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タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密・・・・・評価額1750円
2011年12月03日 (土) | 編集 |
冒険は、走り出したら止まらない!

「タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密」は、巨匠スティーブン・スピルバーグ監督初の3D作品であると同時に、初のアニメーション映画である。
ベルギーの漫画家エルジェによって、1929年に創造された少年記者タンタンと愛犬スノーウィの冒険物語は、以降半世紀以上に渡って描き続けられ、総部数は何と全世界で3億5千万部を超えるという。
映画は1943年に出版された「なぞのユニコーン号」をベースに、「ショーン・オブ・ザ・デッド」の監督として知られるエドガー・ライトらの脚本チームが、幾つかの原作を組み合わせて構成している。
パフォーマンス・キャプチャで主人公のタンタンを演じるのは、「リトル・ダンサー」のジェイミー・ベル、相棒となるハドック船長に、この種の映画の第一人者となったアンディ・サーキス
エキゾチックな冒険の舞台を作り上げ、最終的にキャラクターに命を吹き込んだのは、ピータージャクソン率いるWETAデジタルだ。
ジャクソンは本作のプロデューサーであるのと同時に、セカンドユニットの監督を務めており、事実上両巨匠の共同作業によって作品が作られたというから、何とも贅沢な一本である。

少年記者のタンタン(ジェイミー・ベル)は、ある日愛犬スノーウィと訪れたのフリーマーケットで400年前に沈んだ帆船、ユニコーン号の見事なミニチュア模型を買う。
だが、その日からタンタンの周りには得体の知れない男たちが暗躍する様になる。
実は模型には、ユニコーン号が積んでいた宝のありかを示す、暗号が書かれた羊皮紙が隠されていたのだ。
宝を狙う悪党のサッカリン(ダニエル・グレイグ)に誘拐され、貨物船カラブジャン号に閉じ込められたタンタンは、ユニコーン号の船長の子孫である大酒飲みのハドック船長(アンディ・サーキス)の協力を得て、彼と共に船を脱出する。
宝のありかを知るには、三つあるミニチュア模型全ての暗号が必要で、最後の一つがモロッコにある事を知ったタンタンは、ハドックとスノーウィと共にモロッコを目指す。
だが、そこには既にサッカリンたちの姿があり、失われたユニコーン号の秘密を巡る、最後の争奪戦の幕が切って落とされる・・・


スピルバーグが原作と出会ったのは、ちょうど30年前の事。
当時「レイダース/失われたアーク」が公開されていたヨーロッパで、「タンタン」という漫画との類似性が指摘されている事を知ったスピルバーグは、早速その本を取り寄せて読み、すっかり魅了されてしまったのだという。
早速映画化の準備に取り掛かったものの、紆余曲折があり実現したのは2011年だったという訳だ。
この様な経緯があるからだろう、本作は「タンタンの冒険」という漫画の映画化であるのと同時に、スピルバーグ自身による「レイダース」のリイマジネーション的な作品にもなっている。
センス・オブ・ワンダーに溢れたオープニングから、タンタンがユニコーン号のミニチュアを手に入れると、後はもうノンストップの連続活劇だ。
貨物船から脱出すると、今度は飛行機で嵐の中に突入、お次は灼熱の砂漠へと凝りに凝った場面転換のテクニック、縦横無尽に駆け巡るカメラワークは、正に80年代のスピルバーグ演出の進化形である。
特に、迷路の様なモロッコの町を舞台に、羊皮紙を奪った隼を巡る敵味方入り乱れての大争奪戦のシークエンスは、もうモロに「レイダース」で、一瞬タンタンがインディ・ジョーンズに見えるほど。
 
私が思うに、スピルバーグは自分の影響を受けて映画界に入った、最近の若い作家らとの交流が増えるにつれ、いろいろと心境の変化があったのではないだろうか。
彼は巨匠と呼ばれる他の多くの作家とは異なり、一つのスタイルに安住せず、常に新しいテーマ、新しい表現方法を貪欲に追求し、変化し続けてきた稀有な人物である。
それがスピルバーグ映画の“枯れない”魅力でもあるのだが、昔のスタイルを懐かしむファンの間では、もうあの頃の様な作品は観られないのだろうか、という郷愁の様な欲求があったのも事実。
80年代の彼へのリスペクトを、嘗ての観客の立場からストレートにぶつけたのが一世代若いJ・J・エイブラムスの「SUPER8/スーパーエイト」だった訳だが、若者達との共同作業で、スピルバーグの中にも嘗ての自分が作っていた物への想いが蘇ったのではないだろうか。
本作も、次回作の「戦火の馬」も(こちらに関しては予告を観る限り)画作りの考え方、特にカメラワークで物語を語らせる辺りが、最近の作品よりも遥かに80年代頃の彼のスタイルに近いのである。

更に本作を特徴付けるのが、これがスピルバーグにとっても初めての、漫画を原作としたアニメーション作品であるという事。
昔からディズニーへの憧れを公言してきた彼としては、それだけでも感慨深いものがあっただろうが、表現の形態としてはディズニー的な手描きアニメとは対極にあるCGアニメ、それもパフォーマンス・キャプチャを使った実写とアニメの狭間にある様なスタイルだ。
この系統の第一人者と言えば、やはりスピルバーグによって見出された盟友のロバート・ゼメキスであろうが、彼は「ベオウルフ/呪われし勇者」「Disney's クリスマス・キャロル」といった一連の作品で、一見実写の様に見えるが、現実とは微妙にずれたデジタル世界を、物語の持つある種の神話性や映画的な虚構性の表現に上手く結び付けてきた。
基本的に本作もその延長線上にあり、世界観やキャラクターは写実的なのだが、その実漫画チックでもあるという絶妙なさじ加減で作られている。
このために、例えばゲップで飛行機を飛ばしてしまうとか、ちょっとやり過ぎと思える演出も笑いにつなげられたり、生身の人間がやれば全くリアリティのないアクションなども案外素直に受け入れられるのだ。
殆ど人間並みの知能を持っているように見える愛犬スノーウィの大活躍など、もしも完全な実写だったとしたあり得ない描写だろう。
その意味で、本来“漫画”である本作を、パフォーマンス・キャプチャを使ったアニメーション映画とした事は、必然であり、成功だったと思える。

また巨匠が初の3Dをどのように使ってくるのかも興味深い点だったが、立体感はしっかりとしているが、所謂飛び出す系ではなく、画面の深い奥行きを生かした落ち着いたもの。
この辺りは、びっくりさせるためではなく、臨場感を増幅するための3Dという「アバター」以来の立体演出のセオリーどおり。
個人的にはやたら飛び出すのは目が疲れるので、この方向性は好ましく思える。
因みに本作には、スピルバーグの実写作品を多く手がけているヤヌス・カミンスキーが撮影監督してクレジットされており、彼は実際に全てのシーンでライティング監修を行っているという。
撮影監督という言葉から誤解している人も多いが、基本的にハリウッドにおける撮影監督とは、ライティングのディレクションが第一義的な仕事である。
おかげでフィルムノワールの香り漂うヨーロッパの夜のシークエンスから、地中海の太陽が照りつけるモロッコのシークエンス、回想シーンで綴られる海賊船VSユニコーン号の大迫力の海戦まで、陰影の美しい映像はとにかくゴージャスだ。

まあ殆ど全編見せ場の連続なので、物語の緩急に乏しかったり、テーマ性の部分は限りなく薄味だったりと、突っ込もうと思えばいくらでも突っ込めるだろう。
だが、これは計算して割り切った連続活劇である。
オープニングからラストまで、こんなにもワクワクする冒険に誘ってくれた映画は久しぶりで、私はこれ以上の物を本作に求める必要は無いと思う。
これはスピルバーグ&ジャクソンという二人の巨匠からの、夢と冒険の詰まった豪華なクリスマスプレゼントだ。
30年前の冬休み、「レイダース/失われたアーク」を観た時の興奮が蘇ってきたよ。

本作は既にヨーロッパでは10月下旬から続々と公開されており、既に2億ドルを超える興行収入を稼ぎ出す大ヒットを記録しているが、実は本国アメリカではクリスマス直前の12月21日からという異例の公開スケジュールとなっている。
これは原作の知名度がアメリカでは相対的に低く、全世界からのインターネットを通じた口コミ効果を狙ったものなのだそうな。
今のところタンタンの故郷であるベルギーを初め、おおむねヨーロッパの観客からの反応は良好な様で、関係者は胸を撫で下ろしている事だろう。
ドリームワークスは配給のソニーピクチャーズと二本の契約を結んでおり、次回作ではプロデューサーと監督のスイッチが計画されているとか。
ピーター・ジャクソン監督の「続・タンタンの冒険」、それはそれで面白そうだけど、彼は「ホビットの冒険」二部作もあるから冒険続きになっちゃうな。

今回はベルギーの小さな冒険者にちなんで、ベルギービール「ヒューガルデン ホワイト」をチョイス。
ベルギービールというとアルコール度数が高いという印象があるが、こちらは5度未満と国産ビール並みで、淡い口当たりとフルーティなテイスト、クセもなく飲みやすい。
本来夏に人気の高いホワイトビールは、実は脂っこいものを食べる機会の多いこの季節にも悪くないチョイスである。
映画同様、作り手のセンスとバランス感覚の良さが際立つ、万人向けの一本だ。

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