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ダークナイト ライジング・・・・・評価額1800円
2012年07月30日 (月) | 編集 |
物語は、遂に神話となる。

前作「ダークナイト」で大センセーションを巻き起こした、クリストファー・ノーランによる二十一世紀版“バットマン”三部作、堂々の完結。
テーマは前作を色濃く受け継ぎながら、ストーリー的には第一作の「バットマン ビギンズ」の対のような構造となっている。
シリーズ最高の2億5千万ドルが投じられたビジュアルは、デジタル技術との巧みな共存を図りながらも、人もセットも極力実写にこだわるという、現在では超大作にしか許されない贅沢な作りになっており、全編に散りばめられた幾つもの見せ場はゴージャスそのもの。
“バットマン組”に“インセプション組”が合流した、オールスターキャストも目を楽しませる。
デカイ仕掛けを使って人間たちの極限のドラマを魅せる、正に“最後のアナログ原理主義者”、ノーランの面目躍如だ。
※ラストに触れています。

トゥーフェイスへと変貌したデントの罪を被り、堕ちた偶像となったバットマンが大衆の前から姿を消して8年。
犯罪者を徹底的に取り締まるデント法によって街は平和を取り戻した様に見える。
だが、ゴッサムシティの破壊を目論む謎の男ベイン(トム・ハーディ)が出現。
ブルース・ウェイン(クリスチャン・ベール)はベインに雇われたセリーナ・カイル(アン・ハサウェイ)の罠に嵌り、全財産を失って“奈落”と呼ばれる脱出不可能な刑務所に監禁されていまう。
ウェイン産業の開発した核融合炉を手に入れたベインは、それを核兵器に作り変えるとゴッサムシティ全体を封鎖し、革命を宣言する・・・


怒涛の完結編である
相変わらず情報量と物語の密度は圧倒的で、165分という長大な上映時間をもってしてもキチキチ。
破綻ギリギリ、殆ど息つく間もなく、エンドクレジットまで突っ走る。
犯罪者にとっての恐怖のシンボルとして君臨する事で、ゴッサムシティを救おうとしたバットマンが、自らの合わせ鏡のような邪悪の化身、ジョーカーと対決してから8年。
街の治安はデントの死の真相を隠し、英雄へと祭り上げる事で生まれたデント法によって守られ、バットマンは引退状態にある。
しかしそれは、真実を隠蔽し人々を裏切って作り出した偽りの平和だ。
目に見えない小さな歪みは、やがてバットマンと同じくラーズ・アル・グールの弟子だったベインという最強のヴィランの出現によって、世界の屋台骨を揺るがす大きな亀裂へと広げられてゆく。

本作の物語について、脚本を執筆したジョナサン&クリストファーのノーラン兄弟は、ディケンズの「二都物語」の影響を受けたと語っている。
なるほど、フランス革命を背景にした小説には、同じく革命をモチーフとした本作にそのまま符合する要素が沢山ある。
なぜかスケアクロウが取り仕切る裁判は、フランスの革命裁判所を思わせるし、デントの罪を被り偽物のヒーローとされたバットマンは、恋敵の代わりに断頭台の露と消えるシドニー・カートンの姿とだぶって見える。
本作には「二都物語」だけでなく例えばダンテの「神曲」などの文学作品、そして幾つもの映画作品の影響も垣間見る事が出来る。
特にベインのキャラクターはその身体的な特徴はもちろん、冒頭のCIAの小型機をC130ハーキュリーズ輸送機で捕獲するシーン、失態を犯した部下を無慈悲に殺してしまうシーンを見れば、ジョージ・ルーカスの創造した映画史上屈指のスーパーヴィラン、ダース・ヴェーダーを意識しているのは明らかだ。

ルーカスが遠い銀河の彼方を舞台に、壮大な“サガ”を作り上げたように、ノーランが自らの芸術的な記憶を総動員して描こうとしているのは、恐怖によって君臨する事を選んだ一人のダークヒーローを主人公にした、極めて強い比喩性を持った現代の神話である。
ゴッサムシティがほとんど現実のニューヨークのままなのに対して、バットマンが監禁される深い井戸状の刑務所、“奈落”などは完全にファンタジーのように造形されており、ひたすらリアリズムを重視するならあり得ないであろう、アンバランスさを感じさせる世界観のコントラストも、これがある種の神話であるという見方をすれば納得がいく。
だから運命の子であるバットマンも、「神曲」のダンテや多くの貴種流離譚神話の主人公のように、“rises(立ち上がる)”のためにいつ果てるとも知れない地獄の底を這い回るのである。

とはいえ、本作はあくまでもスペクタクルな娯楽映画
比喩を読まないと理解出来ないような、堅苦しい作品では決してない。
観客の度肝を抜くスカイアクションから始まって、今回初登場の空飛ぶバットモービル、その名も“BAT”を使った地上と空を縦横無尽に駆け抜ける3次元バトル、ゴッサムシティを混乱に落とし入れる同時多発爆発に、ベインの私兵軍団と復活したバットマンに勇気づけられた三千人の警官たちとの肉弾戦と盛り沢山。
ピッタリしたボンデージ風スーツに身を包み、颯爽とバットポッドを駆るアン・ハサウェイ演じるキャットウーマンは、男臭い世界の中の貴重な萌えポイントだ。
もちろん、すっかりブルース・ウェイン役が板に付いたクリスチャン・ベールマイケル・ケインゲイリー・オールドマンらのレギュラー陣に、「インセプション」ジョセフ・ゴードン=レヴィットマリオン・コティヤールトム・ハーディらが加わったキャストの織り成す人間ドラマは、まるで優れた推理小説を読むかのようにミステリアスでパワフルだ。
キャスティングでは“奈落”で傷付いたバットマンに対して、重要な啓示となる言葉を投げかける男が、「戦場のメリー・クリスマス」のMr.ローレンスことトム・コンティなのは嬉しいサプライズ。
このシリーズが、ハリウッドの素材を使いながら、同時に最もイギリス映画らしい作品であることを再確認させてくれた。

しかし、バットマンというスーパーヒーローを描く活劇としては満点と言って良い本作も、やはり前作ほどの衝撃は感じられないのもまた事実。
その理由はただ一つ、“市民”の物語上のプライオリティが低い事だろう。
「ダークナイト」は一般市民の究極の選択が、最終的にジョーカーという絶対悪を打ち負かすのだが、今回は前作からテーマを受け継いでいるにもかかわらず、市民の存在は背景にとどまっている。
実際に葛藤しクライマックスで戦うのは、バットマン率いる警官たちとベインらの私兵で、これは要するに米軍vsアルカイダみたいな物であり、明確な理念と理念の対決だ。
実際に歴史を作ってきたのは往々にして物言わぬ大衆ではなく、覚悟を決めた過激派であるのは確かだし、警官たちを市民の代表として描いたと言えなくもないが、願わくばそれぞれの良心に従って立ち上がる一般の市民に触発され、萎縮していた警官たちが合流し矢面に立つという展開にした方が、このシリーズの結末としては相応しかった様に思う。

さて、終盤で明かされる“オートパイロットのパッチ”をどう解釈するかによって、マイケル・ケインが観た風景が現実か幻かの判断は別れそうだが、いずれにしてもクリストファー・ノーランによる若きバットマンの物語は映画としてはこれで終わりだろう。
しかし、ある登場人物の本当の名前が明かされ、伝説の継承者となることが示唆される熱血なラストカットは鳥肌が立つほどに鮮やかだ。
ノーランは、映画を完結させながら、同時に物語の永続性を示すことで、既に伝説的なこの三部作を、二十一世紀の映像神話として昇華させたのである。

この映画に合うのは、やはりアメリカの酒よりもイギリスの酒。
英国スペイサイドにある蒸留所、ゲール語で「静かな谷」を意味するグレンリヴェットから、「ザ・グレンリベット 18年」をチョイス。
エレガントになめらかで、口に含むとまろやかなアロマがふわりと広がる。
全てにおいてバランスよく、お手本のような一本だ。
ダークナイト、いやバットマンに乾杯!
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