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ロボジー・・・・・評価額1650円
2012年01月19日 (木) | 編集 |
ロボット爺ちゃん、がんばる。

「ひみつの花園」「スイングガールズ」などの作品で知られる矢口史靖監督の最新作は、畑違いのロボット開発を命じられた技術者が、破れかぶれで着ぐるみロボットの中に老人を入れてしまうという痛快なコメディ映画。
シンプルなアイディアから広がる物語は、いかにも万人受けしそうなライトなテイストだが、矢口監督は独居老人の問題や企業の捏造文化といった現代日本の世相を物語に巧みに盛り込み、適度なリアリティと皮肉を隠し味にしており、作品の仕上がりはなかなかにハイレベルだ。
*一部ネタバレ注意。

白物家電メーカーの木村電気に勤める小林(濱田岳)、太田(川合正悟)、長井(川島潤哉)の三人は、ワンマン社長の思いつきで専門外のロボット開発を命じられ、悪戦苦闘。
参加予定のロボット博を一週間後に控えて、漸く完成した試作ロボットの“ニュー潮風”をミスで大破させてしまう。
追い詰められた三人は、急場しのぎに一人暮らしの老人・鈴木(五十嵐信次郎)をロボットの中に入れ、とりあえずパフォーマンスさせようとする。
ところがロボット博の会場で、ニュー潮風が機械オタクの大学生、佐々木葉子(吉高由里子)を事故から危機一髪救った事がマスコミに取り上げられ、ニュー潮風は全国から引っ張りだこになってしまう・・・


物語の発想は「リアル・スティール」の原作にもなった、リチャード・マシスンの短編小説「四角い墓場」を思わせる。
小説では、ロボット格闘技の試合直前に肝心のロボットが故障し、やむを得ずオーナーの元ボクサーが、ロボットのフリをして試合に出場する。
この話をハリウッドの王道の父子物の構造に作り変え、派手な格闘アクションたっぷりに映像化したのが「リアル・スティール」なら、同じ様なネタを少子高齢化の日本で作るとこうなるという訳だ(笑

チビ・デブ・ヤセとわかりやすりルックスを持つ家電メーカーの技術者トリオが、試作品のロボットが壊れた事を隠すために、一回だけのつもりで老人にロボットを演じさせるものの、なぜか人気者となってしまい、今更インチキでしたとも言えずにドツボにハマってゆく。
一つの小さな嘘が、どんどんと想定外の波紋を広げ、収拾不可能になるという物語の構造は、サスペンス映画などの王道の一つだが、これは実に上手く軽妙な笑いに結びつけている。
まあ、本当にこんな事をやったら、いくらなんでもバレない訳はない気もするが、実際最近の二足歩行ロボットは凄いのだ。
私もホンダの二足歩行ロボット、アシモのパフォーマンスを初めて見た時には、あまりにも滑らかで人間的な動きに、「もしかして小さい人が入ってるんじゃ・・・」と疑った事があるから、この映画の設定にもそれなりに納得できる。

主演は、予告編を観た時からずっとミッキー・カーチスだと思っていたら、エンドクレジットには“五十嵐信次郎”という見知らぬ名前が。
何でもハーフ故に純和風の名前に憧れていたカーチスは、意外にもオーディションで掴んだという本作の主演を第二のデビューと考えて、新たな芸名にしたのだとか。
しかも偽物のロボットの中の人が“しんじろー”とは、洒落が効いているではないか(笑
彼の演じる鈴木重光は、とにかく頑固で偏屈で、自分がいないと小林たちが困るのをいいことに、VIP待遇を要求するお調子者でもある。
だが、一人暮らしの彼は家族とも距離があり、自分の居場所を見つけられない孤独な老人という背景がしっかりと描かれているので、単なる意地悪爺さんというだけではなく、感情移入を誘う魅力的なキャラクターとなっている。

映画は、図らずもニュー潮風を人気者にしてしまった小林たち技術者トリオと鈴木老人の珍道中と、ロボット博の会場で助けられた事で、すっかりニュー潮風ファンになってしまい、ストーカーの様に追いかける理系大学生の佐々木葉子を交互に描いてゆく。
やがて、葉子が自分の通う大学の特別講義を小林たちに依頼する事を切っ掛けにして、物語は収束点に向かって動き出すのである。
最初は所詮学生と舐めてかかったものの、自分たちよりもずっとロボットに精通した若者たちに圧倒された小林たちは、質疑応答に託けて学生たちに本物のロボットの設計をやらせてしまうのだから面白い。
だが、本物が完成するという事は、鈴木老人にとっては再び自分の居場所を失うという事でもある。
そして、ある事件によってニュー潮風に“失恋”した葉子が、その中身が人間である事に気付いてしまい、怒り心頭でインチキを暴きたてようとする。
かくして、技術者トリオ、鈴木老人、葉子とそれぞれの登場人物の葛藤の高まりと共に、映画はいよいよクライマックスへ突入する。

まあ物語の構造から言っても、広げ過ぎた嘘の後始末を一体どうやってつけるのかが最大の見物という事になるのだが、結果的にニュー潮風の危機を救うのは、やはり鈴木老人なのだ。
それまで小林たちのインチキをマスコミに暴こうとしていた葉子を、今度は生身の鈴木老人が再び事故から救い、その瞬間に彼女は彼がニュー潮風の中の人であり、決して悪意ある人物ではない事を悟るのである。
このシーンは前半のロボット博のシーンと綺麗な対になっているが、本作では中盤のコスプレイヤーとの絡みなど、一見すると本筋に関係なさそうな描写まで、無駄なく伏線として機能して、最後の最後にキッチリ回収され効いてくる。
最終的には、思い直した葉子の計略によって、ニュー潮風はホンモノのロボットである事が証明されるのだが、そこに至るまでの巧みな脚本構成には唸らされた。

ただ、主人公の小林たちの行動原理は、基本的に失敗を取り繕うためという後向きの姿勢のままであり、更に撮影終了後に3.11が起こるという不運を差し引いても、企業のウソと隠蔽体質という、昨今の現状を考えると単にネタでは済まされない問題への踏み込みは弱く、後味にやや引っかかる部分を残す。
小林たちのやった事に憤っていた葉子まで、就職したらすっかりその色に染まっているのは、矢口流の現状への皮肉なのだと思うが、社会問題を物語に取り込むなら、もう少し作家のスタンスを明確にしても良かったと思う。
また大学生たちのロボットへの情熱を受ける形で、小林たちの中にも物作りの担い手としてのある種の“熱”を感じることが出来れば、より力のある映画になったのではないだろうか。

今回は、映画が撮影された北九州の溝上酒造の地酒「天心 純米大吟醸 “清夜の吟”」をチョイス。
これは以前九州で飲んで、印象に残っている酒。
やや辛口で、上品ながらもしっかりと味のあるボディの強い大吟醸。
魚介系や比較的淡白なお味の食事とよく合う。
個性の強さはニュー潮風のキャラクターにも通じるが、こちらは紛れも無く“ホンモノ”だ。

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