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戦火の馬・・・・・評価額1700円
2012年03月07日 (水) | 編集 |
その馬は、人々の希望。

第一次世界大戦を生き抜いた一頭の軍馬(War Horse)と、数奇な運命に導かれその馬と邂逅する人間たちの織り成す物語を描いた歴史ドラマ。
マーティン・スコセッシが、デジタル技術を駆使し映画の先駆者メリエスへの大いなるオマージュを捧げれば、既に「タンタンの冒険」でデジタルを遊び倒したスピルバーグは、一転してアナログの夢を追求し、フィルムの歴史に最後の花を咲かせようとする。
原作は1986年に出版されたマイケル・モーパーゴの同名小説「戦火の馬」で、2007年に舞台化され高い評価を得た。
本作のプロデューサーであるキャスリン・ケネディとフランク・マーシャル夫妻が、舞台版に深く感動し映画化権を取得、彼らに薦められて観劇したスピルバーグは、直ぐに自分で監督する事を決めたという。
そして、企画開始からクランクインまで僅か7ヶ月という、ハリウッド大作としては異例のスピードで映画化された。
※ラストに触れています。

イングランド、デヴォン。
村の小作農家の息子アルバート(ジェレミー・アーヴァイン)は、父親のテッド(ピーター・マラン)が意地を張って競り落としたサラブレッドの仔馬、ジョーイと不思議な絆で結ばれ、兄弟の様に育つ。
だが、第一次世界大戦が勃発し、凶作で小作料が払えなくなったテッドは、ジョーイを軍馬としてイギリス軍に売ってしまう。
ジョーイを買った騎兵隊の将校、ニコルズ大尉(トム・ヒドルストン)は戦争が終わったらきっと馬を返すとアルバートに約束するが、しばらく後に戦場から届いた便りは、ニコルズの戦死とジョーイが行方不明となった事を告げるものだった。
数年後、ヨーロッパ大陸の戦場には、イギリス軍の一兵卒として出征したアルバートと、敵であるドイツ軍の軍馬となったジョーイの姿があった・・・


この物語は、原作者のモーパーゴが故郷のデヴォンに暮らす、古老の退役軍人から聞いた話が元になっている。
第一次世界大戦における人と軍馬の歴史に興味を抱いたモーパーゴは、独自に研究を続け、その結果第一次世界大戦中にイギリスだけでも100万頭の軍馬が犠牲になり、生き残ったのは僅かに6万2千頭だという事を知る。
これは、英軍の人間の戦死者88万人をも上回る数だ。
人間にも動物にも残酷な、戦争という時代。
今まで幾つもの作品で戦争をモチーフとしてきたスピルバーグは、今回自身初となる第一次世界大戦の物語を描く。
戦争終盤の1917年からの参戦だった事もあり、アメリカではもはや忘れられた遠い昔の戦争だが、だからこそ記憶が生々しい過ぎず、一歩引いた視点から古典的な寓話劇として歴史を俯瞰できる事は、スピルバーグが本作を選んだ理由の一つかもしれない。

驚くべき事に、本作には本来の意味での主人公は存在しない。
ジョーイの飼い主であるアルバート少年も、ジョーイが軍馬となった後は、後半自分自身が出征するまで一時間近くも出てこないのである。
あえて主人公を探すなら、アルバートに愛情深く育てられ、サラブレッドながら農耕馬の頑丈さを併せ持ち、地獄の戦場を力強く生き抜く事になる、タイトルロールの“War Horse”ジョーイだろう。
映画は、ジョーイとアルバートの家族としての絆のシークエンスを冒頭と結末に配し、全体をサンドイッチにする構造を持たせることで、ジョーイをある種の狂言回しとして物語の軸に置く事に成功している。

固定された人間からの視点を持たないため、この作品には敵も味方も、善玉も悪玉も登場せず、ただ歴史の流れと、その中で翻弄されながらも、必死に生きようとする人間たちがいるだけだ。
激動の4年間に、ジョーイは幾人もの人間たちと一期一会の出会いを繰り返す。
二番目の主人であるニコルズ大尉を失った後、ジョーイは僚馬のトップソーンと共にドイツ軍に捕獲されるが、今度はドイツ軍の兄弟兵士が二頭を駆って前線からの脱走を試みる。
そして、老いた農夫と病弱な孫娘、エミリーが暮らすフランスの農場で、つかの間平穏な時を過ごした後、再びドイツ軍に徴用されたジョーイとトップソーンは、泥濘の中巨大な大砲を引く過酷な任務につくのだが、そこでも密かに馬たちに愛情を注ぐドイツ兵と心を通わせる。
ジョーイと出会った人間たちは、明日の生死すら知れぬ戦場で、皆一様に彼の優しい目と力強く美しい姿に未来への儚い希望を見るのである。
人間たちは一人、また一人と時代の荒波の中に倒れてゆくが、彼らの託した命は物言わぬジョーイの中に受け継がれているのだ。

やがて、苦楽を共にした友でありライバルでもあるトップソーンまでもが力尽きた時、ジョーイは遂に人間のくびきを逃れ、敵味方入り乱れる戦場を、怒涛の勢いで疾走する。
戦車を飛び越え、塹壕を突っ切り、砲弾飛び交う中、鉄条網を引きずりながらも止まらない。
このシークエンスは、前半のアルバートと共に荒地に畑を切り開くシーンの対にもなっており、言葉を持たない馬が、はじめてその感情を大爆発させる圧巻の映像スペクタクルだ。
「シンドラーのリスト」以来、この人抜きにスピルバーグ映画は語れない、撮影監督のヤヌス・カミンスキーの作り出すビジュアルは、もはや映画の神が乗り移っているのではと思わせる。
冒頭の、まるでオールドハリウッドのテクニカラーを思わせる色調で描かれる、緑鮮やかな中に生命が溢れる雄大な田園の風景、凶作に戦争が重なり、徐々に映画から彩度が失われてゆく中盤、豪雨の中に硝煙が立ち込め、死のイメージが充満する戦場。
何より、それぞれの風景の中にあって、常に圧倒的な存在感を放つジョーイの姿。
物語による感動とは別に、観ただけで鳥肌が立つ様な数々の名ショットは、映像の魔術となって観客の心に鋭く入り込む。

そして、無数の鉄条網に絡め取られたジョーイを、霧の立ちこめる神秘的な敵味方中間地帯で、イギリス兵とドイツ兵が協力して助け出すシーンは、ちょっと第一次世界大戦の休戦秘話を描いた「戦場のアリア」を思わせるシチュエーションだ。
ここは、鉄条網に比喩される戦争の不条理によって囚われたジョーイ(と彼の体現する希望)が、人間の勇気と思いやりによって解き放たれるという、本作のテーマを象徴する最も重要なシーンである。
たとえどんなに悲惨で苛酷な状況にあっても、人間の心には決して失われないものが確かにあるとスピルバーグは説く。
ここからのジョーイとアルバートの奇跡の再会劇と、やはり前半と対になるように設定された“競り”のシーンの帰趨も含め、物語の終盤は出来過ぎな位の予定調和なのだが、例えわかっていても素直に感動させられてしまうのだから、さすがとしか言いようが無い。
スピルバーグにしてみれば、この題材を選んだ時点からの計算通りという事だろう。
シネマスコープの巨大な画面を見事に使い切った鮮やかなラストカットまで、見事なまでに映画的であり、巨匠の巨匠たる所以を実感できる秀作である。

今回は馬のラベルで有名なカリフォルニアのアイアンホース ヴィンヤーズから、スパークリング「クラッシク・ヴィンテージ・ブリュット」をチョイス。
細やかな泡が美しく、味わいもクリーミーかつ芳醇な4年熟成酒。
スピルバーグ映画に相応しい華やかな一本だ。
このヴィンヤーズのあるソノマ・ナパ周辺には牧場も多く、馬で丘陵を巡るホース・バック・ライディング・ツアーも盛ん。
私も何度か挑戦した事があるけど、一日乗ってると結構お尻が痛くなるんだよね・・・。

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