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ものすごくうるさくて、ありえないほど近い・・・・・評価額1600円
2012年02月22日 (水) | 編集 |
探しものは何処にある?

9.11の同時多発テロによって、父を亡くした11歳の少年、オスカー・シェルの小さな冒険を通して、大いなる喪失と再生を描いた現代の寓話。
原作は2005年に発表されたジョナサン・サフラン・フォアの同名小説で、「フォレスト・ガンプ /一期一会」「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」で知られるエリック・ロスが脚色し、監督は「めぐりあう時間たち」「愛を読むひと」スティーブン・ダルドリーが務める。
主人公のオスカー少年を演じるのは新人のトーマス・ホーンだが、映画初出演とは思えない素晴らしい演技に脱帽。
その死によってオスカーに深い喪失感を将来する父親役にトム・ハンクス、母親役をサンドラ・ブロックという二人のアカデミー賞俳優で固め、オスカーの導き手となる一言も口を聞かない謎めいた“間借り人”を、名優マックス・フォン・シドーが演じ、さすがの存在感だ。

2001年9月11日。
オスカー・シェル(トーマス・ホーン)の最愛の父(トム・ハンクス)は、崩れ落ちるWTCと共に、突然この世界から消えてしまった。
葬儀の時も柩はからっぽのままで、オスカーはなかなか父の死を実感として受け入れられず、彼を心配する母親(サンドラ・ブロック)にも辛く当たってしまう。
それから一年以上が過ぎたある日、オスカーは父のクローゼットで、偶然花瓶の中に隠されていた鍵を発見する。
鍵は“ブラック”と書かれた封筒に入っており、これを人の名前だと考えたオスカーは、父の残した謎を解くために、ニューヨーク中の「ブラックさん」を訪ね歩く旅に出るのだが・・・


どうも原作の既読者にはあまり評判が良くない様だが、幸いにも(?)読んでいなかったからか、映画単体としてなかなか楽しめた。
9.11の惨劇で父を失ったオスカーは、クローゼットにあった花瓶の中から、偶然封筒に入った一本の鍵を発見する。
あの最悪の日から、父の死の意味に囚われ、喪失を乗り越える事が出来ないでいたオスカーは、これを亡き父からのメッセージだと考え、封筒に書かれた“ブラック”という名前を頼りに、“鍵が開くもの”を探す事にする。
何故オスカーがこんな風に考えたかというと、父はある種の発達障害を持つオスカーに、なるべく社会と関わってもらいたくて、ニューヨークに嘗て存在したという、幻の第六区の痕跡を探すゲームをしていたからだ。
ニューヨーク市の行政区はマンハッタン、クィーンズ、ブロンクス、ブルックリン、スタテンアイランドの五つ。
父は、嘗て六番目の行政区があったが、それはある時川に流されて忽然と消えてしまったと言うのだ。
まるで、沢山の命と共にこの世界から消滅したWTCのツインタワーの様に。

「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」(Extremely Loud and Incredibly Close)という不思議なタイトルの意味は、物語を通して徐々に浮かび上がってくる。
発達障害の気があり、アスペルガー症候群の判定を受けた事もあるオスカーは(判定結果は曖昧だったものの)外界からの刺激に非常に敏感。
人の話し声や生活音、様々な乗り物の音などが、彼の中に雪崩れ込んでおり、9.11のトラウマでそれに拍車がかかっている。
オスカーにとっては、公共の交通機関に乗るのも、他人と触れ合う事も大きなストレスとなり、少しでも心を落ち着けパニックを避けるために、リズムを打つタンバリンを持ち歩いているほど。
彼にとって、この世界は「ものすごくうるさい」のである。

非常に理知的で雄弁だが、自分の感情を上手くコントロールしたり、人の心を理解する事が苦手なオスカーには、息子を心配する母親の存在も「うるさいもの」の一つであり、自分と向き合おうとする彼女に対して「(死んだのが父さんでなく)母さんだったらよかったのに」と言い放つ。
映画はこの時点では、オスカーと母親との距離を縮めようとはしないが、週末を利用してブラックさん巡りを始めたオスカーには、ひょんな事から相棒が出来る。
オスカーの自宅コンドミニアムの向かいには、お婆ちゃんが住んでいるのだが、この家に住む“間借り人”がオスカーの冒険に興味を抱いて、ついて来る様になるのだ。
彼は第二次世界大戦の経験から、喋ることが出来なくなっている老人で、実は遠い昔に家を出て行った父の父親、つまりお爺ちゃん。
二人で街を巡るうちに、オスカーも自分の自然な状態を素直に受け入れてくれる謎の間借り人の正体に気づくのだが、ある秘密を告白しようとした事が切っ掛けになって、彼は再び姿を消してしまう。
9.11の日以来、オスカーが抱え続けている秘密は、人生のベテランである間借り人にすら、受け止める事が難しいほど重い事実なのである。

だが、再び一人になったオスカーのブラックさんを探す旅は、意外な形で終わりを迎える。
ようやくたどり着いた“鍵が開くもの”は、オスカーの想像とは違っていたが、彼は“鍵穴の主”が自分と同じく父を亡くした喪失感に苛まれている事を知ると、誰にも告げる事の出来なかった秘密を遂に打ち明ける。
あの日、崩れ落ちるWTCから発された父の最期の瞬間の声を、留守番電話越しに聞いてしまったオスカーは、その時の絶望感を誰にも体験させない様に、家族から留守番電話を隠し、秘密を小さな胸にずっと隠し続けてきたのだ。
余りにも残酷な記憶の吐露は、身内でない赤の他人だからこそ、受け入れる事の出来る事なのかもしれない。
そして物語の終わりに、ようやく肩の荷をおろしたオスカーが、母と向かい合った時、始めて明かされる驚くべき事実
エリック・ロスの脚本は、映画のあちらこちらに登場人物の感情に関する“引っ掛かり”を作り、後からその瞬間の裏にあった本当の気持ちを明かし、キャラクターとの距離感を一気に縮めるという手法をとっているが、この母からの告白は映画的なカタルシスさえ感じさせ、彼女の愛の深さに涙腺決壊は必至だ。
オスカーが探し求めているものは、突然消えてしまった父の死の意味と、自らの生の意味なのだろうが、ニューヨーク全5区を駆け巡る旅の末に、その答えはごくごく身近にあった事が明らかになり、孤独な少年は自分が多くの人々の「ありえないほど近い」愛に包まれている事を知るのである。

もっとも、映画をじっくり観察すれば、確かにあちこちに物語が断片化した痕跡が見えるのも事実で、例えば間借り人とお婆ちゃんの過去とか、幻の第六区の云われとか、本当はもっと深い部分で物語と結びついているのではないか?と思わざるを得ない。
まあ読んでいなければ、この程度の描き方でも違和感はそれほど感じないのだが、このダイジェスト感が原作ファンから不興を買う事に繋がっているのではと思う。
おそらくエリック・ロスとしては、映画はあくまでも映画として、オスカー少年が父親の死を乗り越えて成長する物語と捉え、彼の冒険にフィーチャーしたかったのだろう。
一本の映画として、膨大な情報量を持つ原作物への一つのアプローチとして間違いではないと思うが、脚色という作業の難しい所である。

思うに、これは言わばポスト9.11の時代に、愛する者を失い、大きな喪失感を抱えた人々に向けられた現代版「青い鳥」の物語である。
モーリス・メーテルリンクは、チルチルとミチルの不思議な旅を通して、死と生命の神秘を描き、本当に大切な幸せは実は既にそこにあると説いた。
それからほぼ一世紀後に書かれたこの物語は、あまりにも大きな存在を失った少年の小さな冒険から、改めてこの世界の生と死の意味を問い、私たちは儚い存在だからこそ愛に満ち、誰一人として孤独では無い事を描いているのではないか。
オスカーの直面している葛藤は、ちょうど9.11から10年後、3.11の悲劇を経験した我々日本人にとっても、決して他人事ではないだろう。
アメリカ人にとってはあれから10年、日本人にはまだ1年も経っていない記憶だが、なかなかに考えさせられる作品であった。

今回は、ニューヨークを象徴するカクテル「マンハッタン」をチョイス。
カナディアン・ウィスキー45ml、スウィート・ベルモット15ml、アンゴスチュラ・ビターズ1dashミキシンググラスでステアし、カクテルグラスに注いだ後ピンに刺したマラスキーノチェリーを沈めて完成。
しばしばハリウッド映画のスクリーンをも飾ってきた、この美しいカクテルの起源に関しては、有力な説として何とあのウィンストン・チャーチルの母、ジェロニー・ジェロームが発案者だというものがある。
1876年の大統領選挙の時に、マンハッタン・クラブで開かれた民主党候補の応援パーティで、即興で作ったカクテルが好評で、後に会場の名前からマンハッタンと呼ばれる様になったのだそうな。
その名の通りマンハッタンの夜景が似合う、大人なカクテルである。

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