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ファミリー・ツリー・・・・・評価額1700円
2012年05月22日 (火) | 編集 |
人生の楽園は、どこにある?

常夏の島、ハワイを舞台に「サイドウェイズ」のアレクサンダー・ペイン監督が、ジョージ・クルーニーを主演に迎えて描く悲喜交々の人生劇場。
突然の妻の事故を切っ掛けに自らの生き方を見つめ直し、改めて本当の家族、本当の父親になろうとする主人公を、クルーニーが中年オヤジの哀愁たっぷりに演じ、彼に反発しつつも絆を深め合う娘たちを、シャイリーン・ウッドリーアマラ・ミラーが好演している。
米国本土とは異なる、ハワイ独特の文化が映画に不思議なムードを与え、憂いを帯びたハワイアンのメロディーが心に沁みる秀作だ。
※ラストに触れています。

弁護士のマット・キング(ジョージ・クルーニー)は妻と二人の娘の四人家族で、先祖代々暮らすハワイで平凡な日々を送っていた。
ところがある日、妻がパワーボートの事故に遭い、昏睡状態に陥ってしまう。
今まで家の事など全く無関心だったマットは、年頃の娘たちとの関係に戸惑い、今更ながら良き父親になろうとする。
だが、ある日長女のアレクサンドラ(シャイリーン・ウッドリー)から、妻が浮気していて、マットとも離婚するつもりだった事を打ち明けられ、ショックを受ける。
妻の本心が知りたいマットは、アレクサンドラと共に浮気相手を探し始めるのだが・・・


アレクサンダー・ペイン監督の映画は、松竹大船調にも通じる人情喜劇の妙がある。
定年退職した男が、新しい生活に戸惑いながらも自分自身を見つめ直す「アバウト・シュミット」、飲んだくれ中年コンビが、恋とワインと人生の賛歌を歌い上げる「サイドウェイズ」など、ユーモアと悲哀を織り交ぜながら、どこにでもいる市井の人々が大きな葛藤の末に小さな喜びを見出す物語は、観客の心にリアルに、そして心地よく響く。

この作品も、妻の事故という不慮の出来事によって、一気に噴出する様々な問題に戸惑う平凡な中年オヤジが主人公だ。
まず彼が直面するのは、今まできちんと向き合うことのなかった娘たちとの関係
17歳の上の娘、アレクサンドラは学校の寮で酔っぱらい、頭の悪そうな彼氏を家に連れ込むし、小学生のスコッティは問題行動を繰り返し、マットは学校や同級生の親からの抗議の矢面に立たされる。
何年も妻に任せっぱなしにしていた間に成長してしまった娘たちは、マットにとってはもはや理解不能の異星人なのだ。

更に、追い討ちを掛ける様に、妻の浮気というマットにとっては驚天動地の新事実がアレクサンドラから打ち明けられる。
彼女は男に夢中になり、マットとの離婚も考えていて、アレクサンドラが家に寄り付かなくなったのも、その事で母親と喧嘩をしたからだという。
全く気づかないうちに、自分の家族が分解寸前になっていた事にようやく気付いたマットは、妻の真意を知ろうと、母へのわだかまりを抱えるアレクサンドラと共に、浮気相手の正体を調べはじめるのだ。
もっとも、マットに相手をどうこうしようという意図がある訳ではない。
病院のベッドに横たわり、もはや口を聞く事もなく、死を待つばかりとなった妻は、果たして幸せだったのか、自分を愛してくれていたのか。
とりあえず彼は、一気に瓦解してしまった日常の、自分だけに見えていなかった部分を知らずには、次のステップを踏み出す事が出来ないのである。

ジョージ・クルーニーが実に良いのだ。
いつものセクシーでダンディなナイスミドル像からは想像もつかない、ダサダサのおっさんを味わい深く演じて新境地を開拓している。
娘から妻の浮気を聞かされて、事の真相を知るべく近所に住む友人宅へドタバタ走る姿の何と格好悪く、何と人間臭い事か!
オスカーは「アーティスト」のジャン・デュダルジャンに譲ったが、彼のベストアクトの一つであるのは間違いなかろう。
また父娘というよりも、いつの間にか同士の様な関係になる、アレクサンドラ役のシャイリーン・ウッドリーがキュートだ。
彼女がマットの浮気相手の調査を手際良くアシストする下りや、問題児のスコッティの扱いをレクチャーするあたり、マットが完全にアレクサンドラに頼りっきりで、なるほど妻ともこんな感じだったんだろうなと想像させるのは上手い。

そして、家族の関係を見つめ直す事で、マットは自分の抱えているもう一つの難問にも答えを見出す。
原題である「The Descendants」は“子孫”を意味し、一本の樹木の様に広がる家系の血脈を指す言葉でもある。
実は、マットの一族は“キング”というファミリーネームの通り、カメハメハ大王の血を引くハワイ王族の末裔で、先祖から信託された広大な土地を売るか否かの決断を迫られている。
もし土地を売れば、一族には数億ドルという莫大な利益がもたらされるが、同時に150年間にわたって先祖代々守ってきたハワイの貴重な原風景が失われてしまう。
マットは、妻と娘たちという一番近い家族の関係を見つめ直しながら、この土地で脈絡と受け継がれてきた、大きな家族の意識、ハワイ人としての魂にも思いを廻らせるせるのである。

物語の最後で、カウチソファで仲睦まじくテレビを観ているマットと娘たちの姿が、本作のテーマを上手く表しているしている。
彼らを包み込んでいる大きな黄色いハワイアンキルトは、病室で死にゆく妻の体に掛けられていた物で、おそらく彼女の手作りだろう。
ハワイの伝統工芸として知られるハワイアンキルトは、元々本土からやってきた宣教師の妻たちが、ハワイ王族の女性たちにパッチワークの技法を教えた事から生まれたと言われており、つまりはそれはマットの一族の始まりそのものである。
キルトに描かれた大きな木は、長い歴史の中で受け継がれてきた家族の絆の象徴だ。
本作の秀逸な邦題、「ファミリー・ツリー」はたぶん担当者がこのモチーフから発想したのだろうと想像する。
楽園とは、別に驚くほど景色が美しかったり、素晴らしく気候が穏やかな場所の事ではなく、自分にとって本当に大切な人々が存在するところ。
マットのささやかな楽園は、今家族が寄り添うソファの上なのである。

今回は、ハワイアンを聞きながら飲みたくなるカクテル、その名も「ハワイアン」をチョイス。
ドライジン40ml、オレンジキュラソー1tsp、パイナップルジュース20mlをシェイクしてカクテルグラスに注ぐ。
ハワイの名を冠するカクテルというと鮮やかな「ブルーハワイ」が有名だが、こちらは見た目シンプルながら、香り豊かでサッパリした飲み飽きないテイストのカクテルだ。
ブルーハワイがどこまでも青いハワイの空と海だとしたら、こちらは太平洋に広がるオレンジ色の夕焼けの風景だろうか。
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