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2012年11月19日 (月) | 編集 |
その男に、仁義あり。
ヤクザ者と老人介護という異色の取り合わせが話題を呼んだ、フジテレビ系列の同名ドラマの続編にあたる作品だが、安直なテレビ局企画と侮るなかれ。
田舎町の老人ホームを舞台に、ホンモノの極道になるべく奮闘する男の物語は、貧困ビジネス、疲弊する介護者、行く当ての無い老人たちなど、高齢化社会の問題がストレートに盛り込まれ、骨太の社会派エンターテイメントとして見応え十分な仕上がりだ。
ドラマ版は最初の数話しか観ていないが、雰囲気はグッとハードになり、内容的にも独立した作品になっているので、これ単体で観ても問題なく楽しめる。
監督はドラマ版の演出も担当し、「容疑者Xの献身」など映画監督としても活躍する西谷弘。
極道の世界から足を洗い、カタギとなった翼彦一(草彅剛)は、コンビニで働き始めるものの、強盗に入った元ヤクザの蔦井(堺正章)を見逃した事から、共犯として逮捕されてしまう。
再び悪の道で生きる事を決めた彦一は、刑務所で再会した蔦井の紹介で大海市の暴力団・極鵬会を訪ねる。
そこで彦一に与えられたシノギとは、老人ホーム“うみねこの家”の運営。
貧しい老人たちに闇金として金を貸し、破産した彼らを引き取って劣悪な環境に住まわせ、年金や生活保護を巻き上げるビジネスだった。
折しも、街では議員の八代(香川照之)が提唱する“観光福祉都市”建設の一大プロジェクトが始まろうとしており、極鵬会もその利権を狙っている。
最初は淡々と仕事をする彦一だったが、老人たちと日々を過ごすうちに、次第に葛藤を募らせ、施設の改善を決意するのだが・・・
劇中、彦一を見た老婆が「あんた、雷蔵に似ているね」と頬を赤らめるシーンがある。
なるほど草彅剛の顔の作りは、何となく八代目・市川雷蔵の面影を感じさせるかも知れない。
偶然にも本作撮影当時の草彅と同じ、37歳という若さで夭逝した雷蔵は、時代劇の印象が強いが、「若親分」シリーズや遺作となった「博徒一代 血祭り不動」などの任侠映画にも出演している。(もっとも、雷蔵自身は東映の焼き直しだとしてあまり乗り気ではなかったらしいが)
そんな昭和の大スターの雰囲気を纏った、草彅剛が良いのである。はまり役というやつだ。
冒頭でコンビニ店員をしているシーンから、単に怖い顔をしている以上の凄みを漂わせる。
一見強面だけど実際には良い人、という単純なステロタイプでなく、基本はあくまでも粗野な悪人、しかし心の奥底では侠気を捨てず、ホンモノになりたいと願う男を好演している。
容赦無く暴力を振るい、豪快にお下品なゲップをし、善悪の狭間に撞着する姿は、どこから見ても立派なヤクザ者だ。
そんな彦一が任せられたのは、年金や生活保護を搾取するために作られた、老人ホームとは名ばかりの劣悪な施設。
そこでは家族に見捨てられた老人たちが、畳一畳ほどに間仕切られた大部屋に押し込められ、徘徊を防ぐために汚物塗れのまま日がな一日縛り付けられている。
管理人はこれまた老人が一人だけで、もちろん医師や看護師などいない。
彦一も最初は感情を挟まずに与えられた仕事をこなしているのだが、何しろ彼は弱きを助け、強きを挫く任侠道を極めたいと思っている男である。
自分の向き合っている一人ひとりの老人たちの人生のヒストリーを感じ、蔦井の娘でやはり母親の介護を抱える葉子とその家族との触れ合いを通して、徐々に現状への苛立ちを募らせ、遂には入居者と力を合わせてゴミ溜めの様な施設を笑顔溢れるコミュニティへと変貌させてしまう。
まあこの辺りのプロセスはやや出来過ぎというか、トントン拍子に物事が運び過ぎるきらいはあるが、人の暮らしとはこうあるべきだという作り手の言わんとする事は良くわかる。
そして、動き出した彦一の前に立ちはだかるのが、侠気を捨て、弱き者を金づるとしか見ない今どきのヤクザ、極鵬会であり、彼らのビジネスを成立させている現代社会の様々な歪みが浮かび上がるという訳だ。
極道と老人という、普通に考えれば水と油の様なモチーフの接点を、所謂貧困ビジネスに見出し、丁寧に描かれた人間ドラマを通して、社会の高齢化と格差の問題点をリアリティのあるテーマとして描き出した池上純哉の脚本はなかなかに秀逸。
彦一と安田成美演じる葉子、彼女に思いを寄せる裕福な世襲政治家の八代との三角関係と、八代が音頭を取る街の再開発プロジェクトと極鵬会との対立の絡ませ方など、一歩間違えると御都合主義を感じさせてしまう程に人間関係が近しく複雑だが、上手く処理して物語を重層化させている。
最近の役柄の刷り込み効果で、香川照之が政治家役をやっていると反射的に悪のラスボスかと思ってしまうが、今回は割と良い人だったりするのも意外性があって良かった。
彦一をアニキと慕うウザキャラの成次とキャバ嬢の茜との純情恋物語も、効果的なアクセントになっていたと思う。
画作りにも安っぽさは微塵も無い。
静岡県に大規模なオープンセットとして建て込まれた“うみねこの家”は、生活感たっぷり、生ゴミと汚物の異臭まで漂って来そうな力作で、平屋作りに風見鶏の塔がある構造はシネマスコープの画面に映える。
山本英夫のカメラは、閑散とした地方都市の閉塞感と、登場人物たちそれぞれの孤独と葛藤を雄弁に物語る。
物語のラストで、役割を果たしたアウトローが愛しい人たちを残して街を去ろうとする時、私は心の中で思わず「カムバック!彦一」と叫んでいた。
このキャラクターは、上手く発展させれば草彅剛の代表作、いや日本そのものが高齢化した今、現代の寅さんになり得るのではないか。
そう言えば、「男はつらいよ」も元々はフジテレビの連続ドラマから始まって、国民的な人気シリーズとなった経緯がある。
どうせテレビの延長線上だし、SMAPだし、と思って躊躇している人は、騙されたと思って劇場へ足を運んで欲しい。
企画の出自はテレビだとしても、ここにあるのは風格ある任侠映画であり、映画館の大画面で観るべき力作である。
今回は海辺の街が舞台という事で、海の幸を美味しくいただけるお酒。
石川県の車多酒造の「天狗舞 山廃純米吟醸」をチョイス。
天狗舞を代表する山廃仕込みの逸品だけあって、腰が強く香りも奥深い。
芳醇な酒と肴を求めて、日本の何処かへ旅に出たくなる一杯である。
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ヤクザ者と老人介護という異色の取り合わせが話題を呼んだ、フジテレビ系列の同名ドラマの続編にあたる作品だが、安直なテレビ局企画と侮るなかれ。
田舎町の老人ホームを舞台に、ホンモノの極道になるべく奮闘する男の物語は、貧困ビジネス、疲弊する介護者、行く当ての無い老人たちなど、高齢化社会の問題がストレートに盛り込まれ、骨太の社会派エンターテイメントとして見応え十分な仕上がりだ。
ドラマ版は最初の数話しか観ていないが、雰囲気はグッとハードになり、内容的にも独立した作品になっているので、これ単体で観ても問題なく楽しめる。
監督はドラマ版の演出も担当し、「容疑者Xの献身」など映画監督としても活躍する西谷弘。
極道の世界から足を洗い、カタギとなった翼彦一(草彅剛)は、コンビニで働き始めるものの、強盗に入った元ヤクザの蔦井(堺正章)を見逃した事から、共犯として逮捕されてしまう。
再び悪の道で生きる事を決めた彦一は、刑務所で再会した蔦井の紹介で大海市の暴力団・極鵬会を訪ねる。
そこで彦一に与えられたシノギとは、老人ホーム“うみねこの家”の運営。
貧しい老人たちに闇金として金を貸し、破産した彼らを引き取って劣悪な環境に住まわせ、年金や生活保護を巻き上げるビジネスだった。
折しも、街では議員の八代(香川照之)が提唱する“観光福祉都市”建設の一大プロジェクトが始まろうとしており、極鵬会もその利権を狙っている。
最初は淡々と仕事をする彦一だったが、老人たちと日々を過ごすうちに、次第に葛藤を募らせ、施設の改善を決意するのだが・・・
劇中、彦一を見た老婆が「あんた、雷蔵に似ているね」と頬を赤らめるシーンがある。
なるほど草彅剛の顔の作りは、何となく八代目・市川雷蔵の面影を感じさせるかも知れない。
偶然にも本作撮影当時の草彅と同じ、37歳という若さで夭逝した雷蔵は、時代劇の印象が強いが、「若親分」シリーズや遺作となった「博徒一代 血祭り不動」などの任侠映画にも出演している。(もっとも、雷蔵自身は東映の焼き直しだとしてあまり乗り気ではなかったらしいが)
そんな昭和の大スターの雰囲気を纏った、草彅剛が良いのである。はまり役というやつだ。
冒頭でコンビニ店員をしているシーンから、単に怖い顔をしている以上の凄みを漂わせる。
一見強面だけど実際には良い人、という単純なステロタイプでなく、基本はあくまでも粗野な悪人、しかし心の奥底では侠気を捨てず、ホンモノになりたいと願う男を好演している。
容赦無く暴力を振るい、豪快にお下品なゲップをし、善悪の狭間に撞着する姿は、どこから見ても立派なヤクザ者だ。
そんな彦一が任せられたのは、年金や生活保護を搾取するために作られた、老人ホームとは名ばかりの劣悪な施設。
そこでは家族に見捨てられた老人たちが、畳一畳ほどに間仕切られた大部屋に押し込められ、徘徊を防ぐために汚物塗れのまま日がな一日縛り付けられている。
管理人はこれまた老人が一人だけで、もちろん医師や看護師などいない。
彦一も最初は感情を挟まずに与えられた仕事をこなしているのだが、何しろ彼は弱きを助け、強きを挫く任侠道を極めたいと思っている男である。
自分の向き合っている一人ひとりの老人たちの人生のヒストリーを感じ、蔦井の娘でやはり母親の介護を抱える葉子とその家族との触れ合いを通して、徐々に現状への苛立ちを募らせ、遂には入居者と力を合わせてゴミ溜めの様な施設を笑顔溢れるコミュニティへと変貌させてしまう。
まあこの辺りのプロセスはやや出来過ぎというか、トントン拍子に物事が運び過ぎるきらいはあるが、人の暮らしとはこうあるべきだという作り手の言わんとする事は良くわかる。
そして、動き出した彦一の前に立ちはだかるのが、侠気を捨て、弱き者を金づるとしか見ない今どきのヤクザ、極鵬会であり、彼らのビジネスを成立させている現代社会の様々な歪みが浮かび上がるという訳だ。
極道と老人という、普通に考えれば水と油の様なモチーフの接点を、所謂貧困ビジネスに見出し、丁寧に描かれた人間ドラマを通して、社会の高齢化と格差の問題点をリアリティのあるテーマとして描き出した池上純哉の脚本はなかなかに秀逸。
彦一と安田成美演じる葉子、彼女に思いを寄せる裕福な世襲政治家の八代との三角関係と、八代が音頭を取る街の再開発プロジェクトと極鵬会との対立の絡ませ方など、一歩間違えると御都合主義を感じさせてしまう程に人間関係が近しく複雑だが、上手く処理して物語を重層化させている。
最近の役柄の刷り込み効果で、香川照之が政治家役をやっていると反射的に悪のラスボスかと思ってしまうが、今回は割と良い人だったりするのも意外性があって良かった。
彦一をアニキと慕うウザキャラの成次とキャバ嬢の茜との純情恋物語も、効果的なアクセントになっていたと思う。
画作りにも安っぽさは微塵も無い。
静岡県に大規模なオープンセットとして建て込まれた“うみねこの家”は、生活感たっぷり、生ゴミと汚物の異臭まで漂って来そうな力作で、平屋作りに風見鶏の塔がある構造はシネマスコープの画面に映える。
山本英夫のカメラは、閑散とした地方都市の閉塞感と、登場人物たちそれぞれの孤独と葛藤を雄弁に物語る。
物語のラストで、役割を果たしたアウトローが愛しい人たちを残して街を去ろうとする時、私は心の中で思わず「カムバック!彦一」と叫んでいた。
このキャラクターは、上手く発展させれば草彅剛の代表作、いや日本そのものが高齢化した今、現代の寅さんになり得るのではないか。
そう言えば、「男はつらいよ」も元々はフジテレビの連続ドラマから始まって、国民的な人気シリーズとなった経緯がある。
どうせテレビの延長線上だし、SMAPだし、と思って躊躇している人は、騙されたと思って劇場へ足を運んで欲しい。
企画の出自はテレビだとしても、ここにあるのは風格ある任侠映画であり、映画館の大画面で観るべき力作である。
今回は海辺の街が舞台という事で、海の幸を美味しくいただけるお酒。
石川県の車多酒造の「天狗舞 山廃純米吟醸」をチョイス。
天狗舞を代表する山廃仕込みの逸品だけあって、腰が強く香りも奥深い。
芳醇な酒と肴を求めて、日本の何処かへ旅に出たくなる一杯である。

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