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新少林寺/SHAOLIN・・・・・評価額1700円
2011年11月20日 (日) | 編集 |
伝説の拳が、新たな時代に蘇る。

「新少林寺」というタイトルだが、ジェット・リーのデビュー作として知られる、武術アクション映画の金字塔、「少林寺」のリメイクではない。
あの映画は隋朝末の時代を舞台にしていたが、本作で描かれるのはその遥か1300年後。
辛亥革命後の混乱期、中国が事実上の内戦状態に陥った20世紀初頭の少林寺で展開する物語で、言わば先日公開された「1911」の後日談的な「1912 少林寺」である。
もちろん、売り物の武術アクションは観応え十分だが、何よりも我欲VS慈愛という骨太のテーマがストレートに打ち出され、人間ドラマとしても堂々たる仕上がり。
現代中国が、如何に精神文化を欲しているかがよくわかる作品だ。
監督は「香港国際警察/NEW POLICE STORY」「コネクテッド」のベニー・チャン。

1912年。
中国各地で軍閥が覇権を競った時代。
残虐な将軍・候杰(アンディ・ラウ)は、民草の信仰を集める少林寺に逃げ込んだ政敵を、強引に寺に押し入って射殺する。
猜疑心の塊である候杰は、信用の置けない義兄をも暗殺しようとするが、腹心の部下・曹蛮(ニコラス・ツェー)の裏切りにあい、愛する幼い娘は殺され、自らも追われる身となってしまう。
嘗て蹂躙した少林寺に助けを求めた候杰は、寺の調理係の悟道(ジャッキー・チェン)に導かれ、徐々に過去の自分を振り返り、懺悔して出家を決意する。
だが、 候杰が生きている事を知った曹蛮は、近代兵器で武装した軍を率いて少林寺に侵攻してくる・・・


今年は辛亥革命100周年に当たり、革命に絡んだ映画がいくつも公開されている。
面白い事に映画の公開順が実際の革命の時系列と同じになっていて、四月に公開された「孫文の義士団」は1906年の革命前夜、先日公開された「1911」がタイトル通りに革命の年の物語なのに続いて、本作「新少林寺」は革命翌年の1912年が舞台である。
「1911」の終盤で描かれた様に、孫文が袁世凱に禅譲する形で大総統の座を明け渡した事で、混乱した政府は統制力を失い、地方に勃興した幾つもの軍閥が、半独立国として勢力争いを繰り返す動乱の時代が幕を開ける。
古の中国が完全に潰え、今に続く現代中国が始まった時代だ。

それまで脈々と続いてきた国が、政治システムだけでなく、秩序や道徳といった文化もまとめて崩壊してしまい、人々が社会に拠り所を失った時、怪物の様に育つのは我欲である。
本作の主人公、候杰も力こそが正義と信じ、敵を倒し自らの利益と権力を拡大するためなら、伝統ある少林寺を踏みにじる事も辞さない。
しかし人の世は因果応報、力でのし上がった候杰は、同じように力で追い落とされる事を恐れ、誰の事も信用する事が出来ないのだ。
義兄弟の誓いを立てた相手に対してすら、自分を嵌めようとしているのではないかという疑心暗鬼が生じ、暗殺を計画する。
だが人を呪わば穴二つ。
実は義兄は、引退して自分の地位を候杰に譲ろうとしていただけ。
その事に候杰が気付いた時には、既に腹心の部下であった曹蛮の罠に落ち、権力を奪われてしまうのである。

権力者だった時には、恐れるに足らずと蔑んだ少林寺に助けを求めるも、いまだ超上から目線で僧達に既に亡くなっている娘の治療を強要する傲慢な候杰を見て、妻の顔夕も「娘を殺したのはあなただ」という言葉を浴びせて彼のもとを去る。
そうして全てを失って初めて、候杰は自分の過去の人生を振り返る事が出来るのである。
ここで候杰を導くのが、特別出演のジャッキー・チェン演じる悟道だ。
寺の厨房を預かる調理係である彼は、候杰を伴って寺の門前の難民達に饅頭を配りに行くのだが、嘗て支配した人々を前に、候杰は何をどうすれば良いのかわからない。
悟道は、候杰の手に饅頭を握らせて、食事を求める難民一人一人に配らせるのだ。
それまで人から奪う事しか知らなかった候杰が、初めて人に与える事を知る象徴的なシーンである。
やがて、過去の自分の行いが如何に煩悩に満ちた物だったのかを悔いた候杰は、出家して少林寺の僧“浄覚”となる事を決める。

と、ここまでは残虐な権力者だった候杰の、転落と改心の物語なのだが、本作にはもう一人改心させるべきキャラクターがいる。
候杰を裏切りその地位を奪った曹蛮は、言わば候杰のダークサイドの強化版だ。
より権力を求め、より猜疑心が強い。
彼は列強と取引し、中国の遺跡からの出土品と引き換えに武器を買い、遺跡で働かせた人足は口封じのために殺してしまう。
そんな曹蛮が候杰が少林寺で生きている事を知った時、物語は一気呵成に動き出す。
候杰は、自らに定められた天命を、曹蛮を改心させる事と悟り、彼と対決するのである。

物語のクライマックスは、候杰と曹蛮の再会と僧達による囚われた人足の救出作戦という二つの流れから始まり、やがて少林寺を舞台に候杰ら僧達VS近代兵器で武装した曹蛮の軍との全面対決という激流になだれ込む。
普通に考えたら銃を装備した軍隊に、いくら武術の達人とは言え精々刀と棍しか持たない僧達が勝てる訳が無いのだけど、さすがにこのあたりは演出の見せ方も上手く、互角の戦いに十分な説得力を感じさせる。
血気盛んな僧、浄空が因縁のある敵の中ボスと相打ちし、「少林寺を見縊るな」と言い放つシーンには思わず痺れた。
僧達が、「殺生をお許しください」と仏に祈りながら倒れて行くのも印象的だ。

日本人の俳優が時代劇に出ると映える様に、この映画に登場する中国の男たちはとにかくカッコいいのである。
主人公の候杰を演じる名優アンディ・ラウと、曹蛮を演じる若手ニコラス・ツェーの火花散る演技合戦。
僧達の寡黙なリーダーを演じたウー・ジンの燻銀の魅力。
ジャッキー・チェンもどこか手持ち無沙汰だった「1911」とは対照的に、持ち味のコミカルなアクションで水を得た魚の様に躍動する。
そしてが少林寺のトップである方丈を演じるのは、1982年の「少林寺」のオリジナルキャストで、ジェット・リーの師匠でもあるユエ・ハイ
もちろん、ただの太った爺さんではないので、最後にはヨーダ並の活躍を見せるのも嬉しい。
紅一点のファン・ビンビンも、出番は少ないものの候杰の心の変化を感じ取る重要な役柄を好演している。

100年前の時代を描いた本作からは、21世紀の現代中国が透けて見える。
混乱の時代に聖域として人々の拠り所となり、遂に近代兵器によって破壊される少林寺は、中国が数千年かけて培ってきた豊かな精神文化の象徴だ。
革命後の内戦、第二次世界大戦、そして戦後の共産党の支配によって、中国はすっかり精神文化を置き去りにしたまま成長してしまった。
映画は、豊かになった中国社会が、我欲によって弱肉強食の世界として続いてゆく事に警鐘を鳴らしている様に思える。
戦いによって寺は完全に破壊されても、その心を受け継いだ人たちがいるかぎり、少林寺は滅びないというエンディングも、本作のテーマ性を強く感じさせる物で秀逸だ。
因みに本物の少林寺も、1928年に軍閥の襲撃で建物が全て焼失したが、後に再建されたという。
中国は革命後100年が過ぎ、物質的な豊かさだけではなく、心の豊かさを求めようという段階に入りつつあるのかもしれない。

今回は、熱血な映画なので、さっぱりした中国酒を。
黒龍江省で作られる高粱と小麦の蒸留酒「玉泉方瓶酒」をチョイス。
これは先日たまたま中国土産にいただいたのだが、独特のフルーティな酸味があり、他のどの中国酒にも似ていない。
トニックウォーターで割って飲んだら美味しかったが、カクテルベースにしても面白そうだ。
広い中国には、まだまだ日本人の知らない酒があるのだろう。

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