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外事警察 その男に騙されるな・・・・・評価額1650円
2012年06月05日 (火) | 編集 |
目を凝らしていても、騙される。

所謂カウンターテロリズム、カウンターインテリジェンスのスペシャリストとして、日本で暗躍する国際テロリストや外国の諜報員対策などに奔走する、警視庁公安部外事課、通称「外事警察」の活躍を描く骨太のサスペンス映画。
2009年にNHKで放送された同名連続テレビドラマのザ・ムービーだが、ほぼ独立した映画として構成されており、ドラマを観ていなくても問題ない。
朝鮮半島から流失したウランを巡る、諜報の世界に生きる男たちの丁々発止の騙し合いは観応え十分だ。
NHKお得意のざらっとした銀残し風の画作りも効果的で、引き締まった映像は128分の間緊迫感を持続させる。
※核心部分に触れています。

東日本大震災直後の東北。
原発事故の立ち入り禁止区域から、核関連の機密情報が何者かに盗まれ、同時に朝鮮半島からウランが日本に持ち込まれたという情報がもたらされる。
警視庁公安部外事課の住本(渡部篤郎)は、以前からマークしていた韓国人の奥田正秀こと金正秀(イム・ヒョンジュン)が経営する奥田交易が事件に関わっていると考え、正秀の夫人の果織(真木ようこ)を調査し、彼女の弱みを使って協力者に仕立て上げる。
正秀が核爆弾の部品を持っている事を確認した住本らは、泳がせてウランの所在を突き止める作戦に出るが、事件の核心まであと一歩と迫った時、正秀は従業員の安民鉄(キム・ガンウ)に殺されてしまう・・・


邦画が本格的にインテリジェンスの世界を描いたのは、もしかしたら阪本順治監督の「KT」以来じゃないだろうか。
冒頭、朝鮮半島の某国(例によって国名はぼかされている)から核兵器級のウランが流失し、ほぼ時を同じくして震災の爪痕が禍々しく残る東北の立ち入り禁止区域から、核爆弾の製造に欠かせないある技術が盗まれる。
北の核問題に福島の原発事故、現実に日本が直面する二つの“核”をモチーフにした事は、本作にフィクションを超えるリアリティを与えているが、同時にテーマ的な矛盾を抱え込ませてもいる。
古沢良太の脚本は、日本映画ではタブー視されていた娯楽映画での“核”というキーワードに大胆に切り込み、ドラマ版も手掛けた堀切園健太郎監督は、人間心理のリアルを武器に、日本でもこんな事が本当に起こっているかもしれないと、この世界の日常の裏側を説得力たっぷりに描写してゆく。

本作の主人公である住本健司は、身内からも“公安の魔物”と揶揄されるある種のダークヒーローとしてキャラクター造形されている。
国益を守る為なら平然と嘘をつき、民間人の弱みを握って恫喝し、危険に晒すことすら厭わない。
まるでカメレオンアクターの様に、相手によって見せる顔を変え、本心では何を考えているのかまるでわからない謎めいた男を渡部篤郎が好演。
このキャラクターをどう捉えるかによっても、おそらく本作の印象はだいぶ変わってくるだろう。
彼によって、外事警察の協力者に仕立て上げられ、夫をスパイする事になる薄幸のヒロインに真木ようこ
彼女の、暗い情念を感じさせるパワフルな演技は本作の見所の一つである。
そして、人間関係のトライアングルを形作るもう一人が、四半世紀前に祖国を原子力の光で照らすという夢を抱いて日本を去った在日二世の核科学者で、事件のキーマンである徐昌義だ。
田中泯が只者でない存在感で演じるこの男こそが、本作のテーマ的な核心を体現するキャラクターなのである。

映画は、住本ら外事警察と韓国の諜報機関である国家情報院(NIS)、原爆を製造しテロリストに売り飛ばそうとすグループ、そして徐昌義のそれぞれの思惑が入り混じり、虚々実々の駆け引きに果織の現在と過去が絡む形で進行する。
なかなかに複雑なプロットだが良く練られており、わかり難さは無いが、何しろ登場人物に正直な人間が一人もいない話である。
“事実”として物語上に提示される事象も、後から実は嘘でしたという展開が多く、サブタイトル通り「その男に騙されるな」と身構えていてもやられてしまう。
東京とソウルを行き来しながら、諜報のプロフェッショナルたちがウランと起爆装置を奪い合うプロセスは、先を読ませずにスリリングに展開し、スクリーンから目が離せない。
荒唐無稽なスーパーヒーローとしてではなく、リアリズムに立脚したスパイ物、いやインテリジェンス物として、なかなかに良く出来た作品である。

しかし、“核と日本”というタイムリーかつ挑戦的なモチーフは、テーマとしては今一つ消化しきれていない様に思う。
その原因は、朝鮮半島の核と日本の核という実は全くベクトルの異なるモチーフをまとめて扱ってしまっているために、作劇上の焦点が絞りきれず、作り手のスタンスもぶれてしまっている事にある。
物語のクライマックスである、徐昌義による核テロリズムの動機は、要するに「シュリ」のチェ・ミンシクと同じだ。
夢を抱いて渡った北朝鮮(あ、言っちゃった)に対する絶望故に、テロによって戦争を起こす事で、祖国の滅亡を願うという事だが、ここでは核は単なる手段に過ぎない。
その力の恐怖を体現し、本来テーマに直結しなければならない彼の問いかけは、ある種の国家論に終始し核とは何かの本質ではないのである。
さらにはクライマックスの舞台を東京でなくソウルに設定した事、ハリウッド映画ライクな銃撃戦の末の爆弾解除という良くも悪くも予定調和な筋書きとした事も、本作のスタンスを暈してしまった。
だから、余貴美子演じる内閣官房長官が「日本はあえて核なき世界という綺麗ごとを目指す」と言う、半分皮肉を込めたテーマの核心部分が本筋から遠く感じるのだ。
もっともそれは、過去ではなく今の日本と核というモチーフを正面から描こうとして、攻めに攻めた結果であり、少なくともその志は高く評価されて良いと思う。
「007」とは異なり、魑魅魍魎も裸足で逃げ出しそうな、アジア的な情念渦巻くインテリジェンスの世界をリアルに感じさせてくれただけでも、本作は十分に観る価値のある一本だ。

今回は、日本のスパイ映画に似合う日本のウィスキーブランド、ニッカの「フロム・ザ・バレル」をチョイス。
熟成されたモルトウイスキーとグレーンウイスキーの原酒をブレンドの後、再貯蔵して数ヶ月馴染ませ、加水せずにそのままボトルに詰めたウイスキー。
51.4度の原酒ならではの重厚な味わいに深いコクと香りを楽しめる。
そして特筆すべきは、クオリティに対するコストパフォーマンスの高さだ。
これなら官房機密費を使わなくても日常的に楽しめるだろう。
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