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マシンガン・プリーチャー・・・・・評価額1550円
2012年02月07日 (火) | 編集 |
子供たちだけは、絶対に守る!

戦乱の南部スーダンで、武装組織に誘拐された多くの子供たちを救出し、彼らのための孤児院を運営している、実在の戦う牧師、「マシンガン・プリーチャー」ことサム・チルダースの半生を描いた問題作。
現在もアメリカと南部スーダンを行き来しながら活動を続けるチルダース役を、エグゼクティブ・プロデューサーも兼ねるジェラルド・バトラーが演じ、脚本は「Mirror, Mirror」が待機中のジェイソン・ケラー、監督は「ネバーランド」などで知られるマーク・フォースターが務める。
※一部ネタバレ注意。

長年犯罪者として生きてきたサム・チルダース(ジェラルド・バトラー)は、ある事件を契機にキリストへの信仰に目覚め、足を洗ってカタギになる事を決意。
苦労して始めた事業がようやくそれなりの成功を収めた頃、アフリカで活動する牧師の説教を聞いたサムは、短期ボランティアとしてウガンダに渡るのだが、隣国である南部スーダンの子供たちが置かれた悲惨な状況を目にして衝撃を受ける。
帰国してもスーダンの子供たちを忘れる事の出来ないサムは、妻リン(ミッシェル・モナハン)の後押しもあって、再びスーダンに渡り、子供たちの為に孤児院を作り始める。
だが、それは何時終わるとも知れない長い戦いのはじまりに過ぎなかった・・・・


とにかく、主人公のサム・チルダースのキャラクターが強烈だ。
アメリカ北東部、ペンシルバニアのヒルビリーの寒村に生まれ、お約束のドラッグと犯罪に塗れた青年時代を送る。
ところがある事件を切っ掛けに、突如として信仰に目覚めると、裏社会から足を洗って建設業で成功。
今度はたまたまボランティアで訪れた南部スーダンで、子供たちの置かれた悲惨な環境を見てしまった事から、夜な夜な武装勢力が跋扈する危険地帯に孤児院付の教会を建て、襲ってくる敵は自ら銃を取り容赦無しに殲滅する。
正に極端から極端で、先ずはこの直情的な人物像に驚かされるが、思い立ったら直ぐ行動という実行力と全く裏表が無い人柄が紛争地帯で慕われ、ある種のカリスマ性に繋がるのは理解できる。

スーダンは、長年北部のアラブ系イスラム教徒主導の政府と南部のアニミズム・キリスト教を信仰するアフリカ系住民の内戦が続き、血で血を洗う戦いの犠牲者は200万人近くに及ぶ。
だが、サムの戦う相手はイスラムではない。
彼の仇敵となるLRA(神の抵抗軍)は元々隣国のウガンダを拠点とする反政府勢力だが、南部弱体化を狙う北部スーダン政府の支援を受けて、南部スーダンまで足を伸ばしては村々を襲い、子供たちを誘拐して男の子は子供兵士に、女の子は売春婦にして搾取するという非道を行い、世界的な非難を浴びている。
組織の創設者で、四半世紀の間リーダーとして君臨するジョセフ・コニーは、聖霊と話が出来る霊媒を自認するキリスト者でもあり、LRAは言わばキリスト教系のカルト集団なのである。
武装して子供たちを守ろうとするサムと、子供たちを利用して神の王国を築こうとするジョセフ・コニー。
映画は、劇中には登場しないコニーを、サムの内なる敵として描き、二人の“神の声を聞く男”を対比する。

やがてサムは、生活のほとんど全てを南部スーダンでの活動に捧げる様になるが、時間の経過と共に現実という大きな壁が彼の前に立ちはだかる。
助けても、助けてもLRAに誘拐される子供は跡を絶たず、活動資金は常にギリギリの綱渡り。
アメリカでいくら寄付を訴えても、顔も見たことの無い遠いアフリカの子供たちに金を出そうとする人は多くない。
豪邸に暮らす友人に5千ドルの寄付を頼んで、実際にくれた小切手の額面がわずか150ドルであった事にサムは激高し、自分の一人娘がプロムのパーティに行くのにリムジンを借りたいと言っても耳を貸さない。
サムの、アフリカの悲惨な現実を何とかしなければという想いと、豊かな日常という別の現実に存在する故郷アメリカとのギャップは、次第に活動を支え続けた家族との関係すら危うくするほどに大きくなる。
更に自分を狙ったLRAの凄腕スナイパーを射殺したら、彼もまた子供兵士だったというやり切れない現実は、徐々にサムの心を追い込み、子供たちを救いたい、善き事をしたいという想いは、何時しか自分の行動を阻害する者たちへの憎しみへと変貌してしまうのである。

キリスト者として活動していたはずのサムが、もはや神すらも信じないと言い放つにいたって、故郷で支援していた人々だけでなく、アフリカで彼と行動を共にしていた友人たちの心も離れてゆく。
子供たちを救うためにやむなくLRAを殺すのではなく、憎いから殺す様になったサムは、南部スーダンの人々から見たら、単なる戦争好きの外国人に過ぎないのだから当然だろう。
そんな時、追い詰められ、荒んだサムの心を救うのは、嘗て彼が救い出した一人の少年だ。
彼は「憎しみで心を満たしたら、奴らの勝ちだよ」と、サムを諭すのである。
村を襲ったLRAの兵士に命じられ、自らの手で母親を殺したという壮絶な過去を持ち、今も生き別れになった弟の行方を捜し続けている少年の言葉は、静かにしかし力強くサムの心に広がってゆく。

昨年の7月9日、実に20年以上に渡った内戦の末に、南部スーダン諸州はアフリカ54番目の国、南スーダン共和国として独立を果たしたが、新しい国の政情は不安定で、現地に展開する国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)には、日本からも自衛隊が派遣されている。
国境付近ではLRAの越境襲撃も相変わらず続いており、サム・チルダースの戦いは今も終わりが見えない。
おそらく、私を含めた多くの人にとって、特に思想の領域において、彼の生き方は素直には肯定できない部分があると思うし、映画もあえて彼に対する支持や賛同は示していない様に見える。
暴力が作り出す負の連鎖と、非暴力の理想の間にある矛盾は、例えば昨年の「未来を生きる君たちへ」をはじめ、多くの作品で問題提起されてきたテーマだ。
だが、善悪の観念論ではなく、現実に暴力が支配する世界の中で生き、「子供たちに手出しする奴らだけは許さない」というサムのシンプルな行動原理に、強い説得力を感じざるを得ないのも事実。

映画の最後で、本物のサム・チルダースが我々の前に姿を現す。
いやサムだけでなく、彼がずっと戦い続けている宿敵、ジョセフ・コニーの姿もスクリーンに映し出され、映画は虚構の世界から現実への窓となるのである。
「もし貴方の子供や家族が誘拐され、私が彼らを助けると言ったら、貴方は手段を選びますか?」
サムが最後にスクリーンから語るこの言葉への共感と、自らの中にある理想との矛盾こそ、本作の投げかける大きなテーマなのかも知れない。
ただ、どんな立場をとろうとも、憎しみから救いは生まれない、これだけは信じたいものだ。

サムの青年期から現在まで、足掛け30年近くに渡る半生を僅か2時間9分で描いている事もあり、映画的には物足りない部分も多い。
特に信仰に目覚める過程は少々唐突で、もう少しキャラクターの内面に踏み込んで描いても良かった気がするが、この世界にはこんな現実があり、こんな人物がいるのだという驚きだけでも、観る価値のある作品だ。
映画を観たサム本人によると、本作に描かれた南部スーダンの描写は100%リアルだそうである。

今回は、バーボンリキュールの「ジム・ビーム レッドスタッグ」をチョイス。
ジム・ビームはケンタッキーバーボンの代表的な銘柄だが、これはそれにサムの故郷であるペンシルバニア名物のブラックチェリーを漬け込んだ物で、フルーティでナチュラルな甘みとバーボン本来の味が融合し、クセになる味わい。
カクテルベースにしても面白いが、個人的にはロックがオススメだ。

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