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テイク・シェルター・・・・・評価額1650円
2012年03月12日 (月) | 編集 |
それは、妄想か現実か。

平凡な男が、大災害の予知夢を見てしまった事から恐怖に取り憑かれ、一心不乱に庭に避難用シェルターを作り始めるという心理劇。
エグゼクティブ・プロデューサーを努めるのは、「AVP2」や「スカイラインー征服ー」で知られる、特撮ヲタクのストラウス兄弟だが、ちょっとしたVFXシークエンスは散在しているものの、いわゆる終末のカタストロフィとか、そっち系の映画ではない。
本作が長編ニ作目となる新鋭ジェフ・ニコルズ監督は、喪失への恐れによって混乱する男の心の闇を、シェルター作りという行為に比喩する事で、極めてユニークな人間ドラマの佳作を作り出した。
じわじわと悪夢に蝕まれる主人公をマイケル・シャノンが怪演し、妻役は「ツリー・オブ・ライフ」で注目されたジェシカ・チャスティンが演じる。
※ラストの一部に触れています。

土木関係の会社に勤務するカーティス(マイケル・シャノン)は、妻のサマンサ(ジェシカ・チャスティン)と聾唖の娘ハンナ(トーヴァ・スチュワート)と幸せな人生を送っているが、ある夜から突然悪夢を見るようになる。
空を厚い雲が覆い尽くし、オイルの様な雨を降らせる大嵐が到来、その雨を浴びて凶暴化する人や動物がカーティスたちに襲いかかる。
連夜の悪夢は、単なる夢というには余りにもリアルで、やがて恐怖に囚われたカーティスは、これが近い将来に起こる事の予知夢だという考えに取り憑かれてしまい、家の庭に大掛かりなシェルターを作り始める。
カーティスの悪夢は、日を追う毎にますます生々しくなり、彼は“その時”が近づいている事を確信するのだが、常軌を逸した言動を理解できない家族や友人達は、次第に不信感を募らせてゆく・・・


終末の啓示を受けた者で、最も有名なのは旧約聖書に登場するノアだろう。
彼もまた世界の終わりを確信し、巨大な箱舟を作り始めて人々に嘲笑されたが、彼の場合は信心深い家族は最初から味方だったし、協力もしてくれた。
ノアに比べれば、本作の主人公であるカーティスはずっと孤独な戦いを強いられる。
日に日にリアルになってゆく悪夢は、恐怖と不安によってカーティスを支配するが、何しろ夢なので、他の人にそれを理解しろと言っても無理な話である。
端から見たら単に頭がおかしくなった様にしか見えないのだから、当然と言えば当然ながら、周りの人々はカーティスを心配し、やがてその言動に別種の恐れを抱く。

なんでも監督のジェフ・ニコルズは、幸せいっぱいの新婚生活を満喫している時に、この作品の着想を得たらしい。
人は、人生において自分以上に大切なものを持った時、失いたくないという思いから、不安や恐れを感じる。
カーティスの場合は、それは妻と娘である。
家族と過ごす時間に満ち足りた幸福を感じていれば、幸せを失う事への漠然とした不安もまた、潜在意識の中で成長を続ける。
そんな時に、もしも恐ろしくリアルな予知夢を見てしまったとしたら?

私も昨年の震災以来、大地震の夢を繰り返し見る。
それは自分でも夢だと分かっているのだが、現実感もあり、生々しい。
もしも一緒に暮らす家族がいたなら、何とか最悪の事態が来ても大丈夫な様に、用意だけはしておきたいと考えるのは理解できる感情だ。
まあ日本の場合、大地震はもはや確実な過去であり未来なのだが、実際に夢以外に何の予兆もない状態で、行動を起こするとなると、事はそう簡単にはいかない。
恐怖を理性で抑えられなくなったカーティスは、娘の人工内耳手術のためにお金がいるにもかかわらず、巨額の謝金をして庭にシェルターを作り始める。
それどころか、会社の機材を勝手に使ったことがバレて、クビを言い渡されても彼は工事を止める事が出来ない。
状況が悪化すればするほど、彼の中で恐怖という感情が、怪物の様に育ってゆくのである。

しかも、カーティスがノアの様に、全く“啓示”に疑いを抱かない人であれば、物語は“一人の変人vsその他”という単純な図式に収まるのだが、一方でカーティスは自分自身を信じ切れない理由も持っている。
それは、彼が10歳の頃に、母親が妄想型統合失調症を患い、以降25年間も精神病院に入院しているという事実。
母親が発症したのは、今のカーティスと同じ30代。
彼の心は夢に対する恐れと同時に、自分もまた同じ病気なのではという別種の不安によっても圧迫されているのである。
大災害の予知夢という外から来る脅威と、精神の病という内なる不安。
二つの恐怖に曝されるカーティスにとって、シェルターとは最後の最後に逃げ込める、自分自身の“心”の象徴だ。

だが、猜疑心を募らせるカーティスの中で、二つの恐怖はある時遂に一つになる。
予知夢の中で、愛する家族までもがカーティスにとって恐怖の対象になってしまうに至って、彼は大きな自己矛盾に直面する。
一体自分は、何から家族を守ろうとしているのか?
終末の嵐からなのか?それとも、自分自身の狂気から?
小さな嵐によってシェルターに逃げ込んだカーティスと家族は、遂に彼の中に巣食う恐怖の正体と対峙せざるを得なくなるのである。

以前、マイケル・ムーアの映画で「アメリカでは、人々に恐怖を感じさせて消費に走らせる」という主張があったが、不安や恐れとは、言わば幸せの反作用だ。
満ち足りて失いたくないものが多ければ多いほど、人は漠然とした恐怖に囚われやすくなる。
災害、戦争、犯罪、環境、そして原発も含め、多くの恐怖を内包するこの豊かな社会にあって、カーティスの様な事は実は誰にでも起こり得るのだろう。
そして、この映画のラストが示唆する様に、妄想と現実の境界も、実は非常に曖昧なのかも知れない。

今回は、悪夢から一転、美味しい夢「ドリーム」をチョイス。
ブランデー40ml、オレンジ・キュラソー20ml、アブサン1dashをシェイクしてグラスに注ぐ。
ブランデーベースにオレンジの強い風味が印象的な甘口のカクテルで、アブサンのクセのある香りがアクセントとなっている。
甘口と言ってもアルコール度数はかなり高いので、飲み過ぎるとせっかくの夢がまた悪夢になってしまうかも知れない。

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