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へルタースケルター・・・・・評価額1350円
2012年07月15日 (日) | 編集 |
欲望のミューズの狂気と冒険。

色々な意味でこの夏一二を争う超話題作だろう。
全身整形美女、りりこの生き様を描く岡崎京子の未完原作を元に、「電車男」の金子ありさが脚色し、蜷川実花監督が映像化した。
もちろん、五年ぶりの主演映画でりりこを演じるは、エリカ様こと沢尻エリカだ。
タイトルの「へルタースケルター」とは、ビートルズの同名楽曲が有名だが、「大混乱、しっちゃかめっちゃか」などのカオスな状況を意味し、1969年にシャロン・テート殺人事件を引き起こしたカルト指導者、チャールズ・マンソンに大きな影響を与えたいわく付きの曲としても知られる。
なるほど、サイケデリックな映像でデコレーションされた、恐ろしいほどに破滅的なりりこの姿は正にこの言葉にピッタリだが、物語の収束点まで混沌としたまま定まらないのが少々残念だ。

芸能界の荒波を行くモデルのりりこ(沢尻エリカ)は女性たちのカリスマ。
表紙を飾る雑誌は飛ぶように売れ、CM契約は引っ張りだこ。
金と権力をもつ男たちは、砂糖を求めるアリのように彼女の美貌に群がって来る。
しかし、彼女には誰にも知られてはならない秘密があった。
実はりりこの正体は、違法な整形手術で作り上げられた全身整形美女。
検事の麻田(大森南朋)は、患者に自殺者が相次ぐ整形外科クリニックの捜査線に上がったりりこに興味を抱く。
そしてりりこも、手術の深刻な後遺症に苦しみ、クスリ塗れになったその心は崩壊寸前となってゆく・・・


蜷川監督、七年越しの企画らしい。
当初からりりこ役には沢尻エリカを考えていたそうだが、例の「別に」事件より前に彼女の中のりりこを嗅ぎ取っていたとしたら、なかなかの嗅覚と言えよう。
原作者の岡崎京子が、1996年の不慮の交通事故以来懸命のリハビリ状態にあったり、沢尻エリカがスキャンダルクイーンになってしまったりで、実際の映画化まではずいぶんと時間がかかってしまったようだが、結果的にタイミングは良かったと思う。

りりこというキャラクターに、演じる沢尻エリカのリアルを投影させ、まるで擬似ドキュメンタリーを観ているかの様な臨場感に観客を誘い込むという手法は、要するに近年のダーレン・アロノフスキーの日本版。
これはNYのバレー界を日本の芸能界に移し替えた、もう一つの「ブラック・スワン」とも言えるだろう。
現実のスキャンダルを逆手にとって、壊れてゆくりりこを演じる沢尻エリカは、自らの全てと引き換えに、美と欲望の冒険へと乗り出す“タイガー・リリー”に相応しい。

フォトグラファーである蜷川監督は、前作の「さくらん」でもインパクトの大きかった毒々しいまでにカラフルな色彩の洪水で、りりこが生きる非日常の世界を構築する。
鏡と無数のポートレートに囲まれ、窓には真っ赤に描かれた巨大な唇が一切の自然の光を拒絶するりりこの部屋は、見事なまでにシュールな彼女の心象世界のメタファーだ。
更にはりりこが手術の後遺症の苦しみから逃れる為に、薬物漬けになってからは、悪夢の様な妄想が彼女の世界を侵食しはじめ、現実と幻想の境界すら崩壊しはじめる。
泣き、叫び、ワガママ放題のりりこの姿は、演技技術としての上手い下手以前に、現実と虚構を超えて突き刺さる迫力がある。
何だかんだ言っても、本作がエリカ様という唯一無二のキャラクター抜きに成立しないのは確かだろう。

脇を固める俳優陣では、窪塚洋介演じるボンボンや大森南朋の検事ら男性キャラクターが何だかフワフワと浮世離れした不思議系なのに対して、女性たちには女のそれぞれの側面をカリカチュアしたような、クッキリとした輪郭があるのが印象的だ。
りりこに虐げられながらも、奇妙な主従関係を拒絶できないマネージャー役の寺島しのぶと、りりこの後輩のモデルでライバルになるこずえを演じる水原希子は絶妙なキャスティングだし、虚像のサイボーグであるりりこの生みの親とも言える、事務所社長と整形外科医を演じる桃井かおり原田美枝子のツーショットはさすがの迫力だ。
しかし、この豪華な出演者は個々としては魅力的なのだが、後述するように映画全体を観た場合、作品の印象を拡散させる要因の一つになってしまっている。

力作である事は間違いないが、この映画がどこか突き抜けられていない理由。
例えば「ブラック・スワン」にあって本作に無いもの、それは圧倒的な熱狂、映画的なカタルシスである。
「ブラック・スワン」のニナは、その人間性の原点と官能的な黒鳥を演じるという到達点がハッキリとしており、故にラストの「perfect・・・」という台詞が、言葉通り彼女の絶頂として物語のオチとなるのである。
だが、本作のりりこはそのどちらもが明確で無いのだ。
彼女はどこから来て、どこへ行こうとしているのか、混沌の苦しみの中で何を見つけたのか。
殆ど出ずっぱりで描かれる彼女の内面は、逆説的に希薄化してしまっている。
特に後半は、次から次へと詰め込まれるエピソードによって、物語が堂々巡りを繰り返して前に進まなくなってしまい、物語は収束点に向かうと言うよりもカオスの淵にはまり込んでゆく。

本来ならば、全身整形がばれた後の記者会見、彼女の言う「見たいものを見せてあげる」こそがクライマックスとなるべきなのだろうが、映画はここからも冗長に続き、結局意外な人物の視点で幕を閉じるのである。
本作は観客の“見たいもの”を見せる事には確かに熱心だ。
しかしながら、作り手が“見せたいもの”は何だったのか、詰め込み過ぎの要素とキャラクターが多すぎてとっ散らかった視点によって拡散してしまい、最後まで曖昧だった様に思う。
主人公のりりこがぶっ壊れてゆくからと言って、映画の語り口までしっちゃかめっちゃかになる必要は無いのである。
ドラマの腰を折るだけにしかなっていない真っ白な取調室のシーンなど無駄な要素を取り払い、キャラクターと視点を整理して、りりこの内面の冒険を絶対的な軸にして描いた方がベターだったのではないだろうか。

今回は、りりこと飲みたいピムスベースのカクテル「ピムスロワイヤル」をチョイス。
ピムスは1840年にロンドンのジェームス・ピムという人物が、ジンをベースに柑橘類フルーツエキスなどを配合して作ったカクテルが起源で、イギリスを代表するフルーツフレーバーリキュールとなっている。
このピムス1に対して甘口のスパークリングワイン4をグラスに注ぎ、ステアする。
お好みでストロベリーガーニッシュを。
柑橘類の香りと、柔らかな甘みと適度なほろ苦さがシュワシュワと炭酸と共に広がり、爽やかに喉を潤してくれる。
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