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2012年11月14日 (水) | 編集 |
生徒40人、皆殺し。
男前で陽気な性格、生徒たちに絶大な人気を誇る高校教師でありながら、その実自分にとって不都合な人間は次々と抹殺する殺人鬼。
表と裏、二つの顔を持つ男を主人公に、異才・三池崇史が悪意のスロットル全開で描くスプラッター・ホラーだ。
原作は貴志祐介の同名ベストセラー小説で、今まで「海猿」シリーズなどで爽やかな青年を数多く演じてきた伊藤英明が、他人への共感能力を生まれつき持たないサイコパス・蓮実聖司を演じる。
悪魔の様な男が小さなミスを犯した時、彼はそれを取り繕うために学園を善悪のモラルの外側にある魔境へと変貌させ、阿鼻叫喚の地獄絵図を描き出す。
※ラストに触れています。
高校の英語教師の蓮実聖司(伊藤英明)は、生徒から“ハスミン”の愛称で親しまれ、その有能さは学校関係者も認めるところ。
だが、一方で女生徒を愛人にし、同僚教師の弱みを握って脅すという裏の顔を持っている。
無線部顧問の釣井(吹越満)と生徒の早見(染谷将太)は、過去に蓮実と関わった人たちが、不可解な死を遂げている事を突き止めるが、二人の動きを察知した蓮実によって亡き者にされてしまう。
人知れず学園の支配を進める蓮実だったが、ある日些細なミスを犯してしまい、自分の身を守るために、クラスの生徒全員の殺害を決意する・・・
人は、時としてフィクションの中で人間の姿をした悪魔を求める。
「匕首マッキー」のメロディに乗って楽しそうに殺戮を繰り返す、ハスミンの狂気と残虐に“WHY?”を投げかけても無駄だ。
ハーバード大卒の英才にして、教職員仲間からも生徒たちからも全幅の信頼を置かれる、有能を絵に描いた様なデキル男。
しかしその正体は、14歳にして両親を殺害して以来、自分の邪魔となる人間たちを無慈悲に排除してきた狡猾なシリアルキラー。
他者への共感能力の欠落、即ち彼の中では良心や思いやりなど、当たり前の感情が存在せず、殺人への罪悪感すら全く無い。
蓮実にとって世の中の全ては自分のために存在しており、“他人”とは単なるエモノに過ぎないのである。
欲望のままに行動し、邪魔になれば殺す、ただそれだけ。
善悪の概念を持たぬ者に、そもそも理由やモラルを問うても無意味なのだ。
逆に言えば、彼の行為が特別な意味を持たない事が、観客にとって映画的な意味を見出す事に繋がるのである。
この恐るべき怪物を、よりにもよって伊藤英明に演じさせる毒気。
廃墟の様な荒れ果てた家に住みながら暇さえあれば裸で肉体トレーニングに励み、己が道を阻む者は冷徹に排除するピカレスク・ヒーローの造形には、70年代に村川透監督、松田優作主演で作られた「蘇る金狼」「野獣死すべし」あたりのキャラクターが影響を与えていそうだ。
主人公の、有能な社会人としての昼の顔と、目的のためなら手段を選ばぬ夜の顔という真逆の二面性、そして反社会的特質には明らかな共通項が見える。
だが、穏やかな笑顔の下に、恐るべき嗜虐性を秘めた蓮実の大暴れを描く本作は、もちろんハードボイルドのカテゴリには入らず、完全なホラーである。
大虐殺が始まるのは、生徒たちが準備のために集まっている学園祭の前夜。
まるでデヴィッド・クローネンバーグの「ビデオドローム」や「裸のランチ」の主人公の様に、狂気と幻想の世界で楽しげに銃器と語り合いながら、ケバケバしい電燭で飾り付けられた学園を血しぶきで満たす蓮実の姿は、見た目とのギャップが激しい分、むしろあまたのハリウッド製の殺人鬼たちよりも不気味で恐ろしい。
「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」では、主人公のあたるたちが繰り返される学園祭の前日という時間の無限ループに閉じ込められたが、ここでは学園は蓮実という悪魔の作り出す非日常の異世界と化すのである。
本来生徒を守るべき存在である教師によって、全く不条理に射殺されてゆく生徒たちの姿はまことに痛々しいが、蓮実が使うのが基本ショットガンオンリーである事が、この凄惨極まりない物語をまだ正視可能な物としている。
これがナタやらチェンソーだったりしたら、おそらく途中退場者が続出していたはずだ。
殆ど一方的な殺戮に、狩られる側からの反撃がもう少し描かれれば、ドラマとしてはもっと盛り上がっただろうが、多分それは作者のやりたい事とは違ったのだろう。
面白いのが、彼の犯行が発覚する切っ掛けとなるのが、蓮実とは対照的なダメ教師・釣井の感じたほんの小さな違和感という事。
自分が卑屈な人間である事を自認する釣井は、マトモな人間の前では劣等感を感じるはずなのに、なぜか蓮実には感じないのだと言う。
それ故に、蓮実の秘密に気づくのだが、よくよく考えてみれば、蓮実の世界と我々の世界は、“共感能力”という言葉ひとつで隔てられているだけなのだ。
コロンバイン事件とか、秋葉原事件とか、はたまた近頃世間を騒がしている尼崎の大量殺人事件とか、人間の社会における安心、秩序、平和など、我々が身を任せている日常の基盤は案外と脆く、誰か一人の中で壊れれば、他人が巻き込まれる可能性は常にある。
その事を頭のどこかでわかっているからこそ、観客は蓮実をフィクションの中だけに存在する怪物と信じ、邪悪なカタルシスを感じたいのではないか。
そう考えれば、細部に目を向ければ突っ込みどころだらけのプロットや、深夜にショットガンを撃ちまくっているのに、外の誰も気づかないご都合主義も納得が行く。
真夜中のハイスクール・マサカーが一応の終わりを告げるラスト、連行される蓮実の不敵な目に我々が不安感をかき立てられるのは、「to be continued」がスクリーンの中だけで起こるとは限らない事を、否が応でも認めざるを得ないからなのである。
今回は、濃密な悪の香りに触れた後なので、悪魔繋がりのカクテル「デビルズ」をチョイス。
ポートワイン30ml、ドライベルモット30ml、レモンジュース2dashをステアして、グラスに注ぐ。
鮮やかな赤は正に血の様で、名前も恐ろしげだが、ポートワインの甘味とレモンジュースの酸味でサッパリとした味わいだ。
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男前で陽気な性格、生徒たちに絶大な人気を誇る高校教師でありながら、その実自分にとって不都合な人間は次々と抹殺する殺人鬼。
表と裏、二つの顔を持つ男を主人公に、異才・三池崇史が悪意のスロットル全開で描くスプラッター・ホラーだ。
原作は貴志祐介の同名ベストセラー小説で、今まで「海猿」シリーズなどで爽やかな青年を数多く演じてきた伊藤英明が、他人への共感能力を生まれつき持たないサイコパス・蓮実聖司を演じる。
悪魔の様な男が小さなミスを犯した時、彼はそれを取り繕うために学園を善悪のモラルの外側にある魔境へと変貌させ、阿鼻叫喚の地獄絵図を描き出す。
※ラストに触れています。
高校の英語教師の蓮実聖司(伊藤英明)は、生徒から“ハスミン”の愛称で親しまれ、その有能さは学校関係者も認めるところ。
だが、一方で女生徒を愛人にし、同僚教師の弱みを握って脅すという裏の顔を持っている。
無線部顧問の釣井(吹越満)と生徒の早見(染谷将太)は、過去に蓮実と関わった人たちが、不可解な死を遂げている事を突き止めるが、二人の動きを察知した蓮実によって亡き者にされてしまう。
人知れず学園の支配を進める蓮実だったが、ある日些細なミスを犯してしまい、自分の身を守るために、クラスの生徒全員の殺害を決意する・・・
人は、時としてフィクションの中で人間の姿をした悪魔を求める。
「匕首マッキー」のメロディに乗って楽しそうに殺戮を繰り返す、ハスミンの狂気と残虐に“WHY?”を投げかけても無駄だ。
ハーバード大卒の英才にして、教職員仲間からも生徒たちからも全幅の信頼を置かれる、有能を絵に描いた様なデキル男。
しかしその正体は、14歳にして両親を殺害して以来、自分の邪魔となる人間たちを無慈悲に排除してきた狡猾なシリアルキラー。
他者への共感能力の欠落、即ち彼の中では良心や思いやりなど、当たり前の感情が存在せず、殺人への罪悪感すら全く無い。
蓮実にとって世の中の全ては自分のために存在しており、“他人”とは単なるエモノに過ぎないのである。
欲望のままに行動し、邪魔になれば殺す、ただそれだけ。
善悪の概念を持たぬ者に、そもそも理由やモラルを問うても無意味なのだ。
逆に言えば、彼の行為が特別な意味を持たない事が、観客にとって映画的な意味を見出す事に繋がるのである。
この恐るべき怪物を、よりにもよって伊藤英明に演じさせる毒気。
廃墟の様な荒れ果てた家に住みながら暇さえあれば裸で肉体トレーニングに励み、己が道を阻む者は冷徹に排除するピカレスク・ヒーローの造形には、70年代に村川透監督、松田優作主演で作られた「蘇る金狼」「野獣死すべし」あたりのキャラクターが影響を与えていそうだ。
主人公の、有能な社会人としての昼の顔と、目的のためなら手段を選ばぬ夜の顔という真逆の二面性、そして反社会的特質には明らかな共通項が見える。
だが、穏やかな笑顔の下に、恐るべき嗜虐性を秘めた蓮実の大暴れを描く本作は、もちろんハードボイルドのカテゴリには入らず、完全なホラーである。
大虐殺が始まるのは、生徒たちが準備のために集まっている学園祭の前夜。
まるでデヴィッド・クローネンバーグの「ビデオドローム」や「裸のランチ」の主人公の様に、狂気と幻想の世界で楽しげに銃器と語り合いながら、ケバケバしい電燭で飾り付けられた学園を血しぶきで満たす蓮実の姿は、見た目とのギャップが激しい分、むしろあまたのハリウッド製の殺人鬼たちよりも不気味で恐ろしい。
「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」では、主人公のあたるたちが繰り返される学園祭の前日という時間の無限ループに閉じ込められたが、ここでは学園は蓮実という悪魔の作り出す非日常の異世界と化すのである。
本来生徒を守るべき存在である教師によって、全く不条理に射殺されてゆく生徒たちの姿はまことに痛々しいが、蓮実が使うのが基本ショットガンオンリーである事が、この凄惨極まりない物語をまだ正視可能な物としている。
これがナタやらチェンソーだったりしたら、おそらく途中退場者が続出していたはずだ。
殆ど一方的な殺戮に、狩られる側からの反撃がもう少し描かれれば、ドラマとしてはもっと盛り上がっただろうが、多分それは作者のやりたい事とは違ったのだろう。
面白いのが、彼の犯行が発覚する切っ掛けとなるのが、蓮実とは対照的なダメ教師・釣井の感じたほんの小さな違和感という事。
自分が卑屈な人間である事を自認する釣井は、マトモな人間の前では劣等感を感じるはずなのに、なぜか蓮実には感じないのだと言う。
それ故に、蓮実の秘密に気づくのだが、よくよく考えてみれば、蓮実の世界と我々の世界は、“共感能力”という言葉ひとつで隔てられているだけなのだ。
コロンバイン事件とか、秋葉原事件とか、はたまた近頃世間を騒がしている尼崎の大量殺人事件とか、人間の社会における安心、秩序、平和など、我々が身を任せている日常の基盤は案外と脆く、誰か一人の中で壊れれば、他人が巻き込まれる可能性は常にある。
その事を頭のどこかでわかっているからこそ、観客は蓮実をフィクションの中だけに存在する怪物と信じ、邪悪なカタルシスを感じたいのではないか。
そう考えれば、細部に目を向ければ突っ込みどころだらけのプロットや、深夜にショットガンを撃ちまくっているのに、外の誰も気づかないご都合主義も納得が行く。
真夜中のハイスクール・マサカーが一応の終わりを告げるラスト、連行される蓮実の不敵な目に我々が不安感をかき立てられるのは、「to be continued」がスクリーンの中だけで起こるとは限らない事を、否が応でも認めざるを得ないからなのである。
今回は、濃密な悪の香りに触れた後なので、悪魔繋がりのカクテル「デビルズ」をチョイス。
ポートワイン30ml、ドライベルモット30ml、レモンジュース2dashをステアして、グラスに注ぐ。
鮮やかな赤は正に血の様で、名前も恐ろしげだが、ポートワインの甘味とレモンジュースの酸味でサッパリとした味わいだ。

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