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ももへの手紙・・・・・評価額1650円
2012年04月20日 (金) | 編集 |
天から届いた、愛おしき想い。

「ももへの手紙」は、「人狼 JIN-ROH」の沖浦啓之監督が、長年の構想を実らせたノスタルジックな和風ファンタジー。
瀬戸内の美しい風景の中、父を亡くした少女が、一夏の不思議な出会いと冒険を通して、少しだけ大人になる姿を描く。
制作は「ホッタラケの島 ~遥と魔法の鏡~」のプロダクションI.G、作画監督は「もののけ姫」の安藤雅司、美術監督は「魔女の宅急便」の大野広司。
日本アニメ界を代表するクリエイターたちの仕事は、素晴らしく丁寧で観応え十分。
GWに家族で観るのにピッタリの秀作である。
主題歌「ウルワシマホロバ~美しき場所~」を、原由子が担当しているのも注目だ。

「ももへ、」とだけ書かれた手紙を残して、海の事故で天国へ旅立ってしまった父。
些細な喧嘩をしたまま、父と永遠に仲直り出来なくなってしまったもも(美山加恋)は、母のいく子(優香)と共に自然豊かな瀬戸内の島、汐島に移り住む。
なかなか島での生活に馴染めないももは、ある日イワ(西田敏行)、カワ(山寺宏一)、マメ(チョー)という、三人の妖怪と出会う。
“見守り組”と名乗る彼らの姿は何故かももにしか見えず、奇妙な同居生活はしばしば騒動を巻き起こしながら、ももは次第に元気を取り戻してゆく。
だが、“見守り組”には人間には知られてはいけない、ある秘密の使命があった・・・


沖浦啓之監督は大阪出身だが、ルーツは「崖の上のポニョ」の世界観のモデルとなった事でも知られる広島県の鞆の浦にあり、その事から瀬戸内を舞台にした映画を作りたいとずっと考えていたという。
劇中に登場する汐島は広島県の大崎下島をモデルにした架空の島だが、特徴的な港の常夜燈や、古い建物が残る街並みの風景は鞆の浦にもよく似ている。
海と山と青い空、三拍子揃った日本のハートランドにやって来るのは、大きな喪失感を抱えた思春期の少女、もも。
そしてある隠された使命によって、彼女の前に姿を表すのは、これまたレトロな風貌の三人の妖怪たちである。
もっとも、彼らは元々具体的な形を持たず、たまたま家にあった古い妖怪本から姿形を借りただけで、ももが彼らの事を見える様になってしまったのも、ある意味事故なのだが、結果的に彼らは本来の役目をこえて、ももとの絆を深める事になるのである。

ももは、父が亡くなる前に、ちょっとした行き違いから喧嘩をしてしまい、仲直りのチャンスを永遠に失ってしまうのだが、後になって父の机から「ももへ、」とだけ書かれた手紙を見つける。
父は、一体自分に何を伝えようとしたのだろうか。
悲しみを抱えたまま、死んでしまったのではないだろうか。
そんな誰にも打ち明けられない悔恨の念が、心にポッカリ開いた穴をじわじわと広げ、彼女が未来へと目を向ける事を許さない。
一方で、ももから見れば、さっさと東京生活を切り上げ、自分の家族のルーツである汐島へと移り住み、新しい仕事へも熱意を燃やす母のいく子は、すっかり立ち直っている様に思える。
まるで父を忘れてしまったかの様な母への反発も、ももを殻に閉じこもらせ、仲良くなろうと誘ってくれる島の子供たちとも距離を置いてしまう。

そんな時、彼女の家に住み着くのが三人の“見守り組”の妖怪たちだ。
リーダー格でお面の様にいつも同じコワイ表情のイワ、ちょっと悪賢くてお調子者のカワ、物事を覚えられない天然のマメ。
実は彼らの役目は、死んだ父の魂が天に登るまでの間、残されたももといく子を見守って天界に報告する事なのだが、事情を知らないももにとっては自分にしか見えない厄介な同居人。
大食漢の彼らが、島の畑から作物を盗むのをやめさせるために、小さな冒険を繰り広げる羽目となるのだが、一方で自分にしか見えないという気安さもあり、彼らとの交流を通してももは少しづつポジティブな気持ちを取り戻して行く。
だがある日、妖怪たちの盗んだ物を見つけたいく子が、ももがやったのではないかと問い詰めた事から、反発したももは台風が島に迫る中、プチ家出をしてしまうのだ。

ここから展開は、言わば心の再生のための喪失の追体験だ。
嵐に打たれながらももを探し回ったいく子は、持病である重症の喘息を再発させ、瀕死の状態に陥ってしまう。
家に戻ったももが見たのは、再び自分の元から失われ様としている愛する者の姿であり、そこに至ってももは漸くいく子の本当の気持ちを理解する。
自分が父を失った様に、いく子もまた最愛の夫を亡くし、大きな喪失感を抱えていた事、それでももを気遣って、無理をして気丈に振舞っていた事を。
親の親たる所以を知り、自分が子供だった事を認識したももは、成長する準備が出来ている。
島に医者はおらず、母を救うためには暴風雨を突っ切り、未完成の橋を通って隣の島に医者を呼びに行かなければならない。

無茶を承知で嵐の中に踏み出すももを助けるのは、本来“見守る”のが仕事のはずなのに、図らずも事件の発端になってしまった妖怪たち。
彼らも元々は地の神の様な存在だったのに、悪さをしすぎたために罰を受け、使い走りの様な“見守り組”の仕事に身を落としている。
ももの想いに応えるため、妖怪たちもまた自らに科せられたくびきを解き放ち、精神的な成長を遂げるのだ。
暴風雨の中、“見守り組”の呼びかけに呼応した島の妖怪・精霊たちが、何百体も折り重なり、まるでトンネルの様な百鬼夜行となって風雨に抵抗し、ももを守るシークエンスのビジュアル表現は、ちょっと過去に観た事のないものだ。
それまで溜め込んだ“動かす力”が一気に解放された様な、正しくアニメーションの妙技を味わえる圧巻のザ・クライマックスである。

しかし、レトロな風景の残る田舎を舞台に、心に傷を負った子供、そして妖怪という組み合わせは、言わば日本型ファンタジーの鉄板であり、どうしても過去に作られたいくつもの作品、「となりのトトロ」「河童のクゥと夏休み」「ミヨリの森」そしてもちろん瀬戸内がモデルという共通項を持つ「崖の上のポニョ」などと重なり、既視感に繋がってしまっている事は否めない。
ただ、本作の場合はそれも含めて王道の安心感に繋がっており、必ずしもネガティブな要素ではないだろう。
所々、丁寧過ぎてやや冗長になってしまっている部分もあるが、これは“日本の家族”に観て欲しい愛すべき作品である。

今回は、嵐がクライマックスになる映画なので、広島の相原酒造の「雨後の月 真粋大吟醸 」をチョイス。
純和風テイストのファンタジー映画の後は、美味しい日本酒と瀬戸内の山海の幸をいただきたくなる。
幾つものフルーツが複雑に組み合わさった様な芳醇な吟醸香は、正に日本の自然の豊かさを象徴するかの様だ。
今年の夏は瀬戸内にでも旅行に行こうかな。

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