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2011年12月28日 (水) | 編集 |
歴史の狭間に消えた、一人の少女の語られぬ想い。
弟との約束を果たすために、一本の“鍵”を握りしめ大戦下のパリを目指すユダヤ人少女と、現在から彼女の消息を探すアメリカ人ジャーナリストを描くミステリアスな歴史ドラマ。
原作は、タチアナ・ド・ロネの同名ベストセラー小説。
監督・脚色は、ユダヤ系フランス人であり、祖父が絶滅収容所で亡くなっているという、ジル・パケ=ブレネールが手掛けている。
日本公開は今年だが、2010年にフランスで作られた作品である。
この年は1940年にドイツがフランスに侵攻してから70周年にあたり、自らの歴史を改めて振り返ろうとした作品も多かった様で、これもその一つだ。
1942年7月16日。
パリに暮らす10歳のユダヤ人少女サラ(メリュジーヌ・マヤンス)は、突然踏み込んできたフランス警察によって両親と共に逮捕される。
連行される直前、彼女は幼い弟のミッシェルを納屋に隠し、鍵をかける。
「直ぐに帰るから、決して出ちゃだめよ」と言い残して。
68年後のパリ、ジャーナリストのジュリア(クリスティン・スコット・トーマス)は、リフォーム中の夫の実家が、元々ユダヤ人の一家が住んでいたアパートである事を知る。
彼らの消息を追ったジュリアは、やがて一家の少女サラが辿った過酷な人生と、夫の家族との秘密の歴史を知ることとなる・・・
ドイツ占領下のパリで1942年に起こったフランスの黒歴史、ヴェルディヴ事件。
パリに暮らしていたユダヤ人1万3千人以上が、フランス警察によって突然連行され、宿泊施設もない室内競輪場に押し込められた後に、ナチスの絶滅収容所へと送られた事実は、先日公開された「黄色い星の子供たち」でも描かれていたので、ご存知の方も多いだろう。
一万人以上もの人々が忽然と街から消え、その殆どが二度と戻らない。
当然、彼らの家は空家として残され、後には別の人が住む。
本作の主人公は、フランス人男性と結婚し、パリに暮らすアメリカ人ジャーナリストのジュリア。
雑誌社に勤める彼女は、ヴェルディヴ事件の取材の過程で、夫の実家のアパートが、事件で逮捕されたユダヤ人一家の住居だった事を知ってしまう。
もしかしたら、アパートは彼らの犠牲に乗じて不正に入手された物ではないのか・・・。
疑心暗鬼となったジュリアは、当時10歳だった一家の長女、サラの死亡記録が何処にも無い事を知り、何かに取り憑かれたかの様に彼女の消息を追いはじめる。
フランス人にとっては、触れられたくない歴史の汚点。
ジュリアはアメリカ人という第三者であると同時にジャーナリストとしての義務感から、軋轢を覚悟の上で、夫の家族とサラとの接点を探し始めるのだが、それだけでは誰もが触れて欲しくない歴史の暗部を、好奇心から覗こうとするだけのお節介な人にも見える。
だから本作では、ジュリアがサラの消息を追わなければならない、もう一つの必然を与えている。
彼女は45歳にして待望の妊娠をしたのだが、当然喜んでくれると思っていた夫に、新たな子供を持つことを拒否されてしまう。
今ある家族と新しい命。
生きることを許されずに、奪われてしまった多くの命が、ジュリアにとっては我が事としてのし掛かって来るのである。
映画は歴史に微かに残されたサラの痕跡を探すジュリアと、1942年の世界で弟との約束を果たすために、過酷な旅を続けるサラの姿を交互に描いてゆく。
隠された家族の歴史を探り、現代と過去がシャッフルされる作劇は、レバノン内戦を材にとった「灼熱の魂」と少し似た印象もあるが、あちらがギリシャ神話もかくやという大悲劇へと展開してゆくのとは対照的に、こちらはそこまでのドラマチックな飛躍はない。
むしろ、多分こういう事は戦争中に沢山あったのだろうなという、リアリティを重視した淡々とした流れに終始する。
昨日までの隣人が無慈悲に罵声を浴びせ、逆に良心の呵責に耐えられない警官が小さな命を救おうとする。
人間の持つ様々な側面を見つめながら、少女サラは自らの善意によって閉じ込めてしまった、幼い弟のために鍵を抱いて走り続ける。
そして、遂にパリに帰り着いたサラを待っていたのは、少女の心を打ち砕くには十分過ぎる、余にも残酷な現実だ。
地獄の様な時代を生き延びたサラは、戦後自らの存在を消し去る様に、誰にも告げずにアメリカへと渡ると、そこで人生の伴侶を得て一児の母となる。
しかしユダヤ人である事を含め、フランス時代の一切を封印して、一人息子にすらそれを秘密にするのは、自らの出自が悲劇を招き、弟を殺してしまったという恐怖から逃れる事が出来なかった事だろう。
自分が自分である事自体が罪。
ユダヤ人である事を知られる事を極端に恐れたというサラは、ほぼ自殺に等しい非業の死を遂げるのだが、これもおそらくは自らの秘密を死によって葬る事で、家族を守ろうとしたのだと思う。
残酷な運命の悪戯によって、壊れてしまったサラの心。
だが、フランス、アメリカ、イタリアへと続く、サラとその血脈を追う長い長い旅路によって、彼女の人生の軌跡を追体験したジュリアは、自らが守るべき命、選ぶべき道を知り、またジュリアによって歴史の裏側に秘められていたサラの実像が、それを知るべき人々に伝えられる。
70年に及ぶ時の流れを超えて、サラの想いが新しい命へと繋がるラストは、この厳しく切ない物語の未来に、仄かな希望を感じさせる秀逸な物だ。
命は、血だけでなく記憶によっても継承されてゆくのである。
今回は、戦後のサラが降り立った地、ニューヨークの名を持つカクテル「ビッグ・アップル」を。
多目の氷を入れたタンブラーにウォッカを注ぎ、アップルジュースを適量加えて軽くステアし、最後にカットしたリンゴを飾って完成。
因みに、ニューヨークの愛称が何故ビッグ・アップルになったかは諸説があるが、どうも昔男性サロンにいた女性たちを男たちが隠語でアップルと呼んでおり、上質のアップルが集まる街という意味で、ビッグ・アップルとなったという説が有力の様だ。
女性だけでなく、世界中から人々が集まり、あらゆる人種・言語・宗教が共存するこの街は、サラにとっては最も安心できる場所だったのでもしれない。
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弟との約束を果たすために、一本の“鍵”を握りしめ大戦下のパリを目指すユダヤ人少女と、現在から彼女の消息を探すアメリカ人ジャーナリストを描くミステリアスな歴史ドラマ。
原作は、タチアナ・ド・ロネの同名ベストセラー小説。
監督・脚色は、ユダヤ系フランス人であり、祖父が絶滅収容所で亡くなっているという、ジル・パケ=ブレネールが手掛けている。
日本公開は今年だが、2010年にフランスで作られた作品である。
この年は1940年にドイツがフランスに侵攻してから70周年にあたり、自らの歴史を改めて振り返ろうとした作品も多かった様で、これもその一つだ。
1942年7月16日。
パリに暮らす10歳のユダヤ人少女サラ(メリュジーヌ・マヤンス)は、突然踏み込んできたフランス警察によって両親と共に逮捕される。
連行される直前、彼女は幼い弟のミッシェルを納屋に隠し、鍵をかける。
「直ぐに帰るから、決して出ちゃだめよ」と言い残して。
68年後のパリ、ジャーナリストのジュリア(クリスティン・スコット・トーマス)は、リフォーム中の夫の実家が、元々ユダヤ人の一家が住んでいたアパートである事を知る。
彼らの消息を追ったジュリアは、やがて一家の少女サラが辿った過酷な人生と、夫の家族との秘密の歴史を知ることとなる・・・
ドイツ占領下のパリで1942年に起こったフランスの黒歴史、ヴェルディヴ事件。
パリに暮らしていたユダヤ人1万3千人以上が、フランス警察によって突然連行され、宿泊施設もない室内競輪場に押し込められた後に、ナチスの絶滅収容所へと送られた事実は、先日公開された「黄色い星の子供たち」でも描かれていたので、ご存知の方も多いだろう。
一万人以上もの人々が忽然と街から消え、その殆どが二度と戻らない。
当然、彼らの家は空家として残され、後には別の人が住む。
本作の主人公は、フランス人男性と結婚し、パリに暮らすアメリカ人ジャーナリストのジュリア。
雑誌社に勤める彼女は、ヴェルディヴ事件の取材の過程で、夫の実家のアパートが、事件で逮捕されたユダヤ人一家の住居だった事を知ってしまう。
もしかしたら、アパートは彼らの犠牲に乗じて不正に入手された物ではないのか・・・。
疑心暗鬼となったジュリアは、当時10歳だった一家の長女、サラの死亡記録が何処にも無い事を知り、何かに取り憑かれたかの様に彼女の消息を追いはじめる。
フランス人にとっては、触れられたくない歴史の汚点。
ジュリアはアメリカ人という第三者であると同時にジャーナリストとしての義務感から、軋轢を覚悟の上で、夫の家族とサラとの接点を探し始めるのだが、それだけでは誰もが触れて欲しくない歴史の暗部を、好奇心から覗こうとするだけのお節介な人にも見える。
だから本作では、ジュリアがサラの消息を追わなければならない、もう一つの必然を与えている。
彼女は45歳にして待望の妊娠をしたのだが、当然喜んでくれると思っていた夫に、新たな子供を持つことを拒否されてしまう。
今ある家族と新しい命。
生きることを許されずに、奪われてしまった多くの命が、ジュリアにとっては我が事としてのし掛かって来るのである。
映画は歴史に微かに残されたサラの痕跡を探すジュリアと、1942年の世界で弟との約束を果たすために、過酷な旅を続けるサラの姿を交互に描いてゆく。
隠された家族の歴史を探り、現代と過去がシャッフルされる作劇は、レバノン内戦を材にとった「灼熱の魂」と少し似た印象もあるが、あちらがギリシャ神話もかくやという大悲劇へと展開してゆくのとは対照的に、こちらはそこまでのドラマチックな飛躍はない。
むしろ、多分こういう事は戦争中に沢山あったのだろうなという、リアリティを重視した淡々とした流れに終始する。
昨日までの隣人が無慈悲に罵声を浴びせ、逆に良心の呵責に耐えられない警官が小さな命を救おうとする。
人間の持つ様々な側面を見つめながら、少女サラは自らの善意によって閉じ込めてしまった、幼い弟のために鍵を抱いて走り続ける。
そして、遂にパリに帰り着いたサラを待っていたのは、少女の心を打ち砕くには十分過ぎる、余にも残酷な現実だ。
地獄の様な時代を生き延びたサラは、戦後自らの存在を消し去る様に、誰にも告げずにアメリカへと渡ると、そこで人生の伴侶を得て一児の母となる。
しかしユダヤ人である事を含め、フランス時代の一切を封印して、一人息子にすらそれを秘密にするのは、自らの出自が悲劇を招き、弟を殺してしまったという恐怖から逃れる事が出来なかった事だろう。
自分が自分である事自体が罪。
ユダヤ人である事を知られる事を極端に恐れたというサラは、ほぼ自殺に等しい非業の死を遂げるのだが、これもおそらくは自らの秘密を死によって葬る事で、家族を守ろうとしたのだと思う。
残酷な運命の悪戯によって、壊れてしまったサラの心。
だが、フランス、アメリカ、イタリアへと続く、サラとその血脈を追う長い長い旅路によって、彼女の人生の軌跡を追体験したジュリアは、自らが守るべき命、選ぶべき道を知り、またジュリアによって歴史の裏側に秘められていたサラの実像が、それを知るべき人々に伝えられる。
70年に及ぶ時の流れを超えて、サラの想いが新しい命へと繋がるラストは、この厳しく切ない物語の未来に、仄かな希望を感じさせる秀逸な物だ。
命は、血だけでなく記憶によっても継承されてゆくのである。
今回は、戦後のサラが降り立った地、ニューヨークの名を持つカクテル「ビッグ・アップル」を。
多目の氷を入れたタンブラーにウォッカを注ぎ、アップルジュースを適量加えて軽くステアし、最後にカットしたリンゴを飾って完成。
因みに、ニューヨークの愛称が何故ビッグ・アップルになったかは諸説があるが、どうも昔男性サロンにいた女性たちを男たちが隠語でアップルと呼んでおり、上質のアップルが集まる街という意味で、ビッグ・アップルとなったという説が有力の様だ。
女性だけでなく、世界中から人々が集まり、あらゆる人種・言語・宗教が共存するこの街は、サラにとっては最も安心できる場所だったのでもしれない。

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