2012年01月10日 (火) | 編集 |
お隣は、ヴァンパイア。
1985年に公開されたトム・ホランド監督の出世作、「フライトナイト」の四半世紀ぶりのリメイクである。
オリジナルは、郊外に住むごく普通の高校生と、隣に引っ越してきたヴァンパイアの戦いをコメディタッチで描いた異色のホラー映画。
21世紀版の“恐怖の夜”は、ホランドのオリジナル脚本を、テレビシリーズの「バフィー~恋する十字架~」のマーティ・ノクソンが脚色し、監督は「ラースと、その彼女」で注目されたグレイグ・ギャレスピーが努める。
基本プロットはそのままに、キャラクター造形などを今風にアレンジし、ビジュアルを大幅にパワーアップ。
完成度やインパクトではさすがにオリジナルには及ばないが、これはこれで話を知っていても楽しめる。
オタクな高校生のチャーリー・ブリュースター(アントン・イエルチェン)は、なぜか美貌の彼女エイミー(イモージェン・プーツ)をゲットし、人も羨む高校生活をエンジョイ中。
だがある日、友人のエド(クリストファー・ミンツ=プラッセ)から、最近引っ越してきた隣人のジェリー(コリン・ファレル)がヴァンパイアだと警告を受ける。
オカルトマニアのエドは、ジェリーが引っ越してきてから、失踪する住人が増えている事に気付き、密かに彼を監視していたのだ。
最初は取り合わなかったチャーリーだが、やがてエドも失踪し、チャーリーの背後にもジェリーの影が付きまとう様になる。
チャーリーは、ラスベガスのマジシャンでヴァンパイアハンターを自称するピーター・ヴィンセント(デヴィッド・テナント)に助けを求めるのだが・・・
アメリカの80年代は、郊外(suburb)の時代である。
70年代に新移民が流入し、過密化した都市から、白人中流層が郊外の新興住宅地に脱出。
新たなライフスタイルが広まった事で、大衆文化もまた大きな影響を受け、郊外はアメリカ映画にとって重要な舞台となって行く。
スティーブン・スピルバーグの「未知との遭遇」や「E.T.」、「ポルターガイスト」といった一連の作品は、郊外の平穏な日常の中に宇宙人や幽霊といった非日常が投げ込まれる事で事件が起こる、いわば郊外型ローファンタジーと言える新たなジャンルを確立した。
人々の生活空間は、大都市ほど近くは無く、かといって田舎ほど遠くも無い。
隣家との絶妙な距離感が導き出す、お隣の非日常というスタイルに、古典的なヴァンパイアというアイコンを埋め込んだのがオリジナルの「フライトナイト」だ。
リメイク映画の場合、新旧比較されるのが宿命だが、四半世紀ぶりにリメイクされた本作は、前記した様に大まかなプロットは比較的忠実ながら、キャラクター造形や物語上の役割などは結構細かく改変されている。
主人公カップルのうち、女子のエイミー方が積極的な性格なのは同じだが、リメイク版のチャーリーは、かなりオタクっぽいキャラクターになっており、エイミーと付き合うようになってから、オタクの過去を捨てようとしている。
イケてる彼女に合わせて、無理をして背伸びしようとするチャーリーが、ジェリーとの戦いを通じて等身大の自分と向き合えるようになるという成長物語が物語のバックボーン。
彼を助けるピーター・ヴィンセント役は、ロディー・マクドウォールの当たり役として知られているが、今回はホラー俳優からマジシャンへと設定変更され、演じるのはイギリスの人気SFドラマ「ドクター・フー」で、10代目ドクターを演じたデヴィッド・テナント。
ピーターがチャーリーに加勢してジェリーと戦う理由も、オリジナルでは落ち目の俳優が自分の自信を取り戻すためなのに対して、リメイクではジェリーとの間に過去の因縁がある事になっている。
まあこの辺りの設定はやや唐突感があり、元のプロットにスムーズに組み込まれているとはあまり思えないのだが、良く知った物語に一定の新味を加える役割は果していると言えるだろう。
そして、この種の映画では花形であるヴァンパイアのジェリーは、ダンディなイメージのクリス・サランドンに代わって、野性味溢れるコリン・ファレル。
変わったのはルックスだけでなく、行動もかなりマッチョだ。
「ヴァンパイアは、招かれない限り相手の家に入れない」というお約束も、オリジナルでは紳士的な物腰のジェリーがチャーリーの母親に取り入ってあっさり侵入に成功するが、リメイク版ではいきなりガス管に火をつけて家ごと爆破してしまうという荒っぽさ。
肉体的にもペンで手をさされただけで慌てて逃げ出していたのが、今回は刺されようが車で轢かれようが、さしたるダメージを受けず執拗に追ってくる。
ワイルドな肉食系ヴァンパイアとなったジェリーに相応しく、アクションはかなりパワーアップし、その分コメディ要素は薄まっている。
グレイグ・ギャレスピー監督は、オリジナルではキービジュアルにもなった“口裂け女”のシーンをコスチュームもそのままに再現したり、トム・ホランドの作り上げた独特のホラーワールドへのリスペクトは感じさせる物の、全体的にはオリジナルの持つ緩さを消し去り、モダーン&ハードに仕立て直すという最近のリメイク潮流に沿った作品に仕上げた。
まあオリジナルはとぼけたユーモアが重要な隠し味だった訳で、そのあたりが好きだった往年のファンにとっては評価の分かれるポイントかもしれない。
因みにゲイ・ムーブメントが盛り上がりを見せた80年代の作品らしく、オリジナルではジェリーにビリーという男性のパートナーがいたのだが、本作ではジェリーのマッチョ化と共にキャラクター自体が消滅しているあたりも、時代の移り変わりをさり気無く感じさせる。
今回は、劇中でピーターが殆ど肌身離さず飲み続けているサントリーのメロン・リキュール、「ミドリ」をチョイス。
もっとも、ピーターはストレートで飲んでいたが、普通の人には甘すぎるので、これを使った最も有名なカクテル「セックス・オン・ザ・ビーチ」を。
この刺激的な名前のカクテルは、トム・クルーズ主演のその名も「カクテル」という映画によって一気に有名になった。
ウォッカ15ml、ミドリ20ml、クレナデン・シロップ10ml、パインジュース80mlを氷を入れたタンブラーに注ぎ、ステアする。
甘くて飲みやすいが、アルコール度数はそれなりに高いので、油断するとヴァンパイアの毒牙にかかったかの様にメロメロになってしまう。
一応、安全な「セーフ・セックス・オン・ザ・ビーチ」というノンアルコールのカクテルもあったりする(笑
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1985年に公開されたトム・ホランド監督の出世作、「フライトナイト」の四半世紀ぶりのリメイクである。
オリジナルは、郊外に住むごく普通の高校生と、隣に引っ越してきたヴァンパイアの戦いをコメディタッチで描いた異色のホラー映画。
21世紀版の“恐怖の夜”は、ホランドのオリジナル脚本を、テレビシリーズの「バフィー~恋する十字架~」のマーティ・ノクソンが脚色し、監督は「ラースと、その彼女」で注目されたグレイグ・ギャレスピーが努める。
基本プロットはそのままに、キャラクター造形などを今風にアレンジし、ビジュアルを大幅にパワーアップ。
完成度やインパクトではさすがにオリジナルには及ばないが、これはこれで話を知っていても楽しめる。
オタクな高校生のチャーリー・ブリュースター(アントン・イエルチェン)は、なぜか美貌の彼女エイミー(イモージェン・プーツ)をゲットし、人も羨む高校生活をエンジョイ中。
だがある日、友人のエド(クリストファー・ミンツ=プラッセ)から、最近引っ越してきた隣人のジェリー(コリン・ファレル)がヴァンパイアだと警告を受ける。
オカルトマニアのエドは、ジェリーが引っ越してきてから、失踪する住人が増えている事に気付き、密かに彼を監視していたのだ。
最初は取り合わなかったチャーリーだが、やがてエドも失踪し、チャーリーの背後にもジェリーの影が付きまとう様になる。
チャーリーは、ラスベガスのマジシャンでヴァンパイアハンターを自称するピーター・ヴィンセント(デヴィッド・テナント)に助けを求めるのだが・・・
アメリカの80年代は、郊外(suburb)の時代である。
70年代に新移民が流入し、過密化した都市から、白人中流層が郊外の新興住宅地に脱出。
新たなライフスタイルが広まった事で、大衆文化もまた大きな影響を受け、郊外はアメリカ映画にとって重要な舞台となって行く。
スティーブン・スピルバーグの「未知との遭遇」や「E.T.」、「ポルターガイスト」といった一連の作品は、郊外の平穏な日常の中に宇宙人や幽霊といった非日常が投げ込まれる事で事件が起こる、いわば郊外型ローファンタジーと言える新たなジャンルを確立した。
人々の生活空間は、大都市ほど近くは無く、かといって田舎ほど遠くも無い。
隣家との絶妙な距離感が導き出す、お隣の非日常というスタイルに、古典的なヴァンパイアというアイコンを埋め込んだのがオリジナルの「フライトナイト」だ。
リメイク映画の場合、新旧比較されるのが宿命だが、四半世紀ぶりにリメイクされた本作は、前記した様に大まかなプロットは比較的忠実ながら、キャラクター造形や物語上の役割などは結構細かく改変されている。
主人公カップルのうち、女子のエイミー方が積極的な性格なのは同じだが、リメイク版のチャーリーは、かなりオタクっぽいキャラクターになっており、エイミーと付き合うようになってから、オタクの過去を捨てようとしている。
イケてる彼女に合わせて、無理をして背伸びしようとするチャーリーが、ジェリーとの戦いを通じて等身大の自分と向き合えるようになるという成長物語が物語のバックボーン。
彼を助けるピーター・ヴィンセント役は、ロディー・マクドウォールの当たり役として知られているが、今回はホラー俳優からマジシャンへと設定変更され、演じるのはイギリスの人気SFドラマ「ドクター・フー」で、10代目ドクターを演じたデヴィッド・テナント。
ピーターがチャーリーに加勢してジェリーと戦う理由も、オリジナルでは落ち目の俳優が自分の自信を取り戻すためなのに対して、リメイクではジェリーとの間に過去の因縁がある事になっている。
まあこの辺りの設定はやや唐突感があり、元のプロットにスムーズに組み込まれているとはあまり思えないのだが、良く知った物語に一定の新味を加える役割は果していると言えるだろう。
そして、この種の映画では花形であるヴァンパイアのジェリーは、ダンディなイメージのクリス・サランドンに代わって、野性味溢れるコリン・ファレル。
変わったのはルックスだけでなく、行動もかなりマッチョだ。
「ヴァンパイアは、招かれない限り相手の家に入れない」というお約束も、オリジナルでは紳士的な物腰のジェリーがチャーリーの母親に取り入ってあっさり侵入に成功するが、リメイク版ではいきなりガス管に火をつけて家ごと爆破してしまうという荒っぽさ。
肉体的にもペンで手をさされただけで慌てて逃げ出していたのが、今回は刺されようが車で轢かれようが、さしたるダメージを受けず執拗に追ってくる。
ワイルドな肉食系ヴァンパイアとなったジェリーに相応しく、アクションはかなりパワーアップし、その分コメディ要素は薄まっている。
グレイグ・ギャレスピー監督は、オリジナルではキービジュアルにもなった“口裂け女”のシーンをコスチュームもそのままに再現したり、トム・ホランドの作り上げた独特のホラーワールドへのリスペクトは感じさせる物の、全体的にはオリジナルの持つ緩さを消し去り、モダーン&ハードに仕立て直すという最近のリメイク潮流に沿った作品に仕上げた。
まあオリジナルはとぼけたユーモアが重要な隠し味だった訳で、そのあたりが好きだった往年のファンにとっては評価の分かれるポイントかもしれない。
因みにゲイ・ムーブメントが盛り上がりを見せた80年代の作品らしく、オリジナルではジェリーにビリーという男性のパートナーがいたのだが、本作ではジェリーのマッチョ化と共にキャラクター自体が消滅しているあたりも、時代の移り変わりをさり気無く感じさせる。
今回は、劇中でピーターが殆ど肌身離さず飲み続けているサントリーのメロン・リキュール、「ミドリ」をチョイス。
もっとも、ピーターはストレートで飲んでいたが、普通の人には甘すぎるので、これを使った最も有名なカクテル「セックス・オン・ザ・ビーチ」を。
この刺激的な名前のカクテルは、トム・クルーズ主演のその名も「カクテル」という映画によって一気に有名になった。
ウォッカ15ml、ミドリ20ml、クレナデン・シロップ10ml、パインジュース80mlを氷を入れたタンブラーに注ぎ、ステアする。
甘くて飲みやすいが、アルコール度数はそれなりに高いので、油断するとヴァンパイアの毒牙にかかったかの様にメロメロになってしまう。
一応、安全な「セーフ・セックス・オン・ザ・ビーチ」というノンアルコールのカクテルもあったりする(笑

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