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ドラゴン・タトゥーの女・・・・・評価額1650円
2012年02月17日 (金) | 編集 |
パンク少女の純情。

スウェーデン発の世界的ベストセラー、背中にドラゴンのタトゥーを纏う女、リスベットと敏腕記者ミカエルの活躍を描く、「ミレニアム」三部作が本国で映画化されたのは僅か三年前の2009年だが、早くもハリウッド製リメイクの登場である。
物語の面白さは証明済み、しかも監督は近年円熟味を増すと共に快作を連発するデヴィッド・フィンチャー、脚本は「シンドラーのリスト」「アメリカン・ギャングスター」の名手スティーブン・ザイリアンという全く不安要素の見えない鉄壁の布陣。
スウェーデン版が、田舎の旧家という閉ざされた世界で展開する、横溝正史的土着ミステリだとすれば、フィンチャー版はシンプル&クール。
原作は同じでも映画としての趣はかなり異なり、これはこれで話を知っていても十二分に楽しめる。
*ラストシーンに触れてます。

雑誌ミレニアムの看板記者ミカエル(ダニエル・クレイグ)は、名誉毀損で訴えられた裁判で敗訴し、責任をとって編集部を去る決意をする。
そんな時、スウェーデンを代表する財閥、ヴァンゲル一族の当主であるヘンリック・ヴァンゲル(クリストファー・プラマー)から、40数年前に起こった殺人事件を再捜査して欲しいと依頼される。
1966年のある日、一族が所有する孤島から17歳の少女、ハリエットが忽然と消え、今も遺体すら発見されていない。
老いたヘンリックは、犯人は一族の誰かに違いないと信じ、自分が死ぬ前に真相を知りたいと言うのだ。
ミカエルは、ヘンリックが自分の身辺調査の為に雇った凄腕のハッカー、リスベット(ルーニー・マーラ)を助手に迎え、捜査を開始するのだが、やがて彼らは時に埋れていた恐るべき連続殺人を暴き出してしまう・・・


ティム・ミラーのデザインによるオープニングタイトルは、リスベットの悪夢を実体化させたもの。
まるでコールタールの海に人間が溶けているかの様なビジュアルに、トレント・レズナーとカレンOによるレッド・ツェッペリンの「移民の歌」のカバー版が響き渡り、ゾクゾクする格好良さに、早速ハートを鷲掴みされる。
ここから始まる物語は、スウェーデン版では多くの要素が錯綜し、ややとっ散らかった感のあったストーリーラインをシンプルに纏め、スタイリッシュに再構成した印象だ。
元々原作者のスティーグ・ラーソンは、反差別・反ファシズムをテーマに長年活躍したジャーナリストで、政治雑誌の編集長を務めた事もあるという、正に小説のミカエルを地で行く人物。
「ミレニアム」シリーズは、原作の執筆直後に他界したラーソンが、反ナチ、反女性差別など現代スウェーデンの抱える様々な問題を、ミステリー仕立ての物語に詰め込んだ社会派作品でもある。
複雑ではあるが、含まれる要素が多様なだけに、切り口のバリエーションは見出し易い構造だ。

思うに、ミステリとしてはスウェーデン版の方が綿密に描写されていたし、謎解きの面白さはより深かったと思う。
だが、本作においてフィンチャーが描きたかったのは、第一義的にはミカエルとリスベットという年齢も性別も境遇も、全てが対照的な二人の関係性だろう。
地位も名誉もある中年のジャーナリストと、父親を焼き殺そうとした過去を持つパンクな天才ハッカー。
時には上司と部下であり、時には目的を同じくする同志であり、歳の離れた恋人であり、あるいは擬似的な父娘でもある二人。
フィンチャーは特に、複雑な人格であるリスベットの心に寄り添うことで、次第にミカエルに惹かれてゆく彼女の想いをフィーチャーし、愛を知らない彼女の初恋物語を本作のコアに置いている。

リスベット役には「ソーシャル・ネットワーク」で、マーク・ザッカーバーグが“一番友だちに成りたかったカノジョ”を演じていたルーニー・マーラ
アメフト界の大立者一族の出身で、いかにもお嬢様然とした本人のイメージとは打って変わって、タトゥーとピアスだらけのバイセクシュアルという奇天烈なキャラクターに成り切っているのだから正に役者である。
初のオスカー主演女優賞ノミネートも納得だ。
スウェーデン版では、お世辞にもカッコ良いとは言えないミカエル・ニクヴィストが演じ、切れ者だが見た目は普通のおじさんだったミカエル役に、セクシー&ゴージャスな007俳優のダニエル・クレイグをキャスティングした事もあり、二人の間に流れる感情はグッとウェットなものとなって、戦闘的な強面の裏に隠されたリスベットの女心が浮かび上がる。

二人の関係性が変わった事によって、ミステリとしての着地点にも若干の差異が見られる。
スウェーデン版では希薄だった、リスベットとサディストの後見人ビュルマンの物語と、ハリエット事件の再捜査から判明する連続殺人との間に、共通項を見せようとする意図がより明確になり、リスベットの行動原理が強化された。
リスベットを性暴力で支配しようとするビュルマンも、聖書の記述通りに何の罪もない女たちを惨殺するシリアル・キラーの正体も、共に権力を笠に着る男尊女卑的な性差別主義者だ。
彼らを社会的に、また物理的に抹殺するのがミカエルでなくリスベットである事からも、女によって女の敵が退治されるフェミニズム的寓話劇という側面が強調される。
もっとも、社会問題や謎ときはあくまでも作品世界に観客を繋ぎとめるディテールに過ぎず、これは基本的にミカエルとリスベットの物語。
「クリスマスは娘と過ごす」というミカエルの言葉を信じて、リスベットが深く傷つくラストは、「ソーシャル・ネットワーク」に通じる切ない余韻が心に染み入る。
原作を読んていても、スウェーデン版を観ていても、これはまた別の楽しみ方が出来る、フィンチャーらしい秀作である。

今回は、極寒のスウェーデンが生んだ代表的なウォッカの銘柄、V&S社の「アブソルート」をチョイス。
シャープでクリア、それでいてマイルドな味わいは、二日酔い知らず。
寒い日に、あえて冷凍庫に突っ込んでキンキンに冷やし、ショットグラスでクイッと一気に飲みたい。
喉がカーッと熱くなり、しばらくすると腹の底から火照ってくる。

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