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スーパー・チューズデー~正義を売った日~・・・・・評価額1550円
2012年04月07日 (土) | 編集 |
政治は、人間によって堕落する。

「スーパー・チューズデー~正義を売った日~」は、俳優としてだけでなく、映画監督としても非凡な才能を発揮する、ジョージ・クルーニーの四本目の監督作品。
原作は、2004年の民主党大統領予備選に立候補したハワード・ディーンの選挙スタッフだったボー・ウィリモンが、その経験を元に着想した戯曲「Farragut North」で、選挙の舞台裏を背景に、若き選挙参謀が直面する葛藤を描く、ポリティカル・サスペンス映画だ。
クルーニーは大統領候補の州知事を演じ、主人公には「ドライヴ」などで最近大活躍のライアン・ゴズリング
フィリップ・シーモア・ホフマン、ポール・ジアマッティ、マリサ・トメイなど渋い演技派ががっちりと脇を固め、クルーニーらしい堅実な作品世界を支える。
折りしも現実の大統領選に突入した今年、その裏側に蠢く人間模様を垣間見るかの様な本作は、エンターテイメントとしても上々の出来栄えだ。

民主党の大統領候補を選ぶ天王山、オハイオ州の予備選投票日が迫っていた。
有力候補のマイク・モリス(ジョージ・クルーニー)を支えるのは敏腕選挙参謀のポール・ザラ(フィリップ・シーモア・ホフマン)と若き懐刀のスティーヴン・マイヤーズ(ライアン・ゴズリング)。
ある時、スティーヴンは、対立候補のプルマン陣営の選挙参謀、ダフィ(ポール・ジアマッティ)から極秘の面会を打診される。
一度は断ったものの、ダフィの押しに負けて面会したスティーヴンは、彼の目的が自分の引き抜き工作である事を知る。
だが、仕事以前に政治家としてのモリスに心酔していたスティーヴンは、裏切る事は出来ないと固辞する。
ところがスティーヴンは、肉体関係にあるインターンの学生、モリー(エヴァン・レイチェル・ウッド)が、以前モリスとも関係を持ち、彼の子を妊娠している事を知る。
スティーヴンは、秘密裏にモリーに妊娠中絶させるが、ダフィとの面会がなぜかゴシップ記者のアイダ(マリサ・トメイ)にリークされ、忠誠心を疑ったポールに首を斬られてしまう。
絶望したスティーヴンは、自分だけが知る“切り札”を手に、モリスとポールへの復讐を決意するが・・・


簡単に言えば、夢も希望も実力もあり、政治への真摯な情熱も持っている若者が、選挙戦の虚々実々の駆け引きを通じて、どんどんとダークサイドに転落してゆく話である。
とは言っても、この映画には国家機密に関わる大げさな陰謀とか、いかにもハリウッドが好みそうな巨悪の存在は無い。
此処に描かれるのは、人間誰もが持つちょっとした虚栄心や欲望によって、国家や社会の礎になるべき政治の大儀が、いとも簡単に妥協され、破壊されて行く様だ。

御存知の方も多いだろうが、アメリカ大統領選挙は大変な長丁場だ。
選挙の仕組みも複雑で、実際の大統領選の前に、二大政党である民主党と共和党の内部で予備選を戦い、党の公認候補の座を勝ち取らなければならない。
予備選では、全米50州とコロンビア特別区、一部海外領土に一定の数の代議員が割り振られており、有権者はそれぞれの候補者の支持を宣言している代議員を選ぶ仕組みだ。
この予備選の期間は通常2月から6月の四ヶ月間に及び、最終的に自分を支持する代議員を一番多く獲得した候補者が、夏に行われる党大会で正式に党公認候補となり、本番の大統領選への挑戦権を獲得する。
しかも予備選の規定は州によって異なるので、各州の制度に応じた細やかな選挙戦略が必要になり、予備選の投票が始まると毎週の様に悲喜交々の人間模様が繰り広げられる。
だからアメリカ大統領選挙は、実にドラマチックでスリリング。
下手な映画では太刀打ち出来ないほど面白く、大統領選挙の年は、ハリウッド映画の客入りが悪くなると言われている程だ。

本作の主人公のスティーヴンは、そんな生き馬の目を抜く政治の世界で、若くして有力候補のスピーチライターを任されるほどのやり手。
それだけでなく、彼は仕事としては勿論だが、何よりもモリスの掲げる政治的な大儀に心酔し、安易に妥協しない性格も尊重している。
そんな出来る男が、呆気なく理想を捨てて、ぶっ壊れてゆく物語のキーは二つ。
一つ目は、対立候補の選挙参謀、ダフィとの面会に応じた事。
ダフィの引抜を断った事で、スティーヴンは問題無しと判断してしまうのだが、実はこの面会自体がダフィの仕掛けた罠だったのである。
スティーヴンのボスであるポールは、長年魑魅魍魎蠢く選挙の世界で生きてきて、唯一つ信奉する概念が“忠誠心”と言う男である。
百戦錬磨のダフィにとっては、スティーヴンが申し出を受け入れれば自陣営に取り込み、たとえ断られても自分と会ったという情報をリークする事で、ポールがスティーヴンに不信感を持ち、解雇することは想定内だったのだ。

もう一つは、尊敬していたモリスが、事もあろうにインターン学生を酔わせて手を出し、妊娠させてしまった事。
スティーヴンは、最初選挙戦へ影響を与えないため、秘密裏にモリーに堕胎させるのだが、スティーヴン自身が解雇されてしまった事によって、この件は彼だけが知る切り札となるのである。
そして、スティーヴンが自暴自棄になって、自分とモリスの関係を暴露するのではと恐れたモリーが、自ら最悪の道を選んでしまうと、スティーヴンはいよいよ絶望し、ダークサイドで生きる覚悟を決める。
こうして、合衆国という世界最強の国家の権力の行方は、 ダーティな権謀術数によって、キャリアを奪われ、馬鹿げたセックススキャンダルによって、政治に抱いていた高潔な大義という夢にも幻滅した、たった一人の若者に握られてしまうのである。

もちろん、この映画はフィクションだし、作劇上のご都合主義など、リアリティを欠く部分も多い。
だが、本来大局的な大義によって行われるべき政治が、それに関わる人間たちのパーソナルな事情によってどんどんと矮小化されてしまうという描写は、現実の政治の世界をマスメディアを通して外から眺めるだけの庶民から観ても、それなりの説得力を感じざるを得ない。
選挙スタッフの引き抜き合戦は実際には行われているし、セックススキャンダルも、選挙戦の最中の話ではないが、明らかにクリントン時代のモニカ・ルインスキー事件を皮肉っている。
冒頭のシーンでの、スティーヴンのまだ希望を感じさせる目と、対になるように構成されたラストシーンの、夢も希望も失って、まるで死んだ魚の様な彼の目は、“政治の闇”とはイコール“人間の闇”である事を雄弁に物語るのである。

映画で描かれているのは民主党の予備選の設定だが、通常一期目の政権党は再選を目指すのが原則なので、今年行われる現実の大統領選挙では、民主党の公認候補はオバマ大統領で事実上決まっている。
対する共和党の予備選は稀に見る大混戦で、決着するまでにはまだ紆余曲折ありそうだ。
ちょうど先月には、映画の舞台となったオハイオ州予備選が行われ、ネガティブキャンペーンが飛び交う中、ロムニー氏が辛くも勝利した。
まあ誹謗中傷もやり過ぎは如何なものかと思うが、世界一の権力者の候補者が、本当に下ネタの揉み消しで決まっていない事を願わんばかりである。

今回は勝利の時に開けたい、カリフォルニアはアンダーソンヴァレー産のスパークリング「シャッフェンベルガー・ブリュット/カリフォルニアスパークリング」をチョイス。
これは長い長い選挙戦を戦い抜いた者だけが主となれる、ホワイトハウスのディナーでもしばしば提供される、アメリカを代表するスパークリングの一つ。
相対的に値段は高めだが、同程度のシャンパーニュに比べれば遥にコストパフォーマンスは高い。
果たして、次にこの酒をホワイトハウスで振舞うのは一体誰になるのだろうか。

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