛い小物が並び、良い意味で生活感が溢れている。
ハルさんが凝っている古いガラス瓶集めは、実際に細川貂々の趣味だというから、多分生活の描写は原作者の実生活から結構インスパイアされているのかも知れない。
また、ツレがうつになる前は、良くも悪くも曖昧なスタンスで描き続けて来た漫画という表現に、はじめて必死に向き合ったハルさんが、ようやく描くべき物語を見つけたとき、漫画のキャラクターがCGアニメとなって飛び出す、ちょっと「ミス・ポター」を思わせる描写がある。
それまでの流れからはやや異質なので、賛否が別れそうなポイントだが、個人的には映画的ファンタジーとしてアリだと思う。
佐々部監督の作品は、しばしば生真面目過ぎるのと、ストーリーテリングのテンポが悪いのが欠点だが、今回はうまい具合に肩の力が抜け、作家の特質が作品に上手くフィットしているのではないか。

ただし、物語終盤の説明的冗長さ、特に前半ツレを精神的に追い詰めたクレーマーが、講演会で姿を表すシーンの唐突さは気になった。
まあ、あの声の主は何らかの形で絡んでくるのだろうなとは思っていたが、物語の流れから明らかに浮いており、ゲストスターの顔を無理やり見せただけの様な印象になってしまっている。
せっかく気持ちの良い物語の終りに、映画の世界から一気に引き戻されてしまうのはちょっと残念だった。

今回は、遊び心のある和のテイストという事で微発泡日本酒「月うさぎ」をチョイス。
日本酒の重さは微塵も無く、仄かに甘い独特のテイストだ。
この種の微発泡酒は低アルコールで、味も淡白で、ぶっちゃけ酒飲みには全く物足りないのだけど、お腹も心も疲れ切っている様な時には、こんな淡いお酒も良い物である。
そんでもって隣にハルさんみたいな女性がいてくれたら、もう何もいらないんだけど(笑

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