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哀しき獣・・・・・評価額1600円
2012年01月14日 (土) | 編集 |
クソ親父、駆ける。

2009年に公開された途方もなく恐ろしいスリラー、「チェイサー」で鮮烈なデビューを飾った韓国の俊英、ナ・ホンジン監督の待望の第二作である。
借金苦から殺人を請け負ってしまった一人の男が、予期せぬ犯罪と暴力の連鎖に巻き込まれて行く。
腹に一物ある多くの登場人物が入り乱れ、韓国の夜を縦横無尽に疾走する、怒濤のノンストップ・クライムアクションだ。
物語が複雑な分、とっ散らかった部分が多いのは残念だが、140分の長尺を一気に見せ切る演出力はやはりホンモノ、圧巻である。

中国とロシア、北朝鮮の国境の中国側に位置する、吉林省延辺朝鮮族自治州。
朝鮮族のタクシー運転手のグナム(ハ・ジョンウ)は、妻を韓国に出稼ぎに出すために作った6万元の借金に苦しんでいる。
借金取りに追われ、賭け麻雀に手を出すも、事態は悪化するばかりで、更には妻からの音信も途絶えてしまう。
そんな時、ヤクザのミョン(キム・ユンソク)に声をかけられたグナムは、韓国へ行ってある人物を殺したら借金を帳消しにする、と持ちかけられる。
グナムは、悩んだ末に借金返済と行方不明の妻を探すため、密航船で韓国に向かうのだが・・・


上映中トイレ厳禁。
ちょっと油断すると、驚速で展開する物語から置いていかれてしまう。
全体は「タクシー運転手」「殺人者」「朝鮮族」「黄海」の章題を持つ四章構成で、「黄海」はそのまま原題にもなっている。
中国で暮らす主人公が、幼い頃に見た狂犬病の犬の思い出を語る冒頭のモノローグは、その後の物語の流れ行く先を暗示する。
吉林省延辺は国境の朝鮮族自治州とは言え、中国政府の同化政策によって漢族の進出が進み、朝鮮族はもはや少数派。
おそらく食用であろう、犬の市場が開かれている猥雑な街の描写が良い。
檻の中に閉じ込められてもなお、吠え続ける犬たちが、社会の最下層へと貶められた人間たちのギラギラとした生き様を象徴する。
巨額の借金の返済と、妻が出稼ぎ先の韓国で浮気しているのではないかという猜疑心から、殺人を請け負ってしまう主人公、グナム。
だがそれは、闇夜でしか生きられない、獣たちが跋扈する世界への片道切符だ。

韓国に渡ったグナムは、指示されたとおりにターゲットをつけ狙い始めるのだが、いざ実行という時になって、予期せぬ事態が起こる。
突然、グナムとは別の暗殺者グループが現れ、先に殺しを実行されてしまうのだ。
だが、ターゲットが武道家だった事もあって、暗殺者たちも刺し違えて絶命。
一人生き残ったグナムは、現場に止まっている所を警察に目撃され、犯人として追われる事になる。
殺害の実行犯を送り込んだバス会社社長で、裏社会の顔役でもあるキム社長は、事件の真相が暴かれるのを恐れ、目撃者であるグナムを警察よりも先に消そうと躍起になる。
キム社長はグナムが延辺の朝鮮族である事を知ると、部下を送って密航組織の元締めであるミョンをも消そうとするのだが、逆にミョンの返り討ちにあい、韓国に乗り込んで来たミョンとそ一団に高額でグナム殺害を依頼する羽目になってしまう。
ここからはグナム、ミョン、キム社長、更には韓国警察による、四つ巴の目まぐるしい追跡劇となり、それぞれの思惑を抱えた裏社会の男たちがソウル、ウルサン、プサンと韓国中を駆け巡り、殺し合う。
例によって銃器を用いず、ハンマーだの斧だの牛刀だの、見るからに恐ろしげな凶器を使ったアクションは肉体の痛みを強烈に感じさせ、巨大なトレーラーまで動員したカーチェイスも迫力の仕上がりだ。

しかし、本作が何よりユニークなのは、主な登場人物が誰一人として、事件の全貌を理解しないまま盲目的に突っ走っている事にある。
ターゲットの名前以外一切を知らされていないグナムは勿論、彼を追うミョンやキム社長にしたところで、一体事件の発端が何で、自分たちが何故ややこしい事態に追い込まれているのか、全てを理解していない。
訳のわからないまま全力疾走し、とりあえず出会った者を片っ端から殺してゆく彼らの姿は、自分ではコントロール出来ない衝動に突き動かされ、ひたすら目の前の敵に噛み付こうとする狂犬そのものである。
さらに、グナムが韓国に来たもう一つの目的である妻探しも、不確かな情報を鵜呑みにした結果、彼は妻が死んだと思い込んでしまう。
その事が良くも悪くもグナムの覚悟を決めさせると、物語はいよいよ悲劇的な色彩を強め、最終章の「黄海」へと突入する。
壮絶な殺し合いの末に、最後に残ったグナムが全ての発端を知った時、彼が見せる何とも言いようの無い複雑な表情が印象的だ。
もしかしたらグナムは、ある人物に妻のイメージを見ていたのかもしれない。

ナ・ホンジンの演出は相変わらずパワフルで、先の見えない物語を力技でグイグイ引っ張るが、残念なのはやはり脚本の荒っぽさだ。
前作の「チェイサー」では、基本的に猟奇殺人犯と彼を追う元刑事の二人に視点が固定されていたが、遥かに多くの登場人物が韓国中を駆けずり回る本作は、視点の置き所が定まらない。
更に、物語の展開が非常に早い上に、寡黙な登場人物たちが内心を明かさずに行動するお陰で、観ている方は現状を理解する為に常に脳みそをフル回転させて考える必要に迫られ、ちょっとでも油断しようものなら、物語は無情に走り去り、置いてけぼりをくってしまう。
事件の全ての始まりが、驚くほどバカバカしい物だったというのも、狙いとしては面白いのだけど、唐突感に繋がってしまっているのも事実で、何というか脚本をシンプルにブラッシュアップしている途中で、時間切れになって撮影に突入してしまったのでは、と思わされる様な荒っぽい仕上がりなのである。
もうちょっと整理するだけで、ずっと観やすくなるのは確実なので、惜しい気がする。

キャストには、「チェイサー」の主役二人が今回も役割を変えて再登板。
あの映画で、恐るべき猟奇殺人犯を演じたハ・ジョンウがグナムを好演しているが、今回の儲け役は執拗にグナムを追い詰める密航組織のボス、ミョンを演じたキム・ユンソクだろう。
殆どジェイソンの如き不死身の殺戮マシーンは、狂犬たちのボスに相応しい迫力だ。
彼ら二人は共に朝鮮族であり、中国では二級市民と差別され、祖先の地でもある韓国でも溶け込む事は許されず、地べたを這い回るしかない。
それでも、犬は帰属意識の強い動物だという。
ようやく狂気から開放され、遅すぎた帰路に就いた“哀しき獣”の目指す先は、韓国名の“西海”ではなく、中国名の“黄海”でしかないのである。

今回は、パワフルな肉食系アクション映画に相応しく、韓国を代表する力技のカクテル(?)「爆弾酒」をチョイス。
でっかいビアジョッキに韓国ビールを注ぎ、そこにショットグラスに入れた韓国焼酎を放り込む。
世界中にあるビール+蒸留酒のバリエーションの一つで、猛烈に悪酔いするのが特徴である。
その分、さっさと酔っ払いたい場合には、これほど便利な酒も無いのだけど(笑

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