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宇宙兄弟・・・・・評価額1650円
2012年05月07日 (月) | 編集 |
宇宙(そら)を向いて歩こう。

エリート宇宙飛行士の弟と、人生の再出発から宇宙を目指す兄の絆を描く、小山宙哉原作のベストセラー漫画の映画化である。
主人公のモジャモジャ頭の六太を小栗旬、生き方もルックスも対照的な弟の日々人を岡田将生という旬の若手二人が好演している。
未完結の長編漫画の映像化というハンディを、全く感じさせない大森美香の脚色が素晴らしく、それを受けた森義隆監督の画作りも、宇宙開発という題材に負けないスケールの大きなもので、兄弟の絆という小さな話を核にしながら、そこからの広がりは大作感がある。
雄大な宇宙のロマンに浸りながら、何時の間にかスクリーンから背中を押され、前向きな気持になれる快作だ。
※ラストに触れてます。

西暦2025年。
失業中の南波六太(小栗旬)の元に、JAXA(宇宙航空研究開発機構)から宇宙飛行士試験の書類選考通過の通知が届く。
実はこれ、六太の弟で現役宇宙飛行士の日々人(岡田将生)が、勝手に応募したもの。
少年時代、共に宇宙を目指す約束をしながら、何時しか道を外れて行った兄の、再出発の後押しをしたのだった。
最初は戸惑ったものの、二次選考に挑んだ六太は秘めた才能を発揮し、次々と難関を突破する。
一方の日々人は日本人初となる月面着陸へ向けて、宇宙船アルテミス号で月へと旅立つが、時を同じくして六太は宇宙飛行士への最終試験に挑む事になる。
それは、密閉された空間で6人のチームメイトと共に10日間暮らし、毎日出題される様々な課題をクリヤするという物。
順調に試験が進む中、六太の元に月面の日々人が事故に巻き込まれ、消息を絶ったという連絡が入る・・・


「宇宙飛行士になりたいー」
子供の頃、将来の夢をこう作文に書いた人は多いだろう。
アポロ世代である私もその一人で、子供の頃はISSならぬスカイラブの上空通過を観察したし、スペースシャトルの初飛行もライブで見た。
自分たちの暮らすこの地球を、外側から眺める事の出来る宇宙には、人々を見果てぬ夢に駆り立てるフロンティアの誘惑がある。
しかし嘗ての宇宙キッズも、だんだんと成長するに従って、いつしか宇宙飛行士は夢のままになり、地に足を付けて、もとい地に縛り付けられて生きる様になるのだ。
そう、本作の主人公である六太は、正にそんな我々をまんま物語の中に放り込んだような人物であり、それゆえに感情移入が非常にしやすいのである。

脚本の大森美香が実に良い仕事をしている。
この人は漫画原作だからと言って、無理に原作の雰囲気を合わせたり、エピソードを詰め込むような事はせず、一度きちんと映画として物語を構成した上で、取捨選択して物語に取り込んでいるので、ストーリーラインが綺麗で観易い
エリート街道を邁進する弟と、落ちこぼれの兄貴という設定は、南ちゃんこそいないものの「タッチ」以来の少年漫画の王道パターンの一つだ。
映画は、この二人の少年時代からの宇宙という夢を縦軸に、横軸の様々なエピソードを交錯させ、それぞれに伏線として有機的な役割を持たせる事で進行してゆく。
人類の宇宙開発の歴史を辿る、ワクワクするオープニングでまずは観客の心をキャッチ。
そして前半を六太の再出発物語として、彼の宇宙飛行士チャレンジを中心に構成し、最終の閉鎖空間テストに入り、画面に動きが無くなると、月面の日々人の物語と並行する様に展開させ、クライマックスを地球と月という遠大な空間で隔てられた兄弟の絆に持ってくる辺り、実にロジカルで上手い。
原作ファンには異論もあろうが、一本の映画としてのあり方としてはまことに正しく、個人的にはしばしばくどさを感じる原作よりも、映画のシンプルさの方に好感が持てる。

もちろん、宇宙開発をモチーフにした話であるからには、単なる人間ドラマだけでは物足りない。
ハリウッド映画にも見劣りしない、出色の出来の映像が本作の世界観をグッと広げる。
巨大な月ロケット、アルテミス号の打ち上げシーンの迫力は、本物のアポロの映像を見慣れていても圧巻だし、後半のかなりの部分を占める月面のシーンは、スタジオ撮りだとわかっていても本当に月にトリップした様なリアリティがあり、ビジュアルの仕上がりは日本映画屈指と言っても良い。
この打ち上げシーンには、“嘗て月面を歩いた男”バズ・オルドリン本人も降臨。
相方のニール・アームストロングが仙人の様な引きこもり生活を送っているのに対して、この人はちょくちょくメディアで見かけるけど、多分出たがりなんだろうな(笑
オルドリンの、「ロケットを打ち上げる力とは、飛行士たちの勇気、管制官たちの情熱、人々の敬意なのだ」という言葉にも後押しされた六太は、いよいよ自分の中に燃え上がる宇宙への熱を燃料に、本物の宇宙飛行士になる決意を固める。
そして六太と日々人、それぞれが今立っているステージで、最大の危機を乗り越えるクライマックスから、ちょっと出来過ぎな気さえする、痛快無比なラストまで、物語は観客の心に疼く未知の世界へのロマンを掻き立てる。

本作に描かれる2025年から2031年までの世界は、日本映画が久々に見せた希望に満ちた未来予想図だ。
仕事をリストラされ、人生に迷っている頃の六太は下ばかり見ているが、宇宙への情熱を蘇らせた後半は、少年の様な憧れの目で宇宙に浮かぶ月を見上げている。
地上の生き物である人類に翼を与え、月にまで到達させたエネルギーは、大元を辿れば想像力である。
人間の想像力の及ぶ範囲なら、いつか必ず人類の手は届くし、それに向かって邁進すれば、何らかの形で人生は報われる。
それでも一人一人の人生は一度きりで、座り込んでいる時間はない。
これは、エンドレスの不況に未曾有の大災害のダブルパンチを受け、すっかり意気消沈している日本人へ、スクリーンから贈られたパワフルなエール
2031年の月面の日章旗が本当になるかどうかは、全て今の我々次第なのだ。

今回は、宇宙で生まれた酒、「土佐宇宙酒 玉川 安芸虎 純米大吟醸」をチョイス。
もちろんこれ自体が宇宙で醸造された訳ではなく、高知県の蔵元有志によって推進された、日本酒酵母を宇宙へ送ろうというプロジェクトによって生まれた酒のこと。
2005年に国際宇宙ステーションへ運ばれた高知県産酵母は、8日間を宇宙で過ごした後に帰還。
この酵母を使った宇宙酒は、今では高知県のいくつかの蔵元から発売されている。
実際の味としては、まあ普通の美味しい日本酒だが、地球を外から眺めた酒だと思えば、遥かなロマンに酔いも早くなるだろう。

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