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ルビー・スパークス・・・・・評価額1600円
2013年01月26日 (土) | 編集 |
愛するほどに、苦しくなる。

スランプに陥った天才作家が、なぜか実体化した小説の主人公に恋をする、ファンタジックでちょっとビターなラブストーリー。
巨匠エリア・カザンの孫娘である才媛、ゾーイ・カザンが脚本を書き上げ、自らタイトルロールのルビーをキュートに演じれば、彼女の創造主たる作家のカルヴィンを、実生活でもゾーイのパートナーだというポール・ダノが、クリエイターの苦悩たっぷりに魅せる。
若い二人の愛の物語を監督したのは、「リトル・ミス・サンシャイン」ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス夫妻だ。
アントニオ・バンデラスやアネット・ベニングらのベテランが曲者ぞろいのキャラクターを好演し、がっちり脇を固める。

19歳の時にベスセラー作家となったカルヴィン(ポール・ダノ)は、その後10年の間何も書くことが出来ず、すっかり自信を喪失している。
セラピストのローゼンタール博士(エリオット・グールド)に、夢で見る女性の事を書くように勧められたカルヴィンは、ルビーと名付けた彼女を主人公にした小説を書き始める。
すると、今までのスランプが嘘の様に執筆が進む。
ところがある日、目を覚ましたカルヴィンの前に、肉体を持ったルビー(ゾーイ・カザン)が現れ、まるでずっと恋人同士だったかの様に話しかけてくる。
彼女が夢や幻で無い事を知ったカルヴィンは、理想の女性であるルビーとの生活を満喫。
しかし、次第に自分の思い通りにならなくなる彼女に、いつしか嫉妬を感じる様になり・・・


「もしも、このキャラクターが実際に恋人だったらなあ・・・」というのは創作を生業にしている人なら一度は抱いた事のある妄想だろう。
クリエイターにとって、作品は愛おしい我が子であり、作者が男性ならヒロインに、女性ならヒーローに理想の異性を投影する人は多い。
いや、例えクリエイターでなかったとしても、小説や漫画、映画のキャラクターが初恋の人というのは決して珍しく無いと思う。
本作は、そんな誰もが考えるけど、公言するのはちょっと恥ずかしい願望を、そのまま一本の作品に仕立て上げてしまった事が先ずは凄い(笑

引きこもり同然の生活を送る落ち目の青年作家の前に、ある日突然理想の彼女が現れて、愛してると言ってくれる。
最初は自分が狂ってしまったのではないかと戸惑うものの、彼女の姿が見えるのは自分だけでなく、間違いなく肉体をもって存在している事がわかると、一転して大喜び。
ルビーが出現した理由は全く描かれないが、ここは本作の本質ではないので、創作の奇跡という認識で良いのだろう。
切っ掛けは突飛ではあるものの、このまま彼女を受け入れ、愛を育んで行ければハッピーエンドのラブストーリーなのだが、何しろカルヴィンは創造主であり、ルビーは創造物というどう考えても普通ではない特殊な関係である。
ポイントは、ルビー自身は自らがカルヴィンの空想の産物だという事に、全く気付いてないという事だ。

カルヴィンが彼女を主人公にした小説に、新しい設定を書き加えれば、現実の彼女にも反映される。
例えば「ルビーはフランス語が堪能」と書けば、実際にフランス語を話し始め、「自分と片時も離れられない」と書けば、超甘えん坊体質に性格まで変わってしまうのだ。
しかも、カルヴィンは十代の頃の成功体験けから抜け出せずに、精神的な成長が止まってしまった、いわば中二病のオタク子供である。
かかりつけのセラピストから、現実はダメでも空想上の好きな女性の事なら書けるだろうと言われ、心理療法のつもりで書き始めたのがルビーの物語なのだから、もとより女性との関係は超不得手。

最初はルビーと出会えた奇跡に感謝し、彼女を尊重してもう原稿には手を付けないと誓ったものの、恋愛下手を自認しているが故に、彼女の心が離れてしまう事が心配でならない。
これは私自身や周りの人間もそうなので良くわかるが、物書きの男なんて基本お一人様の時間を愛する内向的なオタクであり、その反動か好みのタイプは自分とは真逆の明るくて社交的な女性だったりする。
で、当たり前だけどそんな彼女は友達も多く、モテる(様に見える)のである。
ちょっとした彼女の言動や生活の変化にまで心を揺さぶられ、悩める創造主は遂に禁断の原稿に手を出してしまうのだ。
お互いに独立した人格であればこそ、葛藤が生まれるのは当たり前で、それを克服する過程に愛の成長はあるはず。
しかし、一度ルビーを思いのままにコントロールする快感を知ってしまったカルヴィンは、彼女を都合の良いオモチャの様に扱い始めてしまう。
だがそれは、一人の大人の男として彼女と対等に向き合えない、自分自身の情けない姿を浮き彫りにするのである。
わがままな創造主は、成熟した人格としての自立と相手との一体感という二つの欲求を同時に求める事によって、お互いを傷つけてしまう、所謂“ヤマアラシのジレンマ”に陥ってしまうのだが、このあたりは女性脚本家ならではの同世代男性への厳しい視点を感じさせる。

そして、ジレンマが極限に達した時、遂にカルヴィンはルビーが自分の小説から生まれた創造物だという秘密を明かしてしまう。
信じようとしない彼女に、原稿を書き換える事で次々と辱めを与える無慈悲な創造主を演じるに至って、元々歪な二人の虚構の世界は木っ端微塵に砕け散る。
これを恋愛物と考えれば、究極に拗れた関係にどうオチを付けるのかと心配になるほどだが、カルヴィンが小説に記した最後の一文は、ルビーを愛した男として、物語の創造主として、また入れ子構造の映画の主人公として、成長を感じさせて秀逸だ。
凡ゆる物語は、作者の手を離れてはじめて一人歩きを始める。
ルビーを手放す事で、カルヴィンもまた10年分の時計の針を進め、前に進む決意をした事を象徴するのは、奇跡を生んだ古いタイプライターに変わって、机に置かれた真新しいMacBookだ。
恋も創作も、カルヴィンの内なる“作品”に留まっているうちは、決してホンモノにはなり得ないのである。

今回は、本作の魅惑的なヒロイン、ルビーのイメージで、「ルビー・カシス」をチョイス。
クレーム・ド・カシス30ml、ドライ・ベルモット20mlをタンブラーに注ぎ、トニックウォーターを適量加えて軽くステアして完成。
名前の通りルビー色が美しく、やや甘口でスッキリした味わいは、ルビーに心を吹き込んだゾーイ・カザンのイメージにピッタリ。
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