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のぼうの城・・・・・評価額1600円
2012年11月09日 (金) | 編集 |
でく“のぼう”の気骨。

戦国時代の末期、豊臣秀吉の北条攻めの折、石田三成率いる2万を超える天下の軍勢に包囲されながら、僅かな手勢で守りきり、最後まで落城しなかった“水の城”武州・忍城(おしじょう)の攻城戦を描く大作時代劇。
第29回城戸賞を受賞した和田竜の脚本を、犬童一心樋口真嗣が異例のダブル監督で映画化した。
民衆から木偶の坊を略して“のぼう”と呼ばれ親しまれたカリスマ城代、成田長親を狂言師・野村萬斎が演じ、豊臣軍総大将石田三成に時代劇映画初出演の上地雄輔。
のぼう配下の武将たちを、佐藤浩市、山口智充、成宮寛貴ら濃〜い面々が好演。
魅力的なキャラクターに、スケールの大きな画作りはスペクタクルな見せ場も多く、なかなかに楽しませてくれる。
※ラストに触れています。

広大な水田と湖に囲まれた武州・忍城。
領主の成田一門の成田長親(野村萬斎)は、領民たちから“のぼうさま”と呼ばれ、戦国の世にあっても平和を愛する人物だ。
その頃、天下統一目前の豊臣秀吉(市村正親)は、最後に残った関東の北条氏への攻撃を開始。
北条方支城の忍城も、2万を超える石田三成(上地雄輔)の軍に包囲されてしまう。
城に残る兵力は僅か500騎で、戦う前から勝敗は明らか。
秀吉に内通する腹づもりで、小田原城に出陣した領主・氏長(西村雅彦)の命もあって、城は降伏し開城するはずだった。
しかし、三成の軍使の威丈高な態度を見た長親は、一転して戦う事を決意する・・・


本作は昨年の9月に公開される予定だったが、津波を思わせる水攻めのシーンがある事から、3.11の影響に配慮し公開が一年以上も延期された。
実際に観ると、なるほど今時珍しいミニチュアワークを駆使し、濁流が押し寄せるビジュアルは迫力満点。
これでも、人が水に飲み込まれる描写など大幅にカット・修正がなされたというが、致し方あるまい。

開戦前から決着していて、本来起こらないはずの戦が起こったワケが面白い。
忍城主の成田氏長は、北条家の家臣として小田原籠城に表面的には参戦しつつも、裏では秀吉と通じ、忍城の開城を内諾している。
一方の秀吉は、右腕である石田三成の権威付のために、何とか武功をあげさせたい。
そこで三成には密約の存在を明らかにしないまま、戦う前から降伏する事がわかっている忍城攻めを命ずる。
要するに、忍城で実際に対峙する者たちは、将棋盤の上の駒に過ぎず、勝負は当事者の与り知らぬ所であらかじめ決められている状況だ。

ところが、彼らは物言わぬ駒ではなく、人間である。
豊臣家臣団の中で絶大な権力を振るいながらも、武人としての自らの実力が認められていない事を知るが故に、三成は金と権威になびかぬ敵とのガチンコの戦を求め、あえて傲慢不遜な長束正家を軍使にたて、忍城側を挑発する。
対する“のぼう”こと長親も、一見すると単純に三成の思惑に乗ってしまった様に見えるが、おそらくは地の利、人の利を活かせば、遥かに強大な敵とも互角に戦える事をわかった上で、弱小の意地を見せつける事で、自分たちを敵に認めさせようと図ったのではないだろうか。
戦わずして開城すれば敵の言いなりになるしかないが、一矢報いれば最終的に降伏するにしてもそれなりの扱いを要求出来る。
何しろ忍城は、嘗て北条氏康、そして戦国最強の呼び声も高い上杉謙信の包囲にすら耐えた難攻不落の名城なのだ。
いくら敵の数が多いとは言っても、勝機はあると読んでいたのだろう。
映画は史実をかなり改変しているが、少なくとも物語の上では、将棋盤の上の駒たちが指し手を無視して、自らの誇りと知略で動き出した結果、戦が起こった様に見えるのである。

いかにも戦国のもののふという面構えの、敵味方の男たちが良い。
特に成田家の侍大将たちは、佐藤浩市演じる“漆黒の魔人”(笑)こと正木丹波守利英、山口智充の筋肉バカの柴崎和泉守、古風な鎧兜に身を包んだ成宮寛貴演じる“おぼっちゃん”酒巻靭負と、漫画チックなまでに個性を主張し、まるで三国志の英雄の様だ。
作品全体の構成や、時間的にはそれほど長く無いが、充実した合戦シーンの画作りを含めて「レッド・クリフ」、その源流たる黒澤映画の影響はあちこちに見てとれる。
そして大河ドラマなどの出演はあるものの、時代劇映画は初となる上地雄輔の石田三成も予想よりずっと嵌っていたし、盟友の大谷吉継を演じる山田孝之や市村正親の豪放な秀吉も魅力的。
しかし、やはり本作のタイトルロールである、のぼうを演じた野村萬斎の存在感は格別だ。
後述する様にキャラクター造形に関しては若干疑問な部分もあるのだが、全身から醸し出す飄々とした独特の空気、スキだらけの滑稽な所作は彼ならではの物だろう。
のぼうは総大将なので戦場で戦う描写はないが、敵陣の前に船で漕ぎ出し、田楽を披露して敵味方全てを魅了してしまうシークエンスは本作の白眉であり、ここだけでも観る価値がある。

映画のラストでは、現代の埼玉県行田市に僅かに残る忍城の遺構が写し出される。
フィクションとしての過去を現実の今と結びつけるこの手法は、スピルバーグの「シンドラーのリスト」などでも見られたが、かなり好みは別れるだろう。
本作においては、400年以上前にそれぞれの時を懸命に生きた、強者どもの夢の跡を見る様で、効果的な余韻を作り出していたと思う。

「のぼうの城」は、史実をベースにした娯楽時代劇として良く出来た作品で、145分の長尺も心地良く流れてゆく。
惜しむらくは、長親がなぜこれほど領民に愛され、彼のためなら皆が危険をかえりみないのか、という描写が欠落している事だ。
いや、のぼうがユニークで、愛すべき人物なのは十二分に伝わって来るのだが、一国の長として戦を率いる才覚は、単に良い人であるのとは違うだろう。
何となく、映画だと総大将として人心を掌握していたと言うよりは、たまたま優秀な家臣や領民たちに助けられて勝った様に見えてしまった。
ここは、のぼうに対して人々が絶対の信頼を置く理由付が必要だったのではないだろうか。

あと個人的には、男臭い物語故に、紅一点の甲斐姫の見せ場がもっと欲しかった。
伝説によれば、彼女は鎧兜に身を固め、侍大将として多くの兵を率い、三成軍を迎え撃ったという。
自ら名乗りを上げて闘い、何人もの敵将の首をとったほどの豪傑だったというから、映画の利英の一騎討ちのシーンは姫の話を移し替えたのかもしれない。
まあ榮倉奈々だと華奢過ぎて説得力が出ないだろうし、物語のバランス的には、のぼうと姫との切ない純情エピソードの方が相応しい事は理解できるけど。

湖に浮かぶ平城である忍城は、別名を亀城とも言う。
今回は、同じ埼玉県の銘柄、神亀酒造の3年熟成酒「ひこ孫 純米吟醸」をチョイス。
ふわりとした吟醸香の向こうに、しっかりとした味の輪郭を感じる個性的な酒。
さすが二十年以上の熟成を経た「ときの流れ」ほどの、日本酒離れした強烈なコクと深みは無いが、神亀の入門用としては調度良い一本だろう。
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